年末調整の代行は、10月下旬の書類配布から翌年1月末の源泉徴収票の提出まで、回収・計算・精算を会社と税理士で分担して進めます。書類の回収から計算完了まではおおむね1〜2週間です。令和8年分は基礎控除などの改正を12月の年末調整でまとめて精算するため、回収の締切を11月中旬〜下旬に置いて早めに動きます。
この記事の結論
年末調整の代行は、会社が書類を配布・回収し、税理士が内容の確認・年税額の計算・源泉徴収票の作成を担う分担で進めます。回収から計算完了までは、おおむね1〜2週間を見込みます。
- 書類の配布は10月下旬〜11月上旬、回収の締切は11月中旬〜下旬に置く
- 令和8年分は、基礎控除(最高104万円)や給与所得控除の最低額74万円などの改正を、12月の年末調整でまとめて精算する
- 源泉徴収票の交付と給与支払報告書・法定調書の提出は、令和8年分は2027年2月1日(月)まで
- 費用は人数・中途入退社・給与計算の有無・データの形式などで決まるため、見積りで範囲を確認する
年末調整の代行とは?依頼できる業務の範囲
年末調整は、従業員の給与から毎月源泉徴収してきた所得税と、1年間の正しい税額との差額を精算する手続きです。給与担当者が扶養控除等申告書や保険料控除申告書を従業員から回収し、正確に計算する必要があります。税理士に代行を依頼すると、次のような業務を任せられます。
- 従業員から提出された各種控除申告書と控除証明書の内容確認
- 年税額の計算と過不足額の算出
- 源泉徴収票・給与支払報告書の作成
- 税務署・市区町村への提出(給与支払報告書、法定調書合計表など)
書類の配布・回収や、精算額を12月の給与に反映する作業は会社側で行うのが一般的です。どこまでを任せるかで準備する資料と費用が変わるため、依頼の前に分担を決めておきます。なお、12月まで在籍して扶養控除等申告書を出している人が対象で、その年の給与収入が2,000万円を超える人は年末調整の対象外です。
令和8年分の年末調整は何が変わる?
令和8年度税制改正により、基礎控除や給与所得控除などが見直されました。改正は2026年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。2026年中の毎月の源泉徴収は改正前の税額表のまま行われているため、改正の効果は12月の年末調整でまとめて精算します。
| 項目 | 令和8年分 | 令和7年分 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得489万円以下(給与のみなら665万5,556円以下)は104万円。655万円以下67万円、2,350万円以下62万円など段階的 | 132万円以下95万円、336万円以下88万円、489万円以下68万円、655万円以下63万円、2,350万円以下58万円 |
| 給与所得控除の最低額 | 74万円(給与収入220万円以下) | 65万円 |
| 扶養親族などの所得要件 | 合計所得62万円以下(給与のみなら136万円以下) | 58万円以下(123万円以下) |
| 特定親族特別控除(19〜22歳) | 合計所得62万円超123万円以下(給与197万円以下)が対象 | 58万円超(給与188万円以下) |
| 生命保険料控除 | 23歳未満の扶養親族がいれば、新契約の一般生命保険料控除の上限が6万円(合計12万円は据置き) | 上限4万円 |
計算例:同じ給与で年税額はどれだけ変わるか
例えば、給与収入500万円、社会保険料70万円、扶養親族なし、ほかの控除なしの人の場合です(所得税のみ。復興特別所得税は除きます)。給与所得控除は500万円×20%+44万円=144万円で、給与所得は500万円−144万円=356万円です。
- 令和8年分:課税所得は356万円−70万円−104万円=182万円、税額は182万円×5%=91,000円
- 令和7年分:課税所得は356万円−70万円−68万円=218万円、税額は218万円×10%−97,500円=120,500円
この例では年税額が120,500円−91,000円=29,500円下がります。毎月の源泉徴収は改正前の税額表で行われているため、12月の年末調整で還付される額が例年より大きくなる場合があります。
最後の給与の支払いが2026年11月30日以前の中途退職者などは、年末調整ではなく本人の確定申告などで精算します。令和9年分の源泉徴収税額表は、2027年1月1日以後に支払う給与から使います。令和6年分にあった定額減税は、令和8年分の年末調整にはありません。
無料ツール年末調整の過不足額を計算する給与の総額と源泉徴収税額、控除の内容を入れると、還付・徴収の目安が分かります。計算する
依頼から完了までの流れと所要日数は?
