最終更新:2026年7月27日(令和8年度対応)
このページは、警備業(施設警備・雑踏警備・交通誘導警備・機械警備等)を経営する社長・管理者の方に向けて、2026年(令和8年)時点の制度動向を税理士事務所の視点で整理したものです。検定資格者の確保、外注警備員の給与認定リスク、公共工事設計労務単価の引上げ、機械警備市場の拡大など、警備業ならではの実務論点を中心にまとめています。常用・臨時を問わず、幅広い警備業態の経営に役立つ内容です。
- 結論を最初に:警備員数は58.8万人(令和6年12月末)で前年より2,980人増えました。ただし60歳以上が47.0%を占め、高齢化が進んでいます。
- 検定資格者の確保が受注力を左右:交通誘導警備・雑踏警備の一部業務は検定合格警備員の配置が必須です。資格者不足は受注機会の喪失に直結します。
- 外注警備員は給与認定リスクに注意:指揮命令下で働く実態があれば、税務上は外注費でなく給与とみなされます。契約実態の整理が必須です。
- 公共工事設計労務単価は14年連続上昇:令和8年3月適用分は全国全職種単純平均で前年度比4.5%増。交通誘導警備の料金交渉の根拠になります。
- 防衛特別法人税は令和8年4月1日以後開始事業年度から:基準法人税額から500万円を控除した額の4%が課税対象です。
1. 業界の今|2026年の警備業動向
ひとことで言うと警備員数は増えても高齢化が同時に進んでおり、資格者の確保と料金交渉を両立できるかどうかが、2026年の警備業経営の明暗を分けます。
警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、警備員数は58.8万人(令和6年12月末時点)で、前年より2,980人増えました。
内訳は常用警備員が53万6,220人、臨時警備員が5万1,628人です。臨時警備員の比率は8.8%で、繁忙期の増員に一定の柔軟性があります。
認定業者数は1万811業者(前年比+137業者・1.3%増)でした。1業者あたりの平均警備員数は約54人で、小規模事業者が多い業界です。
一方で高齢化は深刻です。60歳以上が47.0%、65歳以上が34.3%、70歳以上も20.9%を占め、平均年齢は52.9歳に達しています。
女性警備員は4万3,077人で全体の7.3%です。施設警備や雑踏警備など、女性が活躍しやすい業務での採用余地はまだ残っています。
市場全体では、全国警備業協会の調査で市場規模は約3.4兆円とされています。イベントの開催増や再開発工事が追い風になっています。
機械警備の分野も拡大しています。住宅向けホームセキュリティの導入戸数は2024年末時点で約185万戸に達しました。
防犯設備機器の国内市場規模は約5,845億円(前年度比109.0%)です。人手不足を補う手段として、機械警備との組み合わせが進んでいます。
2. 経営のポイント|警備会社経営者が今やるべきこと
ひとことで言うと検定資格者の確保、配置基準の順守、機械警備との組み合わせという3つの打ち手を並行して進めることが、受注力と利益率の両方を高めます。
2-1. 検定資格者の確保と配置基準の順守
警備業法に基づく検定制度(=知識・技能を公安委員会が認定する資格)があり、交通誘導警備・雑踏警備の一部業務では検定合格警備員の配置が義務です。
警視庁の基準では、一定規模以上の現場に検定合格警備員1名以上の配置が求められます。配置基準を見落とすと公安委員会の指導対象になります。
検定資格者は受注の武器にもなります。有資格者が多い会社ほど、大型現場や継続案件を受注しやすい傾向があります。
2-2. 新任教育・現任教育の徹底
警備員には新任教育20時間以上、現任教育は年10時間以上が義務付けられています。教育記録の未整備は行政処分の対象になり得ます。
教育時間を人材育成の投資と捉え、検定取得のカリキュラムと連動させれば、資格者比率を効率よく高められます。
2-3. 機械警備との組み合わせで人員を再配置
夜間巡回や施設警備の一部は、機械警備(センサー・カメラによる遠隔監視)に置き換えることで人員負担を減らせます。
浮いた人員を検定資格が必要な現場や、単価の高い交通誘導警備に再配置すれば、限られた人材で利益率を改善できます。
3. 税務・会計の留意点(令和8年度)
ひとことで言うと外注警備員が税務上どう扱われるかという給与認定リスクと、令和8年度の税制改正への対応が、警備業の決算の信頼性を大きく左右します。
警備業は外注警備員(一人親方的な個人事業者)を活用する会社も多く、契約実態が税務上どう扱われるかに注意が必要です。
指揮命令下で働き、勤務時間や配置場所を会社が指定している実態があれば、外注費ではなく給与と認定されるリスクがあります。
給与認定されると、消費税の仕入税額控除が否認され、源泉徴収義務も遡って発生します。契約書と実際の働き方を一致させてください。
令和8年度税制では、防衛特別法人税が始まります。令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から500万円を控除した額の4%が課税されます。
中小の警備会社の多くは法人税額が小さいため、実際の負担は軽微か発生しないケースが大半です。ただし申告の要否は必ず確認しましょう。
