第14章 クライアント対応 — 信頼される担当者の型|会計事務所 実務ハンドブック

レスポンスの基準と返信テンプレート、月次・決算報告の面談の型、専門用語の言い換え、難しい場面の対応、クレーム対応、値上げ交渉と未収金の督促。

会計事務所 実務ハンドブック > 第14章 クライアント対応 — 信頼される担当者の型
CHAPTER 14
クライアント対応 — 信頼される担当者の型

CHAPTER 14クライアント対応 — 信頼される担当者の型

顧問先が担当者を評価する基準は、税法の知識量ではない。返信の速さ、説明の分かりやすさ、言われる前に動く先回りの3つである。この章では、レスポンスの基準、月次・決算報告の面談の型、返信テンプレート、難しい場面の切り返し、報酬と解約の話まで、対人実務をそのまま真似できる形にまとめる。

1. 顧問先が担当者に本当に求めているもの

顧問先の社長は、担当者に「税法の解説」を求めていない。求めているのは、自社の数字がどうなっていて、これから何にいくら払う必要があり、そのために今どう動けばよいかという答えである。知識は所内で調べれば手に入るが、速さ・分かりやすさ・先回りは担当者本人の行動でしか供給できない。だから評価はこの3点で決まる。

速さ

社長は決めるために聞いている。回答が3日遅れれば、その3日間は意思決定が止まる。完全な答えより、まず「いつ答えるか」を返す速さが効く。速さは能力ではなく習慣で作れるので、最初に身につけるべき評価軸である。

分かりやすさ

経営者は簿記の用語で世界を見ていない。「売掛金の増加により運転資金が増加しています」は伝わらない。「今月は売れた分だけ入金が来月にずれます。来月10日ごろまで資金が薄くなります」なら伝わる。相手の言葉に翻訳して初めて説明したことになる。

先回り

「来月これが必要になります」「この決算だと納税がこのくらいです」と、聞かれる前に言えるかどうか。先回りは情報の非対称性を担当者が埋める行為であり、顧問料の対価そのものである。聞かれてから動く担当者は、代替可能とみなされる。

担当者評価が下がる典型行動ワースト10

いずれも税務知識とは無関係の行動であり、明日から直せる。顧問先が解約を検討する理由の大半はこの表のどれかである。

実務のコツ ワースト1位から3位までは、税務の力量が同じでも顧問先満足度を大きく分ける。逆に言えば、知識で先輩に追いつけない新人でも、この3つを守るだけで「担当が変わってよかった」と言われる状態を作れる。まずここから固める。

2. レスポンスの基準と返信テンプレート

レスポンスに個人差があると、事務所全体の信用が揺らぐ。感覚ではなく基準として持つ。基本は一次返信は当日中、調査が必要なら「いつまでに回答するか」を先に返す、である。答えを出すことと、答えが出るまでの不安をなくすことは別の仕事であり、後者は当日中にできる。

連絡種別ごとの返信基準

順位行動顧問先の受け取り方代わりにやること
1メールや電話への返信が遅い、返信がない軽く扱われている。他にもっと大事な顧問先がいる受信当日中に一次返信。内容が未確定でも受領と回答予定日だけ返す
2「調べます」と言ったまま戻ってこない忘れられた。こちらから催促しないと動かない人だその場で回答期限を宣言する。間に合わないときは期限前に途中経過を報告する
3期限の直前になって資料を求める段取りが悪い。こちらの都合を考えていない必要資料と提出期限を1か月前に一覧で渡す。中間で残数を知らせる
4専門用語のまま説明する分からないが、聞き返すと馬鹿にされそうで聞けない用語を使ったら必ず直後に言い換えを添える。数字は金額と割合の両方で示す
5「税法で決まっています」で説明を終える思考停止している。味方ではない結論のあとに、その根拠と、その範囲でできることを必ず1つ示す
6前回言ったことと違うことを言うこの人の言うことは信用できない面談ごとに議事メモを残し、前回の宿題確認から面談を始める
7自分のミスの報告が遅い、小さく見せようとする隠された。他にも隠していることがあるのではないか気づいた当日に所長へ報告し、所長同席で事実をそのまま伝える
8訪問のたびに同じ資料を再度求める前に渡したものを管理していない。二度手間を押しつけられている預り資料と受領済みデータを一覧管理し、再依頼の前に必ず自分の手元を確認する
9数字は説明するが、資金・納税・銀行の話に触れない経理の報告係であって、経営の相談相手ではない月次では必ず「今の資金」「次の納税」「銀行にどう見えるか」の3点に触れる
10提案がなく、言われたことしかやらないいてもいなくても同じ。顧問料を下げてもよいのでは四半期に1つでよいので、数字から見つけた改善案を紙1枚で出す
補足 「当日中の一次返信」とは、答えを出すことではない。①受け取ったこと、②いま何をしているか、③いつ答えるか、の3行を返すことである。この3行は調べる前に書けるので、忙しさは理由にならない。

