最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、訪問看護ステーションを経営する管理者・経理担当の方に向けて、2026年(令和8年)時点の制度動向を税理士事務所の視点で整理したものです。医療保険と介護保険のどちらで請求するかを判定するダブル区分の仕組み、レセプト(=診療報酬・介護報酬の請求書)の入金までのタイムラグが生む資金繰りの課題、オンコール(=夜間・休日の緊急連絡当番)体制の労務管理など、訪問看護ならではの実務論点を中心にまとめています。介護福祉全般ではなく訪問看護に的を絞った内容です。
- 結論を最初に:訪問看護ステーションは全国18,754事業所(令和7年4月時点)。13年間で約3倍に増え、競争と淘汰が同時に進んでいます。
- 令和8年度はダブル改定の年:診療報酬は精神科訪問看護の体制評価やICT連携加算を新設、介護報酬は処遇改善加算率1.8%を新設(R8.6.1施行)しました。
- レセプトの入金は翌々月が基本:サービス提供月から入金まで約2か月かかり、返戻があるとさらに1か月ほど遅れます。
- 廃止・休止は過去最多水準:令和6年度中の廃止886件・休止355件。廃止理由は「従業員確保が困難」が22.7%で最多です。
- 収支差率は10.3%に低下:令和6年度決算で前年度比1.6ポイントの低下。赤字事業所は38.2%に上ります。
1. 業界の今|2026年の訪問看護ステーション動向
ひとことで言うと全国の訪問看護ステーション数は13年間で約3倍に増えた一方、廃止・休止も過去最多水準に達し、競争と淘汰が同時に進んでいます。
全国訪問看護事業協会の調査によると、訪問看護ステーション数は令和7年4月時点で18,754事業所です。前年より1,425事業所増えました。
診療報酬と介護報酬を同時に見直す「ダブル改定」が行われた2012年以降の13年間で、事業所数は約3倍に増加しました。年平均の成長率は8.8%です。
令和6年度中の新規開設は2,487件と過去最高を更新しました。一方で廃止は886件、休止は355件と、こちらも過去最多です。
廃止理由は「従業員確保が困難」が22.7%で最多、次いで「管理者の退職」17.6%、「利用者減少による経営維持困難」14.9%と続きます。
収支差率(=売上に対する利益の割合)は令和6年度決算で10.3%です。全介護サービス平均は上回るものの、前年度比1.6ポイント低下し、赤字事業所は38.2%に上ります。
令和8年度は診療報酬・介護報酬のダブル改定の年でもあり、両制度の改定内容を正しく把握することが2026年の経営課題です。
2. 経営のポイント|訪問看護ステーションが今やるべきこと
ひとことで言うと利用者ごとに医療保険と介護保険のどちらで請求するかを正しく見極めることが、レセプト返戻を防ぎ資金繰りを安定させる第一歩です。
2-1. 医療保険と介護保険のダブル区分を正しく判定する
訪問看護は、利用者の年齢や病状によって医療保険と介護保険のどちらで請求するかが変わる、他の医療サービスにはない特徴があります。
65歳以上の方、または40〜64歳で特定疾病により要介護認定を受けている方は、原則として介護保険が優先されます。
末期の悪性腫瘍や難病など厚生労働大臣が定める疾病、または急性増悪等で特別訪問看護指示書(=集中的な訪問を認める医師の指示書)が交付された場合は医療保険に切り替わります。
判定を誤ると保険者への請求が通らず、レセプトの返戻・査定につながります。利用者ごとに適用区分をカルテと台帳で明確に管理しましょう。
2-2. 令和8年度ダブル改定への対応
令和8年度は診療報酬(6月施行)と介護報酬(同年6月1日施行)を同時に見直す「ダブル改定」の年です。
診療報酬では、機能強化型訪問看護管理療養費に精神科訪問看護の体制評価区分が新設されました。
ICTで記録を関係機関と共有する体制を評価する「訪問看護医療情報連携加算」も新設され、ベースアップ評価料も引き上げられています。
介護報酬では、訪問看護の介護保険分に加算率1.8%の処遇改善加算が新設されました。従来は対象外だった訪問看護にも処遇改善の原資が入ります。
月1万円程度の賃金底上げにつながる原資とされ、R8年6月1日から施行されています。
2-3. 機能強化型・重症患者の受け入れで収益基盤を強化する
精神科訪問看護や重症患者の受け入れを広げ、機能強化型訪問看護管理療養費の算定要件を満たせば、管理療養費の単価が底上げされます。
24時間対応体制や重症者の受け入れ実績、他機関との連携実績などが要件です。段階的に体制を強化する計画を立てましょう。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと訪問看護は消費税法施行令上の非課税取引にあたる一方、車両費や医療材料費など課税仕入れの管理が原価計算の精度を左右します。
訪問看護は消費税法施行令上の非課税取引(居宅サービス)にあたります。サービス提供の売上には消費税がかかりません。
一方で、車両費・燃料費・医療材料費など課税仕入れは消費税を支払っていても控除対象外消費税として原価・経費側で管理する必要があります。
