第4章 勘定科目・仕訳辞典 I — 貸借対照表科目|会計事務所 実務ハンドブック

現金預金から純資産まで、貸借対照表科目を科目別に整理。使う場面・判断のポイント・頻出仕訳・消費税の課税区分・税務上の留意点・よくあるミスを一覧化。

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CHAPTER 04
勘定科目・仕訳辞典 I — 貸借対照表科目
この章の内容(勘定科目別)
  1. 1. この辞典の使い方と消費税区分課税・非課税・免税・不課税・対象外の表記と、残高照合の3ステップ
  2. 2. 流動資産19項目現金小口現金普通預金・当座預金・定期預金受取手形電子記録債権売掛金契約資産有価証券商品・製品・原材料・仕掛品(棚卸資産)前渡金(前払金)前払費用未収入金(未収金)未収収益立替金仮払金仮払消費税等短期貸付金繰延税金資産貸倒引当金
  3. 3. 固定資産18項目建物建物附属設備構築物機械装置車両運搬具工具器具備品土地リース資産建設仮勘定一括償却資産ソフトウェアのれん(営業権)電話加入権敷金・保証金(差入保証金)長期前払費用出資金・投資有価証券保険積立金長期貸付金
  4. 4. 繰延資産2項目創立費・開業費・開発費税法固有の繰延資産
  5. 5. 流動負債14項目支払手形電子記録債務買掛金未払金未払費用未払法人税等未払消費税等預り金(源泉所得税・住民税・社会保険)前受金前受収益仮受金仮受消費税等短期借入金賞与引当金
  6. 6. 固定負債6項目長期借入金社債リース債務退職給付引当金役員退職慰労引当金繰延税金負債
  7. 7. 純資産と資本取引4項目資本金・増資資本準備金・その他資本剰余金・減資利益準備金・別途積立金・繰越利益剰余金と剰余金の配当自己株式
  8. 8. 科目をまたぐ重要論点4項目役員貸付金・役員借入金仮払金・立替金の期末残ゼロ運動圧縮記帳(補助金・保険差益)リース取引の全体整理
  9. 9. 期末残高チェックリストとよくある質問期末残高チェックリスト・よくある質問
目次

CHAPTER 04勘定科目・仕訳辞典 I — 貸借対照表科目

B/S科目を「使う場面/判断のポイント/頻出仕訳/消費税の課税区分/税務上の留意点/よくあるミス」の型で並べた辞典。B/S科目は間違えると翌期以降ずっと残る。試算表の1行1行に「この残高の中身は何か」を答えられる状態を作ることが到達点。

1. この辞典の使い方と消費税区分

課税区分は次の5つで表記する。会計ソフトの区分名と揃えておくと、課税売上割合の集計がそのまま使える。

課税
国内で事業者が対価を得て行う資産の譲渡等。標準10%と軽減8%を必ず区別する。
非課税
消費税法別表第二に列挙されたもの。土地の譲渡・貸付け、有価証券の譲渡、利子・保証料、住宅の貸付け、印紙、行政手数料など。課税売上割合の分母には入る。
免税
輸出取引等。税率0%の課税取引で、課税売上割合の分子・分母の両方に入る。
不課税
対価性がない取引。給与、寄附金、受取配当金、保険金、損害賠償金、補助金など。課税売上割合の計算に入らない。
対象外
会計ソフト上の呼び名。本章では不課税と同義で用い、資金移動や振替仕訳に使う。
  1. STEP1 裏付け資料を決める
    預金は通帳、売掛金は得意先元帳と請求書控、借入金は返済予定表。科目ごとに「これと合えば正しい」資料を固定する。
  2. STEP2 差額を1件ずつ潰す
    時期ズレ・計上漏れ・二重計上のいずれかに必ず分類する。原因不明のまま雑損失に落とさない。
  3. STEP3 一時科目を残さない
    仮払金・仮受金・立替金・前渡金は、期末に中身が説明できないなら本来の科目へ振り替える。

2. 流動資産

現金

使う場面 手許現金の受払い。判断のポイント 現金出納帳の残高と実査額が一致することが絶対条件。マイナス残高の試算表は、その時点で処理誤りが確定している。

借方科目金額貸方科目金額摘要
現金200,000普通預金200,000引出し(対象外)
消耗品費3,300現金3,300文具購入(課税10%・税込)

消費税 受払い自体は対象外。支出内容ごとに区分する。税務上の留意点 過大な現金残高は「実際は社長が持っている=役員貸付金」と見られ、売上除外の疑いにも直結する。実査で説明できる水準まで落とす。

よくあるミス 領収書のない支出を現金で処理し、期末残高が数百万円になる。以後は社長個人の立替えを未払金または役員借入金で受ける運用に変える。

小口現金

使う場面 部門・店舗に定額資金を前渡しし定期補給する定額資金前渡制。判断のポイント 経理担当が1人しかいない規模で立てると現金と二重管理になるだけ。使うなら「支出報告額=補給額」を毎回確認し、定額を崩さない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
小口現金100,000普通預金100,000定額前渡(対象外)
旅費交通費42,000小口現金68,000報告受領(課税10%)
通信費26,000(課税10%)
小口現金68,000普通預金68,000補給(対象外)

消費税 前渡・補給は対象外、報告時の各費用で判定する。

普通預金・当座預金・定期預金

使う場面 金融機関口座の受払い。口座ごとに補助科目を必ず作る。判断のポイント 当座借越でマイナス残高になったものは短期借入金へ組み替える。満期が決算日の翌日から1年を超える定期預金は長期性預金として固定資産に区分する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金8,469受取利息10,000利息入金(非課税)
法人税等1,531源泉所得税15.315%(対象外)
支払手数料440普通預金440振込手数料(課税10%・税込)

消費税 入出金は対象外、受取利息は非課税売上(分母に算入)、振込手数料は課税仕入れ。税務上の留意点 預金利息の源泉所得税は所得税額控除の対象で、別表六(一)に記載しないと控除できない。復興特別所得税は令和8年(2026年)時点で2.1%、令和9年(2027年)分以後は1.1%に下がり防衛特別所得税1%が加わる。

注意 ネットバンキングの自動連携は、手入力分との二重計上と税区分の誤りが起きやすい。月末に通帳残高と突合し、自動仕訳ルールの結果を目視確認する。

受取手形

使う場面 売上代金として約束手形を受け取ったとき。判断のポイント 手形記入帳で振出人・金額・満期日・支払場所を管理する。割引・裏書譲渡した分は偶発債務として内訳明細で把握する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
受取手形1,100,000売掛金1,100,000手形受領(対象外)
普通預金1,089,000受取手形1,100,000割引実行
手形売却損11,000割引料(非課税)

消費税 受領・決済は対象外、割引料は利子を対価とする役務提供として非課税仕入れ。

電子記録債権

使う場面 でんさい等で発生記録がされた売上債権。判断のポイント 発生記録の時点で売掛金から振り替える。手形と違い一部だけの分割譲渡・割引ができる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
電子記録債権3,300,000売掛金3,300,000発生記録(対象外)
普通預金1,985,000電子記録債権2,000,000一部を割引
電子記録債権売却損15,000割引料(非課税)

消費税 発生・決済は対象外、割引料は非課税。自社の売上代金として取得した売掛金・受取手形・電子記録債権を譲渡(割引・ファクタリング)した場合、その譲渡対価は課税売上割合の分母に算入しない。分母に5%相当額を算入するのは、有価証券や、他から取得した金銭債権・貸付金等を譲渡した場合である。

売掛金

使う場面 商品・製品の販売、役務提供による営業債権。判断のポイント 計上時期は継続適用している基準(引渡基準・検収基準)に従う。期末近辺の売上は出荷伝票・検収書で引渡日を確認する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
売掛金1,100,000売上高1,000,000掛売上(課税10%)
仮受消費税等100,000税抜経理
普通預金1,099,560売掛金1,100,000入金(対象外)
支払手数料400差引かれた振込手数料(課税10%)
仮払消費税等40

消費税 売上計上時に課税(10%と8%を区別)。値引き・返品は売上に係る対価の返還等として処理し、税込1万円未満の売上返還等は返還インボイスの交付義務が免除される(恒久措置)。

よくあるミス 得意先別補助元帳の消込みができておらず、総額は合っていても内訳が合わない。月次で補助残高一覧を出し、マイナス残高と長期滞留を潰す。

契約資産

使う場面 収益は認識したが請求権が法的に確定していない部分。工事の未請求分など。判断のポイント 請求できる状態なら売掛金、条件付きなら契約資産。中小企業は収益認識会計基準の適用が強制されず従来処理を継続してよい。税務上は法人税法第22条の2により引渡し・役務提供の日に益金算入する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
契約資産4,000,000売上高4,000,000進捗に応じた収益(税抜)
売掛金4,400,000契約資産4,000,000請求書発行時に振替
仮受消費税等400,000課税10%

消費税 課税時期は資産の譲渡等の時。会計上の契約資産計上時とずれることがあるため、仮受消費税等の計上時期に注意する。

有価証券

使う場面 売買目的や一時所有の株式・債券。1年超の保有目的は投資有価証券へ。判断のポイント 売買目的有価証券は時価評価し評価損益が益金・損金。その他有価証券・満期保有目的は税務上は原価のままで、評価差額を計上したら申告調整が必要。非上場株式は原則原価。

借方科目金額貸方科目金額摘要
有価証券2,000,000普通預金2,011,000株式取得(非課税仕入れ)
支払手数料10,000売買手数料(課税10%)
仮払消費税等1,000
普通預金2,300,000有価証券2,000,000売却(非課税売上)
有価証券売却益300,000

消費税 譲渡は非課税で、課税売上割合の分母には譲渡対価の5%(この例は115,000円)を算入する。売買手数料は課税仕入れ(個別対応方式では非課税売上対応)。

商品・製品・原材料・仕掛品(棚卸資産)

使う場面 販売目的の資産とその製造過程にある資産。判断のポイント 評価方法は届出により選定し、届出がない場合の法定評価方法は最終仕入原価法。低価法の採用にも届出が必要で、届出なしの評価損は損金にならない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
期首商品棚卸高3,000,000商品3,000,000期首振戻(対象外)
商品3,600,000期末商品棚卸高3,600,000期末計上(対象外・税抜金額)
棚卸減耗損80,000商品80,000実地棚卸差異(対象外)

消費税 仕入時に課税仕入れとして控除済み。期末棚卸の振替は対象外。税務上の留意点 評価損の損金算入は、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、破損・型崩れ等で通常の方法により販売できないことが明らかな場合に限る。単なる値下がりでは損金にならない。廃棄はマニフェスト・写真で事実を残す。

よくあるミス 未着品・預け在庫・預り在庫の区別ができていない。所有権が自社にあれば倉庫が他社でも自社の棚卸資産、預かっているだけの在庫は含めない。保管場所別の在庫一覧を作らせる。

前渡金(前払金)

使う場面 仕入れや外注に対し引渡し前に支払った手付金・内金。判断のポイント 前払費用(継続的役務の前払い)とは別物。前渡金は「物や成果物をまだ受け取っていない」状態。

借方科目金額貸方科目金額摘要
前渡金550,000普通預金550,000手付金支払(対象外)
仕入高2,000,000前渡金550,000納品時(課税10%)
仮払消費税等200,000買掛金1,650,000

消費税 支払時は対象外。課税仕入れの時期は引渡し・役務提供完了の時であり、手付金支払時に控除はできない。

よくあるミス 手付金の支払時に請求書が来たからと課税仕入れを計上する。期をまたぐ大型発注で控除時期が1年ずれる。

前払費用

使う場面 保険料・家賃・保守料など継続的役務の未経過分。判断のポイント 原則は期間按分。ただし支払日から1年以内に提供を受ける役務で、継続して支払時に損金経理しているものは短期前払費用として支払時の損金にできる。利益が出た年だけ使うことはできない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
前払費用70,000保険料70,000未経過7か月分を繰延(非課税)
地代家賃660,000普通預金660,000翌1年分前払・短期前払費用(課税10%)

消費税 短期前払費用として損金算入したものは、支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしてよい。会計・法人税・消費税の処理時期を揃える。

注意 借入金の支払利息も対象になるが、その借入金を預金・有価証券等に運用する場合の支払利息のように、収益の計上と対応させる必要があるものは短期前払費用の対象外(法人税基本通達2-2-14(注))。売上原価性のあるものや、等質・等量のサービスといえないものも対象外。雑誌の年間購読料、事務所家賃、保守契約料が典型的な適用対象。

未収入金(未収金)

使う場面 営業取引以外の債権。固定資産売却代金、保険金、助成金など。税務上の留意点 補助金・助成金は原則として交付決定通知を受けた日の属する事業年度の益金。決算直前の交付決定は、入金が翌期でも当期の益金になる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
未収入金1,200,000雑収入1,200,000助成金の交付決定(不課税)
未収入金2,200,000車両運搬具1,500,000車両売却(課税10%)
仮受消費税等200,000
固定資産売却益500,000

消費税 元の取引の区分に従う。助成金・保険金は不課税、固定資産売却は課税(土地部分は非課税)。

未収収益

使う場面 時の経過に応じて発生し、決算日までに提供済みで未入金のもの。受取利息・受取家賃など。判断のポイント 単発の売却代金は未収入金、継続的契約から日々発生するものは未収収益。

