輸入販売業の開業で税務署に出す届出は、開業届と青色申告承認申請書が基本です。そのうえで輸入販売ならではの急所が、税関に払う輸入消費税の控除と輸入許可通知書の管理、関税を含めた仕入原価の計算、免税のままか課税事業者を選ぶかの判断です。
この記事の結論
税務署への届出は他の業種と共通で、開業届と青色申告承認申請書が基本セットです。輸入販売で差がつくのは、輸入消費税を控除できる形で書類と名義を整えることと、課税事業者になるかどうかの判断です。
- 開業届は開業の日から1か月以内。青色申告承認申請書はその年の3月15日まで(1月16日以後の開業は開業の日から2か月以内)
- 輸入消費税の控除は、輸入許可通知書の保存と、輸入者の名義が事業主本人であることがカギ
- 関税・国際送料・保険料は、商品の取得原価に含めるのが原則
- 免税事業者のままでは輸入消費税を控除できない。販売先・仕入の規模・利益率で登録を判断する
- 為替差損益の処理ルールと、商材ごとの許認可・輸入時の届出も開業前に確認する
輸入販売の開業で出す届出一覧
個人事業として始める場合に税務署などへ出す主な届出をまとめました。期限は国税の基本的なルールに基づくもので、様式と提出方法は提出前に国税庁のタックスアンサーで確認してください。多くの届出はe-Taxでも提出できます。
| 届出 | 提出先 | 期限 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業届出書 | 税務署 | 開業の日から1か月以内 | 屋号もここで届け出る |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内) | 青色申告特別控除や赤字の繰越しが使える |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 税務署 | 経費にしたい年の3月15日まで(1月16日以後の開業や、新たに専従者がいることになった場合はその日から2か月以内) | 家族に払う給与を経費にするための届出 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 開設の日から1か月以内 | 人を雇って給与を払う場合に出す |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 随時(提出した月の翌月末日までに通知がなければ、翌々月の納付分から特例) | 給与の支払を受ける人が常時10人未満なら、源泉税の納付を1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日の年2回にまとめられる |
| 消費税の届出(課税事業者の選択・簡易課税など) | 税務署 | 届出ごとに異なる | 後述の「免税のままか、課税事業者を選ぶか」で判断する |
| 個人事業税の事業開始の申告 | 北海道(道税事務所) | 北海道の案内で確認 | 物品販売業は課税の対象。税率は多くの業種で5%、事業主控除290万円 |
青色申告特別控除は、令和8年分までは最大65万円、令和9年分からは帳簿を電子帳簿保存法の要件で保存するなどの要件を満たすと最大75万円です。開業の時点から会計ソフトで記帳し、e-Taxで申告する前提で準備しておくと、最初の年から上限の控除を狙えます。
取扱商品で必要になる許認可・輸入時の手続き
取扱商品によっては、税務の届出より先に、許認可や輸入のたびの届出が必要になります。商材を決めた段階で、所管する官庁の規制を確認しましょう。
| 商材 | 主な規制・手続き | 確認先 |
|---|---|---|
| 食品・食品添加物 | 販売のための輸入は、そのたびに食品衛生法に基づく食品等輸入届出が必要。販売の形態によっては営業許可・営業届出も | 厚生労働省の検疫所、保健所 |
| 食器・調理器具、乳幼児向けのおもちゃ | 食品衛生法の輸入届出の対象になるものがある | 厚生労働省の検疫所 |
| 化粧品 | 輸入して販売するには、医薬品医療機器等法に基づく化粧品製造販売業の許可などが必要 | 都道府県の薬務の担当窓口 |
| 電気製品 | 電気用品安全法に基づく事業の届出と、PSEマークの表示が必要 | 経済産業省 |
| 酒類 | 販売するには酒類の販売業免許が必要 | 販売場の所在地を所轄する税務署 |
法人で始める場合の届出
法人で始める場合は、届出が法人版に置き換わります。法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、法人の青色申告承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までに提出します。北海道と市町村にも法人設立の届出が必要です。