返信テンプレート集

以下はそのまま使える骨格である。宛名と日付を埋め、必要に応じて1文足す。定型を持っておくと、忙しい日ほど返信の質が落ちなくなる。

テンプレート1|資料の受領連絡

〇〇株式会社 〇〇様

いつもお世話になっております。〇〇会計事務所の〇〇です。

〇月分の資料一式、本日〇月〇日に確かに受領いたしました。

内容を確認のうえ、〇月〇日(〇)までに月次試算表をお送りします。

確認の過程で不足資料がありました場合は、〇月〇日(〇)までにあらためてご連絡します。それまで連絡がなければ、資料は揃っているとお考えください。

引き続きよろしくお願いいたします。

骨格:受領した事実 → 次に何をするか → いつまでに → 不足連絡の期限。最後の1行があると、顧問先は「連絡がないこと」を安心材料として扱える。

テンプレート2|回答を保留するとき

〇〇様

ご質問ありがとうございます。〇〇会計事務所の〇〇です。

ご質問の趣旨は「〇〇の場合に〇〇として処理できるか」という理解でよろしいでしょうか。認識に相違がありましたらお知らせください。

要件の確認と所内での検討が必要なため、〇月〇日(〇)17時までに回答いたします。それより早く整理がつきましたら、その時点でご連絡します。

お急ぎの事情がございましたら、判断に必要な範囲だけ先にお伝えすることも可能ですので、遠慮なくお申し付けください。

骨格:質問の要旨を1行で復唱 → 期限を先に切る → 前倒しの可能性 → 急ぐ場合の逃げ道。「調べます」だけで送らない。復唱を入れておくと、調べる方向を間違えたときの損失も防げる。

テンプレート3|期限リマインド

〇〇様

〇〇会計事務所の〇〇です。期限が近づいてまいりましたのでご連絡します。

〇月〇日(〇)が〇〇の納付期限です。納付額は〇〇円、納付方法は〇〇です。

残高のご確認をお願いします。資金繰りの関係でご相談が必要な場合は、期限の1週間前までにご連絡いただけますと、取りうる方法をご案内できます。

すでにご対応済みでしたら、行き違いのご連絡をお許しください。

骨格:期限・金額・方法の3点を必ず数字で書く。相談の締切を期限の1週間前に置くのは、納付が難しいときの選択肢が期限直前ではほぼ残らないためである。

テンプレート4|資料の督促(2回目以降)

〇〇様

〇〇会計事務所の〇〇です。〇月〇日にお願いしました〇〇の件、その後いかがでしょうか。

現在お預かりできていない資料は次の3点です。

(1)〇〇銀行〇〇支店 〇月分の通帳の写し(2)〇月分の売上請求書控え(3)〇月〇日購入の車両の売買契約書

申告期限が〇月〇日のため、〇月〇日(〇)までにお預かりできないと、期限内の申告に支障が出る可能性があります。

すべてを一度に揃えるのが難しい場合は、揃った分から順にお送りください。ご不明な点があれば、当方でお調べできる範囲も確認しますのでお知らせください。

骨格:抽象的な「資料をお願いします」ではなく、品名を番号付きで列挙する。期限と、間に合わない場合に何が起きるかを事実として書く。分割提出という現実的な逃げ道も示す。

テンプレート5|訪問・面談の日程調整

〇〇様

〇〇会計事務所の〇〇です。〇月分の月次報告のお打ち合わせについてご連絡します。

次の3つの候補日でご都合はいかがでしょうか。所要時間は60分程度を予定しています。

(1)〇月〇日(〇)10時〜(2)〇月〇日(〇)14時〜(3)〇月〇日(〇)16時〜

当日は、〇月の業績、今後3か月の資金の見通し、〇〇の件のご相談の3点をお話しする予定です。事前に〇〇の資料をご用意いただけますと、その場で結論までお出しできます。

オンラインでの実施も可能です。ご希望の方法をあわせてお知らせください。

骨格:候補を3つ出す、所要時間を明示する、議題を先に共有する、事前準備を1つだけ頼む。議題が事前に分かっていると、社長は当日に決裁権限のある人を同席させられる。

3. 月次面談の型

月次面談は、試算表を読み上げる時間ではない。社長が来月の行動を1つ決めるための時間である。そのために時間配分と話す順番を固定する。型があると、緊張していても内容の水準が落ちない。

60分の時間配分

連絡の種類一次返信の期限最終回答の目安備考
資料の送付・データ連携の連絡受信当日中受領確認は当日、内容確認は3営業日以内不足がある場合の連絡期限も同時に伝える
単純な事実確認(期限・提出先・必要書類)受信当日中一次返信で完結させる直近の改正がないかだけは確認してから答える
判断を伴う税務相談受信当日中原則3営業日以内。長引く場合は途中経過を入れる回答前に必ず担当税理士の確認を経る
納税額・資金に直結する相談受信当日中(可能なら2時間以内)2営業日以内概算でもよいので早く数字の幅を示す
クレーム・不満の申出受信後すみやかに、遅くとも当日中事実確認の結果を3営業日以内一次返信の前に所長へ一報を入れる
税務調査の事前通知の連絡即時当日中に所長へ引き継ぐ担当者だけで日程を確約しない
17時以降・休日に届いた通常連絡翌営業日の午前中種類に応じて上記のとおり緊急性の判断だけはその日のうちに行う
注意 数字の説明に35分以上を使ってはいけない。数字の説明は担当者が主役の時間、原因と対策は社長が主役の時間である。前半が長い面談は「報告会」になり、来月の行動が何も決まらないまま終わる。