借方科目金額貸方科目金額摘要
未収収益150,000受取家賃150,000事業用家賃の未収(課税10%)
未収収益20,000受取利息20,000貸付金利息の経過分(非課税)

消費税 家賃は事業用なら課税、居住用は非課税。貸付金利息は非課税。

立替金

使う場面 取引先・役員・従業員が負担すべき費用を一時的に肩代わりしたとき。判断のポイント 「本来誰が負担すべきか」で判定する。回収予定が立たない立替金は、給与や寄附金と見られるおそれがある。

借方科目金額貸方科目金額摘要
立替金33,000普通預金33,000取引先負担の運賃立替(対象外)

消費税 立替払いは自己の課税仕入れではないため対象外。立替金として精算する限り仕入税額控除はしない。

注意 立替金精算書を作成し相手方名義のインボイスと併せて保存すれば、相手方が仕入税額控除を受けられる。自社が控除するなら自社宛てのインボイスが要る。「立替」か「自社の課税仕入れの上で請求」かを契約段階で決める。

仮払金

使う場面 出張旅費の概算前渡し、内容や金額が確定していない支出。判断のポイント 一時的な置き場所であり、期末に残してはいけない科目。

借方科目金額貸方科目金額摘要
仮払金100,000現金100,000出張旅費概算払(対象外)
旅費交通費78,000仮払金100,000精算(課税10%・国内分)
現金22,000返金

消費税 前渡時は対象外、精算時に費用の性質で判定。海外出張分は不課税または免税になるので国内分と分けて精算書を作らせる。

よくあるミス 領収書が出てこず仮払金のまま数年放置する。回収不能なら役員分は役員給与(定期同額給与にも事前確定届出給与にも該当せず損金不算入かつ源泉徴収の対象)、従業員分は給与になる。放置が最も高くつく。

仮払消費税等

使う場面 税抜経理における課税仕入れに係る消費税相当額。判断のポイント 期末に仮受消費税等と相殺し、差額を未払消費税等へ振り替える。端数差額は雑収入・雑損失で処理する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
仮受消費税等4,800,000仮払消費税等3,100,000期末相殺(対象外)
未払消費税等1,698,300申告額
雑収入1,700端数差額(不課税)

税務上の留意点 控除対象外消費税額等のうち、資産に係るもので課税売上割合80%未満かつ1件20万円以上のものは、繰延消費税額等として60か月で均等償却する(初年度は2分の1)。交際費等に係るものは交際費等の額に加算して損金不算入額を計算する。

注意 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は、2026年(令和8年)10月1日から控除割合が80%から70%に下がる(2028年9月30日まで70%、以後50%、30%と段階的に縮小)。会計ソフトの税区分を取引日ベースで切り替える必要があり、9月中に設定を確認する。

短期貸付金

使う場面 1年以内に返済期限が到来する貸付金。税務上の留意点 無利息貸付けは、相手が役員・株主なら経済的利益の供与、法人間でも寄附金認定のリスクがある。金銭消費貸借契約書で利率・返済期日を定める。

借方科目金額貸方科目金額摘要
短期貸付金3,000,000普通預金3,000,000関係会社への貸付(対象外)
普通預金30,000受取利息30,000利息受取(非課税)

消費税 貸付け・返済は対象外、受取利息は非課税売上。

繰延税金資産

使う場面 将来減算一時差異(賞与引当金、未払事業税、貸倒引当金繰入超過額など)に対する税効果。判断のポイント 中小企業では重要性が乏しければ計上しないことができる。計上するなら回収可能性の検討が必須で、赤字続きの会社では計上できない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
繰延税金資産1,050,000法人税等調整額1,050,000一時差異300万円×実効税率35%(対象外)

消費税 対象外。税務上の留意点 課税所得には一切影響しない。別表四で法人税等調整額を加算・減算して所得から除外する。調整を忘れると所得が過大または過少になる。

貸倒引当金

使う場面 金銭債権の貸倒れに備える評価性引当金。判断のポイント 繰入限度額まで損金算入できるのは資本金1億円以下の中小法人等(大法人の完全子会社等を除く)など。一括評価は法定繰入率と貸倒実績率の有利なほうを選べ、法定繰入率は中小法人等のみ使える。

事業の区分法定繰入率
卸売業および小売業(飲食店業・料理店業を含む)10/1000
製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業、修理業を含む)8/1000
金融業および保険業3/1000
割賦販売小売業、包括信用購入あっせん業、個別信用購入あっせん業13/1000
その他の事業(サービス業、建設業など)6/1000
借方科目金額貸方科目金額摘要
貸倒引当金繰入額360,000貸倒引当金360,000一括評価6,000万円×6/1000(対象外)
貸倒引当金300,000貸倒引当金戻入額300,000前期分の洗替(対象外)

消費税 繰入・戻入とも対象外。貸倒れが生じたとき、課税売上に係る債権なら貸倒れに係る消費税額を控除できる(事実を証する書類の保存が要件)。税務上の留意点 法定繰入率を使う場合は「実質的に債権とみられない部分の金額」を控除する。個別評価は別表十一(一)、一括評価は別表十一(一の二)。

よくあるミス 一括評価の対象債権に前渡金・仮払金・預け金・保証金を含める。これらは金銭債権ではないため対象外。未収入金・立替金・貸付金は対象になる。

3. 固定資産

共通原則を先に押さえる。消費税は取得した課税期間に全額を課税仕入れとして控除し、その後の減価償却費は対象外。法人税の費用配分と消費税の控除時期は連動しない。取得価額には引取運賃・据付費・試運転費など事業供用のために直接要した費用を含める。

資産区分法人の法定償却方法備考
建物定額法平成10年(1998年)4月1日以後取得分は定額法のみ
建物附属設備・構築物定額法平成28年(2016年)4月1日以後取得分は定額法のみ
機械装置・車両運搬具・工具器具備品定率法届出により定額法を選択可
ソフトウェア・のれん等の無形固定資産定額法残存価額ゼロ、月割償却
リース資産(所有権移転外)リース期間定額法残存価額ゼロ、リース期間で均等償却
土地・電話加入権・書画骨とう償却しない時の経過で価値が減少しない資産
根拠 少額判定は取得価額による。10万円未満は取得時に全額損金、10万円以上20万円未満は一括償却資産(3年均等)、それ以上は中小企業者等の少額減価償却資産の特例または通常償却。特例の限度額は2026年3月31日までの取得が30万円未満、2026年4月1日以後の取得が40万円未満で、年間300万円まで(事業年度1年未満は月数按分)。従業員要件は2026年4月1日以後の取得について常時使用する従業員400人以下(従前500人以下)、適用期限は2029年3月31日までの取得分。

建物

使う場面 事務所・工場・店舗・賃貸用建物の取得。判断のポイント 土地と建物の按分が最大の論点。契約書に内訳がなければ固定資産税評価額の比率で按分する。資本的支出と修繕費の区分は、1件20万円未満またはおおむね3年以内の周期の修理なら修繕費、区分が明らかでないものは60万円未満または前期末取得価額のおおむね10%以下なら修繕費にできる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
土地20,000,000普通預金53,000,000土地部分(非課税仕入れ)
建物30,000,000建物部分(課税10%)
仮払消費税等3,000,000
減価償却費1,260,000建物1,260,000耐用年数24年・定額法0.042(対象外)

消費税 建物は課税仕入れ、土地は非課税仕入れ。仲介手数料・司法書士報酬は課税、登録免許税・不動産取得税・印紙税は不課税。

よくあるミス 電気設備・給排水設備・空調などを建物に含めたまま計上する。附属設備は耐用年数が15年前後と短く、分けるだけで償却費が増える。工事見積書の内訳明細を必ず入手する。

建物附属設備

使う場面 電気・給排水・冷暖房設備、昇降機、内装造作。判断のポイント 賃借建物への内装造作は、その造作の種類・用途・材質等を勘案して合理的に見積った年数で償却する。賃借期間が定められ更新できないものは賃借期間を耐用年数にできる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
建物附属設備4,000,000未払金4,400,000店舗内装工事(課税10%)
仮払消費税等400,000

消費税 課税仕入れ。工事完了・引渡しの日の属する課税期間で控除する。

構築物

使う場面 アスファルト舗装、塀、フェンス、看板、屋外給排水設備など。判断のポイント 整地・地ならしなどの造成費は土地の取得価額に算入して償却できないが、アスファルト舗装や砂利敷きは構築物として償却できる。工事内訳で分ける。

借方科目金額貸方科目金額摘要
土地800,000普通預金3,080,000造成・整地費(土地に算入)
構築物2,000,000舗装工事(耐用年数10年)
仮払消費税等280,000課税10%

消費税 工事費用は全額課税仕入れ。土地に算入した造成費も、支出自体は課税仕入れ(非課税なのは土地の購入代金)。

機械装置

使う場面 製造設備、建設機械など。耐用年数表は「設備の種類」ごとの総合耐用年数で、機械単位ではなく設備全体で判定する。税務上の留意点 特定生産性向上設備等投資促進税制の対象なら即時償却または税額控除(7%、資本金3,000万円超の中小企業者等は4%)を選択できる。控除限度は法人税額の20%、適用期限は令和11年(2029年)3月31日。相談は必ず発注前に受ける。

借方科目金額貸方科目金額摘要
機械装置8,000,000普通預金8,800,000本体・据付費・試運転費(課税10%)
仮払消費税等800,000
減価償却費1,600,000機械装置1,600,000耐用年数10年・定率法0.200(対象外)
実務のコツ 償却資産税は1月1日現在の所有資産を1月31日までに申告する。免税点は令和8年度(2026年度)申告では課税標準額150万円未満、令和9年度(2027年度)以後は180万円未満に引き上げられる。

車両運搬具

使う場面 営業車、トラック、フォークリフト。判断のポイント 中古車の耐用年数は簡便法による。法定耐用年数の全部経過なら法定×20%、一部経過なら「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」。1年未満切捨て、2年未満は2年。普通乗用車(法定6年)で4年経過なら「(6−4)+4×0.2=2.8→2年」。

借方科目金額貸方科目金額摘要
車両運搬具2,500,000普通預金2,880,500車両本体・付属品(課税10%)
仮払消費税等251,500
租税公課54,000自動車税・重量税(不課税)
保険料45,000自賠責保険(非課税)
前払費用15,000リサイクル預託金相当(対象外)
支払手数料15,000検査登録・車庫証明の代行料(課税10%)

消費税 本体・付属品・代行手数料は課税、自動車税・重量税は不課税、自賠責保険料は非課税、リサイクル預託金は対象外(廃車時に費用化)。

よくあるミス 支払総額をまとめて車両運搬具に計上する。税金・保険料・預託金が資産に混ざり、償却費も仕入税額控除も過大になる。注文書・精算書の内訳を必ず分解する。

工具器具備品

使う場面 パソコン、複合機、応接セット、測定工具など。判断のポイント 取得価額は「通常1単位として取引される単位」ごとに判定する。応接セットは椅子とテーブルで1組、カーテンは1部屋ごと、本体とモニターを一体で使うなら合計で判定する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
消耗品費98,000普通預金107,80010万円未満・即時損金(課税10%)
仮払消費税等9,800
工具器具備品350,000普通預金385,000少額減価償却資産の特例を適用
仮払消費税等35,000
減価償却費350,000工具器具備品350,000特例による全額損金(対象外)
注意 少額判定は税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で行う。税込経理の会社で本体388,000円(税込426,800円)の資産を買うと、2026年4月1日以後の取得でも40万円以上となり特例が使えない。経理方式の選択が有利不利に直結する。

土地

使う場面 事業用地・駐車場用地の取得。判断のポイント 減価償却しない。仲介手数料は取得価額に算入するが、不動産取得税・登録免許税・登記費用は取得価額に算入せず損金算入することができる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
土地30,000,000普通預金31,626,000購入代金(非課税仕入れ)
土地1,000,000仲介手数料(課税10%)
仮払消費税等100,000
租税公課526,000登録免許税・不動産取得税(不課税)

消費税 土地の譲渡・貸付けは非課税。ただし1か月未満の貸付けと、舗装・区画・フェンス等の駐車場設備を伴う駐車場の貸付けは課税。青空駐車場のまま貸すか整備して貸すかで区分が変わる。

リース資産

使う場面 所有権移転外ファイナンス・リースで賃借した資産。判断のポイント 税務上は売買として扱う。会計上は売買処理が原則だが、中小企業は賃貸借処理も認められる。賃貸借処理でも支払リース料として損金経理した額は償却費に含まれるため、定額で払っている限り申告調整は生じない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
リース資産3,000,000リース債務3,300,000売買処理・総額3,300,000円(課税10%)
仮払消費税等300,000引渡時に一括控除
リース債務55,000普通預金55,000毎月のリース料支払(対象外)
減価償却費600,000リース資産600,000リース期間5年・定額(対象外)

消費税 売買処理では引渡しを受けた課税期間に全額控除する。賃貸借処理の場合はリース料支払時に分割控除する方法も継続適用を条件に認められる。初年度の納税額が大きく変わるため、事務所ルールとして統一する。

