相続税がいくらかかるかは、遺産の総額から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引き、残りを法定相続分で分けて税率を当てはめる3ステップで概算できます。配偶者と子2人で遺産7,000万円なら、相続税の総額は225万円が目安です。
この記事の結論
遺産の総額が基礎控除以下なら相続税はかからず、超えた部分にだけ税金がかかります。概算は「財産の合計→基礎控除を引く→法定相続分で分けて税率を当てはめる」の順で出せます。
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(3人なら4,800万円)
- 生命保険金と死亡退職金は、それぞれ500万円×法定相続人の数まで非課税
- 配偶者は、取得した財産が1億6,000万円と法定相続分のどちらか多い金額までなら相続税がかからない
- 自宅の土地は小規模宅地等の特例で、330㎡まで評価額が80%減る
- 申告・納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内
相続税がかかるかどうかは基礎控除で決まる
相続税は、亡くなった人の遺産の総額(借入金や葬式費用を差し引いた後の金額)が基礎控除を超えた場合にだけかかります。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
計算例:法定相続人の数ごとの基礎控除
- 1人:600万円×1人+3,000万円=3,600万円
- 2人:600万円×2人+3,000万円=4,200万円
- 3人:600万円×3人+3,000万円=4,800万円
- 4人:600万円×4人+3,000万円=5,400万円
- 5人:600万円×5人+3,000万円=6,000万円
法定相続人の数には、相続を放棄した人も含めます。養子は、数に含められる人数に上限があります(実子がいるかどうかで異なります)。
遺産の総額が基礎控除以下なら、相続税はかからず申告も不要です。一方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使った結果として税額が0円になる場合は、申告書の提出が必要です。申告が必要かどうかの考え方は、相続税申告が必要かどうかの判定基準で整理しています。
相続税はいくら?自分でできる概算の3ステップ
相続税の計算は、まず家族全体でかかる「相続税の総額」を出し、それを実際に財産を取得した割合で各人に分ける仕組みです。総額は次の3ステップで概算できます。
- 財産を合計する預貯金、土地・建物、株式、生命保険金などを合計し、借入金などの債務と葬式費用を差し引きます。生命保険金は、非課税枠を引いた後の金額を加えます。
- 基礎控除を引く合計額から基礎控除を引いた残りが「課税遺産総額」です。0円以下なら相続税はかかりません。
- 法定相続分で分けて税率を当てはめる課税遺産総額を法定相続分どおりに分けたと仮定し、それぞれの金額に速算表の税率と控除額を当てはめて合計します。この合計が「相続税の総額」です。
法定相続分は、配偶者と子が相続人なら、配偶者が2分の1、残りの2分の1を子の人数で均等に分けます。配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合は、配偶者の割合がさらに大きくなります。税率は10〜55%の累進で、金額ごとの税率と控除額は国税庁の「相続税の速算表」で確認できます。
最後に、相続税の総額を各人が実際に取得した財産の割合で分け、配偶者の税額軽減などを差し引いたものが、それぞれの納税額になります。
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計算例:遺産7,000万円・配偶者と子2人ならいくら?
計算例:遺産7,000万円、相続人が配偶者と子2人の場合
例えば、債務と葬式費用を引いた後の遺産が7,000万円で、相続人が配偶者と子2人の場合です。
- 基礎控除:600万円×3人+3,000万円=4,800万円
- 課税遺産総額:7,000万円−4,800万円=2,200万円
- 配偶者の法定相続分:2,200万円×1/2=1,100万円
- 子1人あたりの法定相続分:2,200万円×1/4=550万円
- 配偶者分の税額:1,100万円×15%−50万円=115万円
- 子1人分の税額:550万円×10%=55万円
- 相続税の総額:115万円+55万円+55万円=225万円
次に、総額225万円を実際の取得割合で分けます。
- 法定相続分どおり分けた場合:配偶者分の112.5万円は配偶者の税額軽減で0円。子は225万円×1/4=56.25万円(562,500円)ずつで、合計1,125,000円
- 配偶者がすべて取得した場合:配偶者分の225万円が税額軽減で0円になり、納税額の合計は0円
- 子2人が半分ずつ取得した場合:子は225万円×1/2=112.5万円(1,125,000円)ずつで、合計2,250,000円
配偶者が多く取得するほど今回の納税額は減りますが、配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)では、その財産について子が相続税を負担します。分け方は、一次相続と二次相続の合計の税額で比べるのが基本です。
兄弟姉妹や孫が取得すると税額が2割加算される
配偶者と一親等の血族(子・親)以外の人、例えば兄弟姉妹や孫養子が財産を取得すると、その人の税額は2割加算されます。子が先に亡くなっていて、孫が代わりに相続人になった場合(代襲相続)は加算されません。
財産の金額はどう見積もる?財産ごとの目安
概算の精度は、財産の金額をどう見積もるかで決まります。財産の種類ごとの目安は次のとおりです。
| 財産 | 概算で使う金額 | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 亡くなった日の残高 | 家族名義でも、実質的に亡くなった人のお金(名義預金)は相続財産に含まれる |
| 土地 | 路線価×面積(路線価のない地域は固定資産税評価額×倍率) | 形や道路との接し方、人に貸しているかどうかで評価が変わる |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 人に貸している建物は評価が下がる |
| 上場株式・投資信託 | 亡くなった日の時価など | 上場株式は、亡くなった日の終値などをもとに評価する |
| 自社株(非上場株式) | 会社の規模などに応じた方法で評価 | 概算が難しく、専門家による評価が必要になりやすい |
| 生命保険金・死亡退職金 | 受取額から非課税枠(500万円×法定相続人の数)を引いた額 | 非課税枠は、相続人が受け取った分に使える |
| 債務・葬式費用 | 借入金、未払いの税金や医療費、通夜・葬儀の費用を差し引く | 香典返しの費用や、墓地・墓石の購入費は差し引けない |
計算例:生命保険金の非課税枠
例えば、法定相続人が3人で、相続人が受け取った生命保険金が2,000万円の場合、非課税枠は500万円×3人=1,500万円です。相続財産に加える金額は、2,000万円−1,500万円=500万円になります。
土地や建物の固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書で確認できます。土地の路線価は国税庁の路線価図で調べられますが、路線価のない地域では倍率方式で評価します。
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概算と実際の税額がずれやすいのはどこ?
