弁護士事務所の開業届と税務の届出一覧|源泉徴収・預り金の処理も確認

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弁護士事務所を開業したら、税務署への開業届と青色申告承認申請を最優先で出し、事務員を雇うなら給与関係の届出も済ませます。弁護士特有の論点は、報酬の源泉徴収と、預り金・着手金・成功報酬の計上時期です。届出の期限と処理の考え方を一覧で整理します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

独立して弁護士事務所を開いたら、開業届(開業の日から1か月以内)と青色申告承認申請(原則その年の3月15日まで、1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)を同時に出すのが基本です。そのうえで、源泉徴収と預り金を区別できる帳簿と口座を開業時に整えます。

  • 開業届と青色申告承認申請は最優先で同時に提出する
  • 事務員を雇うなら、給与支払事務所等の開設届と源泉所得税の納期の特例も検討する
  • 法人の依頼者からの報酬は10.21%(100万円を超える部分は20.42%)で源泉徴収される。個人の依頼者からは原則として源泉徴収されない
  • 預り金は売上と厳格に区分し、口座も分ける
目次

弁護士の開業時に出す主な届出一覧と期限

勤務弁護士から独立して自分の事務所を構えるとき、弁護士会の手続き(事務所の変更や登録換え)には気を配っても、税務署への届出は後回しになりがちです。提出が遅れると、青色申告の特典を初年度から使えないなど、目に見える不利益につながることがあります。

届出書類提出先期限ポイント
個人事業の開業届出書税務署開業の日から1か月以内独立して事務所を開いた日が開業日
所得税の青色申告承認申請書税務署その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)出し忘れると初年度は白色申告になる
青色事業専従者給与に関する届出書税務署その年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者がいることとなった場合は、その日から2か月以内)配偶者などを事務員にする場合
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設の日から1か月以内事務員を雇う場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署期限なし。提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から適用給与の支給人員が常時10人未満の場合
事業開始の届出(個人事業税)道税事務所北海道の案内で確認弁護士業は個人事業税の対象業種
弁護士事務所の開業時の主な届出(2026年10月時点)。提出前に国税庁サイトで最新の様式を確認してください。

特に青色申告承認申請は、出し忘れると初年度が白色申告になり、赤字の繰越しや専従者給与といった特典を受けられません。開業届と同じ日に出すと、出し忘れを防げます。青色申告特別控除は令和8年分まで最大65万円で、令和9年分からは帳簿を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの条件を満たすと75万円になります。

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青色申告と白色申告の税額の差を比べる所得の見込みを入れると、青色申告特別控除による節税効果を試算できます。計算する

札幌市内で開業する場合の税務署

  • 個人の提出先は、原則として住所地の税務署です。届出をすれば、事務所の所在地を納税地にできます
  • 札幌中=中央区の一部(おおむね西10丁目以東)/札幌西=中央区の一部(大通西11丁目以西など)・西区・手稲区/札幌北=北区・東区・石狩市・石狩郡/札幌南=豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市/札幌東=白石区・厚別区・江別市。個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認してください
  • 2026年7月10日から、市内5署あての書面を郵送する場合の宛先は〒060-8510の札幌業務センターです。e-Taxで出す場合と窓口に持参する場合は、所轄の税務署です

弁護士特有の論点①:報酬から源泉徴収される

弁護士報酬は、法人の依頼者などから支払いを受ける際に源泉徴収されるのが原則です。請求額と入金額がずれるため、帳簿では報酬の総額と源泉徴収された税額を分けて記録します。

源泉徴収税額は、1回に支払われる額のうち100万円以下の部分が10.21%、100万円を超える部分が20.42%です。請求書で報酬と消費税を区分して記載していれば、税抜の報酬額をもとに計算されます。2027年1月1日以後も10.21%・20.42%の税率は変わらず、内訳が変わるだけです。

一方、源泉徴収の義務があるのは、法人や、従業員に給与を払っている個人事業者などです。離婚や相続の事件で個人の依頼者から受け取る報酬は、原則として源泉徴収されません。依頼者の種類によって入金額が変わるため、請求の段階で区別しておきます。

計算例:法人の依頼者に150万円の報酬を請求した場合

例えば、法人の顧問先に報酬150万円と消費税15万円を区分して請求した場合で考えます。

  • 請求額:150万円+15万円=165万円
  • 100万円以下の部分:100万円×10.21%=102,100円
  • 100万円を超える部分:50万円×20.42%=102,100円
  • 源泉徴収税額:102,100円+102,100円=204,200円
  • 入金額:1,650,000円−204,200円=1,445,800円

帳簿では売上150万円と消費税15万円を計上し、源泉徴収された204,200円は所得税の前払いとして記録します(個人事業主は事業主貸で処理するのが一般的です)。

源泉徴収された分は、確定申告で精算される仕組みです。請求書の控えを案件ごとに整理し、源泉徴収税額の合計を把握しておくと、申告作業が格段に楽になります。開業2年目以降は、前年分の所得税額をもとに予定納税(予定納税基準額が15万円以上の場合、7月と11月)を求められることがあります。

