最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、保育園・認定こども園を経営する法人、個人事業主の方に向けて、2026年(令和8年)時点の制度動向を税理士事務所の視点で整理したものです。委託費・処遇改善等加算といった公定価格の仕組み、特定収入の調整計算、社会福祉法人会計と一般法人会計の違いなど、保育施設運営ならではの実務論点を中心にまとめています。
- 結論を最初に:待機児童は2,254人まで減り8年連続で過去最少です。一方で保育士有効求人倍率は3.78倍と、人材確保が最重要課題になっています。
- こども誰でも通園制度が2026年度に本格実施:0歳6か月〜2歳の子どもが月10時間まで利用でき、新たな収入源にもなり得ます。
- 配置基準の改善が進行中:4・5歳児は30対1から25対1へ、1歳児は6対1から5対1へと加算措置が設けられました。
- 特定収入の調整計算に注意:施設整備費補助金等が特定収入割合5%を超えると、仕入税額控除の調整計算が必要になります。
- 106万円の壁はR8.10.1に賃金要件が撤廃:週20時間以上働くパート保育士の多くが社会保険加入の対象になります。
1. 業界の今|2026年の保育園・認定こども園動向
ひとことで言うと待機児童は過去最少まで減りましたが、保育士不足は深刻です。誰でも通園制度への対応が2026年の経営課題になります。
全国の保育所等待機児童数は、2025年4月1日時点で2,254人でした。2017年のピーク(2万6,081人)から8年連続で減少し、統計開始以来の最少を更新しています。
都市部では「量の確保」から「質の向上」へ政策の重心が移っています。一方で地方や郊外では定員割れが進む施設もあり、地域による経営環境の差が拡大しています。
札幌市でも待機児童ゼロが8年連続で続いています。選ばれる園づくりが経営課題になっています。
2026年度からは「こども誰でも通園制度」(=保護者の就労状況にかかわらず時間単位で保育所を利用できる仕組み)が全国で本格実施されます。就労要件を問わず、0歳6か月〜2歳の子どもが月10時間まで利用できます。
新たな利用者層の受け入れは、収入源の多様化につながります。一方で、予約管理など事務負担の増加も見込まれます。
保育士の有効求人倍率は、2025年1月時点で3.78倍です。全職種平均(1.34倍)を大きく上回っており、人材の確保・定着が引き続き最重要課題です。
職員配置基準の改善も進んでいます。2024年度には4・5歳児の配置基準が約76年ぶりに30対1から25対1へ改善されました。2025年度からは1歳児の配置改善(6対1から5対1)にも加算措置が設けられています。
処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲも2025年度から区分整理・一本化され、事務負担の軽減が図られています。
2. 経営のポイント|保育園経営者・施設長が今やるべきこと
ひとことで言うと選ばれる園づくり、保育士の定着支援、誰でも通園制度への対応。この3つを並行して整えることが2026年の経営課題です。
2-1. 定員充足と選ばれる園づくり
少子化が進むなかでも、都市部では「入りたい園」に選ばれるかが経営を左右します。
延長保育や一時預かり、給食・アレルギー対応など、保護者ニーズに応じたサービス設計が重要です。見学会やSNS発信などの情報発信を強化し、定員充足率を安定させる取り組みが求められます。
定員割れが続く園では、小規模保育や企業主導型保育(=国が主導する認可外保育施設の一種で、企業が従業員の子どものために設置・利用する仕組み)など、運営形態の見直しも選択肢になります。
2-2. 保育士の確保・定着と働き方改革
保育士の有効求人倍率が高止まりするなか、採用だけでなく定着支援が経営の生命線です。
処遇改善等加算を活用した賃金改善に加え、ICT化による書類作成・保護者連絡業務の省力化など、限られた人員での業務負担軽減が離職防止につながります。
配置基準の改善は、加算取得の要件を満たす体制づくりとセットで検討する必要があります。
2-3. こども誰でも通園制度など多機能化への対応
こども誰でも通園制度の本格実施により、在園児以外の子どもを受け入れる体制整備が新たな課題になります。
事務負担が増える一方、定員に余裕がある園には新たな収入源にもなり得ます。
学童保育や地域子育て支援拠点事業など、保育所の機能を活かした多機能化も、収益の分散と地域からの信頼獲得の両面で検討する価値があります。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと保育料・委託費は消費税非課税ですが、施設整備費補助金は特定収入に区分され、割合5%超で調整計算が必要です。
認可保育所・認定こども園の保育料・給食費等の保護者負担金や委託費・施設型給付費は、社会福祉事業として行う資産の譲渡等にあたり、消費税は非課税です。
ただし、委託費本体とは別に交付される施設整備費補助金や自治体独自の上乗せ補助金などは、消費税法上「特定収入」(=対価性のない補助金等の収入で、仕入税額控除の計算に影響するもの)に区分されます。
一般課税を適用し、特定収入割合が5%を超える法人は、通常の計算による仕入控除税額から特定収入対応分を減算する調整計算が必要になります。補助金の種類ごとに区分経理をしておくことが重要です。
運営主体によって適用される会計基準も異なります。社会福祉法人が経営する保育所・認定こども園は社会福祉法人会計基準、学校法人が経営する幼稚園型認定こども園は学校法人会計基準に基づく決算が必要です。
