売上高・売上原価から役員報酬、交際費、修繕費、租税公課、寄附金まで。損益科目の判断基準と頻出仕訳、外注費と給与の区分、資本的支出との判定を収録。
- 1. 損益科目を判断する4つの層
- 2. 売上高 — 計上基準と値引・返品・割戻
- 3. 売上原価 — 仕入高・棚卸高・製造原価
- 4. 外注費と給与の区分 — 消費税と源泉の両方に効く
- 5. 役員報酬・役員賞与 — 3類型と改定ルール
- 6. 給料手当・法定福利費・福利厚生費・退職金・通勤費
- 7. 旅費交通費・接待交際費・会議費・広告宣伝費
- 8. 物件費 — 消耗品費から修繕費・賃借料まで
- 9. 租税公課 — 損金算入と不算入の一覧
- 10. 支払手数料・支払報酬 — 源泉徴収の要否
- 11. 寄附金 — 区分と限度額計算
- 12. 減価償却費・貸倒損失
- 13. 営業外損益・特別損益
- 14. 特殊取引① 補助金・助成金と圧縮記帳
- 15. 特殊取引② 固定資産の取得・売却・除却・下取りと車両購入
- 16. 特殊取引③ 中古資産の耐用年数と少額減価償却資産
- 17. 特殊取引④ 借入金・信用保証料・手形・ファクタリング
- 18. 特殊取引⑤ 消費税の経理方式と控除対象外消費税額等
- 19. 特殊取引⑥ 生命保険と社宅
- 20. 特殊取引⑦ 前期損益修正・期ズレの是正
- 21. 章末チェックリスト
CHAPTER 05勘定科目・仕訳辞典 II — 損益科目と特殊取引
損益科目は「どの科目に入れるか」で終わらない。同じ支出でも、消費税の課税区分、法人税の損金性、源泉徴収の要否が別々に決まる。本章はP/L科目を科目ごとに、使う場面/判断のポイント/頻出仕訳/消費税の課税区分/税務上の留意点/よくあるミスの型で通す。後半では補助金、車両購入、中古資産、少額減価償却資産、借入金、社宅、期ズレの是正といった、判断を誤ると追徴に直結する特殊取引を独立の節で扱う。
1. 損益科目を判断する4つの層
領収書1枚を前にしたとき、頭の中で回すべき順序は決まっている。この順序を飛ばすから、科目は合っているのに消費税を間違える、あるいは源泉を引き忘れるという事故が起きる。
- STEP1 取引の実態をつかむ
誰に、何の対価として、いつの分を払ったのか。請求書・契約書・稟議書に当たる。摘要に「〇〇商事 5月分」と書けるまで分からないなら、まだ仕訳は切らない。 - STEP2 会計科目を決める
実態が決まれば科目はほぼ自動的に決まる。迷ったら前期に同じ取引をどの科目で処理したかを総勘定元帳で確認する。科目の継続性は比較可能性そのものである。 - STEP3 消費税の課税区分を決める
課税10%/課税8%(軽減)/非課税/免税/不課税(対象外)のどれか。科目とは独立に決まる。同じ支払手数料でも振込手数料は課税、保証料は非課税である。 - STEP4 法人税・源泉の論点を確認する
損金にならない支出か(交際費・寄附金・役員給与・租税公課)。源泉徴収が要る支払か(報酬・給与・利子配当)。資産計上すべき支出ではないか(資本的支出・繰延資産・前払費用)。
消費税の課税区分 早見表(損益科目の頻出パターン)
| 区分 | 意味 | 代表例 | 仕入税額控除 |
|---|---|---|---|
| 課税10% | 国内での資産の譲渡・貸付け・役務提供 | 仕入、外注費、家賃(事業用建物)、通信費、水道光熱費、消耗品費 | できる |
| 課税8%(軽減) | 飲食料品(外食・酒類を除く)、定期購読の新聞(週2回以上発行) | 来客用茶菓子、贈答用の食品、新聞購読料 | できる |
| 非課税 | 消費に負担を求める性質になじまない、または政策的配慮 | 支払利息、保証料、保険料、土地の賃借料、住宅家賃、印紙、行政手数料 | できない |
| 免税(0%) | 輸出取引等 | 輸出売上、国際輸送、国際電話・国際郵便 | できる(課税売上割合では分子に算入) |
| 不課税(対象外) | そもそも対価性がない、または国外取引 | 給与、法定福利費、寄附金、補助金、受取配当金、保険金、海外出張の日当 | できない |
2. 売上高 — 計上基準と値引・返品・割戻
使う場面と判断のポイント
売上をいつ計上するかは、益金の帰属年度そのものである。原則は引渡基準、すなわち資産の引渡しがあった日、役務の提供が完了した日に計上する。実務ではこれを取引形態に落とし込んだ次の基準から一つを選び、継続適用する。
| 基準 | 計上のタイミング | 向く取引 | 確認する資料 |
|---|---|---|---|
| 出荷基準 | 商品を出荷した日 | 国内の物品販売。出荷から引渡しまでが通常要する期間内であれば継続適用を条件に容認される | 出荷伝票、送り状控 |
| 引渡基準(着荷基準) | 相手方に到着した日 | 据付けを伴わない納品 | 受領書、配送業者の配達完了記録 |
| 検収基準 | 相手方の検収が完了した日 | ソフトウェア開発、機械の据付販売、受託業務 | 検収書、検収完了メール |
| 役務完了基準 | 役務の提供が完了した日 | 単発のコンサルティング、修理 | 作業報告書、完了報告書 |
| 期間対応 | 契約期間の経過に応じて按分 | 顧問料、保守料、家賃、サブスクリプション | 契約書の役務提供期間 |
工事の収益計上
請負金額10億円以上かつ着手から引渡しまで1年以上の長期大規模工事は、進行度合いに応じた収益計上が強制される。それ以外は進行基準と工事完成基準を選択できる。工事完成基準を採る場合、決算日時点の未完成工事の原価を未成工事支出金へ振り替えて資産に残す処理が必須。落とすと原価だけ先に落ち、期をまたいで利益が振れる。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 売掛金 | 1,100,000 | 売上高 | 1,000,000 | A社 6月納品分 |
| 仮受消費税等 | 100,000 | 課税売上10% | ||
| 未成工事支出金 | 3,200,000 | 外注費 | 2,400,000 | 決算整理/B工事 未完成分 |
| 材料費 | 800,000 | 同上 |
売上値引・返品・割戻
3つは性格が違う。値引は品質不良や数量不足による代金の減額、返品は商品そのものの戻り、割戻(リベート)は一定期間の取引高に応じた代金の払戻しである。いずれも売上高のマイナス(売上値引高・売上返品高・売上割戻高)として処理し、消費税は売上に係る対価の返還等として売上税額から控除する。
売上割引は支払期日前の入金に対する金利的な減額であり、収益認識に関する会計基準の適用対象では売上高から控除する。消費税はいずれも「売上に係る対価の返還等」となる。
3. 売上原価 — 仕入高・棚卸高・製造原価
売上原価は「期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高」で求める。期中は仕入高に計上し、決算で期首・期末の棚卸資産を振り替える。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 仕入高 | 2,000,000 | 買掛金 | 2,200,000 | 期中/C社 商品仕入 |
| 仮払消費税等 | 200,000 | 課税仕入10% | ||
| 期首商品棚卸高 | 1,500,000 | 商品 | 1,500,000 | 決算整理/期首分の振替 |
| 商品 | 1,800,000 | 期末商品棚卸高 | 1,800,000 | 決算整理/実地棚卸に基づく |
| 買掛金 | 55,000 | 仕入値引高 | 50,000 | 不良品につき値引 |
| 仮払消費税等 | 5,000 | 仕入対価の返還等 |
棚卸で必ず確認すること
- 実地棚卸表に、日付・カウント者・単価の根拠が記載されているか
- 評価方法(最終仕入原価法、総平均法など)の届出内容と一致しているか。届出がなければ法定評価方法である最終仕入原価法による
