最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、オフィス・店舗の内装仕上工事や原状回復工事を営む内装仕上工事業の社長、経理担当の方向けに、2026年(令和8年)時点の経営情報を税理士の視点で整理したものです。オフィス市況、B工事・C工事の商流、内装材の値上げ、短工期案件特有の外注管理を中心にまとめました。戸建て・マンションの住宅リフォームは扱いません。住宅系の情報は住宅リフォーム・リノベーション業の最新情報をご覧ください。
- 結論を最初に:東京都心オフィス空室率は2026年6月末に1.99%と6年ぶりの1%台。改装・原状回復の受注機会は増加傾向です。
- 内装材が最大30%値上げ:壁紙・石膏ボードが2026年に入り相次ぎ値上げ。旧単価のままの見積りは原価割れの危険があります。
- B工事・C工事の理解不足は損失に直結:商流を確認せず受注すると、粗利が半減する事例も起きています。
- インボイス経過措置が縮小:2026年10月から仕入税額控除は70%に縮小します。一人親方への外注単価に影響します。
- 住宅リフォームは対象外:戸建て・マンションのリフォームは、住宅リフォーム業の専用ページで解説しています。
1. 業界の今|2026年の内装仕上工事業動向
ひとことで言うとオフィス・店舗の改装需要は増えていますが、内装材の値上げを見積りに反映できるかが利益の分かれ目です。
結論から言うと、2026年のオフィス改装需要は追い風です。空室率の低下が理由です。
三鬼商事の調査では、2026年6月末の東京都心5区の平均空室率は1.99%でした。前月比0.08ポイント減です。
1%台になるのは6年ぶりです。空室が出にくい市況では、移転を伴わない改装工事が増えます。
居抜き改装や、増床にあわせたレイアウト変更がその代表例です。
店舗業態でも、改装(リニューアル)投資や、退去にともなう原状回復工事のニーズが続いています。
新築工事に比べて景気変動の影響を受けにくいことも、内装仕上工事業の特徴です。
一方で、内装材の価格は2026年に入り急激に値上がりしています。
壁紙(クロス)は大手2社が2026年7月受注分から18〜30%の価格改定を発表しました。
石膏ボードも大手メーカーが6月出荷分から20%値上げしています。中東情勢によるナフサ・原油高が要因です。
内装仕上工事は工期・見積り期間とも短いことが多い業種です。
それでも短期間に複数回の値上げが重なると、見積り時点の想定原価と実際の仕入価格がずれやすくなります。
店舗業態では、飲食・小売・サービス業の新規出店や業態転換の内装投資も一定の需要を占めます。
居抜き物件を使い、初期投資を抑えて短工期で開業したいというニーズも根強くあります。
オフィスでは「働き方に合わせたレイアウト変更」が主流になりつつあります。
単純な原状回復にとどまらない、付加価値提案の余地が広がっています。
札幌都心部でも再開発にあわせたテナント誘致が進んでいます。新規開業の内装需要は今後も一定水準を保つ見込みです。
2. 経営のポイント|内装仕上工事業が今やるべきこと
ひとことで言うと短工期案件の原価管理、値上げの価格転嫁、B工事・C工事の見極めの3つが利益を左右します。
2-1. 短工期案件の外注管理と原価管理
内装仕上工事は工期が短く、複数の現場を並行して抱えることが多い業種です。
内装大工・クロス職人・電気工事業者などの外注先を、限られた工期内で確実に手配できるかが受注可否を左右します。
繁忙期(新年度前の1〜3月など)は職人の奪い合いが起きやすく、外注単価が上振れしやすくなります。
年間の受注見込みと外注体制を、あらかじめすり合わせておきましょう。
商業施設やオフィスビルでは、営業時間外の夜間工事も多くなります。
深夜労働(22時〜5時)の割増賃金を原価に織り込まないと、受注額の割に利益が残りません。
案件ごとの実行予算と実際原価をリアルタイムで把握できる、原価管理システムの活用も欠かせません。
赤字案件の早期発見や、次回以降の見積り精度の向上につながります。
2-2. 内装材価格の転嫁とセット提案
クロス・石膏ボードの値上げが続く中、旧価格のままの見積りは原価割れのリスクが高まります。
見積り有効期限を短く設定し、材料費・施工費を分けて提示しましょう。価格改定への対応を説明しやすくなります。
施工だけでなく、店舗設計・デザイン提案とセットで受注すれば、価格競争によらない提案が可能になります。
什器・サイン工事等をあわせた一括受注は、粗利率の改善にもつながります。
2-3. B工事・C工事の商流理解とインボイス対応
オフィス・商業施設の内装工事では、B工事・C工事の違いを理解することが商流管理の基本です。
B工事はビルオーナーが施工業者を指定し、費用はテナントが負担する形です。
C工事はテナントが施工業者の選定から発注、費用負担まで行う形です。自社が元請になれる可能性が高くなります。
B工事はオーナー指定業者を経由するため、元請の立場になりにくい点に注意してください。
下請け構造では、免税事業者である一人親方への外注比率が高いほど、インボイス経過措置縮小の影響を受けやすくなります。
取引先ごとの登録状況を棚卸しし、必要に応じて外注単価を見直しましょう。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと短工期工事の収益計上時期と、B工事・C工事の請求区分を正しく整理することが決算の信頼性を支えます。