簡易課税を選択できるかどうかは、課税売上高や事業区分によって有利不利が変わります。決算前に試算して判断しましょう。
レセプトは医療保険分・介護保険分をそれぞれ別の様式・別のスケジュールで提出します。提出後の返戻・査定への対応が経理事務の負担になりがちです。
月次でレセプトの提出状況と入金予定を管理台帳にまとめておくと、決算時の未収金残高の確認もスムーズになります。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 消費税の非課税取引 | 訪問看護は居宅サービスとして消費税法施行令上の非課税取引 | 課税仕入れは控除対象外消費税として原価・経費管理 |
| 医療保険・介護保険のレセプト | 利用者ごとに適用区分を判定し、別様式・別スケジュールで請求 | 台帳で適用区分と提出状況を月次管理 |
| 診療報酬改定(R8.6施行) | 精神科体制評価区分・医療情報連携加算を新設、ベースアップ評価料引上げ | 算定要件と単価改定を記録システムに反映 |
| 介護報酬改定(R8.6.1施行) | 訪問看護の介護保険分に処遇改善加算率1.8%を新設 | 賃金改善計画の策定・実績報告の準備 |
| 少額減価償却資産の特例 | R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(年300万円まで) | 電子カルテ・血圧計等の更新に活用 |
| 簡易課税制度の選択 | 課税売上高等の要件を満たせば選択可能 | 本則課税との有利不利を決算前に試算 |
- 2026年4月1日以後に開始する事業年度防衛特別法人税の課税対象に(基準法人税額から500万円を控除した部分に税率4%)
- 2026年6月診療報酬改定を施行。精神科訪問看護の体制評価区分・訪問看護医療情報連携加算を新設
- 2026年6月1日介護報酬改定を施行。訪問看護の介護保険分に処遇改善加算率1.8%を新設
- 2026年10月1日免税事業者からの仕入税額控除が70%に縮小。「106万円の壁」も同時期に撤廃
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うとICT記録システムの導入から賃上げ、事業承継まで、訪問看護ステーションの成長段階に応じて使える支援策が幅広くそろっています。
訪問看護ステーションでは、記録・請求システムやICT連携機器の導入に使える補助金の活用余地が大きく、要件整理や資金計画づくりを税理士がサポートできます。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 訪問看護での使い方 |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円)、補助率中小1/2・小規模2/3 | 第7回:R8.6.5要領公開→7月受付→採択11月頃 | 記録・請求システム、ICT連携機器、訪問車両管理システムの導入 |
| 業務改善助成金 | 賃上げ額別3コース、最大600万円 | R8年度受付:R8.9.1開始 | 看護職員・事務職員の賃上げ原資とICT機器導入 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 通常枠上限50万円+上乗せ最大250万円、補助率2/3(赤字事業者3/4) | 第20回:R8.11.5〜12.15受付 | 採用広報・地域連携ツールの整備 |
| 福祉医療機構(WAM)福祉貸付 | 新設・増改築・設備資金の融資、長期固定金利 | 随時相談受付 | 開業資金・車両・電子カルテ更新資金 |
| キャリアアップ助成金 | 正社員化コース等、対象者1人当たり定額支給 | 随時(要件見直しあり) | 非常勤看護師・介護職の正社員転換 |
| 事業承継・M&A補助金 | 上限数百万円規模、補助率1/2〜2/3 | 公募回により変動(年数回) | 後継者不在の小規模ステーションの円滑な譲渡 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと看護師の有効求人倍率はおおむね2倍前後の高水準が続いており、オンコール体制の負担軽減が採用・定着の分かれ目になっています。
看護師の有効求人倍率はおおむね2倍前後の高水準が続いています。
人材紹介会社を使う採用では、手数料が常勤看護師1人あたり年収の20〜30%程度、数十万円〜100万円超に達することもあります。
紹介手数料への依存度が高いと、離職のたびに高額な手数料が発生し、利益を圧迫する悪循環に陥りやすくなります。
「106万円の壁」はR8.10.1に賃金要件(月8.8万円)が撤廃され、パート職員の社会保険加入対象が広がる見込みです。
北海道の最低賃金は2025年10月に1,075円に改定されました(全国加重平均は1,121円)。日給・時給で働く非常勤職員の処遇に直結します。
オンコール(=夜間・休日の緊急連絡当番)体制は訪問看護特有の負担であり、管理者一人に集中させない輪番制の設計が離職防止の鍵です。