一方、株式会社や個人事業主が運営する小規模保育事業・企業主導型保育事業などは、通常の法人税・所得税の決算体系が適用されます。
保育事業そのものは、法人税法上の収益事業に該当しないのが原則です。ただし法人形態や事業区分で取扱いが異なるため、自法人の会計基準と課税関係を確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 保育料・委託費の消費税 | 社会福祉事業として行う保育の提供は消費税非課税 | 課税売上(一時保育の実費徴収等)との区分経理を徹底する |
| 特定収入に係る仕入税額控除の特例 | 施設整備費補助金等は特定収入に区分され、割合5%超で調整計算が必要 | 補助金を交付目的別に区分経理し、特定収入割合を毎期試算する |
| 会計基準の違い | 社会福祉法人会計基準/学校法人会計基準/一般の法人会計が運営主体で異なる | 自法人の運営形態に応じた決算書式・勘定科目を確認する |
| 委託費の弾力運用 | 人件費積立資産・修繕積立資産・備品等購入積立資産への積立が可能 | 積立要件(人件費比率等)を満たしているか毎期確認する |
| 少額減価償却資産の特例 | R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(年合計300万円まで・青色中小) | 保育備品・遊具の更新をこの範囲内でまとめて実施する |
| 防衛特別法人税 | R8.4.1以後開始事業年度から課税(基準法人税額−基礎控除500万円)×4% | 収益事業を行う法人は基準法人税額500万円超かを確認する |
- 2025年度〜処遇改善等加算Ⅰ〜Ⅲの区分整理・一本化、1歳児配置改善加算の創設
- 2026年度こども誰でも通園制度が全国で本格実施
- 2026年4月1日以後開始事業年度防衛特別法人税の課税対象に(基準法人税額500万円超の部分)
- 2026年10月1日106万円の壁(賃金要件)が撤廃
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと配置改善加算から省力化投資補助金まで、保育の質向上とICT化に使える支援策が用意されています。
保育園・認定こども園では、配置基準の改善に伴う加算や、登降園管理・午睡センサーなどICT化への補助金の活用余地が大きく、要件整理や資金計画づくりを税理士がサポートできます。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 使い方 |
|---|---|---|---|
| 4歳以上児配置改善加算 | 30対1から25対1への配置改善差額を公定価格に加算 | 2024年度創設、経過措置あり | 職員体制の恒常的な改善と加算取得を両立 |
| 1歳児配置改善加算 | 1歳児を6対1から5対1以上に改善した場合に加算 | 2025年度創設(処遇改善等加算の取得等が要件) | 1歳児クラスの増員コストの一部を補う |
| 処遇改善等加算(一本化後) | 基礎分・賃金改善分・質の向上分の区分で交付 | 2025年度から区分再編、賃金改善計画書は原則廃止 | 賃金改善原資として計画的に配分 |
| 保育対策総合支援事業費補助金 | ICT化・防犯・処遇改善など事業ごとに上限・補助率を設定 | 都道府県・市町村経由で例年公募 | 保育業務支援システムや安全対策設備の整備 |
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円)、補助率中小1/2 | 第7回:R8.6.5要領公開、7月受付 | 登降園管理・午睡センサー等の導入 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと保育士不足への対応と、106万円の壁撤廃・カスハラ対策など制度変更への準備を並行して進める必要があります。
保育士の有効求人倍率が3倍を超える状態が続くなか、採用競争は年々厳しさを増しています。
2025年度から処遇改善等加算が区分整理され、賃金改善計画書の提出も原則廃止されるなど事務負担は軽減されました。加算を実際の賃金改善に結びつけ、求職者に伝わる形で発信できるかが採用力の差になります。
配置基準の改善は保育の質の向上につながる一方、人件費の増加を伴います。加算額と人件費増加分を毎年突き合わせて確認することが欠かせません。
社会保険の分野では、いわゆる「106万円の壁」(賃金月8.8万円要件)が令和8年10月1日に撤廃されます。週20時間以上働くパート保育士・補助職員の多くが、新たに厚生年金・健康保険の加入対象になる見込みです。
パート職員の労働時間・加入対象者数を早めに把握し、保険料負担増を織り込んだシミュレーションをしておく必要があります。
北海道の最低賃金は、令和7年10月4日発効で1,075円です。パート・非常勤保育士の時給も、毎年の改定を前提に見直しが必要です。
保護者対応の長時間化や過度な要求といったカスタマーハラスメントへの対応も、改正労働施策総合推進法を踏まえた相談体制の整備が求められる分野です。
送迎バスの安全装置設置や散歩時の安全確保など、こどもの安全に関わる労務管理の徹底は、運営費の指導監査でも確認される項目です。
6. 資金繰り・銀行融資対策|保育園・認定こども園
ひとことで言うと委託費の入金サイクルと積立資産の使途制限を踏まえた資金繰り表が、保育園経営の安定の土台になります。