話す順番 — 結論から始める

  1. STEP1 結論
    「今月は営業利益が〇〇円の黒字ですが、資金は9月に一度細くなります。9月中旬までに〇〇円の手当てが必要です」のように、最初の30秒で着地点を言う。順番を逆にすると、社長は説明を聞きながら結論を探す作業を強いられ、疲れる。
  2. STEP2 数字
    結論を支える数字だけを示す。売上、粗利率、固定費、利益、現預金残高。全科目を読み上げない。「見せる数字」と「作った数字」は違う。
  3. STEP3 原因
    数字が動いた理由を特定する。担当者の仮説を先に言い切らず、「〇〇が増えていますが、何かありましたか」と事実を確認する形で入る。現場の事情は社長しか知らない。
  4. STEP4 対策
    選択肢を複数示し、それぞれの金額影響・期限・リスクを添える。「〇〇すべきです」と1案だけ押しつけない。社長が選べる形にすることが専門家の仕事である。
  5. STEP5 宿題
    次回までに誰が何をするかを確定する。担当者側の宿題も必ず1つ以上入れる。宿題が担当者側にゼロの面談は、顧問料の対価が見えない。

経営者に響く伝え方

  • 率と実額を必ずセットで言う。「粗利率が2ポイント下がりました」だけでは行動につながらない。「粗利率が32%から30%に下がりました。今の売上規模だと年間で約〇〇万円の利益減です」まで言う。率は原因の把握、実額は危機感の共有に効く。
  • 前月比ではなく前年同月比を基本にする。季節変動のある業種では前月比は誤解を生む。前年同月比と、年度累計の対前年比の2本立てが基本。前月比を使うのは固定費のように季節性のない項目に限る。
  • 利益と資金を分けて話す。「黒字なのに金がない」は中小企業で最も多い誤解である。利益は権利と義務が確定した時点の記録、資金は実際に動いたお金。差が出る原因(売掛の回収サイト、在庫の増加、借入金の元金返済、設備投資、納税)を毎回どれか1つで説明する。
  • 数字を社長の言葉の単位に置き換える。飲食業なら「1日あたり客数〇人分」、建設業なら「〇〇の工事1件分」、運送業なら「〇便分」。金額のままでは実感が湧かない相手には、社長が普段使っている単位に翻訳する。
  • 比較対象を3つ持つ。前年同月、予算(目標)、同業平均。3つのうちどれか1つは必ず示す。比較のない数字は、良いのか悪いのか判断できない。
  • 悪い数字ほど先に言う。後半に回すと「隠していた」と受け取られる。悪い数字は結論パートで出し、対策の時間を長く取る。

専門用語の言い換え辞典

用語を使ってはいけないのではない。使ったら直後に言い換えを添える。以下は面談で頻出するものである。

時間パートやること準備物
0分〜5分導入・前回の宿題確認前回の議事メモを開き、双方の宿題の完了状況を確認する前回議事メモ
5分〜10分結論今月の要点を3つに絞って先に言う。良い点1つ、注意点1つ、依頼1つが基本形要点3行のメモ
10分〜25分損益の数字売上・粗利・固定費・利益を前年同月比と累計で確認する。増減の大きい科目だけ掘る月次試算表、前年同月比較表
25分〜35分資金と残高現預金残高、借入残高と毎月返済額、売掛と買掛の回収支払サイト、今後3か月の資金見通し資金繰り表、借入金一覧
35分〜45分原因の掘り下げ数字が動いた理由を社長に語ってもらう。担当者は聞き役に回る質問の候補3つ
45分〜53分対策と提案選択肢を2つ以上示し、それぞれの金額影響と期限を言う。決めるのは社長試算した数値
53分〜58分宿題の確認誰が・何を・いつまでに。双方の宿題を口頭で読み上げて合意する議事メモ
58分〜60分次回日程その場で次回を確定させる。日程が決まると資料提出も動く手帳・カレンダー
よくあるミス 言い換えを覚えたつもりで、「売掛金、つまり売上債権のことですが」と別の専門用語に置き換えてしまう。言い換えの正解は、簿記を習っていない人が日常語だけで理解できる文になっているかどうかである。声に出して確認する。

4. 決算報告面談の型

決算報告は年に一度の勝負どころである。社長の関心は、①いくら税金を払うのか、②いつ払うのか、③払えるのか、④来期はどうなるのか、の4つに集約される。決算書の説明はその後でよい。所要時間は90分を目安にする。