札幌市内で開業する場合の提出先
- 所轄の税務署は区ごとに異なる:北区・東区は札幌北、豊平区・南区・清田区は札幌南、中央区の西側(おおむね大通西11丁目以西)・西区・手稲区は札幌西、白石区・厚別区は札幌東、中央区の東側(おおむね西10丁目以東)は札幌中。個別の住所は国税庁の管轄区域表で確認する
- 2026年7月10日から、書面で届出を郵送するときの送付先は、5署の内部事務を集約した業務センター(〒060-8510 中央区大通西10丁目)。e-Taxでの提出と、窓口への持参は所轄署
- 酒類を扱う場合の販売業免許も、販売場の所在地を所轄する税務署が窓口
輸入消費税と関税の基本
商品を輸入するときは、税関に関税と輸入消費税(地方消費税を含む)を納めます。輸入消費税の税率は国内と同じ10%(国7.8%・地方2.2%)で、酒類を除く飲食料品は軽減税率8%(国6.24%・地方1.76%)です。課税の基準になる金額は、商品代金に輸入港までの運賃・保険料を加えた価格(CIF価格)に、関税などを加えた額です。
| 支払うもの | 支払先 | 処理の原則(税抜経理の課税事業者の場合) |
|---|---|---|
| 商品代金 | 海外の仕入先 | 仕入(商品の取得原価) |
| 国際送料・保険料 | 運送会社・保険会社 | 取得原価に含める |
| 関税 | 税関 | 取得原価に含める |
| 通関の手数料 | 通関業者 | 購入のための付随費用として取得原価に含めるのが原則 |
| 輸入消費税・地方消費税 | 税関 | 仮払消費税等として処理し、仕入税額控除の対象にする |
輸入消費税は、国内で仕入れたときの消費税と同じく仕入税額控除の対象で、証憑になるのは税関から交付される輸入許可通知書です。インボイス制度の下でも、輸入消費税はこの書類の保存によって控除します。国際宅配便などで少量を輸入する場合も、配送業者から輸入許可通知書の写しなど、税額と輸入者がわかる書類を受け取って保存しておきましょう。
輸入者の名義を最初に確認する
通関業者に手続きを任せる場合も、輸入申告の名義(輸入者)が事業主本人になっているかを、輸入許可通知書の宛名で確認してください。輸入代行業者などの名義で輸入すると、輸入消費税を納めたのはその業者となり、自分の申告で控除が受けられないおそれがあります。
関税や国際送料は商品の取得原価に含めて計算するのが原則で、在庫が残る年は期末棚卸の金額にも影響します。商品ごとの仕入単価に関税・送料を配分しておくと、棚卸の計算と商品別の利益の把握が楽になります。
私的な個人輸入と事業の仕入が混在すると記帳が乱れやすいため、決済に使うカード・口座と、海外の通販サイトや決済サービスのアカウントを事業用に分けるのが実務的なコツです。
免税のままか、課税事業者を選ぶか
開業当初は、基準期間(個人は前々年)の課税売上高がないため、原則として消費税の免税事業者です。ただし、前年1〜6月の課税売上高と給与等の支払額がともに1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になります。
免税事業者でも、輸入のたびに輸入消費税は税関へ納める必要があります。免税事業者は売上の消費税を納めない代わりに、輸入消費税を控除できず、コストとして商品原価に乗ったままになります。課税事業者は、売上の消費税から輸入消費税を差し引いて納めます。どちらが有利かは、次の3つの軸で判断します。
| 判断の軸 | 登録(課税事業者)を検討しやすい場合 | 免税のままを検討しやすい場合 |
|---|---|---|
| 販売先 | 小売店や法人への卸売が中心で、インボイスを求められる | ネットショップなどで一般消費者への販売が中心 |
| 仕入の先行 | 開業直後に在庫をまとめて輸入し、輸入消費税が売上の消費税を上回りそう(本則課税なら差額が還付される) | 仕入と売上の規模が釣り合っている |
| 利益率 | 仕入の割合が高く、課税事業者になっても納める税額が小さい | 利益率が高く、課税事業者になると納める税額が大きくなる |
事業者の取引先は、免税事業者からの仕入れについて、2026年10月1日〜2028年9月30日は消費税相当額の70%しか控除できません(2028年10月1日〜2030年9月30日は50%)。卸売が中心なら、登録しないことが取引条件の見直しにつながりやすい点も考慮します。制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドで確認できます。