インボイス2割特例はR8.9.30を含む課税期間で終了します。個人事業者は続けてR9・R10年分は3割特例が使えます。
少額減価償却資産の特例は、R8.4.1以後取得分から上限が40万円未満に拡充されました(年合計300万円まで)。無線機・防犯カメラの更新に活用できます。
賃上げ促進税制は中小企業向けが継続しており、控除しきれない金額は5年間繰り越せます。人件費比率が高い警備業と相性の良い制度です。
| 項目 | 内容 | 実務対応 |
|---|---|---|
| 外注警備員と給与の区分 | 指揮命令下での勤務実態があれば税務上は給与と認定されるリスク | 契約書と実際の勤務実態を一致させ、指揮系統を明確化 |
| 教育義務の記録 | 新任20時間以上・現任は年10時間以上の教育が必要 | 教育記録を整備し行政処分・税務調査の双方に備える |
| 深夜割増賃金 | 22時〜5時の勤務は25%以上の割増賃金が必要 | シフト表と給与計算での割増計算を突合 |
| 防衛特別法人税 | R8.4.1以後開始事業年度から、基準法人税額-500万円×4% | 申告要否を顧問税理士と確認 |
| インボイス2割特例の終了 | R8.9.30を含む課税期間で終了(個人はR9・R10年分3割特例) | 外注警備員(一人親方)の登録状況を確認 |
| 少額減価償却資産の特例 | R8.4.1以後取得分は40万円未満に拡充(年300万円まで) | 無線機・防犯カメラ・端末更新に活用 |
- 2026年3月公共工事設計労務単価が改定。全国全職種単純平均で前年度比4.5%上昇し、交通誘導警備等の積算根拠になります
- 2026年4月1日以後開始事業年度防衛特別法人税の課税対象に(基準法人税額から500万円を控除した額の4%)
- 2026年9月30日インボイス2割特例の対象課税期間が終了
- 2026年10月1日「106万円の壁」の賃金要件が撤廃、免税事業者からの仕入税額控除は70%に縮小
- 2026年10月頃カスタマーハラスメント対策の義務化、各都道府県の最低賃金改定の発効見込み
4. 使える補助金・助成金・支援策(2026年)
ひとことで言うと省力化投資から賃上げ対応まで、警備業が抱える人手不足という課題に直結する補助金・助成金が、2026年も複数そろっています。
警備業は人件費比率が高く労働集約的なため、省力化投資や賃上げ関連の補助金・助成金の活用余地が大きい業種です。
機械警備機器やICT点呼システムの導入は、中小企業省力化投資補助金の対象になり得ます。要件確認や資金計画は税理士が支援できます。
賃上げに伴う採用力強化には業務改善助成金やキャリアアップ助成金が使えます。いずれも社会保険労務士が専門の申請代行分野です。
| 制度 | 上限・補助率 | 直近スケジュール | 警備業での使い方 |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金【一般型】 | 750万〜8,000万円(賃上げ特例で最大1億円)、補助率1/2〜2/3 | 第7回:R8.6.5要領公開→7月受付 | 機械警備機器・ICT点呼システムの導入 |
| 業務改善助成金 | 3コースで最大600万円 | R8.9.1受付開始 | 最低賃金引上げにあわせた設備投資と賃金改善 |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース等) | 1人あたり最大80万円程度(要件により変動) | 随時申請可能 | 臨時警備員・パート警備員の正社員転換 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万円(上乗せで250万円)、補助率2/3 | 第20回:R8.11.5〜12.15受付 | 採用広報・研修設備の整備 |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 4,000万円級、最低賃金引上げ特例あり | 第1回:締切R8.9.30 18:00 | 機械警備等の新サービス展開 |
5. 労務・人材の最新論点
ひとことで言うと最低賃金の毎年の上昇と「106万円の壁」撤廃という2つの変化に備え、資格手当を含む賃金体系の見直しを2026年中に進めましょう。
北海道の最低賃金は令和7年10月4日に1,075円へ改定されました。前年比65円・6.44%の大幅な引上げです。
令和8年度の最低賃金は、2026年7月下旬時点でまだ答申が確定していません。2026年8月に答申、10月頃発効の見込みです。
日給・時給制の警備員が多い業界では、最低賃金の引上げが人件費増に直結します。料金転嫁の交渉と同時進行で進めましょう。
「106万円の壁」は2026年10月に賃金要件(月8.8万円)が撤廃されます。週20時間要件は残るため、シフトの組み方に影響します。
深夜勤務が多い警備業では、22時〜5時の深夜割増賃金(25%以上)の計算誤りが労基署の是正勧告につながりやすい点にも注意してください。
新任教育20時間以上・現任教育年10時間以上は、教育記録の不備が行政処分の対象になります。教育計画表を整備しましょう。