専門用語社長に伝わる言葉
売掛金請求は済んでいて、まだ入金されていないお金
買掛金・未払金もう買ったけれど、まだ払っていないお金
減価償却費買った設備の代金を、使う年数に分けて費用にしている分。今年出ていくお金ではありません
貸倒引当金回収できないかもしれない売掛金に、あらかじめ備えて計上した費用
販売費及び一般管理費売るためと、会社を回すためにかかった経費
営業利益本業だけでいくら儲かったか
経常利益本業に利息や雑収入まで含めた、会社の通常の実力の利益
限界利益売上から、売れば売るほど増える費用(材料費・外注費など)を引いた残り。家賃や人件費を賄う原資
損益分岐点売上高赤字にならないために最低限必要な売上
固定費売上がゼロでも毎月出ていくお金
労働分配率稼いだ粗利のうち、人件費に回っている割合
自己資本比率会社の元手のうち、返さなくてよいお金の割合。銀行が最初に見る数字です
運転資金仕入れて売って入金されるまでの、立て替えているお金
キャッシュフロー実際に手元のお金がいくら増えたか
流動比率1年以内に払うお金に対して、1年以内に入るお金がどれだけあるか
損金・益金税金の計算のうえで、費用として認められるもの・収入として数えるもの
別表四会計の利益を、税金用の利益に直すための計算書
繰越欠損金過去の赤字の残り。将来の黒字と相殺して税金を減らせます
中間納付去年の税金をもとにした前払い。年間の税金が増えるわけではありません
期ずれ売上や経費を、どの年度に入れるかがずれること
圧縮記帳補助金をもらった年に一度に税金がかからないよう、課税を先送りする処理
償却資産税機械や器具備品にかかる固定資産税。1月1日時点の保有分を申告します
課税売上割合売上全体のうち、消費税がかかる売上の割合
簡易課税売上の消費税に業種ごとの割合を掛けて納税額を出す、計算を簡略にした方式
定期同額給与毎月同じ額の役員報酬。途中で変えると、増えた分が経費として認められません

納税額の伝え方

  1. STEP1 総額から言う
    「今期の納税は全部で〇〇円です」と、税目を分ける前に総額を言う。社長が知りたいのは合計であり、内訳から積み上げると総額が見えるまで不安が続く。
  2. STEP2 内訳を示す
    法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税の別に、金額と納付期限を表で示す。令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税も加わる。課税標準法人税額から年500万円の基礎控除を引いた額に4%を課すものであり、法人税の申告に合わせて申告する。
  3. STEP3 納付期限とスケジュールを示す
    各税目の期限を日付で書き、口座から出ていく順番に並べる。消費税は法人税と同時期に来るため、合計額が資金に効く。
  4. STEP4 資金の手当てを確認する
    「この日にこの残高だと不足します」まで踏み込む。不足するなら、納付の分割相談、借入、支払サイトの調整のうちどれを取るかを、期限の1か月前までに決める。
  5. STEP5 来期の予測を渡す
    中間納付の有無と金額、翌期の見込納税額を概算で示す。これがあると社長は資金計画を立てられる。翌期の納税予測を渡さない決算報告は、報告としては半分しか終わっていない。
実務のコツ 納税額は「利益に対する率」でも示す。「税引前利益〇〇円に対して、法人にかかる税金は約〇〇%です」と言うと、社長は今後の予測を自分で立てられるようになる。これは翌期以降の相談の質を上げる投資である。

悪い着地を伝えるとき

赤字、大幅減益、債務超過、資金ショートの見込みといった悪い内容を伝えるときほど、型が要る。順序を守るだけで受け取られ方が変わる。

  • 先に言う。面談の冒頭で事実を伝える。良い話から入って最後に悪い話をすると、社長は「今日の本題を隠されていた」と感じる。
  • 数字を丸めない。「厳しい結果でした」ではなく「営業損失〇〇円、当期純損失〇〇円です」と言う。曖昧な表現は、かえって実態より悪く想像される。
  • 原因を分解する。売上減なのか、粗利率悪化なのか、固定費増なのか、一時的な特別損失なのかを分ける。「悪い」を1語で終わらせない。分解できていれば打ち手が見える。
  • 影響範囲を示す。銀行の格付けへの影響、繰越欠損金として翌期以降の黒字と相殺できること、消費税は赤字でも納税が生じうること。とくに最後は誤解が多いので必ず触れる。
  • 次の一手を必ず添える。資金繰り表の作成、返済条件の見直しの相談、固定費の点検、いずれか1つでよいので具体的な次の行動を置く。悪い報告に対策がないと、担当者は不安を届けただけの人になる。
  • 評価をしない。「経営が甘かった」といった評価は口にしない。担当者の仕事は評価ではなく、事実の提示と選択肢の提供である。
注意 赤字決算でも消費税は納付が生じることが多い。消費税は利益ではなく取引に課される税だからである。「赤字だから税金はゼロですよね」という前提で資金を組まれていると、納付期限に事故が起きる。決算報告のときに必ず口頭で確認する。

5. 質問への対応 — 即答・持ち帰り・所長へ

顧問先の質問にその場で答えてよいかどうかは、感覚で決めない。3分類で機械的に振り分ける。判断を誤って即答したときの損害は、待たせたときの不満よりはるかに大きい。

時間パート内容
0分〜10分着地の結論売上・利益の着地と、納税額の総額を最初に言う。ここで数字を出し惜しみしない
10分〜25分納税の全体像税目別の内訳、納付期限、納付方法、資金の手当て
25分〜45分決算書の説明損益の要因分析、貸借対照表の主要項目、前期との比較
45分〜60分銀行からどう見えるか自己資本比率、債務償還年数、借入余力、決算書の使われ方
60分〜80分翌期の方針役員報酬、設備投資、資金計画、翌期の納税予測と中間納付
80分〜90分宿題と署名決算書の内容確認、申告書の署名、次回の月次日程
よくあるミス 分類Bの質問に、社長の前で「たぶん大丈夫だと思います」と答えてしまう。「たぶん」は社長には「大丈夫」としか聞こえない。後で覆すと、正しい結論を伝えているのに信用だけが下がる。曖昧な肯定は最悪の回答である。