6-1. 委託費・給付費の入金サイクルと積立金の使途制限
保育所・認定こども園の主な収入である委託費・施設型給付費は、市町村から月遅れで入金される仕組みが一般的です。
開設直後や園児数が変動する時期は、入金と支出のタイミングにずれが生じやすい点に注意が必要です。
委託費の弾力運用により、人件費積立資産・修繕積立資産・備品等購入積立資産として積み立てられます。目的以外への流用は原則認められておらず、目的外に使う場合は事前協議が必要です。
6-2. 使える融資メニュー
設備投資や運転資金の調達では、日本政策金融公庫の各種融資に加え、社会福祉法人・学校法人向けには独立行政法人福祉医療機構(WAM)の福祉貸付事業も選択肢になります。
保育所の施設整備等に対する融資は、一般の民間融資より長期・低利になりやすい傾向があります。
信用保証協会の保証付き融資もあわせて検討しましょう。複数の資金調達手段を組み合わせておくと、園児数の変動や制度改正による収入減少局面でも運転資金を確保しやすくなります。
6-3. 金融機関の見方と決算書のポイント
金融機関は、委託費・給付費という比較的安定した収入構造を評価します。一方で、定員充足率の推移や人件費比率、積立資産の積立状況、借入金と事業活動収入のバランスも重視します。
社会福祉法人・学校法人は、資金収支計算書と貸借対照表もあわせて確認されます。複数年の推移を示せる資料を準備しておくと、融資審査や条件交渉が円滑に進みやすくなります。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと人件費比率は7割超が目安です。加算を確実に賃金へ反映できているかが、赤字法人割合を左右する分かれ目です。
保育所・認定こども園の経営指標は、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が融資先データをもとに公表する経営状況調査や、こども家庭庁の統計を「目安」として活用できます。
自園と比較する際は、定員規模や運営主体(社会福祉法人・学校法人・株式会社等)、地域による差が大きい点を踏まえてください。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 人件費比率 | 保育主体の社会福祉法人で71.6%(2024年度決算・前年比0.5pt低下) | 収益に占める人件費の割合。処遇改善等加算の反映状況とあわせて確認 |
| サービス活動増減差額比率 | 保育主体の社会福祉法人で5.7%(2024年度決算・前年比1.1pt上昇) | 本業の収支の余力を示す指標。修繕・処遇改善の原資になる |
| 赤字法人割合 | 保育主体の社会福祉法人で16.6%(2024年度決算・前年比4.7pt改善) | 改善傾向だが、なお6法人に1法人程度が経常赤字の水準 |
| 定員充足率 | 全国平均88.4%(2025年4月・こども家庭庁) | 90%前後を安定ラインとする例が多く、要因分析の目安に |
| 従事者1人当たり人件費 | 保育主体の社会福祉法人で454.3万円(2024年度決算) | 処遇改善等加算による賃金改善の進捗を測る目安の一つ |
| 1法人当たりサービス活動収益 | 保育主体の社会福祉法人で4.37億円(2024年度決算) | 定員規模・多角化事業の有無で変動する参考値 |
出典:福祉医療機構「2024年度 社会福祉法人の経営状況」
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|保育園経営
ひとことで言うと積立資産の計画的な活用と、加算要件の正確な把握。この2つへの向き合い方が保育園経営の分かれ目です。
ここでは、保育園・認定こども園の経営で実際によくみられる状況を、守秘義務に配慮しながら典型的なパターンとして再構成し、成功事例・失敗事例としてご紹介します。自園の経営判断の参考としてご活用ください。
成功事例
失敗事例
※事例は守秘義務に配慮し、実際に見られる典型パターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに処遇改善等加算の取得要件を再確認し、誰でも通園制度の受け入れ体制を検討しましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 処遇改善等加算の取得要件を再確認し、通園制度の受け入れ体制を検討 | 処遇改善等加算/こども誰でも通園制度 |
| 2026年10〜12月 | 106万円の壁撤廃を見据えたパート職員の社会保険シミュレーション | 106万円の壁撤廃/委託費の弾力運用 |
| 2027年1〜3月 | 少額減価償却資産の特例で備品更新、特定収入割合を試算し決算準備 | 少額減価償却資産の特例/特定収入 |
| 2027年4〜6月 | 次年度の定員充足率・資金繰り計画を策定、配置基準改善加算を総点検 | 配置基準改善加算/資金繰り計画 |
制度改正が続く分野です。最新の通知や公定価格の内容を確認しながら、優先順位を調整することをおすすめします。
判断に迷う項目は、早めに顧問税理士へご相談ください。
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと保育の制度は税制改正や近縁の福祉分野の動向ともつながるため、あわせて確認しておくと理解が深まります。
保育園・認定こども園の経営・税務は、実務に強い税理士へ
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