弁護士特有の論点②:預り金と着手金の処理

依頼者から一時的に預かるお金(保証金や和解金の受入れなど)は、事務所の売上ではありません。業務用口座と預り金口座を分け、帳簿でも「預り金」として売上と明確に区分します。ここが曖昧だと、税務調査で売上の計上漏れを疑われる原因になります。所属する弁護士会の預り金の取扱いに関する規程も確認しておきましょう。

受け取るお金性質計上の時期口座・帳簿
着手金受任の対価原則として受任した時点で売上業務用口座・売上
成功報酬(報酬金)事件の結果に応じた対価和解の成立や判決の確定などで金額が確定した時点業務用口座・売上
顧問料継続的な相談の対価対象となる月ごと業務用口座・売上
実費(印紙・郵券・謄写費用など)依頼者が負担する費用の前受け売上にせず、支出と精算を記録預り金または立替金
和解金・保証金などの受入れ依頼者に渡すお金の一時的な預り売上にしない預り金口座・預り金
一般的な整理です。着手金の返還の条件など、委任契約の内容によって扱いが変わることがあります。

着手金は受任時に受け取る報酬で、収益に計上する時期の判断が必要です。返還の条件がある場合や、事件が年をまたぐ場合の計上時期は判断が分かれやすい論点なので、開業時に処理方針を固めておくことをおすすめします。

経費の範囲と、自分でやるか頼むか

弁護士会費、判例データベースの利用料、書籍代、事務所家賃、職務上の交通費などは経費になります。自宅兼事務所の家賃や私的利用もある支出は、業務で使う割合に応じた按分が必要で、根拠の記録を残しておくことが大切です。

経費になる主なもの

  • 弁護士会の会費、判例データベース・法律書籍
  • 事務所の家賃・光熱費・通信費
  • 職務上の交通費・出張費
  • 事務員の給与、職業上の賠償責任保険の保険料

処理に注意が必要なもの

  • 自宅兼事務所の家賃・光熱費(使用割合で按分)
  • 車両費(業務と私用で按分)
  • 依頼者や関係者との会食(業務との関係を記録)
  • パソコン・複合機など(取得価額で処理が変わる)

パソコンや複合機などは、10万円未満ならその年の経費になり、20万円未満なら3年で均等に経費にする方法も選べます。青色申告の中小企業者等は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで取得した年に全額経費にできます。

開業初年度は、届出・記帳・源泉処理と慣れない作業が続きます。年間売上1,500万円規模でも、記帳と申告を専門家に任せて事件対応に集中するほうが、結果的に時間も収益も守れるケースは少なくありません。

具体例|着手金と預り金の仕分けをイメージする

具体例:50万円のうち10万円を実費の預り金とした場合

例えば、受任時に依頼者から50万円を受け取り、そのうち10万円を今後の実費や謄写費用に充てる預り金として区分したとします。

  • 着手金(売上):50万円−10万円=40万円。受任した時点で収益に計上する
  • 預り金:10万円。売上に含めず、預り金口座で管理する
  • 謄写費用3万円を支払ったとき:預り金から充当し、残りは10万円−3万円=7万円
  • 事件の終了時:残った預り金は返還するか、依頼者の同意を得て報酬に充てる。報酬に充てた時点で売上に計上する

着手金分は受任時点で収益に計上し、預り金分は事務所の売上に含めず、返還や実費充当の記録を別に残します。両者を同じ口座で管理すると混同しやすいため、口座や帳簿を分けておくと後の整理が楽になります。

見落としやすいポイント:消費税・法テラス・成功報酬・事務員の雇用

消費税とインボイスの検討

弁護士報酬は消費税の課税対象です。開業から2年間は基準期間の売上がないため原則として免税ですが、前年1月から6月の課税売上高と給与の支払額がともに1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になります。開業1年目の上半期の実績しだいで、2年目から課税されることもあります。

インボイス(適格請求書)の登録は、依頼者の構成で判断します。企業の顧問先や法人の依頼者は、仕入税額控除のためにインボイスを求めます。個人の依頼者が中心なら、登録しない選択肢もあります。登録すると免税期間でも消費税の申告が必要になり、個人は令和8年分まで2割特例、令和9年分・令和10年分は3割特例を使えます。簡易課税を選ぶ場合、弁護士業はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)です。

開業した年に登録する場合は、その年の12月31日までに、年の初めから登録を受ける旨を記載して申請すれば、さかのぼって登録を受けたものとみなされる特例があります。登録の判断と請求書の書き方は、インボイス制度の実務ガイドで詳しく整理しています。