分からないときの誠実な返し方

分からないことは恥ではない。誤魔化すことが問題である。次の型で返す。

Q. その場で答えられない質問をされたとき、どう言えばよいか。

A.「その論点は、要件の確認と所内での検討が必要ですので、この場で確定的なことは申し上げません。〇月〇日の〇時までに回答します」と言う。3つの要素を必ず入れる。①即答しない理由(要件確認が必要)、②いつ答えるか(日付と時刻)、③早く分かれば前倒しで連絡すること。「分かりません」だけで終えると力量不足に見えるが、理由と期限がつくと慎重さに見える。

Q. 経験の浅さを指摘されたときは。

A. 経歴で対抗しない。「経験は浅いですが、確認すべきことは必ず確認して回答します。今日いただいた件は〇日までにお答えします」と、行動で応じる。実際に期限どおり回答することを3回繰り返せば、経験年数の話は出なくなる。

6. 難しい場面の対応

資料が出てこない

督促を強めても出てこない。出てこない原因は「忘れている」「探せない」「見せたくない」「経理担当が退職した」のいずれかである。原因によって手が変わるので、まず理由を聞く。

  • 抽象的な依頼をやめる。「資料をお願いします」ではなく、品名を番号付きで列挙し、通帳なら銀行名と支店名、請求書なら対象月まで指定する。
  • 提出のハードルを下げる。スマートフォンで撮って送る、封筒に入れて郵送する、クラウドの共有フォルダに入れるなど、相手ができる方法を1つ選んでもらう。
  • 分割提出を認める。「全部揃ってから」を待つと永久に来ない。揃った分から受け取り、残りを都度知らせる。
  • 期限と影響を事実として伝える。「〇日までに揃わないと期限内申告に支障が出る」「概算での申告になり、後日修正が必要になる」と、脅しではなく事実を書面で残す。
  • 3回目の督促で所長に上げる。担当者個人の督促の限界を認め、所長名の文書に切り替える。放置して期限を迎えるのが最悪の結末である。

値引きを求められた

その場で応じない。値引きは事務所の意思決定であり、担当者の裁量ではない。「持ち帰って所長に相談します」が唯一の正解である。そのうえで、なぜ高いと感じるのかを必ず聞く。多くの場合、金額そのものではなく「何をしてもらっているか分からない」ことへの不満である。年間の提供業務を一覧にして示すと、値引きの話が業務範囲の話に変わることが多い。

税額への不満をぶつけられた

「こんなに取られるのか」は不満であって質問ではない。まず受け止める。「それだけの利益が出た結果でもありますが、金額としては大きいですね」と一度受け止めたうえで、①計算の内訳を示す、②納付のスケジュールと資金の手当てを示す、③翌期に向けて合法的に取りうる手(役員報酬の設定、設備投資の時期、各種の税額控除、共済制度の活用)を示す、の順に進める。担当者が防御的になると、社長は税務署ではなく担当者を敵と認識する。

「これも経費にしてほしい」と言われた

頭ごなしに否定しない。否定と説明は別である。次の3段階で進める。

  1. STEP1 事実を確認する
    誰が、いつ、何のために、いくら支出したのか。相手は誰か。業務との関係を説明できるか。判断の前に事実を固める。事実が曖昧なまま結論を出すと、どちらに転んでも根拠がない。
  2. STEP2 判断の枠組みを示す
    法人であれば「その支出が事業のために必要か」「役員個人の生活費にあたらないか」、個人であれば「家事関連費として業務分を明確に区分できるか」。判断基準を先に共有すると、感情論から離れられる。
  3. STEP3 否認された場合のリスクを金額で示す
    「もし否認されると、本税に加えて過少申告加算税が原則10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)、さらに延滞税がかかります。役員の個人的支出と判断されれば役員給与として損金にならないうえ、その方の給与として源泉所得税も追徴されます」と、二重に不利になる構造まで説明する。仮装隠蔽と判断されれば重加算税35%の対象になる。
実務のコツ 判断が微妙な支出は、「入れる・入れない」の二択にしない。「業務使用割合を合理的に区分して、その分だけ計上する」「使用実態のメモや走行記録を残しておく」といった、証拠を作る方向の提案に変える。担当者が示すべきは可否の判定だけでなく、通る形の作り方である。

他事務所と比較された

「知り合いの会社は、もっと安い」「別の事務所はそれを経費で通していると聞いた」という話は必ず出る。まず前提が違うことを確認する。業種、規模、取引の内容、契約している業務範囲、記帳を誰がやっているか。前提を並べると、比較自体が成立しないことが多い。他の税理士の判断を批判しないこと。批判は同業者への信用を下げるだけで、自分の信用は上がらない。「同じように見えて前提が違うことが多いので、御社の事実関係で判断します」と自分の土俵に戻す。