補足 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」により、借手がすべてのリースについて資産・負債を計上する取扱いが令和9年(2027年)4月1日以後開始事業年度から適用される。対象は主に上場企業等で、中小企業は従来の処理を継続できる。※適用対象と時期は最新の情報を要確認

建設仮勘定

使う場面 建設中に支払った手付金・中間金・材料費。完成引渡時に本勘定へ振り替える。消費税 原則は課税仕入れをした日の属する課税期間で控除。ただし引渡しを受けた部分をその引渡日の課税期間の課税仕入れとしている場合も認められる(継続適用が前提)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
建設仮勘定10,000,000普通預金11,000,000中間金(課税10%)
仮払消費税等1,000,000
建物40,000,000建設仮勘定10,000,000完成引渡し・本勘定振替
仮払消費税等3,000,000普通預金33,000,000残金決済
よくあるミス 使い始めているのに建設仮勘定のまま残し、減価償却を開始していない。事業供用日は「使い始めた日」。決算時は必ず明細を出して完成済みのものがないか確認する。

一括償却資産

使う場面 取得価額10万円以上20万円未満の資産を3年均等償却する場合。判断のポイント 月割計算をせず、期中いつ取得しても3分の1ずつ償却する。除却・売却しても償却を打ち切れず(除却損は計上できない)、代わりに償却資産税の対象外になる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
一括償却資産540,000普通預金594,00018万円×3台(課税10%)
仮払消費税等54,000
減価償却費180,000一括償却資産180,000540,000×1/3(対象外)
実務のコツ 10万円以上20万円未満の資産は「特例で全額損金」と「一括償却資産で3年均等」の選択。当期に所得が出ていないなら一括償却資産を選び、償却資産税の負担も避ける。判断は資産1件ごとにできる。

ソフトウェア

使う場面 自社利用の業務システム、販売目的のソフトウェア。判断のポイント 自社利用は耐用年数5年の定額法、市場販売目的は3年。制作途中はソフトウェア仮勘定で受ける。情報提供だけのホームページ制作費は支出時の損金、予約システム等を組み込んだものは資産計上する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
ソフトウェア仮勘定2,000,000普通預金2,200,000開発着手金(課税10%)
仮払消費税等200,000
ソフトウェア5,000,000ソフトウェア仮勘定2,000,000稼働開始・本勘定振替
仮払消費税等300,000未払金3,300,000残金3,000,000+消費税(課税10%)

消費税 国内事業者からの購入・開発委託は課税仕入れ。国外事業者のクラウドサービス等は電気通信利用役務の提供に該当し、事業者向けはリバースチャージ方式、消費者向けは登録国外事業者からの仕入れなら控除できる。海外サービスの請求書は登録番号を確認する。

よくあるミス クラウドの初期導入費用(初期設定料・データ移行費用)を一括費用にする。契約期間にわたり効果が及ぶものは長期前払費用として按分するのが原則(20万円未満なら支出時の損金で差し支えない)。

のれん(営業権)

使う場面 事業譲受け等で、取得した資産・負債の時価純額を超えて支払った対価。判断のポイント 非適格合併等なら資産調整勘定として60か月で均等償却、事業譲受けによる営業権は耐用年数5年の定額法。会計上の償却期間(20年以内)と一致しなければ申告調整する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
棚卸資産5,000,000普通預金22,000,000事業譲受け(課税10%)
工具器具備品3,000,000(課税10%)
のれん12,000,000差額(課税10%)
仮払消費税等2,000,000

消費税 事業譲渡は資産ごとに課税・非課税を判定する。営業権の譲渡は課税、土地・売掛金が含まれれば非課税部分が生じる。譲渡契約書に資産の内訳と対価の配分を明記させる。

電話加入権

使う場面 固定電話の施設設置負担金。判断のポイント 時の経過により価値が減少しないため償却できず、評価損も原則計上できない。除却損は解約により権利が実際に消滅した場合のみ。

借方科目金額貸方科目金額摘要
電話加入権72,000普通預金79,200施設設置負担金(課税10%)
仮払消費税等7,200
固定資産除却損72,000電話加入権72,000回線解約により消滅(対象外)

消費税 非課税となる有価証券等に含まれないため、取得も譲渡も課税取引。

実務のコツ 使っていない回線の加入権が資産に残っている会社は多い。解約手続を済ませれば除却損を計上できる。決算前に契約回線一覧を確認する。

敷金・保証金(差入保証金)

使う場面 事務所・店舗・社宅の賃借時に差し入れる敷金・保証金。判断のポイント 返還される部分と返還されない部分(礼金・敷引き・保証金償却)を必ず分ける。前者は差入保証金、後者は税法上の繰延資産として長期前払費用に計上し償却する。20万円未満なら支出時に全額損金、20万円以上は5年(賃借期間が5年未満で更新時に再度支払うならその賃借期間)で償却する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
差入保証金1,200,000普通預金1,830,300返還される敷金(対象外)
長期前払費用300,000礼金・返還不能部分(課税10%)
仮払消費税等30,000
支払手数料273,000仲介手数料(課税10%)
仮払消費税等27,300
長期前払費用償却60,000長期前払費用60,0005年均等(対象外)

消費税 返還される敷金の差入れは対象外(預け金)。返還されない礼金は、事務所・店舗など建物の賃借に係るものなら課税仕入れ、土地の賃借や居住用建物に係るものは非課税仕入れ。

よくあるミス 支払総額を全額「差入保証金」で計上し、返還不能部分の償却をしていない。10年前の契約分が資産に残っていることも多い。契約書を取り寄せて返還条件を確認し、遡って修正する。

長期前払費用

使う場面 効果が1年を超えて及ぶ前払費用、および税法固有の繰延資産の受け皿。判断のポイント 会計上の繰延資産(創立費など)と税法上の繰延資産(権利金・加入金・負担金など)は別物。償却期間は支出の内容ごとに定められている(第4節)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
長期前払費用600,000普通預金660,0003年分の保守料前払(課税10%)
仮払消費税等60,000支出時に全額控除

消費税 資産計上したかどうかに関係なく、課税仕入れを行った日の属する課税期間で全額控除する。法人税の費用配分とずれる典型例。

出資金・投資有価証券

使う場面 信用金庫・協同組合への出資、取引先株式の長期保有。税務上の留意点 受取配当等の益金不算入の対象かを確認する。非支配目的株式等(保有割合5%以下)は配当等の額の20%相当額が益金不算入。協同組合等の事業分量配当は対象外で全額益金。別表八(一)で計算する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
出資金500,000普通預金500,000信用金庫出資(非課税仕入れ)
投資有価証券3,000,000普通預金3,000,000取引先株式(非課税仕入れ)

消費税 出資・株式の取得は非課税仕入れ、受取配当金は不課税(課税売上割合の計算に入らない)。

保険積立金

使う場面 法人契約の生命保険のうち資産計上が必要な部分。判断のポイント 定期保険および第三分野保険で保険期間3年以上かつ解約返戻金があるものは、最高解約返戻率により資産計上割合が決まる。

最高解約返戻率資産計上期間資産計上割合取崩し開始
50%以下なし全額損金算入—
50%超70%以下保険期間の当初4割相当期間支払保険料の40%保険期間の4分の3経過後から均等取崩し
70%超85%以下保険期間の当初4割相当期間支払保険料の60%保険期間の4分の3経過後から均等取崩し
85%超当初10年間とその後の一定期間当初10年は最高解約返戻率×90%、11年目以後は×70%解約返戻金が最高額となる期間経過後から均等取崩し

最高解約返戻率50%超70%以下でも、1被保険者あたりの年換算保険料相当額が30万円以下なら全額損金算入できる。養老保険で満期保険金の受取人が法人、死亡保険金の受取人が遺族となるハーフタックスプランは保険料の2分の1を保険積立金、2分の1を福利厚生費とするが、全従業員を対象とする普遍的加入が要件。特定の役員のみだと給与になる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
保険積立金720,000普通預金1,200,000最高解約返戻率75%・60%を資産計上
支払保険料480,00040%を損金算入(非課税)
普通預金8,000,000保険積立金7,200,000解約返戻金の受取
雑収入800,000差益(不課税)

消費税 保険料は非課税仕入れ、解約返戻金・保険金は不課税。

よくあるミス 保険会社からの税務上の取扱い通知を確認せず全額を支払保険料で処理する。解約時に多額の雑収入が立ち、その期の対策が間に合わない。契約時に設計書と解約返戻金推移表を預かり、資産計上額と解約予定年度を顧問先と共有する。

長期貸付金

使う場面 返済期限が1年を超える貸付金。役員貸付金・関係会社貸付金が中心(役員分の論点は第8節)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
長期貸付金5,000,000普通預金5,000,000貸付実行(対象外)

4. 繰延資産

創立費・開業費・開発費

創立費
設立自体に要した費用。定款認証手数料、設立登記の登録免許税、発起人報酬、司法書士報酬など。
開業費
設立後、営業開始までに開業準備のため特別に支出した費用。開業前の広告宣伝費、市場調査費、家賃・水道光熱費など。
開発費
新技術・新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のため特別に支出した費用(経常的な費用は含まない)。

判断のポイント 会計上は5年以内の均等償却が原則だが、税務上はいずれも任意償却で、残高の範囲内でいつでも好きな額を損金算入できる。設立初年度が赤字なら償却せず、黒字化した年度にまとめて償却できる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
創立費252,000役員借入金252,000設立費用を社長が立替(登録免許税は不課税)
開業費800,000普通預金880,000開業前の広告費等(課税10%)
仮払消費税等80,000
開業費償却800,000開業費800,000任意償却・全額(対象外)

消費税 個々の支出の内容で判定する。控除の時期は資産計上時ではなく支出(課税仕入れ)をした課税期間。設立第1期が免税事業者なら控除できないため、インボイス登録の時期と併せて検討する。

実務のコツ 設立前に社長個人が立て替えた支出も、設立後に法人が負担すれば創立費・開業費にできる。設立相談の時点で「準備段階の領収書はすべて保管」と伝える。

税法固有の繰延資産

使う場面 効果が1年以上に及ぶが、資産の取得でも会計上の繰延資産でもない支出。決算書上は長期前払費用として表示する。支出額20万円未満は支出事業年度に全額損金算入できる。

支出の内容償却期間
公共的施設(道路・堤防等)の設置・改良のための負担金その施設の耐用年数の10分の4(その施設を負担者が専ら使用するものは10分の7)
共同的施設(協会の会館等)の設置・改良のための負担金その施設の耐用年数の10分の7
商店街のアーケード・日よけ等(一般公衆も利用)5年(施設の耐用年数が5年未満ならその年数)
建物を賃借するために支出する権利金・立退料等原則5年(賃借期間が5年未満で更新時に再度支払うならその賃借期間)
建物の新築に際し支払う権利金で建設費の大部分を負担し存続期間中使用できるものその建物の耐用年数の10分の7
電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用その機器の耐用年数の10分の7(契約期間が短ければ契約期間)
ノウハウの頭金等5年
同業者団体等の加入金5年
広告宣伝用資産を贈与したことにより生ずる費用その資産の耐用年数の10分の7(5年を超えるときは5年)
スキー場のゲレンデ整備費用12年
借方科目金額貸方科目金額摘要
長期前払費用500,000普通預金500,000同業者団体の加入金(不課税)
長期前払費用償却100,000長期前払費用100,0005年均等(対象外)

消費税 脱退時に返還される加入金は対象外(預け金)。返還されない加入金は、役務提供の対価と認められれば課税、会費的性格なら不課税。

よくあるミス 同業者団体への支出をすべて諸会費で処理する。入会時の加入金(返還されないもの)は繰延資産、毎年の会費は支出時の損金。請求書の名目で分ける。

5. 流動負債

支払手形

使う場面 仕入代金等の支払いのために約束手形を振り出したとき。判断のポイント 不渡りは6か月以内に2回で銀行取引停止処分。資金繰り表と手形帳を毎月突合する。営業取引以外の振出しは営業外支払手形として区分する。消費税 振出・決済は対象外。控除の時期は仕入れた日で手形決済日ではない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
買掛金2,200,000支払手形2,200,000手形振出(対象外)
租税公課600現金600手形の印紙税(第3号文書・200万円超300万円以下。不課税)

電子記録債務

使う場面 でんさい等で支払企業側に発生記録がされた債務。消費税 発生・決済とも対象外。

借方科目金額貸方科目金額摘要
買掛金1,650,000電子記録債務1,650,000発生記録(対象外)

買掛金

使う場面 仕入れ・外注加工賃など営業取引から生じた債務。判断のポイント 締め日と決算日のズレが最重要。20日締めの仕入先なら21日から決算日までの締後仕入を納品書ベースで集計する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
仕入高1,000,000買掛金1,100,000掛仕入(課税10%)
仮払消費税等100,000
仕入高380,000買掛金418,000締後仕入(決算整理・課税10%)
仮払消費税等38,000

消費税 仕入計上時に課税仕入れ。免税事業者等からの仕入れは経過措置により、2026年(令和8年)9月30日までは80%、同年10月1日から2028年(令和10年)9月30日までは70%を控除する。控除できない部分は本体価額に含めて仕入高または資産の取得価額に加算する。