検定資格者の高齢化も課題です。60歳以上が47.0%を占める中、若手・女性警備員の採用と資格取得支援が定着率を左右します。
人手不足倒産のうち、後継者不在が理由の倒産割合は帝国データバンクの調査で50.1%です。事業承継の準備も並行して進めてください。
6. 資金繰り・銀行融資対策|警備業
ひとことで言うと給与を毎月確実に支払う一方で入金までにはタイムラグがある構造を理解し、資金繰り表で管理することが警備業の安定経営の土台になります。
6-1. 給与支払いと入金サイトのタイムラグ
警備業は人件費が売上高の70〜80%程度を占める労働集約型です。給与は毎月確実に支払う必要があります。
一方で取引先からの入金は月末締め翌月払い等が一般的で、支払いと入金の間にタイムラグが生じやすい構造です。
イベント警備等で臨時警備員を増員する場合、増員分の給与を立て替えてから入金を受けるまでの資金負担が大きくなります。
6-2. 融資制度の活用
日本政策金融公庫の一般貸付・新規開業資金は、警備業の運転資金・設備資金の調達手段として使いやすい制度です。
信用保証協会の保証付融資(セーフティネット保証等)を組み合わせれば、金融機関からの借入枠を広げやすくなります。
当座貸越枠を確保しておけば、給与支払日と入金日のタイムラグによる一時的な資金不足に備えられます。
6-3. 金融機関が見るポイント
金融機関は、人件費比率・売上債権回転期間・臨時警備員比率を重視します。臨時比率が高すぎると収益の安定性を疑われやすくなります。
検定資格者数や大口契約の継続年数、行政処分の有無も審査のポイントです。資格者比率の高さは信用力の裏付けになります。
7. 経営指標の目安(KPIベンチマーク)
ひとことで言うと人件費比率と臨時警備員比率という2つの指標のバランスを他社水準と比較し、資格者育成と料金交渉のどちらを優先すべきか判断しましょう。
以下は警察庁・全国警備業協会の公表統計等をもとにした、警備業の経営指標の目安です。自社の実績と比較する際の参考にしてください。
| 指標 | 目安 | 見方 |
|---|---|---|
| 人件費比率(売上高比) | 70〜80%程度 | 労働集約型の警備業に特有の水準。上昇局面では料金転嫁の可否が利益を左右する |
| 臨時警備員比率 | 8.8%程度(全国平均・令和6年) | 繁忙期対応の柔軟性を示す。高すぎると収益の安定性に疑問符がつく |
| 公共工事設計労務単価の伸び率 | +4.5%程度(R8.3改定・14年連続上昇) | 交通誘導警備等の料金交渉における客観的な根拠になる |
| 60歳以上の就業者比率 | 47.0%程度(令和6年) | 資格者・熟練者の高齢化の進み具合を示す。若手採用の急務度に直結 |
| 女性警備員比率 | 7.3%程度(令和6年) | 採用市場の広さを示す指標。施設警備等での活躍余地が残る |
| 1業者あたり平均警備員数 | 約54人程度(58.8万人÷1万811業者) | 業界は小規模事業者が多い。規模拡大時の目安として参考になる |
出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」、全国警備業協会「警備業の概況」
8. 成功事例と失敗事例に学ぶ|警備業
ひとことで言うと検定資格者を計画的に育成できているか、外注契約の実態を整理できているかという2点が、警備会社の業績の明暗を分けています。
実際の現場で繰り返し見られるパターンを、守秘義務に配慮して一般化したモデルケースとして紹介します。自社の管理体制と照らし合わせてご覧ください。
成功事例
失敗事例
※本事例は守秘義務に配慮し、業界で典型的に見られるパターンを一般化・再構成したモデルケースです。特定の企業・個人の事実を示すものではありません。
9. 今後12か月のアクションチェックリスト
ひとことで言うと2026年7〜9月のうちに最低賃金改定を見据えた料金転嫁交渉を始め、同年10月に集中する複数の制度変更にあらかじめ備えましょう。
| 時期 | やること | 関連制度 |
|---|---|---|
| 2026年7〜9月 | 最低賃金改定の目安を注視し料金転嫁交渉を開始、インボイス2割特例終了前の請求書運用を再確認 | 最低賃金改定、インボイス2割特例 |
| 2026年10〜12月 | 「106万円の壁」撤廃・最低賃金改定を踏まえた人件費の再試算、少額減価償却資産特例の活用検討 | 106万円の壁、少額減価償却資産の特例 |
| 2027年1〜3月 | 決算に向けて外注警備員の契約実態を総点検、防衛特別法人税の申告要否を確認 | 外注費の給与認定リスク、防衛特別法人税 |
| 2027年4〜6月 | 省力化投資補助金等の公募スケジュールを確認し機械警備導入を検討、賃上げ促進税制の適用判定 | 中小企業省力化投資補助金、賃上げ促進税制 |
10. 関連情報・よくある質問
ひとことで言うと警備業に関わる制度は、建設業や税制・補助金といった他分野の動向ともつながっているため、あわせて確認しておくと理解が深まります。
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