法人税の全体像と税率、防衛特別法人税、別表の作成順序と別表五(一)(二)の数値例、主要な税務調整、交際費、役員給与、中小企業の優遇税制、提出前チェック。
CHAPTER 08法人税実務 — 申告書の作り方と税務調整
法人税申告書は、確定した決算書の当期純利益を出発点に、税法上の調整を積み上げて所得金額と税額を確定させる書類である。別表の順序と数字の流れさえ掴めば、あとは調整項目を漏らさず拾う作業に還元できる。本章では全体像から別表五(一)・五(二)の動き、主要な税務調整、中小企業の優遇税制、提出前チェックと提出後の手続までを一連の作業として並べる。
1. 法人税の全体像と申告のルール
法人税の所得金額は、決算書の当期純利益に税務上の調整を加えて計算する。ゼロから作り直すのではない。この関係を式にすると次のとおりである。
確定決算主義
法人税の課税所得は、株主総会等で承認された確定決算に基づいて計算する。これを確定決算主義という。実務上の意味は3つある。
- 申告書の当期利益欄は損益計算書の当期純利益と必ず一致する。決算書を動かさずに申告書だけ直すことはできない。
- 減価償却費、貸倒引当金繰入、少額減価償却資産の特例など損金経理が要件の項目は、決算で費用計上していなければ申告調整だけでは損金にできない。決算を締める前に判断する。
- 逆に、交際費の損金不算入や受取配当等の益金不算入のように、申告書上だけで調整する申告調整事項もある。この区別を誤ると決算をやり直す羽目になる。
申告期限と納付期限
| 区分 | 期限 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 確定申告 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 | 3月31日決算なら5月31日。土日祝の場合は翌開庁日 |
| 納付 | 同上(申告期限と同じ) | 延長の特例を受けても納付期限は延びない |
| 中間申告 | 事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内 | 前期の確定法人税額が20万円超のとき義務。予定申告と仮決算による中間申告の選択 |
| 地方法人税 | 法人税と同じ | 別表ではなく法人税申告書別表一の下部で一体計算する |
| 法人住民税・事業税 | 法人税と同じ(都道府県・市区町村へ) | 延長の承認は地方税に別途届出・申請が必要 |
申告期限の延長の特例
定款で「定時株主総会は事業年度終了後3か月以内に招集する」と定めているなど、決算日後2か月以内に定時株主総会が招集されない常況にある場合は、申告期限の延長の特例の申請書を提出して申告期限を1か月延長できる。会計監査人を置き、かつ定款に3か月を超える定めがある場合は4か月を超えない範囲で税務署長が指定する月数まで延長できる。
申請書は、延長を受けようとする最初の事業年度終了の日までに提出し、一度承認されれば取りやめるまで継続適用される。地方税は「申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認申請書」を各自治体へ別に出す必要がある。税務署に出しただけで地方税も延びていると思い込むミスが多い。
電子申告の義務化
次の法人は、法人税・地方法人税・消費税の申告を電子申告(e-Tax)で行うことが義務づけられている(令和2年(2020年)4月1日以後に開始する事業年度から)。
- 事業年度開始の時において資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人
- 相互会社、投資法人、特定目的会社
中小企業は義務の対象外だが、実務上はe-Taxが標準である。義務化法人が電気通信回線の故障や災害で電子申告できない場合は、「e-Taxによる申告が困難である旨の届出書」を提出して書面提出の承認を受ける。
2. 税率と実効税率
法人税の税率
| 法人区分 | 所得金額の区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 中小法人(期末資本金1億円以下等) | 年800万円以下の部分 | 15%(適用期限は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度) |
| 中小法人(同上。ただし所得金額が10億円を超える法人) | 年800万円以下の部分 | 17% |
| 中小法人(同上) | 年800万円を超える部分 | 23.20% |
| 大法人(資本金1億円超) | 全額 | 23.20% |
法人税以外の税目
| 税目 | 課税標準 | 税率(標準) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 地方法人税 | 基準法人税額(所得税額控除前の法人税額) | 10.3% | 国税。別表一の下部で計算する |