無料ツール課税事業者になる時期を判定する基準期間と特定期間の売上・給与から、消費税の納税義務がいつ生じるかを確認できます。確認する
登録した場合の計算方法の選び方
登録して課税事業者になる場合、納める消費税の計算方法は本則課税だけではありません。輸入消費税を実際に差し引けるのは本則課税だけで、他の方法では売上の消費税に一定の割合を掛けて計算します。
| 計算方法 | 納める税額の考え方 | 使える人・期間 | 輸入販売での注意 |
|---|---|---|---|
| 本則課税 | 売上の消費税から、輸入消費税を含む仕入の消費税を差し引く | すべての課税事業者 | 在庫を先に輸入する年は、還付を受けられる可能性がある |
| 簡易課税 | 売上の消費税から、みなし仕入率で計算した額を差し引く | 基準期間の課税売上高5,000万円以下で、事前に届出(2年継続) | 一般消費者への販売は第2種(80%)、事業者への卸売は第1種(90%)。還付は受けられない |
| 2割特例 | 売上の消費税の2割を納める | 登録しなければ免税事業者になる人。個人は令和8年分まで | 届出は不要。仕入の割合が8割を超えるなら本則課税のほうが有利 |
| 3割特例 | 売上の消費税の3割を納める | 登録しなければ免税事業者になる個人事業者。令和9・10年分 | 届出は不要。法人は使えない |
簡易課税を選ぶ届出は、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出します。新たに事業を始めた年は、その年の中に出せば初年から適用できます。2割特例を使った翌年に簡易課税へ移る場合は、翌年の確定申告期限までに届出をすればよい特例があります。2割特例・3割特例は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える年には使えません。
無料ツール簡易課税・本則課税・2割特例の納税額を比較する売上と仕入の金額を入れると、計算方法ごとの消費税の納付額を並べて比べられます。計算する
登録するか、どの計算方法を選ぶかは、販売先の構成と初年度の仕入の規模で変わります。開業前の見込みの数字で、初回無料で試算できます。
無料で相談する数値例:年商1,500万円の輸入雑貨ECの場合
年商1,500万円、海外仕入600万円の輸入雑貨ECを想定します。仮に売上に係る消費税が150万円、輸入時に税関へ納めた消費税が60万円とすると、計算方法ごとの負担は次のようになります。数字は説明用の簡略例で、国内の経費にかかる消費税は考えていません。
計算例:同じ売上・仕入で計算方法ごとに比べた場合
例えば一般消費者向けのネットショップで、売上に係る消費税が150万円、税関で納めた輸入消費税が60万円の場合です。
- 本則課税:申告で納める税額は150万円−60万円=90万円。税関で払った60万円と合わせた負担は150万円
- 簡易課税(小売業・第2種):みなし仕入率80%のため、150万円×20%=30万円。税関分と合わせた負担は90万円
- 2割特例(個人は令和8年分まで):150万円×20%=30万円。税関分と合わせた負担は90万円
- 3割特例(個人の令和9・10年分):150万円×30%=45万円。税関分と合わせた負担は105万円
- 免税事業者:売上の消費税は納めない。税関で払った60万円は控除できず、商品の原価になる
本則課税の課税事業者なら、税関で払った輸入消費税は申告で差し引かれ、二重に負担することにはなりません。ただし、税負担の総額だけを見れば、売上の消費税を納めない免税事業者が最も軽くなります。それでも登録を選ぶ理由になるのは、取引先からインボイスを求められる場合や、開業直後に在庫を先行して輸入し、本則課税で還付が見込める場合です。仕入の割合がこの例より高い商材では、本則課税が簡易課税や特例より有利になることもあります。
外貨建ての仕入は為替差損益に注意
外貨建ての仕入では、仕入を計上した日と代金を払った日のレートの差から為替差損益が生じます。円への換算は、取引日の為替相場(原則は電信売買相場の仲値)で行うのが基本です。どの時点のレートを使うかをあらかじめルール化し、取引ごとに記録しておくと、確定申告がぐっと楽になります。
計算例:仕入の計上と支払でレートが違う場合
例えば1万ドルの商品を、1ドル150円の日に仕入として計上し、1ドル152円の日に代金を支払った場合です。
- 仕入の計上額:1万ドル×150円で150万円
- 実際の支払額:1万ドル×152円で152万円