土地の評価
土地は、形がいびつだったり道路に接する部分が狭かったりすると評価が下がり、二つの道路に面していると上がることがあります。自宅のほかに貸地や貸家がある場合も、評価のしかたが変わります。概算との差が最も出やすいのが土地です。
小規模宅地等の特例
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅の土地) | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
自宅の土地は、配偶者が取得すれば要件を満たしやすく、同居していた子などが取得する場合は、申告期限まで住み続けて所有することなどが要件です。相続開始前3年以内に新たに事業や貸付けに使い始めた土地は、原則として対象外です。減額の金額は小規模宅地等の特例の計算ツールでも確かめられます。
計算例:自宅の土地に特例を使う場合
例えば、面積が330㎡以内の自宅の土地の評価額が3,000万円で、特定居住用宅地等に当たる場合、3,000万円×80%=2,400万円が減額されます。相続財産に加える金額は、3,000万円−2,400万円=600万円です。
生前贈与の加算
相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなる前の一定期間に受けた贈与は、遺産に加えて計算します。加算する期間は、相続が始まった時期によって変わります。
| 相続開始の時期 | 加算の対象となる贈与 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 亡くなる前3年以内の贈与 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日以後の贈与(加算期間が段階的に延びる) |
| 2031年1月1日以後 | 亡くなる前7年以内の贈与 |
相続時精算課税を選んだ贈与は、年110万円の基礎控除を超えた部分が相続財産に加算されます。過去の贈与は記録が残りにくいため、贈与契約書や振込の記録を保管しておくと、概算と申告の両方で役立ちます。
遺産分割と期限
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、申告期限までに遺産分割をまとめて申告することが前提です。分割がまとまらない場合でも期限内に申告し、分割見込書を出しておけば、分割後に特例を受けられる場合があります。
土地の評価や特例の使い方で、相続税の額は大きく変わります。概算で基礎控除を超えそうなときは、初回無料で確認できます。
無料で相談する申告と納付はいつまで?提出先はどこ?
相続税の申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限内に申告しないと、無申告加算税(原則15%、50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)や延滞税がかかる場合があります。申告書は、相続人の住所地ではなく、亡くなった人の住所地を所轄する税務署に提出します。
札幌市内に住んでいた人の相続の場合
札幌市内は区ごとに5つの税務署に分かれています。例えば、中央区の一部(大通西11丁目以西など)・西区・手稲区は札幌西税務署、豊平区・南区・清田区は札幌南税務署です。
書面の申告書を郵送する場合は、2026年7月10日から札幌業務センターが送り先です。e-Taxで送るか窓口に持参する場合は、所轄の税務署に提出します。
よくある質問
生前贈与をすれば相続税を減らせますか?
暦年贈与は、受け取る人1人につき年110万円の基礎控除までは贈与税がかからないため、時間をかけて財産を移せば相続財産を減らせます。ただし、相続や遺贈で財産を取得する人への贈与は、亡くなる前の一定期間の分が加算されます。相続人ではない孫への贈与は原則として加算されませんが、孫が生命保険金の受取人になっている場合などは対象になることがあります。贈与税の額は暦年課税の贈与税の計算ツールで確認できます。
相続税は現金で一括して納めなければなりませんか?
原則は、申告期限までに金銭で一括して納付します。一括での納付が難しい場合は、要件を満たせば分割で納める延納や、不動産などで納める物納を申請できますが、いずれも税務署の許可が必要です。納税資金は、生命保険金や預金の分け方とあわせて早めに考えておきましょう。
概算で基礎控除をわずかに下回った場合は、何もしなくてよいですか?
遺産の総額が基礎控除以下であれば、申告は不要です。ただし、家族名義の預金や過去の贈与、土地の評価の見積り違いで、実際には基礎控除を超えることがあります。通帳や保険証券、固定資産税の課税明細書などの資料は保管しておきましょう。
相続税の申告は自分でもできますか?
できます。財産が預貯金と自宅程度で、評価や遺産分割が単純なら、国税庁の手引きを見ながら作成することも可能です。土地の評価や小規模宅地等の特例の判断、二次相続を見越した分け方が絡む場合は税額への影響が大きいため、専門家への依頼も検討しましょう。
まとめ
相続税がいくらかかるかは、財産を合計して基礎控除を引き、法定相続分で分けて税率を当てはめれば概算できます。配偶者と子2人・遺産7,000万円なら総額225万円が目安で、実際の納税額は取得の割合と配偶者の税額軽減で決まります。土地の評価、小規模宅地等の特例、生前贈与の加算で結果が大きく変わるため、基礎控除を超えそうなら早めに専門家に確認しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー No.4155 相続税の税率
- 国税庁 タックスアンサー No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除
- 国税庁 タックスアンサー「相続税・贈与税」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