| 道府県民税 法人税割 | 法人税額(所得税額控除後) | 1.0% | 自治体の条例により制限税率まで上乗せあり |
| 市町村民税 法人税割 | 同上 | 6.0% | 東京都特別区は都民税として合算7.0% |
| 法人住民税 均等割 | 資本金等の額と従業者数 | 資本金1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円(道府県2万円+市町村5万円) | 赤字でも必ず発生する |
| 法人事業税(所得割) | 所得金額 | 年400万円以下3.5%/400万円超800万円以下5.3%/800万円超7.0% | 資本金1億円以下の普通法人。3以上の都道府県に事務所がある場合は軽減税率不適用 |
| 特別法人事業税 | 基準法人所得割額(標準税率で計算した所得割額) | 37%(外形標準課税対象法人は260%) | 国税だが都道府県へ事業税と併せて申告納付する |
外形標準課税の対象
資本金1億円超の法人は法人事業税に付加価値割と資本割が加わる(外形標準課税)。所得割の税率は下がる代わりに、赤字でも付加価値割・資本割が課される。加えて、減資による対象逃れを防ぐため次の判定が入っている。
- 前事業年度に外形標準課税の対象だった法人は、資本金が1億円以下になっても、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合は引き続き対象となる。
- 資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人等で、資本金1億円以下かつ資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものは対象となる。
増資の相談を受けたら、資本金1億円のラインを超えるかどうかを最初に確認する。外形標準課税だけでなく、軽減税率・貸倒引当金・交際費の定額控除・欠損金の100%控除といった中小法人向け特例をまとめて失うためである。
実効税率の考え方
事業税は納付した事業年度の損金になる。したがって、税金を含めた本当の負担率を測るには、事業税の損金算入効果を織り込む必要がある。これが法定実効税率である。
資本金1,000万円の中小法人(外形標準課税の対象外、住民税法人税割7.0%)で、所得800万円超の部分について計算すると次のようになる。
- 分子 = 23.20% ×(1 + 10.3% + 7.0%)+ 7.0% + 2.59% = 27.2136% + 9.59% = 36.8036%
- 分母 = 1 + 7.0% + 2.59% = 1.0959
- 実効税率 = 36.8036% ÷ 1.0959 = 約33.58%
所得階層ごとの限界的な負担率は次のとおりで、所得800万円を超えた瞬間に約10ポイント跳ね上がる。決算対策の効果を説明するにはこの表を見せるのが早い。
| 所得の階層 | 法人税率 | 事業税+特別法人事業税 | 限界実効税率の目安 |
|---|---|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 15% | 3.5%+1.295% | 約21.4% |
| 年400万円超800万円以下の部分 | 15% | 5.3%+1.961% | 約23.2% |
| 年800万円超の部分 | 23.20% | 7.0%+2.59% | 約33.6% |
| 年800万円超の部分(防衛特別法人税の課税が及ぶ部分) | 23.20% | 7.0%+2.59% | 約34.4% |
3. 防衛特別法人税
令和8年(2026年)4月1日以後に開始する課税事業年度から、防衛特別法人税が課される。法人税に上乗せされる付加税で、仕組みは復興特別法人税に似ている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用開始 | 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する課税事業年度 |
| 課税標準 | 課税標準法人税額 = 基準法人税額 − 年500万円(基礎控除) |
| 基準法人税額 | 所得税額控除・外国税額控除を適用する前の法人税額 |
| 税率 | 4% |
| 基礎控除の按分 | 事業年度が1年未満の場合は 500万円 × 事業年度の月数 ÷ 12 |
| 申告期限 | 課税事業年度終了の日の翌日から2月以内(法人税申告に合わせて申告) |
| 中間申告 | 令和9年(2027年)4月1日以後に開始する事業年度から |
どこから課税が始まるか
