除雪請負業の開業届と税務の届出一覧|冬季雇用・前受金の注意点

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除雪請負業の開業では、開業届と青色申告承認申請書を雪が降る前に出し、冬だけ作業員を雇うなら給与支払事務所等の開設届と源泉徴収の準備も済ませておきます。シーズン契約の前受金、ホイールローダーなど機械の減価償却、インボイス登録の判断まで、季節事業ならではの届出と税務の注意点を整理します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

町内会や管理会社との契約にめどが立ったら、開業届と青色申告承認申請書を同じ日に出しておくのが安全です。この業種で特に注意したいのは、冬だけ雇う作業員の源泉徴収と、まとめて受け取るシーズン契約の売上計上です。

  • 開業届は開業の日から1か月以内、青色申告承認申請書は原則その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)
  • 冬季だけのアルバイトでも給与なら源泉徴収が必要。2027年1月1日以後の支払分からは令和9年分の税額表を使う
  • シーズン契約の料金は入金時に一括で売上にせず、役務を提供した割合に応じて計上する(個人は12月末の前受金に注意)
  • 事業者からの受注が中心ならインボイス登録を検討する。免税事業者の外注先からの仕入れは、2026年10月1日〜2028年9月30日は70%控除
目次

開業時に出す届出は?一覧と期限

除雪請負業を個人で始めるときに出す主な届出は次のとおりです。雪のシーズンが始まると書類仕事に割ける時間はほとんどなくなるため、契約の見通しが立った秋のうちにまとめて済ませておきます。

書類名提出先期限ポイント
個人事業の開業届出書税務署開業の日から1か月以内事業内容に「除雪請負」と記載。夏の兼業も併記する
所得税の青色申告承認申請書税務署その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)赤字の繰越しや青色申告特別控除が使える
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設の日から1か月以内オペレーター・作業員を雇う場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署随時(提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から適用)常時10人未満なら、源泉所得税の納付が年2回になる
事業開始等の届出(個人事業税)道税事務所開業後すみやかに様式・期限は北海道の案内で確認
除雪請負業を個人で開業するときの主な届出(2026年10月時点)

青色申告特別控除は、令和8年分は最大65万円、令和9年分からは仕訳帳などを電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと最大75万円です。売上が冬に集中し、機械の購入で初年度が赤字になることもあるため、赤字を翌年以後に繰り越せる青色申告の効果は小さくありません。

夏は造園や外構工事と兼業する場合も、事業は1つで構いません。開業届の事業内容欄に両方を記載しておきましょう。すでに造園業などで開業届を出している人が除雪を始める場合は、改めて開業届を出す必要はありません。

札幌市とその周辺で開業する場合の税務署

  • 北区・東区・石狩市・石狩郡:札幌北税務署
  • 豊平区・南区・清田区・千歳市・恵庭市・北広島市:札幌南税務署
  • 白石区・厚別区・江別市:札幌東税務署
  • 西区・手稲区と中央区の西側(大通西11丁目以西・円山・宮の森など):札幌西税務署
  • 中央区のおおむね西10丁目以東:札幌中税務署

個人は原則として住所地の税務署が提出先です。2026年7月10日から書面の郵送先は〒060-8510の札幌業務センターになり、窓口への持参とe-Taxは所轄の税務署が提出先です。

冬だけ人を雇うときの手続きは?

除雪は深夜・早朝の出動が多く、冬季だけ作業員を雇う形がよく見られます。短期のアルバイトでも給与を支払えば源泉徴収の対象になり、給与支払事務所等の開設届出書が必要です。源泉徴収の税額は、作業員の状況によって税額表の欄が変わります。

作業員の状況使う税額表の欄ポイント
扶養控除等申告書を提出した人甲欄給与が少額なら源泉税額がゼロになることもある
申告書を出していない人(本業がほかにある人など)乙欄甲欄より税額が高くなる
日々雇い入れる人など丙欄(日額表)雇用の形態を契約書で明確にしておく
源泉徴収税額表の欄の使い分け(2026年10月時点)

シーズンが年をまたぐ点にも注意します。令和8年度税制改正による基礎控除・給与所得控除の見直しは、2026年中の毎月の源泉徴収には反映されず、12月の年末調整で精算します。2027年1月1日以後に支払う給与からは令和9年分の税額表を使うため、1月分の給与計算の前に給与ソフトの更新を確認しておきましょう。12月31日に在籍していて扶養控除等申告書を出している作業員は、年末調整の対象になります。

知人に日当を払う場合は給与か外注か

知人に手伝いを頼んで日当を払う場合も、実態が雇用なら給与です。外注として扱うなら、相手が自分の道具と裁量で作業する請負の実態が必要です。この区分は税務調査でも見られやすい論点なので、契約の形を最初に整えておきます。

判断のポイント給与に近い外注に近い
作業の指示現場・時間・手順をこちらが指示する相手の裁量で進める
機械・道具こちらの機械やスコップを使う相手が自分の機械・道具を持ち込む
報酬の決め方時間給・日当現場ごとの請負代金
代わりの人本人しか作業できない相手の判断で人を手配できる
給与と外注の区分の目安。実態を総合して判断します。

人を雇うと、労災保険(労働基準監督署)と、要件を満たす人の雇用保険(ハローワーク)の手続きも加わります。時給は北海道の最低賃金を下回らないように決め、2026年10月1日からは時間額1,131円です。最低賃金や社会保険の改正は人事労務・最低賃金・社会保険の最新情報で確認できます。

除雪業ならではの税務論点は?