未払金

使う場面 営業取引以外の債務。経費・固定資産購入の未払分、社会保険料の会社負担分など。税務上の留意点 未払計上できるのは債務確定基準を満たすもの、すなわち期末までに①債務が成立し、②給付をすべき原因となる事実が発生し、③金額を合理的に算定できる、の3要件を満たすもの。見積りは損金にならない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
法定福利費185,000未払金185,000社会保険料の会社負担分(不課税)
広告宣伝費300,000未払金330,0003月分請求・4月払(課税10%)
仮払消費税等30,000

未払費用

使う場面 継続的な役務提供のうち、決算日までに提供を受けたが未払いのもの。消費税 給与は不課税、利息は非課税。課税取引に係るものは未払いでも仕入税額控除できる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
給料手当1,850,000未払費用1,850,000締後給与(不課税)
支払利息42,000未払費用42,000経過利息(非課税)
よくあるミス 20日締め翌月10日払いの給与について、21日から月末までの締後給与を未払計上していない。給与規程で締日・支払日を確認する。

未払法人税等

使う場面 確定申告により納付すべき法人税・地方法人税・住民税・事業税等の未納分。税務上の留意点 法人税・住民税は損金不算入、事業税(特別法人事業税を含む)は申告書を提出した事業年度の損金。未払計上した事業税は別表四で加算し翌期に減算する。中小法人の税率は所得800万円以下の部分が15%(適用期限は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度。所得10億円超の法人は17%)、800万円超は23.20%。

借方科目金額貸方科目金額摘要
法人税等1,500,000普通預金1,500,000中間納付(対象外)
法人税等2,200,000未払法人税等2,200,000確定分の未払計上(対象外)
根拠 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する課税事業年度から防衛特別法人税が課される。税率は課税標準法人税額の4%、課税標準法人税額は基準法人税額から年500万円の基礎控除額を控除した金額(事業年度が1年未満なら月数按分)。基準法人税額は所得税額控除・外国税額控除を適用する前の法人税額。申告期限は課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内で法人税申告と併せて行い、中間申告は令和9年(2027年)4月1日以後開始事業年度から必要になる。基礎控除は法人税額ベースのため多くの中小企業では税額ゼロになるが、申告自体は必要。

未払消費税等

使う場面 消費税および地方消費税の確定納付額の未納分。税務上の留意点 税込経理なら未払計上した事業年度の損金にできる(未払計上しなければ納付事業年度の損金)。税抜経理では損益に影響しない。経理方式は全社統一が原則で期中に混在させない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
未払消費税等900,000普通預金900,000確定納付(対象外)

預り金(源泉所得税・住民税・社会保険)

使う場面 給与・報酬から差し引いた源泉所得税、特別徴収住民税、社会保険料・雇用保険料の従業員負担分。判断のポイント 他人の金を一時的に預かる科目なので、納付すれば必ずゼロに近づく。補助科目を種類別に分けて管理する。

種類納付期限特例
源泉所得税(給与・報酬)支払った月の翌月10日納期の特例(給与支給人員10人未満)で1月〜6月分は7月10日、7月〜12月分は翌年1月20日
源泉所得税(配当)支払った月の翌月10日納期の特例の対象外
住民税(特別徴収)徴収した月の翌月10日納期の特例で6月〜11月分は12月10日、12月〜5月分は6月10日
健康保険料・厚生年金保険料当月分を翌月末日給与からは前月分を控除するのが原則
雇用保険料労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日)で精算概算・確定保険料の申告納付
借方科目金額貸方科目金額摘要
給料手当3,000,000普通預金2,455,000差引支給額(不課税)
預り金(源泉所得税)85,000
預り金(住民税)120,000
預り金(社会保険料)322,000
預り金(雇用保険料)18,000
預り金(社会保険料)322,000普通預金644,000翌月末納付(不課税)
法定福利費322,000会社負担分
よくあるミス 社会保険料の預り金残高が毎月ずれる。原因は資格取得・喪失月の控除タイミング、賞与保険料、産休・育休中の免除の反映漏れ。毎月「保険料納入告知額・領収済額通知書」と突合すれば1か月以内に気づける。
注意 源泉所得税は年末調整の還付・徴収で12月・1月に必ず残高が動く。令和8年分は基礎控除の引上げ(本則58万円、合計所得489万円以下は特例加算により最大104万円)や特定親族特別控除の新設により、還付額が例年より大きくなる可能性が高い。

前受金

使う場面 引渡し・役務提供の前に受け取った手付金・内金・予約金。消費税 受領時は対象外。課税売上とするのは引渡し・役務提供の時で、前受金の領収書はインボイスではない(引渡時に適格請求書を交付する)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金1,100,000前受金1,100,000手付金受領(対象外)
前受金1,100,000売上高3,000,000引渡し(課税10%)
売掛金2,200,000仮受消費税等300,000
よくあるミス 入金時に売上を計上し、引渡しが翌期になる案件で期ズレが生じる。決算月の入金は引渡完了を個別に確認する。

前受収益

使う場面 年間保守料・年会費・前受家賃など、決算日時点で未提供の期間に対応する部分。消費税 課税時期は資産の譲渡等の時であり会計上の期間按分とは切り離される。税抜経理では本体価額のみを振り替える。

借方科目金額貸方科目金額摘要
受取家賃200,000前受収益200,000翌期分の家賃を繰延(対象外)

仮受金

使う場面 内容不明の入金。判断のポイント 期末に残っていると売上計上漏れを疑われる。現金商売の顧問先では調査官がまず見る科目。相手方と原因を必ず確定させる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金500,000仮受金500,000内容不明入金(対象外)
仮受金500,000売掛金500,000得意先入金と判明(対象外)

仮受消費税等

使う場面 税抜経理における課税売上に係る消費税相当額。判断のポイント 簡易課税や2割特例では仮受・仮払の差額と納付税額が一致しない。差額は雑収入・雑損失で調整する。2割特例は令和8年(2026年)9月30日の属する課税期間で終了し、個人事業者は令和8年分、3月決算法人は令和9年(2027年)3月期が最後。

借方科目金額貸方科目金額摘要
仮受消費税等1,000,000仮払消費税等620,000簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)
未払消費税等500,000納付額
雑損失120,000差額(不課税)
補足 個人事業者には令和9年(2027年)分・令和10年(2028年)分の2年間限定で3割特例が新設される。基準期間および特定期間の課税売上高1,000万円以下でインボイス発行事業者であることが要件、納付税額は売上税額の3割。2割特例・3割特例をやめて簡易課税へ移行する場合、その課税期間の確定申告期限までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出すれば足りる特例がある。

短期借入金

ひとことで言うと

短期借入金は「借りた日から1年以内に返す約束の借入金」。形は証書借入・手形借入・当座貸越の3つで、借入時の費用の扱いや元金・利息の分け方は長期借入金と同じ(6. 固定負債「長期借入金」)。

使う場面 契約上の返済期限が借入日から1年以内の借入金。決算・賞与・納税資金などのつなぎ資金、手形借入、当座貸越。役員からの借入れは役員借入金として区分する(8. 科目をまたぐ重要論点)。判断のポイント 長期か短期かは契約の返済期限で決まる。長期借入金の返済が進んで残りが1年以内になっても、短期借入金には振り替えない(組み替えるなら「1年内返済予定長期借入金」だが、実務上は長期借入金のままでよい)。消費税 借入・返済は対象外、利息と信用保証料は非課税、事務手数料は課税、収入印紙(印紙税)は不課税。

①短期の証書借入 — 仕訳は長期と同じ、科目だけ短期

金銭消費貸借契約書を交わして、数か月で返す借入れ。賞与資金や納税資金に多い。保証付きなら保証期間も1年以内になるので、保証料は前払費用(長期借入金の「5」のケースA)で受ける。

例賞与資金 3,000,000円6回・毎月500,000円返済年2.0%信用保証料 10,500円(融資金から差引)収入印紙 2,000円

保証料は、3,000,000円×1.00%×6÷12×0.70(返済回数2〜6回の分割係数)=10,500円。第1回の利息は、3,000,000円×2.0%×30÷365=4,931円(前回からの日数30日の場合)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
借入時
普通預金2,989,500短期借入金3,000,000賞与資金の借入(保証料差引後・対象外)
前払費用10,500信用保証料(非課税)
租税公課2,000普通預金2,000契約書の収入印紙(不課税)
保証料の振替(毎月、または決算時に経過分をまとめて)
支払保証料1,750前払費用1,7501か月分=10,500÷6か月(振替のため対象外)
第1回返済
短期借入金500,000普通預金504,931第1回:元金(対象外)
支払利息4,931第1回:利息(非課税)
保証料を支払時の費用にする場合 支払日から1年以内に保証期間が終わる保証料なので、毎期継続して支払時に費用処理しているなら、借入時の借方を前払費用ではなく支払保証料10,500円としてよい(短期前払費用)。その方法を選んだら、翌期以降も同じ処理を続ける。
②手形借入 — 利息は先払い(前取り)

金融機関に約束手形を差し入れて借りる形。利息は借入時に差し引かれる(前取り)ことが多い。期日に同額の新しい手形に書き替えて借入れを続け、実質的に運転資金として使うこともある。差し入れる手形には、手形金額に応じた収入印紙が必要で、書き替えで差し入れる新しい手形にも同じく必要になる。

例借入額 5,000,000円期間 181日年2.0%利息前取り 49,589円手形の印紙 1,000円決算日時点で経過75日・未経過106日

前取利息は、5,000,000円×2.0%×181÷365=49,589円。決算日に未経過の106日分(5,000,000円×2.0%×106÷365=29,041円)を前払費用に繰り延べる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
借入時(利息前取り)
普通預金4,950,411短期借入金5,000,000手形借入:利息前取り後の入金(対象外)
支払利息49,589前取利息181日分(非課税)
租税公課1,000普通預金1,000約束手形の収入印紙(不課税)
決算時(経過75日・未経過106日)
前払費用29,041支払利息29,041未経過106日分の繰延べ
翌期首
支払利息29,041前払費用29,041前期末の繰延べを戻す
期日に返済する場合
短期借入金5,000,000普通預金5,000,000期日に一括返済(対象外)
期日に同額で書き替える場合(旧手形の決済と新手形の借入れを両建て)
短期借入金5,000,000短期借入金5,000,000旧手形の決済と新手形の借入(対象外)
支払利息49,589普通預金49,589新手形の前取利息(非課税)
租税公課1,000普通預金1,000新しい手形の収入印紙(不課税)
前払利息と短期前払費用 前取利息も、支払日から1年以内の分を毎期継続して支払時の費用にしているなら、上の決算時の繰延べを省略できる(法人税基本通達2-2-14)。ただし、借入金を預金や有価証券などで運用している場合のその借入金の利息のように、収益と対応させる必要があるものは対象外。

約束手形の印紙税額(第3号文書・主な区分)

手形金額印紙税額
10万円未満非課税
10万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下600円
300万円を超え500万円以下1,000円
500万円を超え1,000万円以下2,000円
1,000万円を超え2,000万円以下4,000円
2,000万円を超え3,000万円以下6,000円
3,000万円を超え5,000万円以下1万円
5,000万円を超え1億円以下2万円
紙の手形は終わりに向かっている 全国銀行協会は、電子交換所での手形・小切手の交換を2027年3月31日で終えることを明確にした(2026年6月公表)。札幌の北洋銀行は、2027年4月以降を期日とする手形貸付の新規実行を2026年4月1日に終了している。今後の短期資金は、証書貸付・当座貸越や電子記録債権を使う方式が中心になる。手形借入が残っている顧問先は、期日と切替え後の契約形態を取引金融機関に確認する。
③当座貸越 — 期末のマイナス残高を振り替える

当座貸越契約の極度額の範囲で、残高を超えて引き出せる借入れ。当座預金がマイナスになる一般的な当座貸越は、期中は当座預金のマイナスのまま記帳し、決算で貸方残高を短期借入金へ振り替え、翌期首に戻す。借入専用の口座で借りる形(専用当座貸越など)なら、借入れ・返済のつど短期借入金で処理する。利息は毎月や3か月ごとの後払いが多く、引落時に支払利息とする。

例極度額 10,000,000円期末の当座預金残高 −1,500,000円貸越利息の引落し 3,800円
借方科目金額貸方科目金額摘要
決算時
当座預金1,500,000短期借入金1,500,000期末の当座貸越残高を振替(対象外)
翌期首
短期借入金1,500,000当座預金1,500,000再振替
利息の支払い
支払利息3,800当座預金3,800貸越利息の引落し(非課税)
よくあるミス 期末の当座預金をマイナスのまま決算書に載せる。預金のマイナスは実質的な借入金なので、短期借入金に振り替えて表示する。
④決算時の確認
  • 借入口ごとの残高が、返済予定表・手形の写し・当座勘定照合表と一致しているか
  • 当座預金のマイナス残高を短期借入金に振り替えたか
  • 前取利息・保証料の未経過分を前払費用に残したか(短期前払費用として継続処理している場合を除く)
  • 後払いの利息(当座貸越の利息など)の未払利息を計上するか判断したか
  • 返済期限が借入日から1年を超える借入れを短期借入金に入れていないか(契約書で確認)
  • 役員・株主・関係会社からの借入れを区分し、期末現在高が50万円未満でも内訳書に各別に記載したか(役員借入金は8. 科目をまたぐ重要論点)
  • 返済額の全額を借入金で処理して、支払利息が漏れていないか
役員・親族からの借入れ 金銭消費貸借契約書を作る場合は、相手が役員や親族でも第1号文書として収入印紙が必要。返済条件と利率を決めておくと、税務調査で実態を説明しやすい。