基礎控除が年500万円あるため、法人税額が500万円以下であれば防衛特別法人税は発生しない。中小法人の軽減税率を前提に法人税額500万円となる所得金額を逆算すると、次のようになる。
- 800万円 × 15% = 120万円
- 500万円 − 120万円 = 380万円 = 800万円超の部分 × 23.20% → 800万円超の部分 = 約1,638万円
- したがって所得金額がおおむね2,440万円を超えるあたりから課税が始まる
顧問先の大半はこのラインの下にいる。「新しい税ができたから全社に影響が出る」と説明すると不要な不安を招く。まず所得規模で線を引いて対象先を絞り込む。
計算例
| ケース | 所得金額 | 法人税額(基準法人税額) | 課税標準法人税額 | 防衛特別法人税 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 15,000,000 | 2,824,000 | 0 | 0 |
| B社 | 30,000,000 | 6,304,000 | 1,304,000 | 52,100 |
| C社 | 100,000,000 | 22,544,000 | 17,544,000 | 701,700 |
B社の内訳を追うと、法人税額 = 800万円 × 15% + 2,200万円 × 23.20% = 120万円 + 510.4万円 = 630.4万円。ここから基礎控除500万円を引いた130.4万円が課税標準法人税額で、4%を乗じて52,160円、百円未満を切り捨てて52,100円となる。
中小企業への影響
- 対象になる顧問先は限られる。所得2,400万円前後を超える黒字法人だけを抽出し、影響額を先に試算しておく。
- 対象法人では、決算対策1円あたりの節税効果が上がる。実効税率が約33.6%から約34.4%へ、0.85ポイント程度上乗せされる計算になる。
- 税効果会計を適用している法人は、繰延税金資産・負債の計算に使う法定実効税率の見直しが必要になる。
- 令和9年(2027年)4月1日以後に開始する事業年度からは中間申告も始まる。資金繰り表に織り込む。
Q. 赤字の法人にも防衛特別法人税はかかるか。
A. かからない。課税標準は基準法人税額から500万円を控除した金額なので、法人税額が生じなければ課税標準はゼロになる。均等割のように赤字でも発生する税ではない。
4. 別表の作成順序と役割
別表は番号順に作るものではない。数字の流れに沿って作ると手戻りが出ない。中小企業の申告書であれば、次の順序が基本形になる。
- STEP 1 個別の計算明細を先に埋める
減価償却(別表十六)、交際費(別表十五)、貸倒引当金(別表十一)、受取配当(別表八(一))、寄附金(別表十四(二))、所得税額控除(別表六(一))など、加算・減算の金額を出す明細を作る。ここが埋まらないと別表四の数字が決まらない。 - STEP 2 別表五(二)で租税公課の納付状況を整理する
期首未納額、当期納付額(充当金取崩し・損金経理・仮払経理の別)、当期発生額、期末未納額、納税充当金の繰入・取崩を整理する。ここが別表四と別表五(一)の両方に数字を供給する。 - STEP 3 別表四で所得金額を計算する
当期純利益から出発し、加算・減算を積み上げて所得金額を出す。各行を「留保」と「社外流出」に振り分けることを忘れない。 - STEP 4 別表七(一)で欠損金を控除する
別表四の「差引計」に繰越欠損金の当期控除額を反映させ、所得金額を確定する。 - STEP 5 別表一で税額を計算する
所得金額に税率を乗じ、税額控除(所得税額控除、賃上げ促進税制などの特別控除)を差し引き、中間納付額を控除して確定税額を出す。地方法人税・防衛特別法人税もここで計算する。 - STEP 6 別表五(一)で利益積立金額を締める
別表四の留保金額と、別表五(二)の未納法人税等の増減を反映し、検算式で一致を確認する。ここが合えば申告書全体の数字はほぼ通っている。 - STEP 7 別表二・適用額明細書・添付書類を整える
同族会社の判定、租税特別措置の適用額、決算報告書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書を揃えて送信する。
主要な別表の役割と数字の出どころ
| 別表 | 何を書く表か | どこから数字を持ってくるか |
|---|---|---|
| 別表一 | 所得金額に税率を適用して法人税額・地方法人税額・防衛特別法人税額を計算する申告書の表紙 | 所得金額は別表四の総計。税額控除は別表六の各表。中間納付額は別表五(二) |
| 別表一次葉 | 税率区分ごとの税額計算(年800万円以下と超の区分) | 別表一の所得金額を階層に区分 |