手当の設計だけでなく、当番の頻度・引き継ぎ体制・代替要員の確保をルール化しておくことが、持続可能な体制づくりにつながります。
6. 資金繰り・銀行融資対策|訪問看護ステーション
ひとことで言うとレセプトの入金はサービス提供月の翌々月が基本で、返戻があるとさらに1か月ほど遅れるため、資金繰り表での先読みが欠かせません。
6-1. レセプト請求と入金までのタイムラグ
訪問看護の売上は、サービスを提供した月の翌々月に入金されるのが基本です。人件費・経費の支払いが先行しやすい構造です。
記載内容に不備があり返戻(=差し戻し)になると、再請求からさらに約1か月、入金が遅れます。
開業直後や急成長期は、利用者が増えるほど未収金も増えるため、黒字であっても資金がショートしやすい点に注意してください。
6-2. 資金調達の選択肢
福祉医療機構(WAM)の福祉貸付は、訪問看護事業の新設・増改築・設備資金に長期固定金利で対応しています。開業資金や車両購入資金に活用できます。
日本政策金融公庫の創業融資も、開業時の運転資金・設備資金の主要な選択肢です。自己資金と事業計画の精度が審査のポイントになります。
レセプトの入金までのタイムラグを埋める手段として、診療報酬・介護報酬債権を早期資金化するファクタリングを使うステーションもあります。
6-3. 金融機関が見るポイント
金融機関は、看護職員数(常勤換算)と稼働率、レセプトの返戻率を事業の安定度の目安として見ています。
人材紹介会社への依存度が高いと採用コストが読みにくくなるため、直接採用・定着の実績も評価対象になります。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと収支差率は10%前後が目安で、緊急時訪問看護加算や特別管理加算など体制を示す加算の届出・算定割合が経営の安定度を映します。
以下は公表統計や業界データをもとにした訪問看護ステーションの経営指標の目安です。自社の数値と比較する際の参考にしてください。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 収支差率(税引前) | 10%前後(令和6年度決算平均10.3%) | 前年度比1.6ポイント低下。低下傾向が続けば原価・人件費構造の見直しが必要 |
| 給与費比率 | 70%台半ば | 看護職員中心の人件費集約型の事業構造を反映 |
| 常勤換算看護職員数5人以上の割合 | 全体の4割超 | 機能強化型の要件にも関わる規模の目安 |
| 緊急時訪問看護加算の届出割合 | 8割超 | 24時間対応体制の整備状況を示す指標 |
| 特別管理加算の算定割合 | 7割前後 | 重症度の高い利用者の受け入れ状況を示す |
| ターミナルケア加算の算定割合 | 1割前後 | 看取り対応の体制構築が今後の伸びしろになりやすい |
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|訪問看護ステーション
ひとことで言うとオンコール対応の負担を輪番制で分散できるか、レセプト管理を仕組み化できるかが、訪問看護ステーション経営の大きな分かれ目です。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。自社の管理体制と照らし合わせてご覧ください。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに医療保険・介護保険の区分マニュアルを整え、ダブル改定への対応と記録システムの更新を優先しましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 医療保険・介護保険の区分マニュアルを整備し、ダブル改定の算定要件を確認 | 診療報酬改定、介護報酬改定 |
| 2026年10〜12月 | 免税事業者からの仕入税額控除縮小・106万円の壁撤廃を踏まえた人件費の再試算 | インボイス制度、社会保険適用拡大 |
| 2027年1〜3月 | 決算に向けてレセプト未収金・返戻状況を総点検、少額減価償却資産特例の活用状況を確認 | 消費税非課税取引、少額減価償却資産の特例 |
| 2027年4〜6月 | オンコール輪番制の運用状況を再点検し、次年度の採用・定着計画を策定 | 処遇改善加算、キャリアアップ助成金 |
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと訪問看護の制度は医療保険・介護保険の制度全体や税制改正、補助金の動向ともつながるため、あわせて確認しておくと理解が深まります。
訪問看護ステーションの経営・税務は、実務に強い税理士へ
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対象:訪問看護ステーションを運営する法人・個人事業主の方(オンライン対応可・初回相談無料)
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