- 預け在庫(外注先・倉庫会社にあるもの)、未着品、預り在庫(他社所有)の区分が正しいか
- 売れ残りの陳腐化品を簿価のまま残していないか。評価損を計上できるのは災害・著しい陳腐化など限定された事由のみで、単なる売行き不振では認められない
- 期末直前の仕入について、検収済みの未着品を落としていないか
製造原価(労務費・製造経費)
製造業・建設業では販売費及び一般管理費と製造原価を分ける。工場の従業員給与は労務費、工場の水道光熱費・減価償却費・地代家賃は製造経費であり、売上原価を通って損益に至る。同じ電気代でも本社は水道光熱費、工場は製造経費であり、期末仕掛品がある分だけ当期の費用が減る。区分せず全額を販管費に落とすと、仕掛品の評価が過小になり所得が圧縮される。
4. 外注費と給与の区分 — 消費税と源泉の両方に効く
同じ人に同じ金額を払っても、外注費なら課税仕入れとして消費税の控除ができ源泉徴収も不要、給与なら消費税は不課税で源泉徴収が必要になる。調査で否認されると、消費税の追徴と源泉所得税の追徴が同時に起きる。最も金額インパクトの大きい論点の一つである。
| 判定要素 | 外注費(請負)に傾く事情 | 給与(雇用)に傾く事情 |
|---|---|---|
| 代替性 | 本人以外の者が代わりに役務を提供したり、補助者を使ったりできる | 本人が行わなければならず、代替が認められない |
| 指揮命令 | 仕事の順序・方法・時間配分を自分で決める。作業指示は成果物の仕様に限られる | 作業内容・手順・時間について具体的な指揮監督を受ける |
| 危険負担 | 完成前に成果物が滅失しても報酬を請求できない。やり直しは自己負担 | 成果の有無にかかわらず時間に応じた対価が支払われる |
| 材料・用具の負担 | 材料・工具・車両・作業服を自分で用意する | 会社が材料・工具を提供する |
| 報酬の性格 | 出来高・工事単位・成果物単位で決まる | 時間給・日給・月給で決まり、残業手当や欠勤控除がある |
| 拘束性 | 勤務時間の指定がなく、他社の仕事も受けられる | 始業終業時刻が決まり、タイムカードで管理される |
6要素を総合勘案するが、指揮命令と代替性の2つは重く見られる。裏づけとして、業務委託契約書、外注先名義で作成された請求書、報酬の決め方が分かる見積書、他社とも取引している事実を揃えておく。
年間の外注費1,200万円(税抜)が給与と認定されると、消費税は課税仕入れ120万円が否認され、さらに源泉所得税と不納付加算税・延滞税が加わる。社会保険の遡及加入を求められることもある。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 外注費 | 300,000 | 普通預金 | 330,000 | 請負として処理/課税仕入10% |
| 仮払消費税等 | 30,000 | |||
| 雑給 | 300,000 | 預り金 | 8,420 | 給与として処理/不課税・源泉あり |
| 普通預金 | 291,580 | 源泉徴収税額は税額表による |
5. 役員報酬・役員賞与 — 3類型と改定ルール
役員に対する給与は、次の3類型のいずれかに当てはまらない限り損金にならない。中小企業で実際に使うのは前2つである。
| 項目 | 定期同額給与 | 事前確定届出給与 | 業績連動給与 |
|---|---|---|---|
| 支給形態 | 1か月以下の一定期間ごとに、同額を支給 | あらかじめ定めた時期に、確定額を支給 | 利益・株価・売上高等の指標に連動 |
| 事前手続 | 不要(改定は所定の時期に) | 所轄税務署へ届出が必要 | 報酬委員会の決定等、有価証券報告書での開示等 |
| 対象法人 | すべての法人 | すべての法人 | 同族会社以外(同族会社である完全子法人で非同族の完全親法人があるものを含む) |
| 改定できる時期 | 事業年度開始の日から3か月以内の通常改定、臨時改定事由、業績悪化改定事由 | 届出内容の変更は所定の事由のみ | ー |
| 中小企業での使用 | ほぼ全社が該当 | 役員に賞与を出すとき | 実務上まず使わない |
改定時期のルール
- 通常改定/事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行う改定。3月決算なら6月末までの定時株主総会での改定が該当する。
- 臨時改定事由/役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更など。平取締役が代表取締役に就任した、病気で職務を大幅に縮小した、といった場合。
- 業績悪化改定事由/経営状況が著しく悪化したことなどによる減額改定。単に業績目標に届かないというだけでは足りず、金融機関や取引先など第三者との関係で減額せざるを得ない事情が要る。増額はこの事由では認められない。
期中改定と損金不算入額の計算
3月決算法人で、正当な事由なく期中に改定した場合の不算入額は次のとおり。
| ケース | 支給状況 | 損金不算入額 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 期中増額 | 4月から9月は月50万円、10月から3月は月80万円 | 30万円 × 6か月 = 180万円 | 増額後のうち増額前の水準を超える部分が、定期同額給与に当たらない |
| 期中減額(事由なし) | 4月から9月は月80万円、10月から3月は月50万円 | 30万円 × 6か月 = 180万円 | 減額後の50万円が同額部分とされ、それを超える前半の上乗せ分が否認される |
事前確定届出給与の届出期限
次のいずれか早い日までに届け出る。
- 株主総会等の決議により職務執行の開始日を定めた場合、その決議をした日から1か月を経過する日
- その会計期間開始の日から4か月を経過する日(申告期限の延長特例の適用がある場合は、その延長月数を加えた月数)
- 新設法人は、設立の日以後2か月を経過する日
届け出た金額・時期と1円でも1日でも異なる支給をすると、その支給額の全額が損金不算入になる。減額して支給した場合も同じである。資金繰りが読めないなら、支給しないという選択(この場合は全額不支給なので不算入額も生じない)を検討する。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 役員報酬 | 800,000 | 預り金 | 185,000 | 源泉所得税・住民税・社会保険料 |
| 普通預金 | 615,000 | 6月分 定期同額給与 | ||
| 役員賞与 | 2,000,000 | 預り金 | 460,000 | 事前確定届出給与(届出どおり支給) |
| 普通預金 | 1,540,000 |
6. 給料手当・法定福利費・福利厚生費・退職金・通勤費
給料手当・雑給・賞与
正社員は給料手当、パート・アルバイトは雑給と分けると、人件費の分析と社会保険の加入漏れチェックがしやすい。いずれも不課税。賞与は支給時計上が原則だが、決算日までに支給額を各人に通知し、翌事業年度1か月以内に支払い、通知した事業年度に損金経理する3要件をすべて満たせば未払賞与として当期の損金にできる。役員賞与は対象外。
法定福利費
社会保険料・労働保険料の事業主負担分と子ども・子育て拠出金が入る。すべて不課税。労働保険は年度更新で概算納付するため、期中は前払費用で受け、決算で当期対応分を振り替える。従業員負担分の雇用保険料は預り金。
福利厚生費と給与課税の線引き
| 項目 | 福利厚生費として処理できる要件 | 外れると |
|---|---|---|
| 社員旅行 | 旅行期間が4泊5日以内(海外は現地滞在4泊5日以内)、全従業員のおおむね50%以上が参加、会社負担額が社会通念上一般的な範囲(実務上は1人10万円程度が目安) | 参加者への給与。役員のみの旅行は役員給与、取引先同行は交際費 |