| 別表二 | 同族会社・特定同族会社の判定 | 株主名簿、法人税申告書添付の同族関係者一覧。期末現在の議決権数・株式数 |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書(税務上の損益計算書) | 当期純利益は損益計算書。加算・減算は各明細別表 |
| 別表五(一) | 利益積立金額および資本金等の額の計算に関する明細書(税務上の貸借対照表) | 前期の別表五(一)期末残高、別表四の留保欄、別表五(二)の未納税額 |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 | 納付書控え、通帳の納税明細、前期申告書の確定税額、未払法人税等の元帳 |
| 別表六(一) | 所得税額の控除に関する明細書 | 預金利子の計算書、配当金支払通知書、証券会社の年間取引報告書 |
| 別表七(一) | 欠損金の損金算入等に関する明細書(繰越控除) | 前期の別表七(一)期末残高。発生事業年度ごとに管理 |
| 別表八(一) | 受取配当等の益金不算入に関する明細書 | 配当金支払通知書、株式区分(持株割合と保有期間) |
| 別表十一(一)・(一の二) | 個別評価・一括評価の金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入 | 売掛金・受取手形の補助元帳、得意先ごとの年齢調べ、決算整理仕訳 |
| 別表十四(二) | 寄附金の損金不算入額の計算 | 寄附金勘定の内訳、受領証、資本金等の額(別表五(一))、別表四の仮計 |
| 別表十五 | 交際費等の損金算入に関する明細書 | 交際費勘定の内訳、飲食費の区分集計、会議費・福利厚生費に紛れた交際費 |
| 別表十六(一)・(二) | 定額法・定率法による減価償却資産の償却額の計算 | 固定資産台帳。取得価額、耐用年数、事業供用日、償却方法の届出状況 |
| 別表十六(七) | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 | 固定資産台帳のうち特例適用資産。年間限度額300万円の管理 |
| 別表十六(八) | 一括償却資産の損金算入 | 10万円以上20万円未満の資産。3年均等償却の残高管理 |
| 別表十六(十) | 資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入 | 消費税申告書の課税売上割合、税抜経理の仮払消費税等の精算差額 |
| 別表三(一) | 特定同族会社の留保金額に対する税額の計算 | 別表二の判定結果、別表四の留保所得金額。中小法人は適用除外 |
5. 別表五(一)と別表五(二)の仕組みを数値で追う
申告書で最も詰まりやすいのが、納税充当金(未払法人税等)と未納法人税等の動きである。ひとつの事例を最初から最後まで追えば構造は掴める。次の設例で確認する。
設例の前提
- 資本金1,000万円の中小法人、3月決算。当期は第X期。
- 期首の未払法人税等(納税充当金)1,150,000円。内訳は法人税600,000円、地方法人税62,000円、住民税188,000円、事業税等300,000円。
- 当期中に前期確定分1,150,000円を未払法人税等の取崩しで納付した。
- 当期の中間納付額619,000円を「法人税、住民税及び事業税」として損金経理した。内訳は法人税360,000円、地方法人税37,000円、住民税72,000円、事業税等150,000円。
- 税引前当期純利益 6,745,000円。
- その他の調整は、交際費等の損金不算入300,000円、償却超過額200,000円、受取配当等の益金不算入50,000円、控除所得税額10,000円。
別表四(所得の金額の計算)
| 区分 | 総額 | 留保 | 社外流出 |
|---|---|---|---|
| 当期利益 | 5,105,500 | 5,105,500 | 0 |
| 加算 損金経理をした法人税および地方法人税(中間分) | 397,000 | 397,000 | — |
| 加算 損金経理をした道府県民税および市町村民税(中間分) | 72,000 | 72,000 | — |
| 加算 損金経理をした納税充当金 | 1,020,500 | 1,020,500 | — |
| 加算 交際費等の損金不算入額 | 300,000 | — | 300,000 |
| 加算 減価償却の償却超過額 | 200,000 | 200,000 | — |
| 加算 小計 | 1,989,500 | 1,689,500 | 300,000 |
| 減算 納税充当金から支出した事業税等の金額 | 300,000 | 300,000 | — |
| 減算 受取配当等の益金不算入額 | 50,000 | — | 50,000 |
| 減算 小計 | 350,000 | 300,000 | 50,000 |