賞与引当金

使う場面 翌期支給賞与のうち当期の労働に対応する部分の見積計上。判断のポイント 税務上、繰入額は損金不算入。別表四で加算し支給時に減算する。ただし次の3要件をすべて満たす未払賞与は「未払費用」として損金算入できる。

  • 支給額を各人別に、かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
  • 通知した金額を、通知した事業年度終了の日の翌日から1か月以内に全員に支払っていること
  • 通知した事業年度において損金経理していること
借方科目金額貸方科目金額摘要
賞与引当金繰入額4,000,000賞与引当金4,000,000会計上の見積計上(損金不算入)
賞与4,000,000未払費用4,000,0003要件を満たす未払賞与(損金算入可)
実務のコツ 支給額通知書に各人の金額と通知日を明記し、受領印または電子的な通知記録を残す。「翌月中に支払う」だけでは要件を満たさない。社会保険料の会社負担分は賞与支給月に発生するため当期の未払計上はできない。

6. 固定負債

長期借入金

ひとことで言うと

長期借入金は「1年を超えて少しずつ返す約束で借りたお金」。仕訳が必要になるのは借りる・返す・締めるの3つの場面だけで、毎月の返済と決算の答えは返済予定表に書いてある。

使う場面 契約上の返済期間が1年を超える借入金。金銭消費貸借契約(証書借入)が中心で、日本政策金融公庫、銀行のプロパー融資、信用保証協会付きの制度融資のいずれも同じ科目で受ける。判断のポイント 借入先・借入口(契約番号)ごとに補助科目を作り、返済予定表のとおりに元金と利息を分ける。消費税 借入・元金の返済は対象外、利息と信用保証料は非課税、融資事務手数料は課税、収入印紙(印紙税)は不課税。

0全体像 — 場面は3つ、守るルールも3つ

借入金の仕訳は、お金が入ってくる「借入時」、毎月引き落とされる「返済時」、1年分を締める「決算時」の3場面に分けると迷わない。手元に置くのは、契約書(融資実行の計算書を含む)・返済予定表・通帳の3つである。

SCENE 1借りる(借入時)普通預金 / 長期借入金(総額)

保証料・印紙・手数料が差し引かれていても、借入金は契約の総額で計上し、差額を費用や前払いに分ける。

SCENE 2返す(毎月)長期借入金+支払利息 / 普通預金

引落額を返済予定表の「元金」と「利息」に分ける。費用になるのは利息だけ。

SCENE 3締める(決算時)残高照合・保証料の償却・未払利息

期末残高を返済予定表と1円まで合わせ、保証料の当期分を費用にする。

  1. 鉄則1 借入金は「契約の総額」で計上する通帳の入金額は、保証料や手数料を差し引いた後の金額であることが多い。入金額で計上すると、借入金の残高が返済予定表と最後まで合わなくなる。
  2. 鉄則2 返済は「元金」と「利息」に分ける元金の返済は借入金が減るだけで費用ではない。費用(支払利息)になるのは利息の部分だけで、その内訳は返済予定表に書いてある。
  3. 鉄則3 期末残高は返済予定表と1円まで一致させる借入口ごとの帳簿残高を、返済予定表(または金融機関の残高証明書)の決算日時点の残高と照合する。休日で決算日の返済が翌期の引落しになった場合(「8」の確認事項)を除き、1円でも違えば、どこかの仕訳が誤っている。

そろえる資料

  • 金銭消費貸借契約書(借用証書):借入額、利率、返済方法、返済期間、担保・保証の有無を確認する。
  • 返済予定表:毎回の返済額の元金・利息の内訳と、返済後の残高が書いてある。仕訳の答えそのもの。
  • 融資実行の計算書(差引計算書):入金額から差し引かれた保証料・印紙代・手数料の内訳がわかる。
  • 信用保証協会の保証料の通知(保証付融資の場合):保証料の額と保証期間がわかる。
  • 通帳・入出金明細:実際に入金・引落しされた日付と金額。
1返済予定表の読み方 — 仕訳の答えが全部書いてある

返済予定表(返済明細表、償還予定表など、呼び方は金融機関によって違う)は、毎回の返済額を「元金」と「利息」に分け、返済後の残高まで一覧にしたもの。仕訳に使うのは次の列だけである。下の例は後述「4 銀行」の借入(12,000,000円・60回・元金均等)の予定表。

回返済日返済額うち元金長期借入金うち利息支払利息返済後残高帳簿残高
12026/10/31217,753200,00017,75311,800,000
22026/11/30217,457200,00017,45711,600,000
32026/12/31217,733200,00017,73311,400,000
⋮
602031/09/30200,295200,0002950
返済額(元利合計)
通帳から引き落とされる金額。引落明細との照合に使う。
うち元金 → 長期借入金(借方)
借りたお金そのものを返した部分。借入金が減るだけで費用にはならない。
うち利息 → 支払利息(借方)
お金を借りていることへの対価。費用になるのはここだけ。消費税は非課税。
返済後残高 → 帳簿残高の答え
その回の返済を仕訳した後の長期借入金の残高と一致するはずの金額。月次でも決算でもここと照合する。
なぜ利息は毎月違うのか 利息は一般に「残高×年利率×日数÷365」の日割りで計算される。月によって日数(28〜31日)が違い、残高も返済のたびに減るので、利息は毎回変わって当然である。自分で計算し直さず、返済予定表または金融機関の返済明細に書かれた金額をそのまま使う。なお、以下の例の返済日は約定日で示している。土日祝日や12月31日に当たる回は、翌営業日の引落しになる。
2シンプルなパターン — 入金額=借入額

保証料も手数料も差し引かれず、借りた額がそのまま入金される形。電子契約で印紙もかからない場合がこれに当たる。仕訳の基本形なので、まずこの形を押さえる。

例借入額 3,600,000円36回・元金均等(毎月100,000円)年2.0%毎月末日返済2026年10月1日借入
回返済日返済額うち元金長期借入金うち利息支払利息返済後残高帳簿残高
12026/10/31105,917100,0005,9173,500,000
22026/11/30105,753100,0005,7533,400,000
32026/12/31105,775100,0005,7753,300,000
⋮
362029/09/30100,164100,0001640
借方科目金額貸方科目金額摘要
借入時(2026年10月1日)
普通預金3,600,000長期借入金3,600,000借入の実行(対象外)
第1回返済(10月31日)
長期借入金100,000普通預金105,917第1回:元金(対象外)
支払利息5,917第1回:利息(非課税)

第2回以降も同じ形で、元金100,000円と、予定表のその回の利息(第2回は5,753円、第3回は5,775円)を仕訳する。第36回の返済後に残高がゼロになれば完済である。

個人事業主の場合 事業用の口座から返済したときの仕訳は上と同じ。事業用以外の口座(生活費の口座など)から返済したときは、貸方を普通預金ではなく事業主借にする。利息は事業用の借入金に係るものだけが必要経費(青色申告決算書の「利子割引料」)になる。
3日本政策金融公庫のパターン — 全額入金、印紙は契約方法しだい

日本政策金融公庫(国民生活事業など)の融資は、信用保証協会を通さない公的融資である。融資金は全額が指定口座に送金され、保証料が差し引かれることはない。仕訳上の論点は、収入印紙と、元金の返済が始まるまでの据置期間の2つ。

項目日本政策金融公庫銀行(信用保証協会付き)
入金される額融資額の全額保証料・手数料等が差し引かれることがある
信用保証料かからない(保証協会を使わない)かかる(融資実行時に金融機関経由で支払う)
融資の手数料通常かからない銀行によってはかかる(融資事務手数料など)
収入印紙書面の借用証書は必要。電子契約なら不要書面の契約書なら必要
返済予定表融資後に郵送。日本公庫ダイレクトでも確認できる融資実行後に交付
例借入額 8,000,000円元金均等(毎月100,000円×80回)年2.5%毎月20日返済2026年10月20日借入書面契約

借入時の仕訳 据置期間があってもなくても同じ。融資金の全額を長期借入金とし、借用証書に貼る収入印紙は租税公課とする(この例では印紙代を普通預金から支払った)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
借入時(2026年10月20日)
普通預金8,000,000長期借入金8,000,000公庫融資金の入金(全額・対象外)
書面契約の場合(電子契約なら不要)
租税公課10,000普通預金10,000借用証書の収入印紙(不課税)
収入印紙 書面の借用証書(金銭消費貸借契約書)は、記載金額に応じた印紙が必要で、8,000,000円なら1万円(税額表は「5 付随費用と保証料」)。日本政策金融公庫の電子契約サービスで契約した場合、電子データの契約書は課税文書に当たらないため印紙は不要で、上の租税公課の仕訳も生じない。

返済の仕訳は、据置期間の有無で変わる 据置期間とは、借りてから元金の返済が始まるまでの、利息だけを払う期間のこと。同じ借入(8,000,000円・年2.5%・元金は毎月100,000円)で、据置期間がない場合と、4か月ある場合を並べる。

据置期間なし第1回から元金と利息を返す
条件元金 第1回から毎月100,000円×80回返済期間 6年8か月(80回)
回返済日返済額うち元金長期借入金うち利息支払利息返済後残高帳簿残高
12026/11/20116,986100,00016,9867,900,000
22026/12/20116,232100,00016,2327,800,000
32027/01/20116,561100,00016,5617,700,000
42027/02/20116,349100,00016,3497,600,000
52027/03/20114,575100,00014,5757,500,000
⋮
792033/05/20100,410100,000410100,000
802033/06/20100,212100,0002120
借方科目金額貸方科目金額摘要
第1回返済(2026年11月20日)
長期借入金100,000普通預金116,986第1回:元金(対象外)
支払利息16,986第1回:利息(非課税)

第2回以降も同じ形で、元金100,000円と、予定表のその回の利息(第2回は16,232円、第3回は16,561円)を仕訳する。第80回(2033年6月20日)の返済で残高がゼロになる。

据置期間あり最初の4回は利息だけを払う
条件据置期間4か月(第1回〜第4回は利息のみ)元金 第5回から毎月100,000円×80回返済期間 7年(84回)
回返済日返済額うち元金長期借入金うち利息支払利息返済後残高帳簿残高
12026/11/2016,986016,9868,000,000
22026/12/2016,438016,4388,000,000
32027/01/2016,986016,9868,000,000
42027/02/2016,986016,9868,000,000
52027/03/20115,342100,00015,3427,900,000
62027/04/20116,773100,00016,7737,800,000
借方科目金額貸方科目金額摘要
据置期間中の返済(例:第1回)
支払利息16,986普通預金16,986第1回の利息(非課税)。第2回〜第4回も予定表のその回の利息額で同じ形
第5回(元金返済の開始)
長期借入金100,000普通預金115,342第5回:元金(対象外)
支払利息15,342第5回:利息(非課税)

第2回〜第4回も第1回と同じく利息だけの仕訳になる(第2回は16,438円、第3回・第4回は16,986円)。予定表の色付きの行が据置期間で、元金は0円である。

据置期間の見落としに注意 据置期間中の引落しは利息だけである。返済予定表を見ずに毎月の引落額をすべて借入金の返済としてしまうと、借入金が過少に、支払利息がゼロになる。元金の欄が0円の行は、支払利息/普通預金の仕訳だけでよい。

据置期間の有無による違い(8,000,000円・年2.5%・元金は毎月100,000円。3月決算で、初年度は2027年3月期)

項目据置期間なし据置期間あり(4か月)
返済期間6年8か月(80回)7年(84回)
元金の返済開始第1回(2026/11/20)第5回(2027/03/20)
毎回の元金100,000円×80回100,000円×80回(第5〜84回)
第1回の返済額116,986円16,986円(利息のみ)
初年度の支払利息80,703円82,738円
初年度末の残高7,500,000円7,900,000円
利息の合計(完済まで)675,489円742,182円

据置期間があると、最初の4回の返済額は利息だけで小さくなるが、元金の返済開始が4か月遅れる分だけ完済も4か月遅れ、利息の合計は多くなる(この例では66,693円)。仕訳の形はどちらも同じで、違いは元金が0円の回があるかどうかだけである。

4銀行のパターン(信用保証協会付き) — 総額で借りて、差額を分ける

銀行の保証付融資や、北海道・札幌市などの制度融資の多くは、信用保証協会の保証が付く。保証料は融資実行時に金融機関経由で支払うのが基本で、保証料・印紙代・融資事務手数料が融資金から差し引かれて入金されることも多い。ここで入金額で借入金を計上しないことが最大のポイントになる。

例借入額 12,000,000円60回・元金均等(毎月200,000円)年1.8%毎月末日返済信用保証料 330,000円収入印紙 20,000円融資事務手数料 33,000円(税込)2026年10月1日借入
通帳A:全額入金→あとで引落し
日付摘要出金入金
10/1融資金12,000,000
10/1保証料330,000
10/1融資手数料33,000
10/1印紙代20,000
通帳B:差し引かれて入金
日付摘要出金入金
10/1融資金(差引後)11,617,000