SNSや動画で得た誤った知識への対応

否定から入ると、社長は情報源ではなく担当者を疑うようになる。「そういう話は確かによく見ますね」と一度受け止め、事実関係の限定条件を補って正しい理解に着地させる。

分類該当するもの対応
A 即答してよい提出期限・提出先・必要書類、事務所の運用ルール、過去に自分が処理した内容の事実確認、送付済み資料の有無、面談日程、すでに確定している納付額と納付方法その場で答える。ただし期限や様式は直近の改正がないかを確認したうえで答える
B 持ち帰る適用要件の判定を伴うもの、有利不利の判定、届出の選択、複数の解釈がありうる論点、過去の申告の修正に関わるもの、他社事例をもとにした「うちもできるか」という質問、金額が大きい取引の処理その場で結論を言わない。質問の要旨を復唱して記録し、回答期限を宣言して持ち帰る。担当税理士の確認を経てから回答する
C 所長に必ず上げる税額に影響する誤りの発覚、期限徒過のおそれ、税務調査の連絡、脱税・粉飾につながる相談、報酬の変更・解約・訴訟の話、反社会的勢力や不正の兆候、書面添付の記載方針、他の士業の領域にあたる相談、顧問先間で利害が対立する案件担当者限りで判断しない。その日のうちに所長へ報告し、以後の対応方針の指示を受ける

7. クレーム対応

クレームは信頼を失う場面であると同時に、対応次第で信頼を上げられる数少ない場面でもある。手順を守れば個人の資質に依存しない。

  1. STEP1 まず聞き切る
    途中で遮らない、言い訳をしない、反論しない。相手が話し終わるまで聞き、要点をメモする。反論したい気持ちが起きたときこそメモに集中する。
  2. STEP2 事実と不満を分けて復唱する
    「〇月〇日にお送りした試算表に〇〇の誤りがあり、その連絡が〇日後になったこと、この2点でよろしいでしょうか」。復唱は同意ではなく、論点の確定である。ここを飛ばすと、後で対応の的が外れる。
  3. STEP3 不快にさせたことへの謝罪を先に、事実の謝罪は確認後に
    「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」は即座に言ってよい。一方「当方の誤りです」は事実確認が済むまで言わない。事実が未確定のまま非を認めると、責任範囲が不必要に広がり、後で訂正できなくなる。順序を逆にしない。
  4. STEP4 いつまでに何を回答するか約束する
    「事実関係を確認し、〇月〇日の〇時までにご報告します」。その場で結論を急がない。急いだ結論は二度手間になる。
  5. STEP5 所長へ即報告する
    電話を切ったら、その足で所長に報告する。翌日に回さない。所内で情報が共有されていない状態で顧問先から所長に連絡が入るのが、最も事態を悪化させる。
  6. STEP6 事実確認と原因の特定
    関係資料、メール履歴、作業記録を時系列に並べる。人ではなく、どの工程で何が抜けたかを特定する。
  7. STEP7 報告と再発防止策の提示
    事実 → 原因 → 影響(金額があれば金額)→ 当方の対応 → 再発防止策の順で伝える。金銭的な損害が生じている場合は担当者限りで補償の話をしない。
  8. STEP8 記録に残す
    顧客ファイルに、申出日、内容、原因、対応、再発防止策、完了日を記録する。担当者が交代したときに引き継がれることが重要である。

所内エスカレーションの基準

よくある発信実務上の正しい理解伝え方の例
「経費を使えば節税になる」1万円の経費で減る税金は税率分だけ。手元の資金は差引きで必ず減る「税金は減りますが、手元のお金はもっと減ります。必要なものを買う判断が先で、税金は結果です」
「法人を作れば税金がかからない」法人にも法人税・住民税があり、赤字でも均等割の負担が生じる。社会保険の加入義務も発生する「法人化は有利になる場合もありますが、所得水準と社会保険の負担で分岐します。試算しましょう」
「役員報酬をゼロにすれば得」法人に利益が残れば法人税がかかる。生活費の引出しは貸付金になり、認定利息の問題も生じる「会社に利益が残るだけで、税負担が消えるわけではありません。生活費の出し方も問題になります」
「家賃も車も全部経費にできる」業務使用部分に限られる。区分の根拠がないと否認されやすい「使っている割合の分は入れられます。割合を説明できる記録を残す形にしましょう」
「消費税は預かっているだけだから、払えなければ後回しでよい」滞納すれば延滞税がかかり、差押えに至ることもある。分納の相談は早いほど選択肢が多い「後回しにできる税金ではありません。厳しいなら期限前に相談すれば取れる手があります」
「出張日当は無条件で非課税になる」出張旅費規程の整備、金額の相当性、実際の出張の事実が前提。相当性を欠くと給与課税される「規程を作り、金額に合理性があり、実際に出張していることが前提です。整えれば使えます」
「税務調査は来ないから大丈夫」調査の有無と処理の適否は無関係。誤りは繰越しの論点として何年も残る「調査の有無に関係なく、正しい処理をしておくことが結果的に一番安く済みます」
注意 顧問先から「今回の件で損害が出た」と言われた時点で、担当者限りの対応は終了である。賠償の可能性がある事案は、所長を通じて職業賠償責任保険の取扱いを確認する必要がある。担当者が「弁償します」「顧問料を無料にします」と口にすると、事務所の対応の選択肢を狭める。