- 為替差損:152万円−150万円=2万円
商品の取得原価は150万円のままで、差額の2万円は為替差損として処理します。
開業前の支出と最初の1年の記帳・資金繰り
海外の展示会や仕入先の視察に行った旅費、市場調査の費用など、開業の準備のために使ったお金は「開業費」として資産に計上し、開業後の好きな年に経費にできます。開業前に仕入れた商品は開業費ではなく、在庫(棚卸資産)として扱います。ネットショップの機能を持つサイトの制作費は、内容によってはソフトウエアとして資産に計上する必要があります。
商品撮影用のカメラやパソコンなどの備品は、10万円未満ならその年の経費にでき、20万円未満なら3年で均等に経費にする方法も選べます。青色申告をする中小事業者は、2026年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を、年300万円まで取得した年に一括で経費にできます。
輸入販売の資金繰りで気をつけたいのは、代金の前払い、輸送、通関での関税・輸入消費税の支払、販売、入金の順にお金が動き、売上が入る前に資金が出ていくことです。本則課税で還付を受ける場合も、還付金が入るのは申告の後になります。開業前に次の点をそろえておきましょう。
- 事業計画と収支の見通し(仕入から入金までの期間を含めた資金繰り)
- 開業資金と自己資金の額
- 開業届・青色申告承認申請書の準備
- 会計ソフトと記帳の体制(商品別の仕入単価に関税・送料を配分できる形)
- 屋号、事業用の口座・カード、海外の通販サイトや決済サービスの事業用アカウント
- 取扱商品の許認可と、輸入時に必要な届出の確認
海外の通販サイトや決済サービスからメールやダウンロードで受け取った請求書・領収書は、2024年1月1日以後、電子データのまま保存する義務があります。源泉税の納付、予定納税、確定申告と1年の中で期限が続くため、個人事業主の年間スケジュールで期限を先に把握し、日々の記帳は経理・会計処理のガイドを参考に整えてください。
よくある質問
決算のとき、売れ残った輸入商品はいくらで在庫に計上しますか?
商品代金に関税・国際送料・保険料などの付随費用を加えた取得原価をもとに計算します。評価方法を届け出ていない場合は、期末に最も近い時期に仕入れた単価で評価する最終仕入原価法になります。外貨建ての商品は、仕入を計上したときの円換算額が基準です。
インボイス登録をした後で、免税事業者に戻ることはできますか?
登録を取りやめる届出を、取りやめたい課税期間の初日から数えて15日前の日までに提出すれば、その課税期間から登録の効力がなくなり、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者に戻れます。ただし、登録した時期によっては一定の期間は免税事業者に戻れない場合があるため、登録前に確認しておきましょう。
個人で使うつもりで輸入した品物を、あとから販売してもよいですか?
個人で使う目的の輸入と販売目的の輸入では、関税の計算などの扱いが異なります。販売するつもりの商品は、最初から事業の仕入として輸入し、事業用の口座で支払って帳簿に記録するのが基本です。
最初から法人で始めたほうが有利ですか?
卸売先から法人であることを求められる場合などは、法人のほうが取引を始めやすい面があります。一方、赤字でも住民税の均等割(札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円)がかかり、役員1人でも社会保険への加入が必要です。利益の見込みと取引条件を比べて判断します。
まとめ
輸入販売業の開業は、開業届と青色申告承認申請書を期限内に出すことが基本で、そのうえで輸入許可通知書の保存と輸入者の名義、関税・送料を含めた取得原価の計算を最初に固めておくことが大切です。課税事業者になるかどうかは、販売先が事業者か消費者か、初年度の仕入の規模、利益率で判断し、登録するなら計算方法まで比べて選びましょう。具体的な判断は商材や販売チャネルによって異なるため、開業前の数字で一度試算しておくと安心です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
輸入販売の開業・消費税のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 タックスアンサー(個人事業者の税)
- 国税庁「インボイス制度の見直し(令和8年度税制改正)」
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