| 仮計 | 6,745,000 | 6,495,000 | 250,000 |
| 法人税額から控除される所得税額 | 10,000 | — | 10,000 |
| 所得金額 | 6,755,000 | 6,495,000 | 260,000 |
別表一(税額の計算)
| 項目 | 金額 | 計算の根拠 |
|---|---|---|
| 所得金額(千円未満切捨) | 6,755,000 | 別表四の総計 |
| 法人税額 | 1,013,250 | 6,755,000 × 15%(年800万円以下) |
| 控除所得税額 | 10,000 | 別表六(一) |
| 差引所得に対する法人税額(百円未満切捨) | 1,003,200 | 1,013,250 − 10,000 |
| 中間申告分の法人税額 | 360,000 | 別表五(二) |
| 差引確定法人税額 | 643,200 | 1,003,200 − 360,000 |
| 地方法人税額 | 104,300 | 1,013,000(千円未満切捨)× 10.3% |
| 差引確定地方法人税額 | 67,300 | 104,300 − 中間37,000 |
| 防衛特別法人税額 | 0 | 基準法人税額1,013,250円が基礎控除500万円以下 |
住民税は、法人税割の課税標準1,003,000円(千円未満切捨)× 7.0% = 70,200円に均等割70,000円を加えて140,200円。中間72,000円を差し引いた確定分は68,200円となる。事業税等は、所得割が 4,000,000円 × 3.5% + 2,755,000円 × 5.3% = 286,000円、特別法人事業税が 286,000円 × 37% = 105,800円で合計391,800円。中間150,000円を差し引いた確定分は241,800円である。
確定分の合計 643,200 + 67,300 + 68,200 + 241,800 = 1,020,500円が、決算で未払法人税等に計上する金額であり、別表四で加算した「損金経理をした納税充当金」と一致する。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 619,000 | 普通預金 | 619,000 | 当期中間分の納付 |
| 未払法人税等 | 1,150,000 | 普通預金 | 1,150,000 | 前期確定分の納付(充当金取崩し) |
| 法人税、住民税及び事業税 | 1,020,500 | 未払法人税等 | 1,020,500 | 決算整理 当期確定分の未払計上 |
別表五(二)(租税公課の納付状況等)
| 税目・事業年度 | 期首未納 | 当期発生 | 充当金取崩納付 | 損金経理納付 | 期末未納 |
|---|---|---|---|---|---|
| 法人税・地方法人税 前期確定分 | 662,000 | — | 662,000 | 0 | 0 |
| 法人税・地方法人税 当期中間分 | — | 397,000 | 0 | 397,000 | 0 |
| 法人税・地方法人税 当期確定分 | — | 710,500 | — | — | 710,500 |
| 道府県民税・市町村民税 前期確定分 | 188,000 | — | 188,000 | 0 | 0 |
| 道府県民税・市町村民税 当期中間分 | — | 72,000 | 0 | 72,000 | 0 |
| 道府県民税・市町村民税 当期確定分 | — | 68,200 | — | — | 68,200 |
| 事業税・特別法人事業税 前期確定分 | — | 300,000 | 300,000 | 0 | 0 |
| 事業税・特別法人事業税 当期中間分 | — | 150,000 | 0 | 150,000 | 0 |
別表五(二)の下部にある納税充当金の計算欄は次のように動く。
| 区分 | 金額 | 別表四との対応 |
|---|---|---|
| 期首納税充当金 | 1,150,000 | 前期別表五(一)の納税充当金期末残高 |
| 繰入額(損金経理をした納税充当金) | 1,020,500 | 別表四で加算(留保) |
| 取崩額 法人税額等 | 850,000 | 加算も減算もしない |
| 取崩額 事業税等 | 300,000 | 別表四で減算(留保) |
| 期末納税充当金 | 1,020,500 | 1,150,000 + 1,020,500 − 1,150,000 |
別表五(一)(利益積立金額の計算)
| 区分 | 期首現在 | 当期の減 | 当期の増 | 期末現在 |
|---|---|---|---|---|
| 利益準備金 | 500,000 | — | — | 500,000 |
| 減価償却超過額 | 0 | — | 200,000 | 200,000 |