| 慶弔金 | 慶弔見舞金規程があり、支給事由と金額が定められ、金額が社会通念上相当 | 給与課税。規程がないまま高額を支給すると全額否認されやすい |
| 食事の補助 | 従業員が食事代の半額以上を負担し、かつ会社負担額が月3,500円(消費税抜き)以下 | 会社負担額の全額が給与。ただし残業・宿日直に伴う食事は全額非課税 |
| 健康診断 | 全従業員が対象(一定年齢以上などの合理的な区分は可)、会社が医療機関へ直接支払い、金額が常識的な範囲 | 役員・特定の者のみを対象とすると給与。本人が立替えて後日精算する形も否認されやすい |
| 忘年会・懇親会 | 全社員を対象とし、通常要する費用の範囲 | 一部の者だけなら給与、社外の者が入れば交際費 |
| 制服・作業服 | 専ら勤務で着用し、私物として使えないもの | 私服として使えるものは給与 |
退職金
損金算入時期は、株主総会等でその額が具体的に確定した日の属する事業年度が原則。ただし実際に支払った日の属する事業年度に損金経理した場合はそれも認められる。役員退職金の適正額は、実務上最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率で検証する。不相当に高額な部分は損金不算入となる。
個人側は退職所得となり、退職所得控除(勤続20年以下は40万円 × 勤続年数、20年超は800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年))を差し引いた残額の2分の1が課税対象になる。勤続5年以下の役員等は2分の1課税の適用がない。退職所得の受給に関する申告書の提出がないと一律20.42%の源泉徴収となるため、支給前に必ず回収する。
通勤費
| 通勤方法 | 1か月あたりの非課税限度額 |
|---|---|
| 電車・バス等の交通機関 | 最も経済的かつ合理的な経路による運賃等で15万円まで |
| マイカー・自転車 片道2km未満 | 全額課税(非課税枠なし) |
| 同 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 同 10km以上15km未満 | 7,100円 |
| 同 15km以上25km未満 | 12,900円 |
| 同 25km以上35km未満 | 18,700円 |
| 同 35km以上45km未満 | 24,400円 |
| 同 45km以上55km未満 | 28,000円 |
| 同 55km以上 | 31,600円 |
マイカー通勤者が駐車場等を利用している場合、その料金相当額(上限5,000円)を上記の距離に応じた限度額に加算できる。片道12kmでマイカー通勤し、月4,000円の駐車場を借りている従業員なら、7,100円 + 4,000円 = 11,100円までが非課税となる。限度額を超える部分は給与として源泉徴収の対象になり、年末調整でも給与に含める。
消費税は、通勤手当のうち通勤に通常必要と認められる部分が課税仕入れになる。所得税の非課税限度額を超えていても、通常必要な範囲なら課税仕入れとして扱える。
7. 旅費交通費・接待交際費・会議費・広告宣伝費
旅費交通費と旅費規程
宿泊を伴う出張は出張旅費規程に基づく定額支給とするのが実務の型である。日当・宿泊費の定額を決めておけば、実費との差額が出ても従業員に所得税は課されず、法人は全額を損金にでき、国内出張分は課税仕入れとして控除もできる。
規程を有効にする要件は3つ。①全役職員を対象とすること、②役職に応じた金額差が合理的な範囲であること、③同業・同規模の他社と比べて過大でないこと。出張報告書(日付・訪問先・用件)と紐づけて保存する。
| 支出 | 科目 | 消費税 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 国内出張の日当・宿泊費(規程による定額) | 旅費交通費 | 課税10% | 実費精算でなくても課税仕入れとなる |
| 海外出張の日当・宿泊費 | 旅費交通費 | 不課税(対象外) | 国外での役務提供のため |
| 国際線の航空券 | 旅費交通費 | 免税 | 国際輸送は輸出免税 |
| 出張時の空港までの国内交通費 | 旅費交通費 | 課税10% | 国内区間は課税 |
| 単身赴任者の帰省旅費 | 旅費交通費 | 課税10% | 月1回程度なら給与課税なし |
接待交際費 — 損金算入限度額
交際費等は原則として全額が損金不算入だが、次の特例がある。
| 法人の区分 | 選択できる損金算入枠 |
|---|---|
| 期末資本金1億円以下の中小法人(資本金5億円以上の大法人の完全子法人等を除く) | ①年800万円の定額控除限度額 ②接待飲食費の50% のいずれか有利な方 |
| 期末資本金1億円超100億円以下の法人 | ②接待飲食費の50% のみ |
| 期末資本金100億円超の法人 | 枠なし(全額損金不算入) |
事業年度が1年に満たない場合、800万円は月数按分する。この措置は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度に適用される。※適用期限は最新の情報を要確認
1人当たり1万円以下の飲食費の除外
社外の者との飲食で参加者1人当たり1万円以下のものは、交際費等から除外され全額損金となる。判定は飲食費の総額 ÷ 参加人数で行い、税抜経理なら税抜、税込経理なら税込で判定する。社内の者だけの飲食は除外の対象にならない。
除外を受けるために帳簿書類に記載する事項
- 飲食等のあった年月日
- 参加した得意先・仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
- 飲食等に参加した者の数
- その費用の金額、飲食店等の名称および所在地
- その他参考となるべき事項
領収書の裏に「6/12 D社2名、当社2名 計4名」と書くだけで足りる。この一手間がないと、1人5,000円の飲食でも交際費に落とされる。
交際費・会議費・広告宣伝費・福利厚生費の線引き
| 支出 | 相手 | 科目 | 損金性 |
|---|---|---|---|
| 取引先との会食(1人1万円以下) | 特定の取引先 | 会議費等 | 全額損金(記載事項の保存が要件) |
| 取引先との会食(1人1万円超) | 特定の取引先 | 接待交際費 | 限度額の範囲で損金 |
| 社内会議の弁当・茶菓 | 自社の役職員 | 会議費 | 全額損金 |
| お中元・お歳暮・手土産 | 特定の取引先 | 接待交際費 | 限度額の範囲で損金 |
| 社名入りカレンダー・粗品の配布 | 不特定多数 | 広告宣伝費 | 全額損金 |
| 抽選による景品、一般消費者向けキャンペーン | 不特定多数 | 広告宣伝費・販売促進費 | 全額損金 |
| 特約店に対する報奨金・旅行招待 | 特定の取引先 | 接待交際費 | 限度額の範囲で損金(金銭による売上割戻は交際費に当たらない) |
| 創立記念の全社員パーティー | 自社の役職員全員 | 福利厚生費 | 全額損金 |
| 取引先の慶弔金 | 特定の取引先 | 接待交際費 | 限度額の範囲で損金 |
| ゴルフクラブ・ロータリークラブ等の年会費 | 特定の取引先関係 | 接待交際費 | 限度額の範囲で損金(入会金は資産計上または交際費) |
8. 物件費 — 消耗品費から修繕費・賃借料まで
| 科目 | 使う場面 | 消費税 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 荷造運賃 | 商品の発送費、梱包資材 | 課税10%/輸出に係る国際輸送は免税 | 仕入時の引取運賃は取得価額に含める |
| 水道光熱費 | 電気・ガス・水道 | 課税10% | 工場分は製造経費。自宅兼事務所は床面積等で按分し根拠を残す |