内装仕上工事業は、短工期・小口の工事が多く、収益計上の時期管理が煩雑になりやすい業種です。
B工事・C工事という特有の商流があること、一人親方への外注が多いことも特徴です。
令和8年度税制改正の各種措置が自社の決算にどう影響するか、事前に把握しておきましょう。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 短工期工事の収益計上時期 | 取引開始から履行義務(=完成・引渡しの約束)を充足するまでの期間がごく短い工事は、完成時点で収益を認識できる | 着工日・完成引渡日を記録し、決算期をまたぐ案件を区分 |
| B工事・C工事の請求区分 | B工事はオーナー指定業者が施工しテナントが費用負担、C工事はテナントが発注から費用負担まで行う | 契約ごとに立場を確認し、請求書・見積書の宛先を整理 |
| 内装材の期末在庫評価 | 値上げ前にまとめ仕入れしたクロス・石膏ボード等は、取得原価で棚卸資産として評価 | 仕入時期・単価が分かる管理を徹底し棚卸表を整備 |
| 一人親方・小規模職人への外注とインボイス | 免税事業者からの仕入税額控除は令和8年10月1日以後、80%控除から70%控除へ縮小 | 外注先の適格請求書発行事業者登録の有無を確認 |
| 少額減価償却資産の特例 | 令和8年4月1日以後取得分は40万円未満に拡充(年合計300万円まで) | 電動工具・測定機器・什器什具の更新に活用 |
| 賃上げ促進税制・防衛特別法人税 | 賃上げ促進税制は+1.5%で税額控除15%、+2.5%で30%。防衛特別法人税は基準法人税額500万円控除後4%(令和8年4月1日以後開始事業年度) | 賃上げ計画と給与集計を連動させ適用可否を試算 |
短工期の案件を多数並行して抱える業種では、案件単位の実行予算・実際原価の管理が粗くなりがちです。
工事台帳を案件ごとに整備し、外注費・材料費の支払いと請求のタイミングを月次で試算表に反映しましょう。
テナント退去時の原状回復では、経年劣化分(貸主負担)と入居者の損耗分(借主負担)の切り分けも重要です。
ガイドラインを踏まえた見積り根拠を示せると、施主・管理会社との交渉が円滑になります。
令和8年1月施行の取適法(=下請の代金支払いを適正化する法律)により、手形払いの禁止や代金の一方的な据え置きの禁止も対象になります。
値上げが相次ぐ中、下請単価の改定が追いついているかを定期的に点検しましょう。
- 2026年4月1日以後開始事業年度防衛特別法人税の課税対象(基準法人税額500万円超の部分)
- 2026年9月30日インボイス2割特例の対象課税期間が終了
- 2026年10月1日免税事業者からの仕入税額控除が70%に縮小。106万円の壁撤廃も同時期
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと原価管理システムの導入から事業承継まで、投資段階に応じて使える補助金がそろっています。
補助金の多くは、投資を実施し実績報告を行った後に交付される「後払い」が原則です。
採択されてから入金までの資金繰りをあらかじめ見込んでおけば、値上げ局面でも安心して投資を進められます。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 内装仕上工事業での使い方 |
|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金2026 | 通常枠最大450万円、補助率1/2(一部引上げあり) | 複数回の公募を予定 | 積算・原価管理システムの導入 |
| 中小企業省力化投資補助金【カタログ注文型】 | 最大1,500万円、補助率1/2〜2/3 | 随時受付(2027年3月末頃まで) | 資材搬送・清掃ロボット等の導入 |
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円) | 第7回:令和8年6月5日要領公開→7月受付 | 3次元測量・BIM等の生産性向上設備 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 通常枠上限50万円+上乗せで最大250万円 | 第20回:受付令和8年11月5日〜12月15日 | 施工事例・提案力のポートフォリオ整備 |
| 事業承継・M&A補助金 | 最大2,000万円 | 15次公募:受付6月中旬〜7月下旬 | 後継者不在企業の第三者承継支援 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと最低賃金の改定と2026年10月の制度変更ラッシュに備え、賃金・安全対策の両面を早めに整えましょう。
北海道の最低賃金は2025年10月に1,075円まで引き上げられました。
令和8年度分は2026年7月時点でまだ審議中です。8月に目安が示され、10月頃に発効する見込みです。
日給制の職人が多い内装仕上工事業では、最低賃金の改定が日当設定や外注単価の見直しに直結します。
「106万円の壁」は令和8年10月1日に賃金要件(月8.8万円)が撤廃されます。
事務職員やパート従業員も社会保険加入の対象が広がる見込みです。働き方への影響を踏まえた説明が必要です。
令和8年10月1日からはカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。