| 納税充当金 | 1,150,000 | 1,150,000 | 1,020,500 | 1,020,500 |
| 未納法人税および未納地方法人税 | △662,000 | 1,059,000 | 1,107,500 | △710,500 |
| 未納道府県民税・未納市町村民税 | △188,000 | 260,000 | 140,200 | △68,200 |
| 繰越損益金 | 8,000,000 | 8,000,000 | 13,105,500 | 13,105,500 |
| 差引合計額 | 8,800,000 | — | — | 14,047,300 |
未納法人税等の欄を分解すると、当期の減1,059,000円は充当金取崩しによる納付662,000円と損金経理による納付(中間分)397,000円の合計、当期の増1,107,500円は中間分397,000円と確定分710,500円の合計である。マイナス表示の欄なので、減の欄が納付、増の欄が税額の発生を表す。
Q. 繰越損益金の欄は、なぜ期首残高をいったん全額「減」に入れて期末残高を「増」に入れるのか。
A. この欄は貸借対照表の繰越利益剰余金の期末残高をそのまま書く仕様だからである。期中の増減を追う欄ではなく、期首を落として期末を立てる置き換えの記載をする。剰余金の配当や別途積立金への振替があれば各積立金の行にも動きが出る。
6. 主要な税務調整の一覧
加算項目
| 調整項目 | 留保/社外流出 | 内容と確認資料 |
|---|---|---|
| 損金経理をした法人税および地方法人税 | 留保 | 中間納付分。法人税等勘定・租税公課勘定の内訳、納付書控え |
| 損金経理をした道府県民税および市町村民税 | 留保 | 中間納付分と均等割。均等割は赤字でも発生する |
| 損金経理をした納税充当金 | 留保 | 決算で未払法人税等に計上した額の全額 |
| 損金経理をした附帯税・加算金・延滞金・過怠金 | 社外流出 | 過少申告加算税、延滞税、印紙税の過怠税、交通反則金など。租税公課勘定の摘要を確認 |
| 交際費等の損金不算入額 | 社外流出 | 別表十五。会議費・福利厚生費・広告宣伝費に紛れた交際費も拾う |
| 役員給与の損金不算入額 | 社外流出 | 定期同額給与・事前確定届出給与に該当しない部分、過大部分 |
| 減価償却の償却超過額 | 留保 | 別表十六。償却限度額を超えて費用計上した部分。翌期以後に認容減算される |
| 貸倒引当金の繰入超過額 | 留保 | 別表十一。法定繰入率または実績繰入率による限度額を超える部分 |
| 寄附金の損金不算入額 | 社外流出 | 別表十四(二)。完全支配関係のある法人への寄附金は全額不算入 |
| 控除対象外消費税額等の損金不算入額 | 留保 | 別表十六(十)。20万円以上の資産に係る繰延消費税額等の償却超過部分 |
| 法人税額から控除される所得税額 | 社外流出 | 別表六(一)。税額控除を受ける以上損金にできないので所得に戻す |
| 棚卸資産・仕掛品の計上漏れ | 留保 | 期末棚卸表、外注先への預け在庫、未成工事支出金 |
減算項目
| 調整項目 | 留保/社外流出 | 内容と確認資料 |
|---|---|---|
| 納税充当金から支出した事業税等の金額 | 留保 | 前期確定分の事業税・特別法人事業税を当期に納付した額。別表五(二)の取崩額 |
| 受取配当等の益金不算入額 | 社外流出 | 別表八(一)。配当金支払通知書と持株割合 |
| 法人税等の還付金額 | 社外流出 | 法人税・地方法人税・住民税の還付金。雑収入に計上されているので減算 |
| 所得税額等および欠損金の繰戻しによる還付金額 | 社外流出 | 還付加算金は益金なので減算しない点に注意 |
| 減価償却超過額の当期認容額 | 留保 | 前期以前の償却超過額がある資産で、当期の償却費が償却限度額に満たない場合に認容 |
| 貸倒引当金の繰入超過額の当期認容額 | 留保 | 前期の繰入超過額は、洗替えにより当期に全額認容される |
| 前期損金不算入とした控除対象外消費税額等の当期損金算入額 | 留保 | 繰延消費税額等の当期償却額 |
7. 交際費等の損金不算入
期末資本金1億円以下の中小法人は、次のいずれかを選択できる。
定額控除限度額
交際費等のうち年800万円(事業年度が1年未満の場合は月数按分)までを損金算入し、超えた部分が損金不算入となる。総額が800万円以下なら全額損金になるため、中小企業の大半はこちらを選ぶ。
接待飲食費の50%
接待飲食費の額の50%相当額を損金算入する。交際費の総額が大きく、かつそのうち飲食費の割合が高い場合に有利になることがある。両者は有利選択なので、別表十五で必ず両方を計算して比較する。
1人当たり1万円以下の飲食費の除外