| 通信費 | 電話、インターネット、切手、宅配便の一部 | 課税10%/国際電話・国際郵便は免税 | 郵便切手は購入時は非課税、使用時に課税仕入れが原則。継続適用で購入時課税処理も可 |
| 消耗品費 | 10万円未満の器具備品、清掃用品、備品類 | 課税10% | 10万円未満の判定は、税抜経理なら税抜金額で行う |
| 事務用品費 | 文具、コピー用紙、伝票 | 課税10% | 消耗品費との使い分けは事務所ルールを決めて継続適用 |
| 地代家賃 | 事務所・店舗・倉庫の賃料、駐車場代 | 事業用建物は課税10%/土地の1か月以上の貸付けと住宅家賃は非課税 | 更地の貸付けは非課税、区画・整地・設備を伴う駐車場は課税 |
| 賃借料 | 機械・備品の短期レンタル | 課税10% | 期をまたぐ前払分は前払費用へ |
| リース料 | オペレーティング・リース、賃貸借処理するリース | 課税10% | 下記のとおり消費税の控除時期に注意 |
| 保険料 | 火災保険、自動車保険、賠償責任保険 | 非課税 | 複数年契約は前払費用・長期前払費用で按分 |
| 新聞図書費 | 新聞、書籍、業界誌、有料データベース | 定期購読契約による新聞(週2回以上発行)は8%、それ以外は10% | 電子版の新聞は電気通信利用役務として10% |
| 諸会費 | 同業者団体の会費、商工会議所会費 | 通常会費は対価性がなく不課税/明確な対価がある特別会費は課税 | 同業者団体の入会金は繰延資産。ロータリー等の入会金・会費は交際費 |
| 研究開発費 | 新製品・新技術の研究、試作 | 課税10%(人件費部分は不課税) | 会計上は発生時費用処理。試験研究費税額控除の対象範囲とは一致しないため別集計する |
| 雑費 | 他のどの科目にも当たらない少額の支出 | 都度判定 | 総経費の1%を超えたら科目を新設する。調査で最初に開かれる科目 |
修繕費と資本的支出の判定
固定資産に対する支出を修繕費(一時の損金)とするか資本的支出(資産計上して減価償却)とするかは、原状回復か価値増加かで決まる。ただし実務では形式基準で決着させる場面が多い。次のフローを上から順に当てる。
- STEP1 明らかな資本的支出か
用途変更のための改造、避難階段の取付けなど物理的付加、建物の増築、機械の性能を明らかに向上させる部品交換なら資本的支出。該当しなければSTEP2へ。 - STEP2 明らかな修繕費か
機械の移設、地盤沈下による原状回復、破損部分の取替えなど通常の維持管理・原状回復なら修繕費。該当しなければSTEP3へ。 - STEP3 少額または短周期か
一の修理・改良等の金額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行われる修理・改良なら修繕費として損金経理できる。該当しなければSTEP4へ。 - STEP4 形式基準に当てはまるか
区分が明らかでない場合、①その金額が60万円未満、または②その資産の前期末取得価額のおおむね10%相当額以下、のいずれかなら修繕費として損金経理できる。該当しなければSTEP5へ。 - STEP5 継続適用による7対3基準
なお区分が明らかでないとき、支出額の30%とその資産の前期末取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出とすることができる。継続適用が条件。
| 事例 | 資産の前期末取得価額 | 支出額 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 倉庫の屋根の全面塗替え | 8,000,000円 | 450,000円 | 60万円未満なので修繕費(原状回復であれば形式基準を待たずに修繕費) |
| 店舗内装の一部改修(区分不明) | 10,000,000円 | 900,000円 | 60万円以上だが前期末取得価額の10%(100万円)以下なので修繕費とできる |
| 機械の制御盤交換(区分不明) | 5,000,000円 | 1,200,000円 | 60万円以上かつ10%(50万円)超。7対3基準なら 360,000円(支出額の30%)と 500,000円(10%)のうち少ない 360,000円を修繕費、840,000円を資本的支出 |
| 事務所をレイアウト変更し用途を会議室へ改造 | ー | 1,500,000円 | 用途変更のための改造なので全額が資本的支出 |
9. 租税公課 — 損金算入と不算入の一覧
| 区分 | 税目・負担 | 計上時期の目安 |
|---|---|---|
| 損金算入 | 事業税(特別法人事業税を含む) | 申告書を提出した日の属する事業年度(申告納税方式) |
| 損金算入 | 固定資産税・都市計画税・償却資産税 | 賦課決定のあった日、または納期の到来した分ごと(継続適用) |
| 損金算入 | 自動車税種別割・環境性能割・軽自動車税 | 賦課決定のあった日 |
| 損金算入 | 印紙税、登録免許税、不動産取得税、事業所税 | 納付した日または賦課決定日 |
| 損金算入 | 利子税、納期限の延長に係る延滞金 | 納付日 |
| 損金算入 | 税込経理を採用している場合の消費税等の納付額 | 申告書提出日(未払計上も可) |
| 損金不算入 | 法人税、地方法人税、防衛特別法人税 | 法人税等として処理し別表四で加算 |
| 損金不算入 | 都道府県民税、市町村民税(均等割を含む) | 同上 |
| 損金不算入 | 延滞税、延滞金(納期限延長分を除く)、加算税、加算金 | 租税公課で処理し別表四で加算 |
| 損金不算入 | 罰金、科料、過料、交通反則金 | 同上。従業員の駐車違反の会社負担分も不算入 |
| 損金不算入 | 印紙税の過怠税 | 同上 |
| 損金不算入 | 法人税額から控除する所得税額・復興特別所得税額 | 税額控除を選択した場合。損金算入を選択することもできる |
租税公課はすべて消費税の不課税(対象外)である。印紙は郵便局や指定販売所で買えば非課税、金券ショップで買えば課税仕入れになる。
10. 支払手数料・支払報酬 — 源泉徴収の要否
支払手数料は銀行の振込手数料、代行手数料、仲介手数料など。振込手数料は課税10%、信用保証料や保険代理店を通す保険料は非課税である。士業や個人への報酬は支払報酬で分けて管理し、源泉徴収の対象を洗い出す。
| 報酬の種類 | 源泉徴収税額の計算 |
|---|---|
| 原稿料、講演料、デザイン料、翻訳料、通訳料 | 支払金額 × 10.21%。同一人に1回に支払う金額が100万円を超える場合、超える部分は20.42% |
| 弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士等の報酬 | 上記と同じ |
| 司法書士・土地家屋調査士・海事代理士の報酬 | (支払金額 − 10,000円)× 10.21%(1回の支払ごとに1万円を控除) |
| 外交員・集金人・電力量計の検針人の報酬 | (その月中の支払金額 − 120,000円)× 10.21% |
| ホステス等の報酬 | (支払金額 − 5,000円 × 計算期間の日数)× 10.21% |
| 広告宣伝のための賞金 | (支払金額 − 500,000円)× 10.21% |
| 個人への地代家賃、法人への報酬 | 源泉徴収は不要(法人への支払は原則として対象外) |
請求書で報酬本体と消費税額が明確に区分されていれば税抜金額を源泉徴収の対象としてよい。区分がなければ税込金額が対象になる。
計算例(税理士報酬 税抜1,200,000円、消費税120,000円)
源泉徴収税額 = 1,000,000円 × 10.21% + 200,000円 × 20.42% = 102,100円 + 40,840円 = 142,940円
