建築設計事務所の開業届と税務の届出一覧|事務所登録・源泉徴収もあわせて確認

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建築設計事務所の開業では、建築士事務所の登録とは別に、税務署へ開業届や青色申告承認申請書などの届出が必要です。青色申告の申請は1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内が期限で、過ぎるとその年は白色申告になるため、開業届と同時に出すのが基本です。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

個人で建築設計事務所を開くときは、税務署に開業届と青色申告承認申請書を出し、北海道に事業開始の申告をします。建築士事務所の登録は税務の届出とは別の手続きのため、両方を並行して進めます。

  • 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内
  • 法人などから受け取る設計報酬は源泉徴収される(100万円以下の部分は10.21%)。請求書と帳簿で区分する
  • 基本設計・実施設計・工事監理の段階報酬は、業務の完了・引渡しの都度に売上を計上する
  • インボイス登録は取引先で判断。簡易課税なら設計業は第5種(みなし仕入率50%)
  • 法人化すると建築士事務所の登録を取り直す必要があり、切り替えの段取りが重要
目次

建築設計事務所の開業時に出す届出一覧

建築設計事務所として独立する際は、建築士事務所の登録や管理建築士の手続きに気を取られ、税務署への届出が後回しになりがちです。建築士事務所の登録と税務の届出はまったく別の手続きで、どちらも欠かせません。個人で開業する場合に出す主な届出は次のとおりです。

届出提出先期限必要な人
個人事業の開業届出書税務署開業の日から1か月以内開業するすべての人
所得税の青色申告承認申請書税務署その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)青色申告をする人
青色事業専従者給与に関する届出書税務署その年の3月15日まで(1月16日以後の開業や専従者が加わった場合は、その日から2か月以内)家族に給与を払う人
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設の日から1か月以内スタッフを雇う人
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署随時(提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例を適用)給与の支給人員が常時10人未満の人
個人事業開始の申告北海道(道税事務所)開業後すみやかに(期限は道税事務所で確認)個人事業税の対象となる人
インボイスの登録申請書・簡易課税制度選択届出書など税務署適用を受けたい時期による登録や簡易課税を選ぶ人
個人で建築設計事務所を開業するときの主な届出(2026年10月時点)

なかでも青色申告承認申請書は、期限を過ぎるとその年は青色申告特別控除などを受けられず、白色申告になります。開業届と同じ日に出しておくと安心です。建築設計は個人事業税の対象業種(設計監督者業)にあたり、税率は5%、事業主控除は290万円です。

建築士事務所の登録と管理建築士

他人の求めに応じ報酬を得て、設計や工事監理などを業として行うには、建築士法に基づいて都道府県知事の登録を受けた建築士事務所である必要があります。事務所ごとに専任の管理建築士(建築士として一定の実務経験があり、管理建築士講習を修了した人)を置き、登録には有効期間があるため更新も必要です。登録の区分(一級・二級・木造)や必要書類は、北海道の案内で確認します。

登録は事務所を開設する人ごとに受けるため、個人で登録した事務所を法人化すると、法人として新たに登録し直す必要があります。税務の届出と登録の切り替えは、時期をそろえて進めます。

開業地の税務署と提出方法(札幌市内の場合)

個人の届出は、原則として住所地を管轄する税務署に出します。国税は税務署、道税は道税事務所、市税は市の窓口と提出先が分かれる点に注意します。市内の税務署の管轄は次のとおりです。

税務署管轄(主な区域)
札幌中税務署中央区のおおむね西10丁目以東
札幌西税務署中央区の大通西11丁目以西・円山・宮の森など、西区、手稲区
札幌北税務署北区、東区(ほか石狩市・石狩郡)
札幌東税務署白石区、厚別区(ほか江別市)
札幌南税務署豊平区、南区、清田区(ほか千歳市・恵庭市・北広島市)
2026年10月時点。中央区は住所によって管轄が分かれるため、国税庁の管轄区域表で確認してください。

2026年7月10日からは、市内5つの税務署の内部事務が札幌業務センターに集約されています。書面の届出を郵送する場合の宛先は同センターで、e-Taxで提出する場合や窓口に持参する場合は、これまでどおり所轄の税務署です。

設計報酬は源泉徴収される:請求と記帳の注意点

個人の建築士が受け取る設計・監理の報酬は、所得税法上、源泉徴収の対象となる報酬にあたります。法人や、スタッフに給与を払っている個人事業主など源泉徴収義務者のクライアントから支払われるときは、所得税と復興特別所得税があらかじめ差し引かれます。住宅の施主など、源泉徴収義務者でない個人から受け取る報酬は差し引かれません。

1回の支払額源泉徴収税額
100万円以下支払額×10.21%
100万円超(支払額−100万円)×20.42%+102,100円
建築士などへの報酬の源泉徴収税額(2026年10月時点。請求書で報酬と消費税額が区分されていれば、税抜の報酬額で計算できます)

