- カテゴリ:有利判定・比較
- 根拠:措法8の4・所法92
- 入力2項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
上場株式の配当を受け取ったとき、確定申告では「総合課税」と「申告分離課税」のどちらかを選べます。総合課税なら配当控除という税額控除が使えますが、税率はほかの所得と合算した金額で決まります。一方、申告分離課税は所得の大小にかかわらず一律20.315%です。どちらが得かは所得の水準によって変わるため、実際に両方を計算して比べる必要があります。
この計算式を3行でいうと
- 総合課税は配当控除が使える代わりに税率が所得で変わり、申告分離課税は所得にかかわらず一律20.315%です。
- 課税所得(配当を含む)がおよそ695万円以下なら総合課税、それを超えると申告分離課税が有利になる傾向があります。
- 所得税と住民税で別々の方式は選べず、総合課税にすると国保料や扶養の判定所得にも影響します。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
配当の課税方式の有利判定(総合 vs 申告分離)
措法8の4・所法92★結果コピーリンク上場株式の配当を総合課税(配当控除あり)で申告するか、申告分離20.315%のままにするかを、課税総所得の水準から判定します。
| あなたの限界税率 | 20% |
| 総合課税の実効負担 | 17.41% → ¥174,100 |
| 申告分離(20.315%) | ¥203,150 |
| ★有利判定 | 総合課税(配当控除) |
| 目安 | 課税所得900万円以下なら総合が有利になりやすい |
こんなときに使います
- 上場株式の配当を受け取り、確定申告で総合課税と申告分離課税のどちらを選ぶか迷っているとき
- 複数の証券会社から配当を受け取っていて、まとめて確定申告したほうが得か知りたいとき
- 配当のほかに給与所得や事業所得があり、課税所得の水準によって有利不利が変わることを確認したいとき
- 大口株主にあたるかどうかなど、そもそも申告分離課税を選べるのかを確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 上場株式の配当(年) | その年に受け取った、上場株式等の配当金の合計額です。複数の証券会社に口座がある場合はすべて合算します。 | 証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」や配当の支払通知書の合計額で確認できます。 |
| 配当を除く課税総所得 | 給与所得や事業所得など、配当以外の所得を合計し、所得控除を差し引いたあとの金額です。総合課税を選んだ場合、配当はこの金額の上に積み上がって税率が決まります。 | 確定申告書の「課税される所得金額」の欄から、配当所得の分を除いた金額が目安です。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 限界税率を確認する:配当を除く課税総所得に配当額を上乗せした金額をもとに、その配当部分に適用される所得税率(速算表の税率区分)を確認します。
- 総合課税を選んだ場合の実効負担率を計算する:限界税率×1.021(復興特別所得税)+住民税10%-配当控除(所得税分10%×1.021+住民税分2.8%)で求めます。
- 申告分離課税20.315%と比較する:ステップ2の実効負担率のほうが低ければ総合課税、高ければ申告分離課税を選んだほうが税負担は軽くなります。
目安として、配当を含めた課税所得がおよそ695万円以下(所得税率20%までのゾーン)であれば総合課税が有利になりやすく、それを超えて税率が23%以上のゾーンに入ると申告分離課税が有利になりやすい傾向があります。ただし国民健康保険料や扶養の判定など、税率以外への影響もあわせて考える必要があります。
具体例で確かめる
例1 配当100万円・配当を除く課税所得500万円のケース
配当を含めた課税所得は600万円で、配当部分の限界税率は20% 総合の実効負担率 = 20% × 1.021 + 10% -(10% × 1.021 + 2.8%) = 17.41% 申告分離なら20.315%
総合課税のほうが有利。税負担の差は配当100万円につき約2万9千円
例2 配当100万円・配当を除く課税所得900万円のケース
配当を含めた課税所得は1,000万円で、配当部分の限界税率は33% 総合の実効負担率 = 33% × 1.021 + 10% -(10% × 1.021 + 2.8%) = 30.68% 申告分離なら20.315%
申告分離課税のほうが有利。税負担の差は配当100万円につき約10万4千円
例3 境目に近いケース(配当を除く課税所得700万円)
配当を含めた課税所得は800万円で、配当部分の限界税率は23% 総合の実効負担率 = 23% × 1.021 + 10% -(10% × 1.021 + 2.8%) = 20.47% 申告分離なら20.315%
わずかに申告分離課税が有利だが、その差は配当100万円につき2千円弱とごく小さい
総合課税と申告分離課税のちがい
| 項目 | 総合課税 | 申告分離課税 |
|---|---|---|
| 税率 | ほかの所得と合算した金額に応じた累進税率 | 所得の大小にかかわらず一律20.315% |
| 配当控除 | 使える(所得税・住民税の税額控除) | 使えない |
| 上場株式等の譲渡損失との損益通算 | できない | できる |
| 選べる人 | 大口株主(発行済株式の3%以上を保有)以外 | 大口株主は選べない(総合課税が強制) |
ここを間違えやすい
1|所得税と住民税で別々の方式は選べません
以前は所得税で総合課税、住民税で申告不要制度を選ぶといった使い分けができましたが、令和5年分の申告以後は所得税と住民税で課税方式をそろえる必要があります。片方だけ有利な方式を選ぶことはできません。
2|総合課税にすると所得が増え、ほかの制度に影響します
配当を総合課税で申告すると、その金額が合計所得金額に含まれます。国民健康保険料の算定や、配偶者控除・扶養控除の判定所得が上がり、思わぬところで負担が増えることがあります。税率の比較だけで決めないよう注意してください。
3|大口株主は総合課税しか選べません
発行済株式の3%以上を保有する大口株主が受け取る配当は、申告分離課税や申告不要制度を選べず、総合課税での申告が必須です。同族会社のオーナー経営者は該当しやすいため、持株比率を確認してください。
4|配当控除の税率は所得水準で変わる場合があります
配当控除の割合は、課税総所得金額の水準によって段階的に変わる仕組みになっています。ここでの計算はあくまで目安であり、正確な控除額は所得の内訳によって個別の判断が必要です。
よくある質問
- 何も申告しなければどうなりますか。
- 上場株式の配当は原則として支払いの際にすでに税金が源泉徴収されています。何も申告しない「申告不要制度」を選べば、その源泉徴収された税率(申告分離課税と同じ水準)で納税が完結し、確定申告の手間はかかりません。
- NISA口座で受け取った配当も比較の対象になりますか。
- なりません。NISA口座内の配当はもともと非課税のため、総合課税と申告分離課税のどちらを選ぶかという話自体が発生しません。この比較が関係するのは、特定口座や一般口座で受け取った配当です。
- 一度選んだ課税方式は、あとから変更できますか。
- 確定申告書を提出したあとに方式を変更するには制限があります。提出前に両方の方式で試算し、有利なほうを確認してから申告することをおすすめします。
- 非上場株式の配当も同じ計算になりますか。
- いいえ。非上場株式の配当(少額配当を除く)は原則として総合課税のみで、申告分離課税を選ぶことはできません。この比較は上場株式等の配当が対象です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 租税特別措置法第8条の4(上場株式等に係る配当所得等の課税の特例)、所得税法第92条(配当控除)
- 国税庁タックスアンサー No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」
- 国税庁タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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