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消費税の課税事業者になるかを判定する基準期間・特定期間の売上と給与を入れると、納税義務が生じる時期を確認できます。判定する

法テラス案件の入金タイミング

法テラスを通じた事件では、報酬の確定や入金の時期が通常の受任契約と異なることがあります。売上は入金日ではなく報酬が確定した時点で計上するのが基本のため、案件ごとに確定日と入金予定を管理しておくと、決算や資金繰りが読みやすくなります。

成功報酬の計上時期

成功報酬は、和解や判決の確定など成果が確定した時点で収益に計上するのが基本です。年をまたぐ事件は特に、計上時期の判断を事務所内で統一しておきます。

事務員を雇うときの届出

事務員を雇う場合は、給与支払事務所等の開設届出や源泉所得税の納期の特例など、給与関係の届出が別途必要です。納期の特例を受けると、源泉所得税の納付を1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日の年2回にまとめられます。北海道の最低賃金は2026年10月1日から時間額1,131円です。弁護士などの士業の個人事務所は、常時5人以上を使用すると健康保険・厚生年金の適用事業所になります。

インボイス登録や課税事業者になる時期の判断は、依頼者の構成と売上の見込みで変わります。開業前から初回無料で確認できます。

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実務ワンポイント:開業初年度の記帳と資金管理

開業初年度は、受任業務そのものに集中したい時期でもあります。記帳や源泉徴収の管理を後回しにすると、確定申告の直前にまとめて処理する負担が大きくなりがちです。事件対応の合間でも月次で入出金を整理する習慣をつけておくと、税理士に相談する際もスムーズに状況を共有できます。

  • 口座を「業務用」「預り金」「私用」の三つに分ける
  • 請求書の控えを案件ごとに整理し、源泉徴収の有無を記録する
  • 月に一度、入出金と預り金の残高を照合する
  • メールやネットで受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存する
  • 予定納税・消費税・個人事業税の納付に備えて、納税資金を別に確保する

電子取引で受け取った書類は、2024年1月1日以後、紙に印刷するだけでなく電子データで保存する必要があります。開業後の1年間の申告と納付の時期は、個人事業主の年間スケジュールで確認できます。

税理士への相談を検討したいタイミング

案件数が増えて請求書や入出金の管理が煩雑になってきたら、記帳代行や顧問契約を検討するタイミングです。特に事務員を雇って給与計算が発生する場合や、消費税の課税事業者になるかどうかを判断する場面では、早めに専門家へ相談しておくと制度の選択を誤りにくくなります。

  • 顧問契約で任せる範囲:開業時の届出から毎月の記帳、決算・申告までを継続して任せるのが基本です。当事務所は確定申告だけのスポットのご依頼はお受けしておらず、顧問契約で継続して支援しています。
  • 資料はクラウドで共有:請求書の控えや預り金の記録をクラウド会計と連携させておくと、やり取りがスムーズになり、面談のたびに資料を探す手間を減らせます。
  • 繁忙期の前に体制を整える:確定申告の時期に慌てないよう、案件が落ち着いている時期に記帳の型や資料の受け渡し方法を決めておくと安心です。

顧問契約で支援する内容は、会計・税務顧問のサービス内容で紹介しています。

よくある質問

勤務弁護士から独立した年の確定申告はどうなりますか?

独立した年は、勤務していた期間の給与所得と、独立後の事業所得をあわせて確定申告します。勤務先から源泉徴収票を受け取って保管しておきましょう。令和8年分の申告期間は2027年2月16日〜3月15日です。

源泉徴収された税金は戻ってきますか?

確定申告で、源泉徴収された税額は所得税額から差し引かれ、納めすぎの場合は還付されます。開業初年度は備品や開業準備の費用がかさみやすく、還付になることもあります。

開業前に払った事務所の敷金や内装費、準備費用は経費になりますか?

返還される敷金は資産(差入保証金)で、経費にはなりません。内装工事は資産に計上し、事務所を開いた日から減価償却します。事務所探しの交通費や開業の案内などの準備費用は「開業費」として資産に計上し、開業後に任意の時期に経費にできます。

弁護士法人にしたほうがよいのはどんなときですか?

所得の水準のほか、事務所を複数持ちたいかどうかが判断材料になります。個人の弁護士は二つ以上の法律事務所を設けられないため、支所を出すなら法人化が選択肢になります。法人は赤字でも法人住民税の均等割(札幌市内なら最低で年7万円)がかかり、社会保険の加入も必要です。

まとめ

弁護士事務所を開業したら、開業届と青色申告承認申請を最優先で同時に出し、事務員を雇うなら給与関係の届出と納期の特例も検討します。報酬は依頼者によって源泉徴収の有無が分かれるため、総額と源泉徴収税額を分けて記帳し、預り金は口座も帳簿も売上と区分しましょう。消費税とインボイスは依頼者の構成で判断が変わるため、開業時に方針を決めておくと安心です。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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