通帳がAでもBでも、借入金は12,000,000円である。Aは明細ごとに仕訳を切る(印紙代も口座からの引落し)。Bは入金1件を複合仕訳にして、差し引かれた内訳を借方に並べる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
A:全額入金→あとで引落しの場合
普通預金12,000,000長期借入金12,000,000融資金の入金(対象外)
長期前払費用330,000普通預金330,000信用保証料(非課税)
支払手数料33,000普通預金33,000融資事務手数料(課税10%)
租税公課20,000普通預金20,000契約書の収入印紙(不課税)
B:差し引かれて入金の場合(1本の複合仕訳)
普通預金11,617,000長期借入金12,000,000差引後の入金額(対象外)
長期前払費用330,000信用保証料(非課税)
租税公課20,000収入印紙(不課税)
支払手数料33,000融資事務手数料(課税10%)

返済はパターン1と同じ形で、第1回は元金200,000円と利息17,753円に分ける。

借方科目金額貸方科目金額摘要
第1回返済(10月31日)
長期借入金200,000普通預金217,753第1回:元金(対象外)
支払利息17,753第1回:利息(非課税)
よくあるミス 差引後の11,617,000円で長期借入金を計上してしまう。借入金が383,000円少ないまま返済が進み、完済間近に借入金がマイナスになって初めて気づく。借入時の仕訳は、契約書の借入額と必ず突き合わせる。
口座を会計ソフトと連携している場合 仕訳は連携明細から作る。通帳Bのように差し引かれて入金されたなら、入金明細1件を上の複合仕訳にする。保証料の通知書や契約書から別に仕訳を起こすと、同じ取引を二重に計上することになる。
5付随費用と保証料 — 前払費用か、長期前払費用か

借入時にかかる費用の早見表

費用勘定科目消費税実務のポイント
収入印紙(金銭消費貸借契約書)租税公課不課税契約金額で税額が決まる(下表)。電子契約なら不要
信用保証料前払費用・長期前払費用 → 支払保証料非課税保証期間で按分して費用にする。保証期間が1年を超えるものは一括で費用にしない(後述)
融資事務手数料支払手数料課税10%利息ではなく役務の対価なので課税(国税庁の質疑応答事例)。インボイスを保存
抵当権設定の登録免許税租税公課不課税不動産担保を付ける場合のみ
司法書士報酬支払手数料課税10%個人の司法書士への支払いは源泉徴収(報酬から1万円を引いた額×10.21%)。給与を支払っていない個人事業主は不要
利息支払利息非課税返済予定表の利息欄の金額

金銭消費貸借契約書の印紙税額(印紙税額一覧表・第1号文書のうち消費貸借に関する契約書)

契約書の記載金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1,000円
100万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

信用保証料の考え方 信用保証料は、保証期間の全部の分をまとめて前払いした費用である。支払った年に全額を費用にせず、期間の経過に応じて支払保証料(営業外費用)へ振り替える(支払手数料で処理する例もある。毎期同じ科目を使う)。どの科目で受けるかは、保証期間が1年以内かどうかで決まる。

ケースA保証期間が1年以内

短期借入金の保証料など。前払費用に計上し、期間で按分する。支払日から1年以内の分で、毎期継続して支払時に費用処理しているなら、支払時に支払保証料としてよい(短期前払費用)。

ケースB保証期間1年超のうち翌期償却分

ケースCの長期前払費用のうち、決算日の翌日から1年以内に償却する分は、1年基準で前払費用に組み替えられる。表示だけの問題なので、組み替えるかどうかは必要に応じて判断する。

ケースC保証期間が1年超

長期借入金の保証料の多くがこれ。長期前払費用に計上し、保証期間の月数で按分して毎期償却する。支払時に全額を費用にはできない。

分割支払の保証料も支払時の費用にしない 保証料を分割で支払う取扱いもあるが、各回の支払額は1年分の保証の対価ではない。東京信用保証協会の例では、保証期間10年なら貸付時に35%、以後1年ごとに30%・20%・10%・5%を支払う。短期前払費用の扱いはせず、支払った額を長期前払費用に計上して保証期間で按分する(各回が対応する期間は保証協会の通知で確認する)。
保証料の計算式 東京・千葉の信用保証協会が公表している計算方法では、均等分割返済の場合、保証料=保証金額×保証料率×保証期間(月数)÷12×分割係数。分割係数は返済回数で決まり、2〜6回は0.70、7〜12回は0.65、13〜24回は0.60、25回以上は0.55(据置期間がある場合は、据置部分と分割返済部分に分けて計算する)。例の保証料は、12,000,000円×1.00%×60÷12×0.55=330,000円。保証料率は財務内容等に応じた9区分で、一般的な保証(責任共有制度の対象)なら年0.45%〜1.90%の範囲で保証決定時に決まる。

ケースC・Bの仕訳 3月決算で、2026年10月に60か月分330,000円を支払った場合、月額は330,000÷60=5,500円。初年度(10月〜3月の6か月)の償却は33,000円になる。償却は保証期間の月数による均等按分(借入月から数える)が一般的で、毎月計上しても決算で年1回計上してもよい。

借方科目金額貸方科目金額摘要
決算時の償却(3月決算・初年度)
支払保証料33,000長期前払費用33,000当期6か月分=330,000÷60か月×6(振替のため対象外)
1年基準で組み替える場合
前払費用66,000長期前払費用66,000翌期に償却する12か月分の組替え(必要に応じて)
組み替えた場合の翌期首
長期前払費用66,000前払費用66,000組替えを戻す(振替のため対象外)
1年基準の組替えは必要に応じて 厳密には、翌期に償却する分(ここでは12か月分66,000円)を前払費用に組み替え、残りを長期前払費用とする。ただし表示区分の問題で税額には影響しないため、中小企業の実務では長期前払費用のままとし、金融機関から求められた場合などに組み替えれば足りる。組み替えたときは翌期首に戻し、期中の償却は長期前払費用から行う。
一括で費用にできない根拠 保証期間が1年を超える信用保証料を支払時に全額損金とした事案で、国税不服審判所は、保証期間中は保証という役務が継続して提供されているとして前払費用に当たるとし、期間に応じて損金に算入すべきと判断した(平成19年2月27日裁決)。

ケースAの仕訳 保証期間6か月の保証料10,500円を支払った場合。

借方科目金額貸方科目金額摘要
ケースA:原則(期間で按分)
前払費用10,500普通預金10,500保証期間6か月の保証料(非課税)
ケースA:短期前払費用を継続適用している場合
支払保証料10,500普通預金10,500短期前払費用として支払時に費用(非課税・継続適用)

繰上完済で保証料が返戻されたとき 期限前に完済すると、保証協会の規定により保証料の一部が返戻されることがある(東京信用保証協会では合計1,000円以下は返戻の対象外)。返戻額は協会の計算によるので、未償却残高と一致しない。未償却残高を取り崩し、返戻額との差額を支払保証料にする。

借方科目金額貸方科目金額摘要
繰上完済で保証料が返戻されたとき(24か月償却済み)
普通預金150,000長期前払費用198,000繰上完済による保証料の返戻(不課税)
支払保証料48,000未償却残高と返戻額の差額
返戻保証料を非課税売上にしない 返戻された保証料は売上ではない。雑収入で受ける場合も消費税の区分は不課税とし、非課税売上には入れない。非課税売上にすると課税売上割合の分母が膨らみ、仕入税額控除の計算が狂う。

制度融資の保証料補助 自治体の制度融資では、保証料の一部を自治体が負担する仕組みがある。補助分が差し引かれて請求されるなら実際に負担した額で計上する。いったん全額を払って後日補助金を受けるなら、交付決定の時に未収入金/雑収入(不課税)とし、入金時に未収入金を消す。

6返済時の処理 — 引落額を元金と利息に分ける

毎月の仕訳は1本で、借方に元金(長期借入金)と利息(支払利息)、貸方に引落額(普通預金)を置く。金額は返済予定表のその回の行から写すだけである。

借方科目金額貸方科目金額摘要
毎月の返済(銀行の例・第2回)
長期借入金200,000普通預金217,457第2回:元金(対象外)
支払利息17,457第2回:利息(非課税)

元金均等返済と元利均等返済 返済方法は2種類あるが、仕訳の形はどちらも同じである。違うのは毎回の元金と利息の割合で、事業性の融資では元金均等が多い。3,000,000円を60回(5年)で返す場合で比べる(利息は比較しやすいよう、年3.0%の月割りで計算)。

回元金均等返済元利均等返済
元金利息返済額元金利息返済額
150,0007,50057,50046,4067,50053,906
250,0007,37557,37546,5237,38353,906
350,0007,25057,25046,6397,26753,906
⋮
1250,0006,12556,12547,6996,20753,906
⋮
2450,0004,62554,62549,1504,75653,906
⋮
3650,0003,12553,12550,6443,26253,906
⋮
4850,0001,62551,62552,1851,72153,906
⋮
5950,00025050,25053,63826853,906
6050,00012550,12553,74513453,879
合計3,000,000228,7503,228,7503,000,000234,3333,234,333
元金均等返済 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 1 12 24 36 48 60 第1回 57,500円 第60回 50,125円 元利均等返済 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 1 12 24 36 48 60 毎回 53,906円(最終回のみ53,879円) 元金(借入金の減少) 利息(支払利息=費用) 横軸:返済回数/縦軸:1回の返済額(円)

図:3,000,000円を60回で返す場合(年3.0%の月割り)の1回ごとの返済額。紺が元金、橙が利息。作図=ジェイスタート会計事務所

  • 元金均等返済:毎回の元金が一定で、残高が減るほど利息が減るので、返済額は少しずつ小さくなる。
  • 元利均等返済:毎回の返済額が一定(最終回だけ端数を調整)。最初は利息の割合が大きく、後半ほど元金の割合が大きくなる。同じ条件なら、元金の減り方が遅い分だけ利息の総額はやや多い(上の例で228,750円に対し234,333円)。

返済時につまずきやすい点

  • 返済日が土日祝日なら、引落しは翌営業日になる。利息が1日分変わることがあり(例の銀行借入の初回なら約590円)、その場合は金融機関の返済明細(引落明細)の金額で計上する。
  • 変動金利の借入は、金利の見直しのたびに返済予定表が更新される。古い予定表のまま計上しない。
  • 会計ソフトの自動仕訳ルールで毎月同じ金額を登録すると、元金と利息の内訳が毎回ずれる。ルールを使っても、内訳は毎回予定表で直す。
  • 口座連携しているなら、引落しの連携明細を複合仕訳(長期借入金+支払利息)にする。返済予定表から別に仕訳を起こすと二重計上になる。
  • 返済予定表が手元にないときでも、元金均等なら毎回の元金は一定なので、引落額から元金を引いた残りが利息になる。予定表は早めに再発行を依頼する。
7こんなときは — 繰上返済・借換え・条件変更・代位弁済

一部繰上返済 約定の返済とは別に元金の一部を返す。以後は金融機関から受け取る新しい返済予定表で仕訳する。繰上返済の手数料は、定額の事務手数料なら支払手数料(課税)。繰上返済額の一定割合で計算される違約金の性質のもの(期限前弁済の清算金など)は不課税とされることがあるので、金融機関の計算書で名目と消費税の記載を確認する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
一部繰上返済
長期借入金2,000,000普通預金2,000,000一部繰上返済(対象外)

繰上完済 残高の全額を返済し、保証付融資なら保証料の返戻を処理する(「5」の仕訳)。完済日までの日割利息が一緒に引き落とされる場合は支払利息にする。

借換え 新しい借入金で古い借入金を完済する。同じ金融機関なら、新借入額から旧借入の残高と新しい保証料等を差し引いた額だけが入金されることが多い。旧借入の返済と新借入を総額で両建てし、差額を普通預金にする。旧保証料の返戻が新保証料に充当された場合の例(旧借入の残高7,000,000円、旧保証料の未償却残高140,000円・返戻額100,000円、新借入15,000,000円・新保証料350,000円のうち返戻分を差し引いた250,000円を支払い、印紙20,000円)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
借換え(同じ銀行で旧借入を新借入で完済)
普通預金7,730,000長期借入金(新)15,000,000借換え:差引後の入金
長期借入金(旧)7,000,000長期前払費用(旧)140,000旧借入の完済/旧保証料の未償却残高
長期前払費用(新)350,000新保証料(返戻100,000円を充当・非課税)
支払保証料40,000旧保証料の未償却140,000-返戻100,000
租税公課20,000新契約書の収入印紙(不課税)

条件変更(リスケジュール) 返済額の減額や期間の延長をした場合は、新しい返済予定表で以後の仕訳と残高照合を行う。保証協会の保証期間が延びて追加の保証料がかかったときは、長期前払費用に加えて残りの保証期間で償却する。