年末調整の代行を税理士に依頼する場合、一般的に次のような流れになります。
| ステップ | 主な作業 | 目安の時期 |
|---|---|---|
| ① 書類の準備・配布依頼 | 扶養控除等申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書などを従業員に配布 | 10月下旬〜11月上旬 |
| ② 書類の回収・税理士へ提出 | 記入済みの申告書・保険料控除証明書などを事務所へ送付 | 11月中旬〜下旬 |
| ③ 計算・チェック | 税理士が年税額を計算し、過不足額を確認 | 11月下旬〜12月上旬 |
| ④ 結果の返戻・精算 | 12月の給与で過不足額を精算 | 12月の給与計算時 |
| ⑤ 源泉徴収票の作成・提出 | 従業員への交付、給与支払報告書・法定調書の提出 | 翌年1月末まで(令和8年分は2027年2月1日(月)) |
書類の回収から計算完了までは、従業員数や申告書の記載内容によって変わりますが、おおむね1〜2週間を見込んでおくと安心です。書類の不備や記入漏れがあると追加の確認が必要になり、日数が延びることがあります。
精算した12月分の源泉所得税は翌月10日が納期限で、令和8年分は2027年1月12日(火)、納期の特例を受けている場合は2027年1月20日(水)です。2027年1月1日以後は、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署への源泉徴収票の提出をしたものとみなされます(従業員本人への交付は必要)。源泉徴収票などの法定調書は、前々年の提出枚数が30枚以上ならe-Taxなどでの提出が必要です。退職金を支払った場合は、2026年1月1日以後の支払分から全員分の退職所得の源泉徴収票を提出します。
代行費用はどう決まる?見積りで確認すること
年末調整の代行費用は、一律の相場で決まるものではありません。対象となる人数のほか、次のような要素で作業量が変わるため、見積りでは対応範囲とあわせて確認します。
| 費用に影響する要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる人数 | 年末調整をする従業員・役員の数 |
| 中途入社・退職者の数 | 前職の源泉徴収票の確認や、年末調整の対象外となる人の判定 |
| 給与計算との関係 | 毎月の給与計算もあわせて依頼しているか、自社で行っているか |
| データの形式 | 給与ソフトのデータで受け取れるか、紙の申告書から入力するか |
| 確認が必要な控除 | 住宅ローン控除、扶養の異動、特定親族特別控除の対象者などの件数 |
| 作成・提出の範囲 | 源泉徴収票の交付、給与支払報告書・法定調書の作成と電子提出まで含むか |
給与計算を継続して依頼している場合は、毎月のデータがそろっているため、年末調整の確認や計算を効率よく進められます。当事務所では、年末調整を含む給与・税務の業務を継続的な顧問契約の中でお手伝いしており、決算・申告だけのスポットのご依頼はお受けしていません。料金の考え方は料金・契約・業務フロー、支援の内容は会計・税務顧問のご案内で確認できます。
- 従業員・役員の人数と雇用形態(正社員・パート・役員)
- その年の中途入社・退職者の人数
- 使っている給与ソフトと、データの出力形式
- 前年に作成した源泉徴収票の枚数
- 住宅ローン控除を受けている従業員の有無
スムーズに進めるための3つのコツ
年末調整の代行を円滑に進めるには、依頼する会社側の事前準備が欠かせません。
1. 書類回収の締切を11月中旬〜下旬に設定する
12月に入ってからの提出が増えると、確認と計算の作業が集中して遅れの原因になります。配布と同時に締切日を明示し、未提出者への声かけの担当者も決めておきます。
2. 控除証明書の原本またはデータをそろえる
生命保険料・地震保険料・社会保険料(国民年金保険料など)の控除証明書は、添付漏れが起きやすい書類です。電子データで発行されるものもあるため、従業員には紙かデータかを問わず提出するよう案内します。
3. 中途入社・退職者の情報を先に整理する
年の途中で入社した人は、前職の源泉徴収票がないと年末調整ができません。入社時に回収できていない場合は、早めに本人へ依頼します。退職者には退職時の源泉徴収票を交付しているかも確認します。
依頼のタイミングでスケジュールはどう変わる?