計算例:設計報酬の請求額と源泉徴収税額

例えば、税抜の設計報酬50万円を法人に請求する場合、源泉徴収税額は50万円×10.21%=51,050円です。消費税5万円を加え、50万円+5万円−51,050円=498,950円が実際の入金額になります。

一度に税抜110万円を受け取る場合は、100万円を超える部分の10万円について10万円×20.42%=20,420円を計算し、20,420円+102,100円=122,520円が差し引かれます。

請求書には報酬額・消費税額・源泉徴収税額・差引請求額を明示します。帳簿では売上を総額で計上し、差し引かれた源泉税は「事業主貸」などで区分しておきます。差し引かれた税額は確定申告で精算され、開業初年度のように経費が多い年は還付になることもあります。

構造計算や設備設計を個人の建築士に外注して報酬を支払う立場になった場合は、法人やスタッフを雇っている個人事業主であれば、今度は自分が源泉徴収義務者になります。差し引いた税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します(納期の特例の承認を受けていれば半年ごと)。

売上計上のタイミングと設計業特有の経費

設計監理契約は期間が長く、基本設計・実施設計・工事監理と段階ごとに報酬が定められるのが一般的です。売上は各業務の完了・引渡しの都度計上するのが原則で、着手時に受け取った前受金をそのまま売上に計上しないよう注意します。年をまたぐ案件ほど、この期ズレが申告誤りの原因になりやすくなります。

受け取るお金売上に計上する時期起こりやすい誤り
着手金・前受金受け取った時点では前受金とし、対応する業務の完了時に売上へ振り替える入金した年の売上にしてしまう
基本設計の報酬基本設計図書を引き渡し、業務が完了した時最終の完了時にまとめて計上する
実施設計の報酬実施設計図書を引き渡した時12月に引き渡して翌年に入金される分を、引き渡した年の売上から漏らす
工事監理の報酬契約で定めた区切りごとの業務が完了した時入金の時期だけで計上の年を決めてしまう
段階ごとに報酬が定められた契約の一般的な考え方(契約の内容によって異なります)

具体例:12月に引き渡した実施設計の報酬

例えば、実施設計図書を12月に引き渡し、報酬が翌年1月に振り込まれる場合、売上は引き渡した年に売掛金として計上します。翌年の入金時は売掛金の回収として処理し、二重に売上へ計上しないようにします。

設計業で経費になる主なものと資産計上の境界

経費の面では、CADやBIMソフトのライセンス料、模型材料費、現場や役所までの交通費、建築士会の会費、定期講習の受講料などが代表的です。自宅兼事務所の場合は、家賃や光熱費を業務使用割合で按分します。開業前に支出した打合せの交通費や名刺・案内状の費用などは「開業費」として資産に計上し、開業後に任意の時期に経費にできます。

その年の経費にしやすいもの

  • CAD・BIMソフトの月額・年額の利用料
  • 模型材料・図面の出力費
  • 現場・役所・打合せの交通費、駐車場代
  • 建築士会などの会費、定期講習の受講料
  • 構造・設備設計の外注費、設計業務の賠償責任保険の保険料

金額や使い方で処理が変わるもの

  • 高性能のパソコン・大判プリンター(取得価額で判定)
  • 買い切り型のソフト(取得価額によっては資産計上)
  • 事務所の内装工事
  • 自宅兼事務所の家賃・光熱費、私用もする車両(按分)
取得価額処理
10万円未満消耗品費などとして全額をその年の経費にする
20万円未満一括償却資産として3年間で均等に経費にすることも選べる
40万円未満青色申告の中小事業者は少額減価償却資産の特例で全額を経費にできる(年300万円まで。2026年3月31日までの取得は30万円未満)
上記以外耐用年数に応じて減価償却する
パソコン・プリンターなどの取得価額による処理の違い(2026年10月時点)

パソコンや複合機、内装などの事業用資産は、毎年1月31日(休日の場合は翌開庁日)までに、事務所がある市町村へ償却資産の申告をします。少額減価償却資産の特例で経費にした資産も申告の対象です。課税標準額の合計が免税点(150万円。令和9年度分からは180万円)未満なら固定資産税はかかりませんが、申告自体は必要です。

消費税・インボイスと法人化のタイミング

開業当初は、消費税の納税義務を判定する基準期間(前々年)の売上がないため、原則として免税事業者です。ただし開業2年目は、特定期間(前年1〜6月)の課税売上高と給与の支払額がどちらも1,000万円を超えると課税事業者になります。

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課税事業者になるかを判定する基準期間・特定期間の売上などから、消費税の納税義務があるかを確認できます。判定する

免税事業者のままでいられる場合でも、取引先がゼネコンやデベロッパー、工務店など課税事業者中心であれば、インボイス(適格請求書)の発行登録を求められることが多く、登録すれば免税のメリットは使えなくなります。個人の施主から住宅の設計を受けることが中心なら、登録の必要性は下がります。取引先の顔ぶれを踏まえて判断します。