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 支払報酬 | 1,200,000 | 普通預金 | 1,177,060 | 税務顧問料・決算料 |
| 仮払消費税等 | 120,000 | 預り金 | 142,940 | 源泉所得税(翌月10日納付) |
11. 寄附金 — 区分と限度額計算
| 区分 | 例 | 損金算入 |
|---|---|---|
| 国・地方公共団体に対する寄附金 | 被災自治体への義援金、公立学校への寄附 | 全額損金 |
| 財務大臣の指定した寄附金 | 日本赤十字社の義援金口座(指定されたもの)、国宝の修復 | 全額損金 |
| 特定公益増進法人等に対する寄附金 | 公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人 | 特別損金算入限度額まで |
| 一般の寄附金 | 町内会、政治団体、一般社団法人、神社仏閣 | 損金算入限度額まで |
| 国外関連者に対する寄附金 | 海外子会社への無償供与、低利貸付の利息差額 | 全額損金不算入 |
| 完全支配関係がある法人に対する寄附金 | 100%グループ内の贈与 | 全額損金不算入(受領側は益金不算入) |
限度額の計算式
- 一般の寄附金/(期末の資本金の額と資本準備金の額の合計額 × 当期の月数 ÷ 12 × 2.5 ÷ 1,000 + 寄附金支出前の所得金額 × 2.5 ÷ 100)× 4分の1
- 特定公益増進法人等/(期末の資本金の額と資本準備金の額の合計額 × 当期の月数 ÷ 12 × 3.75 ÷ 1,000 + 寄附金支出前の所得金額 × 6.25 ÷ 100)× 2分の1
計算例(資本金1,000万円、資本準備金なし、寄附金支出前の所得金額2,000万円、一般寄附金50万円)
限度額 =(10,000,000 × 12 ÷ 12 × 2.5 ÷ 1,000 + 20,000,000 × 2.5 ÷ 100)× 1 ÷ 4 =(25,000 + 500,000)× 1 ÷ 4 = 131,250円
損金不算入額 = 500,000 − 131,250 = 368,750円。別表十四(二)で計算し、別表四で加算する。
12. 減価償却費・貸倒損失
減価償却費
法人の減価償却は任意償却であり、損金経理した金額のうち償却限度額までが損金になる。限度額超過分は償却超過額として翌期以降に繰り越す。
- 法定償却方法/建物、建物附属設備、構築物は定額法。機械装置、車両運搬具、工具器具備品は定率法(届出により定額法も選択可)。ソフトウェアは定額法(自社利用は5年)。
- 事業供用日/取得日ではなく、事業の用に供した日から月割で償却する。期末に納品されただけで稼働していない機械は償却できない。
- 備忘価額/償却が終わっても1円を残す。
- 資本的支出/新たな資産の取得とみなして、元の資産と同じ耐用年数・償却方法で償却する。
貸倒損失の3要件
| 区分 | 要件 | 処理 | 対象債権 |
|---|---|---|---|
| 法律上の貸倒れ | 会社更生法・民事再生法の認可決定、特別清算に係る協定の認可、法令の規定による整理手続での切捨て、債務超過の状態が相当期間継続し弁済を受けられない場合に書面で行った債務免除 | 切り捨てられた金額をその事業年度の損金に算入(損金経理は要件でない) | すべての金銭債権 |
| 事実上の貸倒れ | 債務者の資産状況・支払能力等からみて全額が回収できないことが明らか。担保物は処分後、保証人がいるときは求償不能が明らかになった後 | その全額を貸倒損失として損金経理する(一部だけの計上は不可) | すべての金銭債権 |
| 形式上の貸倒れ | ①継続的な取引を行っていた債務者と取引を停止した時以後1年以上経過したこと、または②同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用に満たず、督促しても弁済がないこと | 備忘価額1円を残して損金経理する | 売掛債権のみ(貸付金は対象外) |
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒損失 | 299,999 | 売掛金 | 299,999 | E社 取引停止後1年経過/備忘1円を残す |
課税売上に係る売掛金の貸倒れは、その税額を貸倒れに係る消費税額として売上税額から控除できる。貸倒れの事実を証する書類(債務免除通知の控、破産手続の通知、督促の記録)の保存が要件。免税事業者であった期間の売上に係る債権は対象外。
13. 営業外損益・特別損益
受取利息と受取配当金
預貯金の利息は15.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315%)が源泉徴収される。法人は住民税利子割が廃止済みで国税のみ。手取額を割り戻して総額を計上し、源泉税額は法人税額から控除する(別表六(一))。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 8,469 | 受取利息 | 10,000 | 非課税売上(課税売上割合の分母に算入) |
| 法人税等 | 1,531 | 源泉所得税15.315% |
| 株式の区分 | 保有割合 | 益金不算入割合 | 負債利子の控除 |
|---|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 100%(計算期間を通じて完全支配関係) | 100% | なし |
| 関連法人株式等 | 3分の1超100%未満(計算期間を通じて保有) | 100% | あり(配当等の額の4%と支払利子等の10%のいずれか少ない額) |
| その他の株式等 | 5%超3分の1以下 | 50% | なし |
| 非支配目的株式等 | 5%以下 | 20% | なし |
受取配当金は消費税の不課税(対象外)である。源泉徴収税率は上場株式等で15.315%、非上場株式等で20.42%。別表八(一)で益金不算入額を計算する。
雑収入の課税区分
| 内容 | 消費税 | 法人税 |
|---|---|---|
| 補助金・助成金・給付金 | 不課税 | 益金(交付決定基準) |
| 損害保険金(対価性なし) | 不課税 | 益金。圧縮記帳の対象となる場合あり |
| 還付加算金 | 不課税 | 益金(法人税の還付金本体は益金不算入) |
| 法人税・住民税の還付金 | 不課税 | 益金不算入(別表四で減算) |
| 事業税の還付金 | 不課税 | 益金 |
| 作業くず・空箱の売却収入 | 課税10% | 益金 |
| 自動販売機の設置手数料 | 課税10% | 益金 |
| 従業員から徴収する社宅家賃 | 非課税(住宅の貸付け) | 益金 |
| 受取家賃(事業用) | 課税10% | 益金 |
| 債務免除益 | 不課税 | 益金 |
支払利息・為替差損益・その他
- 支払利息/非課税。借入金の元本返済は費用ではない。返済額のうち利息部分だけを支払利息に計上する。
- 為替差損益/不課税。期末の外貨建債権債務は換算方法の届出により決まり、届出がなければ短期は期末時換算法、長期は発生時換算法による。
- 固定資産売却損益/消費税は「売却損益」ではなく譲渡対価の全額が課税売上(土地は非課税)。ここは間違えやすい。
- 災害損失/被災した資産の帳簿価額と復旧費用のうち原状回復部分。災害の場合は資本的支出との区分に特例がある。
- 法人税等/法人税・地方法人税・住民税・事業税の当期分。防衛特別法人税は令和8年(2026年)4月1日以後に開始する課税事業年度から課され、課税標準法人税額(基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた額)の4%となる。法人税の申告に合わせ、課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告する。