代位弁済 返済が滞り、信用保証協会が金融機関に代わって返済した場合、借入先が保証協会に変わる(求償債務)。金融機関からの借入金を減らし、保証協会に対する債務として付け替える。代位弁済額に利息や延滞利息が含まれるときは、保証協会の通知で内訳を確かめ、その部分は支払利息(非課税)として保証協会への債務に加える。付替え後の残高は通知額と一致させ、以後の返済は保証協会との約定による。

借方科目金額貸方科目金額摘要
代位弁済を受けたとき
長期借入金(A銀行)5,000,000長期借入金(信用保証協会)5,000,000代位弁済:借入先の付替え(求償債務)
8決算時の確認事項
  • 借入口ごとの期末残高が、返済予定表の決算日時点の残高(または残高証明書)と1円まで一致しているか
  • 決算日前後の返済日が休日で翌営業日に引き落とされていないか(その場合、決算日の残高は1回分多いのが正しい)
  • 支払利息の年間合計が、返済予定表の当期分の利息の合計と一致するか(未払利息を計上している場合は、当期末の未払利息を加え前期末の未払利息を差し引いて比べる。変動金利・繰上返済があった借入は返済明細で確認)
  • 信用保証料の当期償却を計上し、長期前払費用の残高が「未経過の月数×月額」と一致しているか
  • 決算日前の最後の返済日の翌日から決算日までの経過利息(未払利息)を計上するか判断したか
  • 繰上返済・借換え・条件変更・代位弁済があった借入は、新しい返済予定表や通知に差し替えたか
  • 返戻保証料・印紙・手数料を正しい科目と消費税区分で処理したか(返戻保証料を非課税売上にしていないか)
  • 1年内返済予定額を把握したか(組み替えるかどうかは必要に応じて判断)

未払利息 返済日が月末でない借入は、決算日前の最後の返済日の翌日から決算日までの利息が未払いになっている。例の日本政策金融公庫の借入(据置期間ありの例。3月20日返済・残高7,900,000円)なら、3月21日〜31日の11日分は7,900,000×2.5%×11÷365=5,952円(据置期間なしの例なら、残高7,500,000円で5,650円)。原則は未払費用に計上するが、金額が小さければ、毎期継続して支払日に計上する運用でもよい(計上しないと損金算入が翌期に遅れるだけで、先に費用にするわけではない)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
未払利息を計上する場合
支払利息5,952未払費用5,952公庫(据置期間あり):3/21〜3/31の経過利息(必要に応じて・非課税)
1年内返済予定額は、実務上は長期借入金のままでよい 決算日の翌日から1年以内に返済する元金(例の銀行借入なら翌期12回分の2,400,000円)は、返済予定表からすぐ拾える。1年基準を厳密に当てはめれば流動負債の「1年内返済予定長期借入金」に組み替えることになるが、表示区分だけの問題で税額には影響しない。中小企業の決算書では組み替えずに長期借入金のまま計上している例が多く、それで足りる。金融機関から求められた場合など、必要に応じて組み替えればよい。

組み替えた場合は、翌期首に逆仕訳で戻し、期中の返済は返済予定表どおり長期借入金で記帳する(戻さないと、借入口ごとの残高が返済予定表と組替額だけずれ続ける)。

借方科目金額貸方科目金額摘要
1年内返済予定額を組み替える場合
長期借入金2,400,0001年内返済予定長期借入金2,400,000翌期12回分の元金(必要に応じて・対象外)
組み替えた場合の翌期首
1年内返済予定長期借入金2,400,000長期借入金2,400,000組替えを戻す(対象外)

残高が合わないときの原因と見つけ方

原因見つけ方
差引後の入金額で借入金を計上した借入時の仕訳を契約書の借入額と比べる。差額は保証料・印紙・手数料の合計になっているはず
返済額の全額で借入金を減らした(利息を分けていない)支払利息が年間ゼロ、または極端に少ない
据置期間の利息を元金の返済にした残高が据置期間中の利息の合計額だけ少なく(例の公庫の据置期間ありなら67,396円)、同じ期間の支払利息がゼロになっている
休日による翌営業日の引落し元金のちょうど1回分ずれている
繰上返済・借換え・条件変更を反映していない古い返済予定表で照合している
借入口(補助科目)の取り違え口ごとの残高は合わないが、合計は合う
代位弁済を処理していない金融機関の残高がゼロなのに帳簿に残っている

申告書の添付書類 法人は、勘定科目内訳明細書の「借入金及び支払利子の内訳書」に、借入先ごとの期末現在高・期中の支払利子額・利率・担保の内容などを記載する。借入先別の期末現在高が50万円以上のものは各別に書き、役員・株主・関係会社からの借入は金額にかかわらずすべて各別に書く。期末残高がなくても、期中の支払利子額(未払利子を含む)が3万円以上の借入先は各別に書く(期中に繰上完済・借換えした借入に注意)。同じ借入先に利率が2つ以上あるときは、期末に近い時期の利率を書く。補助科目を借入口ごとに作っておけば、借入先ごとに合計して転記できる。個人事業主は、青色申告決算書の貸借対照表の借入金と、損益計算書の利子割引料に反映する。

9よくある質問

Q. 元金の返済は経費になるか。

A. ならない。借りたお金を返しているだけなので、借入金(負債)が減るだけである。費用になるのは利息と、期間按分した保証料など。元金の返済は、税金を払った後の利益と減価償却費から行うことになるため、資金繰りの計画はこの前提で立てる。

Q. 信用保証料を払った年に全額を経費にしてよいか。

A. 保証期間が1年を超えるものはできない。長期前払費用に計上し、保証期間の月数で按分して費用にする。分割で支払う場合も、各回を支払時の費用にはしない。支払時の費用にできるのは、保証期間が1年以内のもの(短期借入金の保証料など)を毎期継続して処理している場合に限られる。

Q. 日本政策金融公庫の借入でも収入印紙は必要か。

A. 書面の借用証書で契約するなら必要(800万円なら1万円)。日本公庫電子契約サービスで契約すれば不要。

Q. 1年内に返済する分は「1年内返済予定長期借入金」に振り替えなければならないか。

A. 実務上は長期借入金のままでよい。表示区分の問題で税額は変わらないため、金融機関から求められた場合など必要に応じて組み替える。返済予定表から1年内返済予定額を把握しておけば、いつでも対応できる。

Q. 通帳の引落額が返済予定表と違う。

A. 返済日が休日で引落日がずれた、変動金利が見直された、繰上返済をした、などが原因。実際に引き落とされた金額(金融機関の返済明細)で計上し、以後は更新後の返済予定表を使う。

Q. 返済予定表をなくした。

A. 借入先に再発行を依頼する。日本政策金融公庫は日本公庫ダイレクトでも返済予定や残高を確認できる。届くまでの間も、元金均等返済なら毎回の元金が一定なので、引落額から元金を引いた額を利息として計上できる。

経営者・経理担当者向けのやさしい解説は、ブログ記事【図解】借入金の仕訳 完全ガイドにまとめている。短期の借入れは5. 流動負債「短期借入金」を参照。

社債

使う場面 少人数私募債など。判断のポイント 額面と払込金額が異なる場合は償却原価法で差額を償還期間に配分する。社債発行費は繰延資産で、税務上は任意償却。消費税 発行・償還は対象外、社債利息は非課税。

借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金20,000,000社債20,000,000私募債の発行(対象外)
社債利息200,000普通預金159,160利払(非課税)
預り金40,840源泉所得税20.42%

リース債務

使う場面 所有権移転外ファイナンス・リースを売買処理した場合の未経過リース料相当額。1年内支払分は流動負債へ組み替える。中小企業では利息相当額を区分しない簡便法が広く使われる。

借方科目金額貸方科目金額摘要
リース債務660,0001年内返済予定リース債務660,000決算時の組替(対象外)

退職給付引当金

使う場面 従業員の退職給付債務のうち決算日までに発生した額。中小企業の会計に関する指針では期末自己都合要支給額を基礎とする簡便法が認められる。判断のポイント 税務上、繰入額は全額損金不算入。実際に支給した事業年度の損金になるため、別表四で加算し支給時に減算する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
退職給付費用2,000,000退職給付引当金2,000,000繰入(損金不算入・不課税)
退職給付引当金1,500,000普通預金1,428,000退職金支給(不課税)
預り金72,000退職所得の源泉所得税

中小企業の退職金準備は引当金ではなく外部積立てで手当てするのが実務の主流。積立手段で処理が全く違う。

手段掛金・保険料の処理支給時消費税
中小企業退職金共済(中退共)・特定退職金共済全額を福利厚生費として損金算入。資産計上しない共済から従業員へ直接支給され会社に入出金は生じない不課税
養老保険(ハーフタックスプラン)2分の1を保険積立金、2分の1を福利厚生費保険積立金を取り崩し差額を雑収入・雑損失非課税
確定拠出年金の事業主掛金全額を福利厚生費として損金算入会社に入出金は生じない不課税
よくあるミス 中退共の掛金を保険積立金で資産計上している。中退共は会社に返還されないため支払時に全額損金。なお中退共は原則として役員は加入できず(使用人兼務役員は可)、掛金を従業員に負担させることもできない。加入基準は退職金規程で定める。

役員退職慰労引当金

使う場面 役員退職慰労金規程に基づく将来支給見込額のうち当期までの発生分。判断のポイント 税務上は全額損金不算入。役員退職給与が損金になるのは原則として株主総会の決議等により額が確定した事業年度。不相当に高額な部分は損金不算入で、実務では功績倍率法(最終報酬月額×勤続年数×功績倍率)で算定し同業種・同規模法人と比較する。勤続5年以下の役員は退職所得の2分の1課税が適用されない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
役員退職慰労引当金繰入額3,000,000役員退職慰労引当金3,000,000損金不算入(不課税)
役員退職慰労引当金15,000,000未払金20,000,000総会決議により確定
役員退職金5,000,000引当不足額(損金算入)

繰延税金負債

使う場面 将来加算一時差異。その他有価証券の評価差益、圧縮記帳の積立金方式など。消費税 対象外。その他有価証券の評価差額は純資産に直接計上し損益に計上しない。税務上は評価を認識しないため別表五(一)で調整する。

借方科目金額貸方科目金額摘要
投資有価証券1,000,000繰延税金負債350,000その他有価証券の評価差益
その他有価証券評価差額金650,000純資産直入(対象外)

7. 純資産と資本取引

純資産は株主が払い込んだ元手(資本金・資本剰余金)と利益の蓄積(利益剰余金)に分かれる。資本取引は損益に影響させないのが大原則で、増資・減資・自己株式の取得はいずれも損益計算書を通さない。

資本金・増資

使う場面 設立時の払込み、募集株式の発行。判断のポイント 払込額の2分の1までは資本金としないことができる。資本金1億円を超えると、中小法人の軽減税率、少額減価償却資産の特例、貸倒引当金の法定繰入率、交際費の定額控除限度額、欠損金の繰戻し還付といった特例が一斉に使えなくなる。増資前に影響を洗い出す。

借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金10,000,000資本金5,000,000増資(対象外)
資本準備金5,000,0002分の1を準備金へ
租税公課35,000普通預金35,000登録免許税(増加資本金5,000,000×0.7%。最低3万円と比較)
支払手数料100,000普通預金110,000登記手続報酬(課税10%)
仮払消費税等10,000

消費税 出資の受入れは対象外(資本取引)。登録免許税は不課税、司法書士報酬は課税仕入れ。税務上の留意点 増資の登録免許税は増加資本金の0.7%(最低3万円)。住民税均等割の基準は「資本金等の額」と「資本金+資本準備金」のいずれか大きい額で、資本準備金へ振っても均等割は下がらない。

資本準備金・その他資本剰余金・減資

使う場面 資本金の額の減少、欠損てん補。判断のポイント 中小企業ではほぼ無償減資。資本金をその他資本剰余金へ振り替え、繰越利益剰余金のマイナスを埋める。株主総会の特別決議と債権者保護手続(官報公告と知れている債権者への個別催告、1か月以上)が必要。

借方科目金額貸方科目金額摘要
資本金40,000,000その他資本剰余金40,000,000無償減資(対象外)
その他資本剰余金32,000,000繰越利益剰余金32,000,000欠損てん補(対象外)

税務上の留意点 無償減資では税務上の資本金等の額は原則変わらないが、欠損てん補に充てた金額は住民税均等割の算定基礎から控除できる。控除には株主総会議事録・貸借対照表など欠損てん補に充てたことを証する書類の添付が必要で、手続の順序を誤ると控除できない。

補足 資本金1億円以下への減資による外形標準課税の回避に対しては、令和6年度税制改正で見直しが行われ、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人は資本金1億円以下となっても資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合は引き続き対象となる。※適用開始事業年度と細目は最新の情報を要確認

利益準備金・別途積立金・繰越利益剰余金と剰余金の配当

判断のポイント 剰余金の配当をするときは、配当により減少する剰余金の額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで積み立てる。その他利益剰余金からの配当なら利益準備金、その他資本剰余金からの配当なら資本準備金に積む。別途積立金に課税関係はなく、別表五(一)の内訳が動くだけ。

借方科目金額貸方科目金額摘要
繰越利益剰余金5,500,000未払配当金5,000,000配当決議(対象外)
利益準備金500,000配当額の10分の1
未払配当金5,000,000普通預金3,979,000支払(対象外)
預り金1,021,000源泉所得税20.42%
預り金1,021,000普通預金1,021,000翌月10日までに納付
繰越利益剰余金3,000,000別途積立金3,000,000任意積立(対象外)