登録した場合は、納付税額の計算方法を選びます。登録をきっかけに課税事業者になった個人は、令和8年分までは売上税額の2割を納める2割特例、令和9年分・令和10年分は3割を納める3割特例を使えます。簡易課税を選ぶと、設計業はサービス業として第5種(みなし仕入率50%)になります。

計算例:税抜売上600万円の設計事務所の納付税額

例えば、税抜売上600万円で売上税額が600万円×10%=60万円の個人の設計事務所(基準期間の課税売上高は1,000万円以下)の場合、計算方法ごとの納付税額は次のとおりです。

  • 2割特例(令和8年分まで):60万円×20%=12万円
  • 3割特例(令和9・10年分):60万円×30%=18万円
  • 簡易課税(第5種):60万円×50%=30万円

設計業は簡易課税のみなし仕入率が低いため、特例を使える間は特例のほうが納付額を抑えやすくなります。外注費が多い事務所は、原則課税とも比べて判断します。

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簡易課税・本則課税・2割特例を比較計算する売上と仕入れ・外注費の金額から、計算方法ごとの消費税の納付額を比べられます。計算する

法人化を考えるタイミング

年商1,200万円・所得600万円程度まで育ってきたら、法人化による税負担や社会保険の比較検討も視野に入ります。法人は役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人は、赤字でも法人住民税の均等割が年7万円かかるため、税金だけでなく社会保険料と固定費を含めて比べます。

法人化すると建築士事務所の登録を取り直す必要があるため、設計業では切り替えの段取りが他業種以上に重要です。進行中の設計契約の名義をどちらにするか、登録の切り替え日と法人の設立日をどう合わせるかを事前に決めておきます。判断の目安は建築設計事務所の法人化のタイミングと判断基準で詳しく整理しています。

インボイス登録や法人化の時期は、取引先の構成と売上の見込みで有利不利が変わります。開業時の届出とあわせて初回無料で確認できます。

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開業1年目の記帳と資金管理で気をつけること

開業1年目は、設計の受注と並行して記帳の仕組みを作る時期です。届出を出す前後に、次の準備がそろっているかを確認します。

  • 事業計画と収支の見通し(段階報酬の入金時期を含む)
  • 開業資金と自己資金の額
  • 開業届・青色申告承認申請の準備
  • 会計ソフト・記帳の体制
  • 屋号・事業用口座・許認可(建築士事務所の登録)の確認

青色申告特別控除は、令和8年分までは正規の簿記で記帳し、期限内に電子帳簿保存かe-Taxで申告すると65万円です。令和9年分以後は、仕訳帳と総勘定元帳を電子帳簿保存法の要件を満たす電磁的記録で保存するなどの要件を満たすと75万円になります。CADソフトの利用料や資材の通販のように、領収書をPDFやメールで受け取る電子取引のデータは、紙に印刷するだけでなく電子データのまま保存します。

段階報酬は入金の間隔が空きやすく、源泉徴収で手取りも減るため、資金繰りは入金予定表で管理します。2年目以降は、前年分の所得税の額によって7月と11月に予定納税が求められることがあり、個人事業税の納付も始まります。年間の納税の時期は個人事業主の年間スケジュールで確認できます。

よくある質問

設計事務所を退職して年の途中で開業した場合、確定申告はどうなりますか?

年の途中で退職すると、通常は勤務先で年末調整を受けないため、退職までの給与と開業後の事業所得を合わせて確定申告をします。退職時にもらう源泉徴収票を保管しておき、給与から差し引かれた所得税と設計報酬から差し引かれた源泉税をまとめて精算します。

開業届を出す前に受けた設計の仕事の報酬はどう扱いますか?

開業届は事業を始めたことを知らせる届出で、出す前の報酬が非課税になるわけではありません。事業として受けた設計の報酬は、開業届の提出日にかかわらず申告の対象です。開業届には実際に事業を始めた日を書き、その日を基準に青色申告承認申請書などの期限を確認します。

インボイスの登録申請はいつ出せばよいですか?

免税事業者が年の途中から登録する場合は、提出日から15日以降の日を登録希望日として申請できます(2029年9月30日を含む課税期間まで)。開業直後からゼネコンや工務店との取引がある場合は、開業届と近い時期に申請しておくと、最初の請求からインボイスを発行しやすくなります。

法人化するときは、税務でどんな届出が必要ですか?

法人では、法人設立届出書(設立の日以後2か月以内)と青色申告承認申請書(設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで)を出し、役員報酬を払うなら給与支払事務所等の開設届出書も出します。個人の側では事業の廃業の届出を出し、建築士事務所は法人で新たに登録します。

まとめ

建築設計事務所の開業では、建築士事務所の登録と並行して、開業届と青色申告承認申請書を最優先で出します。法人などからの設計報酬は源泉徴収されるため請求書と帳簿で区分し、段階報酬は業務の完了・引渡しの都度に売上を計上します。インボイス登録は取引先の顔ぶれで判断し、法人化は事務所登録の取り直しも含めて段取りを組むことが大切です。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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