具体例:依頼の時期による余裕の違い
例えば、11月中に必要書類を回収して依頼できた場合は、税理士側も余裕を持って年税額の計算を進められ、確認事項のやり取りも12月の給与計算の前に終えられます。
一方、例えば12月に入ってから依頼が集中すると、確認事項のやり取りに時間がかかり、12月の給与で精算できずに翌年1月の給与で精算することになる場合もあります。
年末調整は、その年の最後に支払う給与で行うのが原則です。12月の給与より先に賞与を支払う会社は、12月分の給与の見込み額を含めて、賞与の支払いの際に年末調整を行うこともできます。賞与の支給日が早い会社ほど、書類の回収を前倒しにする必要があります。依頼日を早めに決め、従業員への案内もあわせて前倒しで進めておくと、代行のメリットを十分に生かせます。
見落としやすいポイントは?
| 見落としやすい点 | 内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 1年目は本人の確定申告。2年目以後は年末調整で控除でき、税務署から届く申告書などが必要。入居時期などにより金融機関の残高証明書が要る場合と要らない場合がある | 該当者に書類の有無を早めに確認する。紛失すると再発行に時間がかかる |
| 2か所以上から給与を受けている人 | 年末調整は扶養控除等申告書を出した主たる勤務先だけで行う | 従たる給与の分は、本人の確定申告で精算するよう案内する |
| 医療費控除・ふるさと納税 | 年末調整の対象外。確定申告をすると、ふるさと納税のワンストップ特例は使えなくなる | 確定申告が必要になる場合を従業員に案内する |
| 子のアルバイト収入 | 扶養控除は給与のみで136万円以下。19〜22歳は136万円を超えても197万円以下なら特定親族特別控除の対象 | 年収の見込みを本人に確認する |
| 過不足額の精算時期 | 計算後の過不足額は、12月か年明けの給与で調整することが多い | 従業員からの問い合わせに備え、事前に案内しておく |
年の途中で退職して年末調整を受けていない人も、本人の確定申告で精算することになります。退職時に源泉徴収票を交付し、確定申告で使う旨を伝えておくと問い合わせが減ります。
令和8年分は改正の精算がまとめて年末調整に入るため、例年より確認事項が増えます。対象者の判定や書類の集め方から、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する従業員への案内で準備しておきたいこと
年末調整をスムーズに進めるには、税理士とのやり取りだけでなく、従業員への案内も重要です。提出書類の種類・提出期限・提出方法(紙かデータか)をまとめた案内文を早めに配布すると、回収の手間を減らせます。扶養親族に異動があった人や、年の途中で結婚・出産などの家族構成の変化があった人は確認事項が増えるため、個別に声をかけておくと確認漏れを防げます。
- 提出する書類の種類と、提出期限・提出方法
- 家族の異動(結婚・出産・就職・別居など)の有無
- 配偶者の給与収入の見込み(配偶者控除は136万円以下、配偶者特別控除は207万円未満が目安)
- 19〜22歳の子のアルバイト収入の見込み
- 保険料控除証明書や住宅ローン控除の書類のそろえ方
ツール配偶者控除・配偶者特別控除を計算する本人と配偶者の所得を入れると、控除額の目安を年分ごとに確認できます。計算する
よくある質問
年末調整の申告書を、紙ではなく電子データで回収できますか?
できます。国税庁の年末調整控除申告書作成用ソフトウェアや給与ソフトの機能を使い、従業員に電子データで作成・提出してもらう方法があります。保険料控除証明書なども電子データで受け取れるものがあるため、回収と確認の手間を減らせます。
年末調整のあとで扶養の誤りが見つかったら、どうなりますか?
源泉徴収票を提出する前であれば、年末調整をやり直して精算するのが一般的です。期限を過ぎてから分かった場合は、従業員本人の確定申告などで正しい税額に直します。誤りに気づいたら、早めに税理士へ連絡してください。
役員や家族従業員も年末調整の対象ですか?
役員報酬や家族従業員への給与も給与所得のため、扶養控除等申告書を提出していれば年末調整の対象です。役員の給与収入が2,000万円を超える場合は対象外となり、本人が確定申告をします。
従業員のマイナンバーや家族の情報を税理士に渡しても大丈夫ですか?
税理士には法律上の守秘義務があります。マイナンバーの取扱いを外部に委託する場合、会社は委託先が適切な安全管理をしているかを確認する必要があるため、受け渡しの方法と保管のルールを契約時に決めておきます。
まとめ
年末調整の代行は、10月下旬〜11月上旬の書類配布、11月中旬〜下旬の回収、1〜2週間の計算と確認、12月の給与での精算、翌年1月末までの源泉徴収票の提出という流れで進みます。令和8年分は基礎控除などの改正をまとめて精算するため、例年より早めに準備を始め、費用は人数や依頼の範囲を伝えて見積りで確認しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