- 法人税等調整額/税効果会計を適用する場合の繰延税金資産・負債の増減。中小企業では適用しない先も多いが、適用するなら回収可能性の判断根拠を毎期残す。
14. 特殊取引① 補助金・助成金と圧縮記帳
補助金・助成金の論点は3つに整理できる。いつ益金にするか、消費税はどうなるか、圧縮記帳を使えるかである。
- STEP1 収益計上時期を決める
原則は交付決定通知を受け、返還を要しないことが確定した日の属する事業年度。決算日までに交付決定があれば、入金が翌期でも未収入金で当期に計上する。雇用関係の助成金は支給要件を満たした日で判定する。 - STEP2 消費税を確認する
補助金・助成金は対価性がないため不課税。ただし補助金で購入した資産の課税仕入れは通常どおり控除できるため、多くの制度で「消費税等仕入控除税額」の報告・返還が求められる。報告書の提出期限をカレンダーに入れる。 - STEP3 圧縮記帳の可否を判断する
国庫補助金等で交付目的に適合した固定資産を取得し、返還不要が確定していれば圧縮記帳ができる。経費補助(人件費補助、家賃補助、雇用調整助成金など)は対象外。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 未収入金 | 3,000,000 | 雑収入 | 3,000,000 | ①交付決定時/国庫補助金収入・不課税 |
| 機械装置 | 6,000,000 | 普通預金 | 6,600,000 | ②設備の取得/課税仕入10% |
| 仮払消費税等 | 600,000 | |||
| 普通預金 | 3,000,000 | 未収入金 | 3,000,000 | ③補助金の入金 |
| 固定資産圧縮損 | 3,000,000 | 機械装置 | 3,000,000 | ④圧縮記帳(直接減額方式) |
圧縮後の帳簿価額3,000,000円を基礎に減価償却する。圧縮記帳は課税の繰延べであって免除ではない。別表十三(一)を添付する。圧縮積立金を積み立てる積立金方式もあり、帳簿価額を減らさず別表四で減算する。融資を受けている先では積立金方式の方が決算書を説明しやすい。
15. 特殊取引② 固定資産の取得・売却・除却・下取りと車両購入
車両購入の分解
車両の購入は、1枚の注文書に性格の異なる支出が混在する典型例である。次のように分解する。
| 明細 | 金額 | 科目 | 消費税 |
|---|---|---|---|
| 車両本体 | 2,000,000 | 車両運搬具 | 課税10% |
| 付属品・オプション | 200,000 | 車両運搬具 | 課税10% |
| 納車費用 | 20,000 | 車両運搬具(支払手数料も可) | 課税10% |
| 検査登録・車庫証明の法定費用 | 5,000 | 租税公課 | 不課税 |
| 検査登録・車庫証明の手続代行費用 | 30,000 | 支払手数料 | 課税10% |
| 自動車税種別割(月割相当額) | 18,000 | 租税公課 | 不課税 |
| 環境性能割 | 22,000 | 租税公課(取得価額算入も可) | 不課税 |
| 自動車重量税 | 24,600 | 租税公課 | 不課税 |
| 自賠責保険料(37か月分) | 27,000 | 保険料(期間按分は前払費用) | 非課税 |
| リサイクル預託金(預託金相当額) | 12,000 | 預託金(投資その他の資産) | 不課税 |
| リサイクル資金管理料 | 500 | 支払手数料 | 課税10% |
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 2,220,000 | 普通預金 | 2,584,150 | 営業車購入 |
| 支払手数料 | 30,500 | 代行費用・資金管理料 | ||
| 租税公課 | 69,600 | 自動車税等 | ||
| 保険料 | 27,000 | 自賠責(重要性が乏しければ全額費用) | ||
| 預託金 | 12,000 | リサイクル預託金(廃車時まで資産) | ||
| 仮払消費税等 | 225,050 | 課税仕入対象 2,250,500円分 |
売却・下取り
下取りは「旧車の売却」と「新車の購入」の2つの取引である。差額だけを仕訳すると課税売上が計上されず、消費税を過少申告することになる。必ず総額で処理する。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,100,000 | 車両運搬具 | 700,000 | 売却時の帳簿価額 |
| 固定資産売却益 | 300,000 | 差額 | ||
| 仮受消費税等 | 100,000 | 課税売上は譲渡対価1,000,000円 |
売却する期の減価償却は、期首から売却月までを月割計上してから帳簿価額を確定させる(計上しない方法も認められるが、事務所ルールとして統一する)。
除却と証拠の残し方
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 固定資産除却損 | 250,000 | 機械装置 | 250,000 | 帳簿価額の除却 |
| 固定資産除却損 | 50,000 | 普通預金 | 55,000 | 廃棄費用 |
| 仮払消費税等 | 5,000 | 廃棄業者への支払は課税仕入10% |
- 産業廃棄物管理票(マニフェスト)のE票、または廃棄業者の作業完了報告書
- 廃棄業者の請求書・領収書(対象資産の名称・数量が特定できるもの)
- 除却前と搬出後の写真(日付入り)
- 除却を決定した稟議書または取締役会議事録
- 固定資産台帳の除却記録(除却日・除却時の帳簿価額)と、償却資産申告での減少報告
16. 特殊取引③ 中古資産の耐用年数と少額減価償却資産
中古資産の耐用年数(簡便法)
中古資産は取得後の使用可能期間を見積もるのが原則だが、実務では見積りが困難なため次の簡便法を使う。
- 法定耐用年数の全部を経過している場合/法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部を経過している場合/(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
計算は月数で行い、算出した年数に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年に満たないときは2年とする。
| ケース | 計算 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 法定6年の普通自動車、初度登録から3年8か月経過 | (72か月 − 44か月)+ 44か月 × 20% = 28 + 8.8 = 36.8か月 = 3.06年 | 3年 |
| 法定6年の普通自動車、初度登録から4年0か月経過 | (72 − 48)+ 48 × 20% = 24 + 9.6 = 33.6か月 = 2.8年 | 2年 |
| 法定6年の普通自動車、初度登録から7年経過(全部経過) | 72か月 × 20% = 14.4か月 = 1.2年 → 2年未満のため | 2年 |
| 法定22年の木造建物、築15年 | (264 − 180)+ 180 × 20% = 84 + 36 = 120か月 = 10年 | 10年 |
少額減価償却資産の3区分
| 取得価額 | 選択できる処理 | 償却資産税 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 取得時に全額損金(消耗品費等)/一括償却資産/通常の減価償却 | 全額損金なら課税対象外 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等償却(月割不要)/中小企業者等の特例/通常の減価償却 | 一括償却資産を選べば課税対象外 |