8. 報酬の話

値上げ交渉の進め方

値上げは事務所の意思決定だが、事実の材料を用意するのは担当者である。感情ではなく実績で語る。

  1. STEP1 実績を数字で把握する
    年間の訪問回数、月次の仕訳件数、決算業務の工数、契約時から増えた業務(拠点増、事業の多角化、電子帳簿保存法対応、インボイス対応、補助金申請の支援など)を書き出す。契約時と現在の差が、値上げの根拠になる。
  2. STEP2 契約書と業務範囲を確認する
    現契約に含まれる業務と、実際に提供している業務のずれを一覧にする。無償で追加提供している業務がどれだけあるかを可視化する。
  3. STEP3 所長の承認を得る
    金額・時期・伝え方を所長と決める。担当者が独自に金額を口にしない。
  4. STEP4 タイミングを選ぶ
    決算報告の直後か、期首が原則。納税の直前や、業績が急に悪化した直後は避ける。契約更新月がある場合は、その2か月前までに切り出す。
  5. STEP5 提供内容から話す
    「事務所のコストが上がったので」から入らない。「契約時と比べて、この業務が増えています」と提供内容の変化を示し、そのうえで改定額を伝える。値上げは対価の調整であって、値上げのお願いではない。
  6. STEP6 選択肢を示す
    金額を上げる案のほかに、業務範囲を絞って現行額に近づける案も用意する。選べる形にすると、交渉が決裂しにくい。

業務範囲外の依頼の切り分け

「ついでにこれもお願い」を無限に受けると、事務所の採算が崩れ、担当者が疲弊する。断るのではなく、区分して見積る。

レベル状況対応者タイミング
1不満の表明にとどまり、税額・期限への影響がない担当者が対応し、上長へ報告当日中に報告
2試算表・申告書の誤り、資料の紛失、連絡漏れなど当方に非がある可能性上長が同席して対応覚知後ただちに報告
3税額に影響する誤り、期限徒過、損害賠償や解約に言及がある、感情的な非難が続く所長が対応。担当者は事実の整理に専念覚知後ただちに。担当者だけで返答しない

未収金の督促手順

  1. STEP1 事実を確認する
    請求書は届いているか、金額に相違はないか、入金口座は正しいか。事務所側のミスであることも珍しくない。督促の前に自分の手元を確認する。
  2. STEP2 担当者から連絡する
    入金予定日を確認する。「請求書の件、行き違いでしたら失礼しますが」と入り、責める調子にしない。この段階の目的は回収日の確定であって、追及ではない。
  3. STEP3 予定日を過ぎたら書面に切り替える
    所長名の文書で、未収額、対象期間、支払期限を明記して送る。口頭のやりとりを記録に変える段階である。
  4. STEP4 所内で方針を決める
    2か月以上の未収は、資金繰りの悪化という顧問先側の事情であることが多い。分割の合意、業務の一時停止、契約の見直しのいずれを取るかを所長が決める。担当者が独断で「待ちます」と言わない。
  5. STEP5 月次で一覧管理する
    顧問先ごとの未収残高を毎月確認する。未収は放置するほど回収率が下がる。担当者が抱え込むと発見が遅れる。

9. 解約の申出への対応と、解約されないための平時の行動

解約の申出は、たいてい最後通告である。その場で慌てて値引きを提示しても覆らないうえ、事務所の価格の信頼性を損なう。落ち着いて次の順序で対応する。

  • まず理由を聞く。引き止める前に聞く。料金なのか、対応なのか、担当者との相性なのか、後継者や親族に有資格者ができたのか、他事務所からの提案なのか。理由によって打てる手が違う。
  • その場で条件を出さない。「持ち帰って所長と相談します」で一度切る。即座の値引きは、それまでの料金が適正でなかったと自ら認めることになる。
  • 当日中に所長へ報告する。解約は事務所の案件であり、担当者の個人的な失点ではない。報告が遅れることのほうが問題である。
  • 引継ぎを丁寧に行う。過去の申告書控え、決算書、総勘定元帳、固定資産台帳、各種届出書の控え、会計データ、預り資料の返却。マイナンバーを含む資料の取扱いは所内ルールに従い、返却または廃棄の記録を残す。
  • 最後まで態度を変えない。解約した顧問先が数年後に戻ってくること、別の会社を紹介してくれることは実際にある。最後の対応が事務所の評判になる。

平時にやっておくこと

  • 月次の訪問または面談を、日程を決めて確実に実施している
  • 面談ごとに議事メモを残し、次回の冒頭で宿題の完了を確認している
  • 問い合わせに当日中の一次返信を続けている
  • 決算の3か月前に着地予測と納税予測を渡している
  • 社長の関心事(後継者、設備投資、銀行との関係、家族の状況)を記録し、話題に上げている
  • 年1回、提供した業務の一覧を渡して、契約内容の認識をすり合わせている
  • 担当者が交代するときは、前担当者が同行して引き継いでいる
  • 事務所内で顧問先の状況を共有し、担当者不在時でも一次対応ができる状態にしている
補足 解約の予兆は数字より前に態度に出る。資料の提出が遅くなる、面談日程が決まりにくくなる、質問が来なくなる、社長が同席しなくなる。この4つのうち2つが同時に起きたら、平時の行動を点検し、所長に共有する。