除雪機械は取得価額と中古かどうかで経費化が変わる

ホイールローダーやダンプは高額で、耐用年数に応じて分割して経費にします(減価償却)。個人は届出をしなければ定額法で計算します。中古機を買った場合は、経過年数を考慮した短い耐用年数を使えるため、新品より早く経費にできます。

取得価額処理除雪業での例
10万円未満その年の経費スコップ・スノーダンプなどの道具
20万円未満一括償却資産として3年で均等に経費にすることも選べる小型の家庭用除雪機
40万円未満青色申告の中小事業者は全額をその年の経費にできる(年300万円まで)中型の除雪機、作業用の照明
上記以外耐用年数に応じて減価償却ホイールローダー、ダンプ、大型の除雪機
40万円未満の特例は2026年4月1日以後の取得分(それより前は30万円未満)。2026年10月時点。

ナンバーの区分が大型特殊自動車のホイールローダーなどは、自動車税ではなく固定資産税(償却資産)の対象になるのが一般的です。償却資産は毎年1月31日まで(休日は翌開庁日)に市町村へ申告し、課税標準額の合計が150万円未満なら課税されません(令和9年度分からは180万円未満)。

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除雪機械の減価償却費を定額法で計算する取得価額・耐用年数・使い始めた月を入れると、各年の減価償却費を確認できます。計算する

シーズン契約の料金は役務の提供に応じて計上する

11月に一括で受け取るシーズン契約の料金は、入金時にまとめて売上とするのではなく、役務の提供に応じて計上するのが原則です。個人は12月末で年が切り替わるため、シーズンの途中で決算を迎え、年をまたぐ契約の前受分の整理が必要になります。

具体例:シーズン契約の売上計上

例えば11月に、12月〜3月の除雪業務分として120万円のシーズン契約料をまとめて受け取り、毎月同じように作業を提供する契約だったとします。

  • 1か月分の売上:120万円÷4か月=30万円
  • その年の売上に計上する額:12月分の30万円
  • 12月末の前受金:120万円−30万円=90万円(1月〜3月分は翌年の売上)

出動回数に応じて精算する契約なら、実際に除雪を行った回数や月に応じて売上を計上します。

法人の場合は、決算月を雪のシーズンが終わった後に設定すると、1つのシーズンを1つの事業年度に収めやすくなります。法人化を考えるときの判断材料の一つです。

燃料費・車両費の按分と開業前の支出

燃料費や車両費は、事業と家事の按分も論点です。事業専用の車両なら全額を経費にできますが、家庭と兼用する車は、走行記録など使用実態に基づく按分の根拠を残しておきます。開業前に支出したチラシの作成費や営業のための交通費などは「開業費」として資産に計上し、開業後に任意の時期に経費にできます。機械の購入代金は開業費ではなく、上の表のとおり資産として処理します。

インボイス登録は必要?取引先の構成で判断する

自治体や管理会社など事業者からの受注が中心なら、インボイス登録を求められる場面が多くなります。一方、戸建ての個人宅の除雪や雪下ろしが中心なら、取引先は消費者なので求められにくくなります。登録すれば消費税の申告義務が生じるため、売上規模と取引先の構成で判断します。

主な取引先インボイスの必要性の目安
戸建ての個人宅(除雪・雪下ろし)消費者のため、求められにくい
マンション管理会社・不動産会社・店舗事業者として仕入税額控除に使うため、求められやすい
自治体の委託・入札入札や契約の条件で確認する
町内会契約先の状況によるため、事前に確認する
取引先別のインボイスの必要性の目安(2026年10月時点)

個人の2割特例は令和8年分で終わります。令和9・10年分は、登録しなければ免税事業者になる個人を対象に、売上税額の3割を納付税額とする「3割特例」があります。簡易課税を選ぶ場合の事業区分は、作業の内容(除雪の役務の提供か、工事に当たるか)で判断が分かれることがあるため、届出の前に確認します。

シーズン中に外注先へ作業を頼む場合、相手が免税事業者だと、支払った消費税の全額は差し引けません。2026年10月1日〜2028年9月30日は70%、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%を差し引ける経過措置があります。登録の判断の流れはインボイス制度の実務ガイドで登録の判断を確認するで整理しています。

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免税事業者への外注費の経過措置を計算する支払額と取引の時期を入れると、差し引ける消費税の額を確認できます。計算する

インボイス登録の要否や簡易課税の区分は、取引先の構成と作業の内容で変わります。契約書を見ながら初回無料で確認できます。

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見落としやすいポイントは?