| 20万円以上30万円未満(令和8年(2026年)3月31日までの取得) | 中小企業者等の特例で全額損金/通常の減価償却 | 特例を使っても課税対象 |
| 20万円以上40万円未満(令和8年(2026年)4月1日以後の取得) | 中小企業者等の特例で全額損金/通常の減価償却 | 特例を使っても課税対象 |
中小企業者等の少額減価償却資産の特例
- 取得価額の上限は、令和8年(2026年)3月31日までの取得は30万円未満、令和8年(2026年)4月1日以後の取得は40万円未満。
- 年間の合計限度額は300万円。事業年度が1年に満たない場合は月数按分する。
- 従業員要件は、令和8年(2026年)4月1日以後は常時使用する従業員400人以下(従前は500人以下)。
- 適用期限は令和11年(2029年)3月31日までに取得したもの。
- 青色申告法人であること、明細書(別表十六(七))を添付することが要件。
- 取得価額の判定は、税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で行う。免税事業者は税込金額で判定する。
17. 特殊取引④ 借入金・信用保証料・手形・ファクタリング
借入と信用保証料
信用保証協会の保証付き融資では、保証料が借入時に一括で差し引かれる。保証期間に対応する費用であり、支払時に全額を損金にはできない。前払費用(1年超は長期前払費用)として按分する。消費税は非課税。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 4,850,000 | 長期借入金 | 5,000,000 | ①借入実行(保証期間60か月) |
| 長期前払費用 | 150,000 | 信用保証料・非課税 | ||
| 支払手数料 | 15,000 | 長期前払費用 | 15,000 | ②決算整理/150,000 × 6か月 ÷ 60か月 |
| 長期借入金 | 1,000,000 | 一年内返済長期借入金 | 1,000,000 | ③決算整理/翌期返済分の振替 |
| 長期借入金 | 83,000 | 普通預金 | 95,500 | ④毎月返済(元金均等) |
| 支払利息 | 12,500 | 非課税 |
繰上返済をすると未経過期間に対応する保証料の一部が返戻される。長期前払費用を取り崩し、差額を雑収入または支払手数料の戻しとする。
返済予定表の読み方
- 元金均等返済/毎月の元金返済額が一定。利息は残高に応じて逓減し、返済額は徐々に減る。
- 元利均等返済/毎月の返済額が一定。当初は利息の割合が大きく、後半になるほど元金の割合が増える。返済額の全額を支払利息にしないこと。
- 決算では返済予定表から翌期1年間の元金返済額を集計し、一年内返済長期借入金へ振り替える。流動比率に直結する。
- 据置期間中は利息のみの支払いになる。終了後に返済額が急増するため、資金繰り表に反映して社長に伝える。
手形・でんさい・ファクタリング
| 取引 | 科目 | 消費税 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 受取手形の割引 | 手形売却損 | 非課税 | 割引手形は保証債務として注記。不渡りリスクが残る |
| 受取手形の裏書譲渡 | ー | ー | 裏書譲渡高として注記。遡求義務が残る |
| 手形の不渡り | 不渡手形(貸倒懸念債権として区分) | ー | 2回目の不渡りで銀行取引停止処分。貸倒引当金の個別評価を検討 |
| 電子記録債権(でんさい)の発生・譲渡 | 電子記録債権/電子記録債務 | ー | 売掛金・買掛金から振り替える。期日に自動決済される |
| でんさいの割引 | 電子記録債権売却損 | 非課税 | 手形割引と同じ扱い |
| ファクタリング(債権譲渡) | 売上債権売却損 | 非課税(金銭債権の譲渡) | 3社間か2社間か、償還請求権の有無を契約書で確認する |
18. 特殊取引⑤ 消費税の経理方式と控除対象外消費税額等
| 論点 | 税抜経理 | 税込経理 |
|---|---|---|
| 損益への影響 | 消費税が損益に混入しない。売上・経費が実額で見える | 売上も経費も税込みで膨らむ。納付税額は租税公課で当期または申告年度の費用 |
| 固定資産の取得価額 | 税抜金額 | 税込金額(減価償却を通じて費用化) |
| 少額減価償却資産の判定 | 税抜金額で判定するため有利になりやすい | 税込金額で判定するため不利になりやすい |
| 交際費の800万円判定 | 税抜金額 | 税込金額 |
| 1人当たり1万円以下の飲食費の判定 | 税抜金額 | 税込金額 |
| 免税事業者 | 採用できない | これのみ |
| 簡易課税事業者 | 採用できる。仮受・仮払の差額と実際の納付額との差は雑収入・雑損失で調整 | 採用できる |
課税事業者には税抜経理を勧める。少額減価償却資産や交際費の判定で有利になるうえ、月次損益が実態を映す。経理方式は期首から統一する。
控除対象外消費税額等の処理
税抜経理を採用していて、課税売上割合が100%でない場合、仮払消費税等のうち控除できない部分(控除対象外消費税額等)が生じる。その処理は次のとおり。
| 状況 | 処理 |
|---|---|
| 課税売上割合が80%以上 | 全額をその事業年度の損金(雑損失・租税公課) |
| 課税売上割合が80%未満で、経費に係るもの | 全額をその事業年度の損金 |
| 課税売上割合が80%未満で、棚卸資産に係るもの | 全額をその事業年度の損金 |
| 課税売上割合が80%未満で、資産に係るもののうち1件20万円未満 | 全額をその事業年度の損金 |
| 課税売上割合が80%未満で、資産に係るもののうち1件20万円以上 | 繰延消費税額等として資産計上し、60か月で均等償却(初年度は2分の1) |
初年度の損金算入額は「繰延消費税額等 × 当期の月数 ÷ 60 × 2分の1」。医院・介護事業・不動産賃貸業など非課税売上の割合が高い先で必ず出てくる。取得価額に算入する方法も選択できる。
19. 特殊取引⑥ 生命保険と社宅
定期保険・第三分野保険の保険料
令和元年(2019年)7月8日以後に契約した、法人が契約者で役員・使用人を被保険者とする定期保険・第三分野保険(保険期間3年以上かつ解約返戻金があるもの)の保険料は、最高解約返戻率の区分に応じて資産計上する。
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩し |
|---|---|---|---|
| 50%以下 | なし | 全額を損金算入 | ー |
| 50%超70%以下 | 保険期間の当初40%相当期間 | 支払保険料の40% | 保険期間の75%相当期間経過後から期間終了日まで均等に取崩し |
| 70%超85%以下 | 保険期間の当初40%相当期間 | 支払保険料の60% | 同上 |
| 85%超 | 当初10年間/11年目以降は所定の判定を満たす期間まで | 当初10年は 支払保険料 × 最高解約返戻率 × 90%、11年目以降は × 70% | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から期間終了日まで均等に取崩し |
最高解約返戻率が50%超70%以下で、被保険者1人当たりの年換算保険料相当額が30万円以下のものは、全額を損金にできる。この例外は中小企業でよく使う。
養老保険は別の取扱いで、死亡保険金の受取人が被保険者の遺族、満期保険金の受取人が法人であるいわゆるハーフタックスプランでは、支払保険料の2分の1を保険積立金として資産計上し、残り2分の1を福利厚生費とする。ただし全役職員が普遍的に加入していることが要件で、役員や特定の者のみを対象とすると、その2分の1は給与になる。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 保険積立金 | 360,000 | 普通預金 | 600,000 | 最高解約返戻率75%/支払保険料の60%を資産計上・非課税 |