10. 顧問先の紹介が生まれる担当者の共通点

紹介は営業活動の結果ではなく、日常業務の副産物として生まれる。社長が知人に「うちの担当者はいいよ」と言うのは、次のような経験をしたときである。

返事が速い

紹介の場面で最初に語られるのはこれである。「聞いたらすぐ返ってくる」は、それだけで他事務所との差になる。

言われる前に教えてくれる

制度改正、期限、納税予測を先回りで知らせる。社長は「知らなかったせいで損をする」ことを最も嫌う。

できないことをはっきり言う

できない理由と、その範囲でできる代案を示す。何でもできると言う担当者は、いずれ信用を失う。

数字以外の相談にも入口を作る

人の採用、後継者、銀行、補助金。専門外でも、誰につなげばよいかを知っている担当者は重宝される。

悪い話を先に持ってくる

都合の悪い数字やミスを自分から報告する。この一点で「信用できる人」の位置に入る。

約束した期日を守る

小さな約束ほど守る。「来週送ります」を守り続けることが、専門知識より効く。

社長の事業に興味を持っている

現場を見て、商品を知り、忙しい時期を知っている。事業を知らない人の数字の話は響かない。

紹介を受けたあとの対応が速い

紹介された会社への初回連絡を当日中に行う。紹介者は、自分の顔を潰されないかを見ている。

11. 訪問・オンライン面談のマナーと準備

訪問前の準備チェックリスト

  • 前回の議事メモを読み、双方の宿題の完了状況を確認した
  • 当日の議題を3つ以内に絞り、事前に先方へ共有した
  • 試算表・比較表・資金の見通しを印刷し、社長用の部数を用意した
  • 前回から今回までの改正情報で、その顧問先に関係するものを確認した
  • 預り資料の返却分と、今回受け取る資料の一覧を用意した
  • 訪問先の所在地、駐車場の有無、入館手続、所要時間を確認した
  • 名刺、社判・受領印、筆記具、電卓、ノートパソコン(充電済み)を用意した
  • 他社の資料を持ち出していないか、鞄の中を確認した
  • 不在時の連絡先として、事務所の代表番号を伝えられる状態にした

オンライン面談で追加する準備

  • 資料は前日までに送付する。画面共有だけで数字を説明すると、手元にメモを取れず、社長の理解が落ちる。
  • 共有する画面を事前に絞り込む。他の顧問先のファイル名やメール通知が映るのは、守秘義務の観点で重大な事故になる。デスクトップ全体ではなくウィンドウ単位で共有する。
  • 録画する場合は必ず事前に許可を取る。無断録画はしない。
  • 背景に他社の書類やホワイトボードの記載が映らないようにする。
  • 通信が切れた場合の連絡手段(携帯電話)を冒頭に伝えておく。
  • 終了前に、決定事項と宿題を口頭で読み上げて合意する。対面より認識のずれが起きやすい。

議事メモの残し方

議事メモは、次回の面談の冒頭で使うために書く。長い記録は読まれない。次の項目に絞り、面談当日中に顧客ファイルへ保存する。

区分対応
顧問契約に含まれる月次巡回・試算表の作成と報告、日常の税務相談、決算・申告、年末調整、法定調書、償却資産申告そのまま対応する
軽微なため無償で応じる短時間で終わる調べもの、書類の書き方の説明、他士業への取次ぎ対応するが、対応した事実を記録に残す。無償対応の累積は次の契約見直しの材料になる
別途見積が必要相続税の申告、株価算定、組織再編、税務調査の立会い、経営計画の策定、融資支援、補助金申請の支援、記帳代行への切替え、修正申告着手前に見積書を出し、書面で合意する。着手後の請求は必ずもめる
他士業の領域登記、社会保険の手続、就業規則の作成、労働紛争、法的紛争の代理受けない。提携先を紹介する。境界にある相談は所長に確認する
実務のコツ 議事メモの「先方の発言」欄は、後日の防御にもなる。処理の判断が顧問先の説明を前提としている場合、その説明を引用で残しておけば、後から事実が違ったときに何を前提に判断したかを示せる。書面添付を行う顧問先では、この蓄積がそのまま添付書面の記載材料になる。
この章を読了にする 目次に戻る
ご利用にあたって 本手引きは2026年8月21日時点の法令・通達等に基づいて作成した実務資料です。税制は毎年改正されます。適用期限・税率・金額基準は、実際の判断の際に必ず最新の法令、国税庁の通達・質疑応答事例、各自治体の公表資料で確認してください。
記載内容は一般的な取扱いの整理であり、個別具体的な事案への当てはめを保証するものではありません。判断に迷う論点、前例のない取引、金額的影響の大きい論点は、独断で処理せず必ず所内で確認してください。

監修ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士事務所)
目次
項目書き方
日時・場所・方法年月日、開始終了時刻、訪問かオンラインか
出席者先方の氏名と役職、当方の出席者
報告した内容示した数字と、その場で伝えた要点を3行以内で
先方の発言判断の前提になる発言はそのまま引用で残す。とくに事実関係の説明は要約せずに書く
決定事項誰が何を決めたか。決めなかったことも「保留」と明記する
宿題誰が・何を・いつまでに。当方の宿題と先方の宿題を分けて書く
次回予定日付と議題の候補
その他の情報設備投資の検討、人の採用、後継者、銀行との交渉など、雑談で出た経営情報