消費税 配当は対価性がないため不課税。受け取る側でも不課税で、課税売上割合の計算に含めない。

注意 非上場株式の配当の源泉徴収税率は20.42%(所得税20%と復興特別所得税0.42%)で、納期の特例の対象外。支払った月の翌月10日までに配当等の所得税徴収高計算書で納付する。給与と同じ感覚で半年分まとめると不納付加算税・延滞税の対象になる。令和9年(2027年)分以後は復興特別所得税が1.1%に下がり防衛特別所得税1%が加わるため、合計税率は20.42%のまま変わらない。

自己株式

使う場面 事業承継や少数株主の整理のために自社株式を買い取る場合。判断のポイント 会計上は取得原価で純資産の部から控除する。税務上は、交付金銭のうち資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当となり源泉徴収(20.42%)が必要。取得価額1,000万円、対応する資本金等の額400万円ならみなし配当600万円、源泉徴収税額1,225,200円。分配可能額の範囲内でしか取得できない。

借方科目金額貸方科目金額摘要
自己株式10,000,000普通預金8,774,800取得(対象外)
預り金1,225,200みなし配当600万円×20.42%

消費税 資本取引であり不課税。株式の譲渡としての非課税売上にも該当せず、課税売上割合の計算に含めない。

よくあるミス 自己株式を投資有価証券で処理する。自己株式は資産ではなく株主資本の控除項目。みなし配当の源泉徴収を失念して総額を渡すと、後から株主に返金を求めることになる。取得前に必ず計算する。

8. 科目をまたぐ重要論点

役員貸付金・役員借入金

中小企業のB/Sで最も頻繁に問題になる2科目。会社と社長個人の財布が分かれていないことの表れで、税務調査では必ず内容を確認される。発生の典型は、領収書のない支出を仮払金から振り替えた、役員報酬を減額したまま生活費を引き出し続けた、社長個人の支出を会社が払った、実在しない現金を振り替えた、の4つ。

認定利息 法人が役員に無利息または低利で貸し付けると、適正利息との差額が経済的利益の供与として給与課税される。適正な利率は、貸付けの原資が特定の借入金ならその利率、それ以外は所得税基本通達36-49に定める利率(各年の平均貸付割合に0.5%を加算した利率)による。※適用する年分の利率は最新の告示を要確認

項目金額・率
期首残高10,000,000円
期末残高14,000,000円
期中平均残高12,000,000円
適用利率年0.9%
認定利息(12,000,000円×0.9%)108,000円
借方科目金額貸方科目金額摘要
未収入金108,000受取利息108,000認定利息の計上(非課税)
普通預金3,000,000役員借入金3,000,000社長からの借入(対象外)
役員借入金20,000,000債務免除益20,000,000債権放棄を受けた(不課税・益金)
注意 認定利息を計上しないと、調査で受取利息の計上漏れ(益金)と役員に対する経済的利益の供与(役員給与・源泉徴収漏れ)の両方を指摘される。役員給与と認定された部分は定期同額給与に該当せず損金不算入となり、法人税・源泉所得税・不納付加算税・延滞税が重なる。毎期必ず計上する。

税務調査で見られる点

  • 金銭消費貸借契約書があるか(利率・返済期日・返済方法の定め)
  • 残高が毎期増え続けていないか(増加していれば実質的な役員給与を疑われる)
  • 認定利息を計上し、実際に回収しているか
  • 相手方が本当に役員本人か(親族・関連会社への迂回がないか)
  • 金融機関からの借入資金が役員に流れていないか
  1. STEP1 役員報酬の増額で返済する
    最も正攻法。増額分に所得税・住民税・社会保険料がかかるため、必要な手取りを確保するには額面がその1.5倍前後になる。定期同額給与の改定は事業年度開始の日から3か月以内。
  2. STEP2 個人資産を法人へ譲渡して相殺する
    社長個人の不動産・車両・保険契約等を適正な時価で法人に譲渡し、代金と相殺する。時価の根拠資料(査定書・解約返戻金相当額)を必ず残す。
  3. STEP3 役員退職金と相殺する
    退職時の役員退職慰労金から控除する。最も現実的だが、退職までの認定利息は毎期計上が必要。
  4. STEP4 債権放棄(最終手段)
    役員側は給与所得(賞与)として課税され、法人側は損金不算入かつ源泉徴収義務が生じる。税負担が最も重く、原則として選ばない。
実務のコツ 役員借入金は、社長に相続が発生すると額面金額で相続財産になる。回収見込みがなくても評価額は原則減らない。圧縮は繰越欠損金がある年度に債権放棄を受け、債務免除益と相殺するのが基本。ただし債務免除で株価が上がると他の株主へのみなし贈与の問題が生じるため、株主構成を確認してから実行する。

仮払金・立替金の期末残ゼロ運動

仮払金・立替金・仮受金・前渡金は一時的な置き場所であって、決算書に残すべき科目ではない。事務所ルールとして次の運用を顧問先に定着させる。

  1. STEP1 精算期限を規程化する
    概算払は用務終了後7日以内に精算し、月をまたがない。旅費規程・経費精算規程に明記する。
  2. STEP2 月次で一覧を出す
    月次監査のたびに補助元帳を出し、発生から30日超のものに印を付けて担当者へ返す。
  3. STEP3 決算2か月前に棚卸しする
    残高を「精算できるもの」「費用に振り替えるもの」「役員・従業員から回収するもの」に分類する。
  4. STEP4 期末はゼロで締める
    やむを得ず残す場合は内容・相手先・回収予定のメモを決算資料に綴じる。書面があれば調査で説明できる。
よくあるミス 精算できない仮払金を貸倒損失で落とす。貸倒損失は金銭債権の回収不能に対するもので仮払金には使えない。役員分は役員給与、従業員分は給与、業務上の支出と認められるものは該当する費用科目へ振り替える。

圧縮記帳(補助金・保険差益)

補助金や保険金を受け取ると多額の益金が立つ一方、取得した固定資産は減価償却で何年もかけて費用化されるため課税が先行する。この時期のズレを調整するのが圧縮記帳で、課税の繰延べであって免除ではない。この点は必ず顧問先に説明する。

方式処理減価償却別表
直接減額方式固定資産圧縮損を計上し帳簿価額を直接減額する圧縮後の帳簿価額をもとに償却別表十三(一)または(二)に記載。別表四の調整は不要
積立金方式剰余金の処分により圧縮積立金を積み立てる(帳簿価額は減らさない)取得価額のまま償却し、積立金を耐用年数にわたり取り崩す別表四で積立額を減算・取崩額を加算、別表五(一)で残高管理
借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金6,000,000国庫補助金収入6,000,000交付決定・受領(不課税)
機械装置10,000,000普通預金11,000,000取得(課税10%・全額控除可)
仮払消費税等1,000,000
固定資産圧縮損6,000,000機械装置6,000,000直接減額方式(対象外)
繰越利益剰余金6,000,000圧縮積立金6,000,000積立金方式の場合・別表四で減算
根拠 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入は法人税法第42条、保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入は法人税法第47条。適用にはそれぞれ別表十三(一)・別表十三(二)を確定申告書に添付する必要があり、添付を忘れると圧縮記帳そのものが認められない。補助金を受けた事業年度末までに資産を取得していない場合は、返還を要しないことが確定していることを条件に特別勘定を設定し、翌期の取得時に圧縮記帳を行う。

保険差益の圧縮限度額 固定資産の滅失・損壊により保険金等を受け、原則としてその事業年度に代替資産を取得した場合に適用できる。

項目金額
受け取った保険金等30,000,000円
滅失経費(取壊し費用等)2,000,000円
被害資産の被害直前の帳簿価額5,000,000円
保険差益金(30,000,000−2,000,000−5,000,000)23,000,000円
代替資産の取得に充てた金額25,000,000円
圧縮限度額(23,000,000×25,000,000÷28,000,000)20,535,714円
借方科目金額貸方科目金額摘要
普通預金30,000,000保険差益30,000,000保険金受領(不課税)
火災損失5,000,000建物5,000,000焼失資産の除却(対象外)
建物25,000,000普通預金27,500,000代替建物の取得(課税10%)
仮払消費税等2,500,000
固定資産圧縮損20,535,714建物20,535,714圧縮限度額まで(対象外)
注意 補助金・保険金は不課税だが、それで取得した資産の課税仕入れは全額控除できる。一方、補助金の交付元によっては、補助対象経費に含まれる消費税のうち仕入税額控除の対象となった金額を報告し返還する義務がある(消費税仕入控除税額報告)。申告後の作業として顧問先の年間スケジュールに入れる。なお棚卸資産には圧縮記帳を適用できず、圧縮後の取得価額で少額判定や税額控除の対象額を判定する点にも注意する。

リース取引の全体整理

区分判定会計処理税務・消費税
所有権移転ファイナンス・リース契約終了時に所有権が移転、割安購入選択権付き、特別仕様など売買処理。自己所有資産と同じ耐用年数・償却方法売買として扱う。引渡時に全額を課税仕入れ
所有権移転外ファイナンス・リース中途解約不能かつフルペイアウト(現在価値基準おおむね90%以上、経済的耐用年数基準75%以上)売買処理が原則。中小企業は賃貸借処理も可売買として扱いリース期間定額法。引渡時に全額控除(賃貸借処理なら分割控除も可)
オペレーティング・リース上記以外賃貸借処理リース料支払時に課税仕入れ
実務のコツ 契約書に区分の記載がなければ、リース期間と物件の法定耐用年数を比べる。リース期間が法定耐用年数の75%以上ならファイナンス・リースと判断してよい。契約一覧に「契約日・物件・リース期間・月額・区分・会計処理・消費税の控除方法」を記録し毎期更新する。

9. 期末残高チェックリストとよくある質問

  • 現金:実査表を作成し出納帳残高と一致しているか。マイナス残高はないか
  • 売掛金:得意先別残高一覧にマイナス残高と1年超の滞留がないか
  • 棚卸資産:実地棚卸表に日付・数量・単価・集計者の署名があるか。預け在庫・預り在庫を区分したか
  • 前渡金・仮払金・立替金:期末残高がゼロか。残るなら内容メモを添付したか
  • 固定資産:減価償却明細と一致し、除却済資産や完成済みの建設仮勘定が残っていないか
  • 敷金・保証金:契約書で返還条件を確認し、返還不能部分を長期前払費用へ振り替えて償却しているか
  • 保険積立金:保険会社の通知と一致し、最高解約返戻率に応じた資産計上割合になっているか
  • 買掛金・未払金:締後仕入・締後経費を計上し、債務確定要件を満たしているか
  • 預り金:源泉所得税・住民税・社会保険料の補助残高が納付予定額と整合しているか
  • 借入金:借入口ごとに返済予定表(または残高証明書)と1円まで一致しているか。保証料の当期償却を計上し、未払利息の計上要否を判断したか(1年内返済額の組替えは必要に応じて)
  • 役員貸付金:認定利息を計上したか。残高が増加していないか

Q. 社長が個人カードで会社の経費を支払いました。どの科目で受けますか。

A. 相手科目は未払金または役員借入金。立替金は「相手が負担すべきものを自社が払った」場合の科目なのでここでは使わない。精算するまでは未払金、精算せず据え置くなら役員借入金にする。領収書の宛名が個人でも業務上の支出なら法人の経費にできるが、インボイスの要件は別途確認する。

Q. 事務所の敷金240万円のうち、契約書に「解約時に賃料3か月分を償却する」とあります。

A. 償却される部分は返還されないため、契約時に長期前払費用へ振り替えて5年(賃借期間が5年未満で更新時に再度支払う場合はその期間)で償却する。残額は差入保証金として資産に残す。償却部分が20万円未満なら支出時に全額損金。消費税は事務所用建物の賃借に係るものなので課税仕入れ。

Q. 消費税の経過措置が2026年10月から70%に下がります。何を準備しますか。

A. ①免税事業者等との取引一覧を作り年間の影響額を試算する、②会計ソフトの税区分を取引日ベースで切り替える設定を9月中に確認する、③少額特例(基準期間の課税売上高1億円以下または特定期間の課税売上高5,000万円以下なら税込1万円未満の課税仕入れはインボイス不要。令和11年(2029年)9月30日まで)の適用可否を確認する、の3点。②は設定漏れが納税額に直結するため10月最初の月次で必ず検証する。

実務のコツ 月次監査では金額の大きい順ではなく前月と動いていない科目から見る。動いていない仮払金・立替金・建設仮勘定・前渡金こそが、決算で必ず問題になる残高である。
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ご利用にあたって 本手引きは2026年8月21日時点の法令・通達等に基づいて作成した実務資料です。税制は毎年改正されます。適用期限・税率・金額基準は、実際の判断の際に必ず最新の法令、国税庁の通達・質疑応答事例、各自治体の公表資料で確認してください。
記載内容は一般的な取扱いの整理であり、個別具体的な事案への当てはめを保証するものではありません。判断に迷う論点、前例のない取引、金額的影響の大きい論点は、独断で処理せず必ず所内で確認してください。

監修ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士事務所)
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