届出や税金のほかにも、開業前に確認しておきたい点があります。後から直すと手間や費用がかかるものばかりなので、最初のシーズンが始まる前に一度点検しておきましょう。

見落としやすい点確認すること
短期雇用でも社会保険・雇用保険の加入判定が必要冬季だけの雇用でも、雇用期間や労働時間によっては加入の対象になる場合がある。契約前に条件を確認する
除雪機械の保険・賠償責任作業中に建物や車両を傷つけると損害賠償が発生することがある。業務中の事故に備えた保険を検討し、保険料は経費にする
運転資格公道を走る大型特殊自動車には大型特殊免許、業務でホイールローダーなどを運転するには機械の大きさに応じた技能講習や特別教育が必要になる
兼業時の経費按分造園・外構工事など夏の事業と兼業する場合、車両・資材・事務所家賃などの按分方法を決めておく
自治体除雪委託の入札・契約条件入札や単価契約など独自の条件があることが多い。契約書の内容を確認してから売上計上や請求の方針を決める
除雪請負業の開業前に点検したいポイント

オフシーズンの資金繰りと記帳はどうする?

除雪業は売上が冬季に集中する一方、機械のローンや保険料、駐車場代などの固定費は年間を通じて発生します。除雪シーズンの収入から翌シーズンまでの固定費をまかなえるだけの資金を計画的に確保しておくと、雪の少ない年でも資金繰りに困りにくくなります。

納税の時期にも季節のずれがあります。確定申告と納付の期限はシーズン終盤の3月15日(令和8年分は2027年2月16日〜3月15日に申告)で、前年の所得税が予定納税基準額15万円以上になると、雪のない7月と11月にも予定納税があります。冬の売上から納税資金を別の口座に取り分けておくと安心です。

  • 出動記録(日付・現場・時間・使った機械)をつけ、請求書と突き合わせる
  • 夏の兼業と冬の除雪で、入出金を分けて記録する
  • 機械のローン・保険料・駐車場代を年間の支払予定表にまとめる
  • 12月末時点の前受金と、未請求の出動分を確認する

個人事業の1年間の申告・納付の流れは、個人事業主の年間スケジュールにまとめています。

法人化を検討し始めるタイミングは?

個人事業として除雪業を続けるなかで、次のようなサインが重なってきたら法人化を検討するタイミングといえます。

  • 自治体・管理会社との契約規模が拡大し、法人としての信用力や責任範囲の明確化を求められるようになった
  • 冬季だけでなく通年で人を雇うようになり、社会保険や給与体系の整備が必要になった
  • 除雪機械の買い替えや増設を考えていて、資金調達の選択肢を広げたい

法人の所得のうち年800万円以下の部分は、中小法人なら法人税率が15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)です。一方、法人は役員1人だけでも社会保険の強制適用事業所になり、札幌市内なら資本金等1,000万円以下・従業者50人以下でも、赤字の年を含めて道と市の均等割が年7万円かかります。判断の軸は除雪請負業の法人化のタイミングと判断基準で詳しく整理しています。

よくある質問

作業中に住宅の屋根や車を傷つけて賠償金を払った場合、経費になりますか?

業務に関連して支払った損害賠償金は、原則として必要経費になります。ただし、故意や重大な過失によって相手に損害を与えた場合の賠償金は経費になりません。保険金で補てんされた部分は、その分を差し引いて考えます。

雪が少なく、シーズン契約の料金の一部を返金した場合はどうなりますか?

契約で精算の取り決めがあり返金が確定した場合は、その分の売上を減らします。インボイス登録をしている場合は、返金について返還インボイスの交付が必要になりますが、1万円未満の返金なら交付は不要です。

除雪機械を買うための融資はありますか?

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、開業前からおおむね7年以内の事業者が対象で、限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内です。自治体や北海道の制度融資もあるため、機械の見積書と事業計画をそろえて比較します。

雪が降らない年に売上が大きく減った場合、税金面で備える方法はありますか?

青色申告なら、赤字を翌年以後に繰り越して黒字の年の所得から差し引けます。前年の所得をもとにした予定納税は、その年の所得が大きく減る見込みなら減額を申請できる制度があるため、早めに確認しておきましょう。

まとめ

除雪請負業の開業では、開業届と青色申告承認申請書を雪が降る前に同じ日に出し、冬だけ雇う作業員の源泉徴収と、シーズン契約の売上計上の方法を最初に決めておくことが大切です。機械は取得価額と中古かどうかで経費化の方法が変わり、取引先の構成によってインボイス登録の要否も変わります。シーズン中に慌てないよう、秋のうちに届出と記帳の仕組みを整えておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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