| 保険料 | 240,000 | 残り40%を損金算入 | ||
| 普通預金 | 5,000,000 | 保険積立金 | 3,600,000 | 解約時/積立額を取り崩す |
| 雑収入 | 1,400,000 | 解約返戻金と簿価の差額・不課税 |
社宅と賃貸料相当額
会社が住宅を借りて役員・使用人に貸す場合、一定額以上の家賃を徴収していれば給与課税されない。基準となる賃貸料相当額は次のとおり。
| 対象 | 賃貸料相当額(月額) | 徴収すべき額 |
|---|---|---|
| 役員(小規模住宅) | ①その年度の建物の固定資産税課税標準額 × 0.2% + ②12円 × その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3 + ③その年度の敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22% の合計 | 全額 |
| 役員(小規模住宅以外・自社所有) | (建物の固定資産税課税標準額 × 12%(法定耐用年数が30年を超える建物は10%)+ 敷地の固定資産税課税標準額 × 6%)÷ 12 | 全額 |
| 役員(小規模住宅以外・借上げ) | 上記の算式による額と、会社が支払う家賃の50%相当額のいずれか多い方 | 全額 |
| 使用人 | 役員の小規模住宅と同じ算式 | 賃貸料相当額の50%以上 |
小規模住宅とは、法定耐用年数30年以下の建物では床面積132平方メートル以下、30年超の建物では99平方メートル以下のものをいう。固定資産税課税標準額は、市区町村で固定資産評価証明書を取得して確認する。
計算例(役員社宅・借上げ・小規模住宅)
会社が支払う家賃 月200,000円。建物の固定資産税課税標準額 8,000,000円、総床面積 90平方メートル、敷地の課税標準額 12,000,000円。
- ① 8,000,000 × 0.2% = 16,000円
- ② 12円 × 90 ÷ 3.3 = 327円
- ③ 12,000,000 × 0.22% = 26,400円
- 合計 42,727円(1円未満切捨て)/これ以上を役員から徴収すれば給与課税なし
会社の負担は 200,000 − 42,727 = 157,273円となる。徴収額が0円だと、賃貸料相当額の全額が現物給与として扱われる。
20. 特殊取引⑦ 前期損益修正・期ズレの是正
誤りが見つかったときの手順は、会計をどう直すかと申告をどう直すかを分けて考える。
- STEP1 誤りの内容と期を特定する
いつの取引を、いくら誤ったのか。証憑に戻って金額と日付を確定し、原因(入力漏れ、二重計上、科目誤り、税区分誤り、計上時期の誤り)を記録する。 - STEP2 所得・税額への影響を計算する
誤りが所得に影響するか、消費税に影響するかを分けて計算する。科目の振替のみで所得に影響がなければ、当期の帳簿で修正するだけでよい。 - STEP3 申告の是正方法を決める
納付税額が不足していた場合は修正申告。納めすぎていた場合は更正の請求(原則として法定申告期限から5年以内)。 - STEP4 当期の会計処理を決める
重要性が乏しければ当期の損益として処理する(中小企業では前期損益修正損益として特別損益に計上する実務が一般的)。重要な誤謬なら過去の財務諸表を修正再表示する。 - STEP5 別表で調整する
前期損益修正損益は税務上は当期の損金・益金にならない。修正申告や更正の請求で前期の所得を直したうえで、当期の別表四で加算・減算して二重計上を避ける。
| 誤りの内容 | 税務上の是正 | 当期の会計処理 |
|---|---|---|
| 前期の売上計上漏れ 500,000円 | 前期の修正申告(法人税・消費税)。延滞税、過少申告加算税 | 売掛金 500,000 / 前期損益修正益 500,000。別表四で減算(前期で課税済みのため) |
| 前期の経費計上漏れ 300,000円 | 更正の請求(法定申告期限から5年以内)。認められなければ当期の損金にはできない | 前期損益修正損 300,000 / 未払金 300,000。別表四で加算 |
| 前期に費用を二重計上 200,000円 | 前期の修正申告 | 未払金 200,000 / 前期損益修正益 200,000。別表四で減算 |
| 科目の誤り(旅費交通費を会議費に) | なし(所得に影響しない) | 当期の帳簿で振替、または翌期首に振替。交際費の判定に影響する場合は要注意 |
| 消費税の税区分の誤り | 納付不足なら修正申告、過大なら更正の請求 | 仮払消費税等・仮受消費税等を修正し、差額を雑収入・雑損失へ |
Q. 3年前の経費計上漏れが見つかりました。当期の損金にできますか。
A. できない。損金の帰属年度は法律で決まっており、当期の費用にはならない。法定申告期限から5年以内であれば更正の請求で3年前の所得を減額する。5年を過ぎていれば救済されないため、当期に前期損益修正損として計上したうえで別表四で加算し、所得には影響させない。なお、消費税の更正の請求も同じく5年以内である。
Q. 前期に固定資産を消耗品費で全額費用処理していました。どう直しますか。
A. 前期の所得が過少になっているので修正申告を行う。会計上は当期首に資産計上し直し、前期に計上すべきだった減価償却費相当額との差額を前期損益修正損益で調整する。ただし前期において償却費として損金経理した金額があるとみなされるため、償却限度額の計算では前期に損金経理した額を考慮する。金額が大きい場合は上長と方針を決めてから着手する。
21. 章末チェックリスト
月次・決算のレビュー前にこの21項目を埋める。埋まらない項目が、そのまま上長に確認すべき論点になる。
- 売上の計上基準を確認し、決算月の請求書控と翌期初月の売上・入金を突き合わせた
- 期末棚卸表に日付・カウント者・単価の根拠が記載され、評価方法の届出内容と一致している
- 未成工事支出金・仕掛品への振替を行い、原価の期間対応が取れている
- 外注費のうち、指揮命令下にある個人への支払がないか請求書の名義と契約書で確認した
- 役員報酬の改定時期が事業年度開始から3か月以内に収まっている。期中改定があれば事由を確認した
- 事前確定届出給与を届出どおりの金額・時期で支給した(または全額不支給とした)
- 賞与の未払計上について、通知・支払・損金経理の3要件を満たしている
- 通勤手当の非課税限度額を距離区分で検算し、超過分を給与に含めた(駐車場代の5,000円加算も確認)
- 福利厚生費に、役員のみを対象とする支出や規程のない慶弔金が混ざっていない
- 交際費のうち1人1万円以下の飲食費について、参加者名・人数・店名の記載がある
- 交際費の限度額判定を、定額控除800万円と接待飲食費50%の有利な方で行った
- 修繕費のうち60万円以上のものについて、資本的支出との判定根拠を書面で残した
- 租税公課に延滞税・加算税・罰金が含まれていれば、別表四で加算した
- 士業・個人への報酬について源泉徴収を行い、翌月10日までに納付した
- 寄附金の区分と限度額を別表十四(二)で計算した
- 固定資産の売却は総額処理し、譲渡対価の全額を課税売上として計上した
- 除却について、マニフェスト・写真・稟議書のいずれかで証拠を残した
- 中古資産の耐用年数を簡便法で計算し、計算過程を固定資産台帳の備考に残した
- 少額減価償却資産の特例について、年300万円の限度額と取得日ごとの上限(30万円未満か40万円未満か)を確認した
- 信用保証料を期間按分し、翌期1年分の借入金返済額を一年内返済長期借入金へ振り替えた
- 課税売上割合が95%未満の場合、個別対応方式または一括比例配分方式で控除税額を計算し、控除対象外消費税額等の処理を行った