商業施設の管理者やテナント担当者からの過度な要求への対応ルールも整理しておきましょう。
夜間・深夜工事が多い内装仕上工事業では、深夜労働・休日労働の割増賃金の適用管理が欠かせません。
翌日の勤務間インターバルへの配慮も、事故防止と品質確保の両面で重要です。
人手不足倒産のうち「従業員退職型」は2025年に124件と、前年比で約4割増えました。
技能者の定着策として、キャリアアップ助成金を活用した処遇改善の検討価値は高まっています。
電動工具・脚立作業に伴う労働災害の防止と、狭小な現場での複数業種同時作業の安全管理も重要な課題です。
事業承継の観点では、元請・商業施設との取引実績や協力会社ネットワークが事業価値の中心になります。
後継者不在率は中小企業全体で50.1%とされ、中長期の承継計画も課題です。
生成AIの活用も広がっています。中小企業庁の調査では中小企業のAI導入率は20.4%です。
見積書のたたき台作成や積算資料の下準備にAIを活用する動きも出ています。
6. 資金繰り・銀行融資対策|内装仕上工事業
ひとことで言うと短工期案件の入金サイクルと、B工事・C工事による請求先の違いを資金繰り表で管理することが安定経営の土台です。
6-1. 短工期・小口案件の入金サイクル
内装仕上工事は工期が短い分、着工から入金までのサイクルも早い傾向にあります。
ただし、外注職人への支払いが先行し、元請・テナントからの入金が後になる案件も少なくありません。
複数現場を並行して抱えるほど、資金の出入りが把握しにくくなる点に注意してください。
6-2. B工事・C工事による請求先・入金管理の違い
B工事はビルオーナー経由、C工事はテナント直接請求と、案件によって請求先・入金条件が異なります。
案件番号ごとに請求区分と入金予定日を紐づけて管理すると、請求漏れや資金繰りの見込み違いを防げます。
6-3. 内装材まとめ仕入れの資金負担
値上げ前のまとめ仕入れは原価を抑えられる一方、まとまった運転資金が必要になります。
什器・什具のリースやサブスクリプション型の活用も、初期の資金負担を抑える選択肢になります。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと内装仕上工事業は労務・外注比率が高く、材料費の転嫁の遅れが自己資本比率の低下に直結しやすい点に注意が必要です。
内装仕上工事業単独の公表統計は限られるため、以下は日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」の職別工事業(塗装等を含む・黒字企業平均)を参考値として掲載します。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 完成工事高総利益率(粗利率) | 34.2%程度 | 労務・外注主体で総合工事業より高めに出やすい |
| 総資本経常利益率 | 9.4%程度 | 投下資本に対する収益力の目安 |
| 売上高経常利益率 | 3.7%程度 | 財務費用まで含めた総合的な収益力の目安 |
| 自己資本比率 | 23.1%程度 | 内装材の値上げ分の転嫁が遅れると低下しやすい |
| 流動比率 | 271%程度 | 短期の支払能力の目安 |
| 総資本回転率 | 2.7回程度 | 総資本がどれだけ効率的に売上高を生むかの指標 |
| 1人当たり売上高 | 2,431万円程度 | 従業員1人当たりの生産性。デザイン提案力で改善余地あり |
| 借入金回転期間 | 3.4か月程度 | 月商の何か月分の借入があるかを示す目安 |
出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」職別工事業(設備工事業を除く)
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|内装仕上工事業
ひとことで言うと見積りの型化とB工事・C工事の商流確認ができているかどうかが、利益の分かれ目になっています。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに内装材の値上げを見積り単価に反映し、B工事・C工事の商流を再点検しておきましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 内装材の値上げを反映した見積り単価の改定、B工事・C工事の商流・請求区分の再点検 | 内装材価格改定、B工事C工事の商流整理 |
| 2026年10〜12月 | インボイス経過措置(70%控除)への移行確認、繁忙期の外注職人手配計画の策定 | インボイス経過措置、外注管理 |
| 2027年1〜3月 | 決算に向けて短工期案件の収益計上時期を総点検、少額減価償却資産特例の活用状況を確認 | 収益認識、少額減価償却資産の特例 |
| 2027年4〜6月 | 賃上げ促進税制の適用判定、次期繁忙期に向けた受注・資金計画の策定 | 賃上げ促進税制、資金繰り管理 |
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと住宅リフォームや建設業全体の動向もあわせて確認すると、理解がより深まります。
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