得意先等との接待飲食費のうち、参加者1人当たりの金額が1万円以下のものは、そもそも交際費等から除外される。除外されれば定額控除限度額を消費しないので、金額の大きい顧問先ほど効果が大きい。判定は税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で行う。
1. 飲食等のあった年月日
2. 飲食等に参加した得意先・仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
3. 飲食等に参加した者の数
4. 飲食等に要した費用の金額ならびにその飲食店等の名称および所在地
5. その他参考となるべき事項
交際費等に含めるもの・含めないもの
| 取引 | 取扱い | 理由・要件 |
|---|---|---|
| 得意先との飲食(1人1万円超) | 交際費 | 接待飲食費として50%基準の対象にはなる |
| 得意先との飲食(1人1万円以下) | 交際費から除外 | 記載事項5項目の保存が要件 |
| 社内会議に伴う茶菓・弁当 | 会議費 | 会議としての実体(議事録、参加者、場所)があること |
| 全社員参加の慰安旅行・忘年会 | 福利厚生費 | 全員参加が原則。役員のみ、特定部署のみは交際費または給与 |
| 不特定多数への宣伝用カレンダー・試供品 | 広告宣伝費 | 相手が不特定多数であること |
| 特定の得意先への中元・歳暮 | 交際費 | 相手が特定されている |
| 取引先の慶弔金・見舞金 | 交際費 | 従業員に対するものは福利厚生費(社内規程が必要) |
| ゴルフプレー費用 | 交際費 | 接待飲食費ではないので50%基準の対象外。飲食部分も同日のプレーに伴うものは交際費 |
8. 役員給与
法人税法上、役員給与は原則として損金不算入で、次の3類型に当てはまるものだけが損金になる。中小企業で使えるのは実質的に前2つである。
| 類型 | 要件 | 実務上の論点 |
|---|---|---|
| 定期同額給与 | 支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、各支給時期の支給額が同額であること | 期中の増額改定は原則不可。改定できるのは通常改定・臨時改定事由・業績悪化改定事由の3つのみ |
| 事前確定届出給与 | 所定の時期に確定額を支給する旨を定め、期限までに税務署へ届け出ること | 届出額と支給額・支給日が1円1日でもずれると全額損金不算入 |
| 業績連動給与 | 同族会社以外の法人が支給するもので、有価証券報告書への記載など厳格な要件を満たすもの | 非同族の完全子法人を除き、中小企業では使えないと考えてよい |
定期同額給与の改定時期
- 通常改定 事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行う改定。3月決算法人なら6月30日まで。定時株主総会の決議と議事録が根拠資料になる。
- 臨時改定事由 役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更等。代表取締役への昇格、病気による職務の縮小などが該当する。
- 業績悪化改定事由 経営状況が著しく悪化したこと等により減額する場合。一時的な資金繰りの都合や単なる業績不振では認められず、金融機関等との協議に基づく再建計画など客観的な資料が必要になる。
事前確定届出給与の届出期限
届出期限は次のいずれか早い日である。
- 株主総会等の決議をした日から1か月を経過する日
- その会計期間開始の日から4か月を経過する日
3月決算法人が5月25日の定時株主総会で決議した場合、前者は6月25日、後者は7月31日なので、期限は6月25日となる。新設法人は設立の日以後2か月を経過する日が期限である。
過大役員給与・過大退職金の判定
過大役員給与
実質基準 役員の職務内容、法人の収益および使用人に対する給与の支給状況、同種同規模の法人の役員給与の支給状況等に照らして相当と認められる金額を超える部分。
形式基準 定款の定めまたは株主総会の決議による限度額を超える部分。
両方で判定し、いずれか多い否認額を採用する。株主総会議事録の限度額と実際の支給総額の突合は毎期必ず行う。
過大退職金
業務従事期間、退職の事情、同種同規模の法人の支給状況等に照らして相当と認められる金額を超える部分が損金不算入となる。実務では功績倍率法を用いる。
退職金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率
功績倍率は代表取締役で3.0程度が裁判例上の目安とされる。退職直前に報酬を引き上げて最終報酬月額をかさ上げする手法は否認リスクが高い。役員退職慰労金規程を整備し、株主総会決議と支給の事実を揃える。
役員の範囲とみなし役員
法人税法上の役員は、会社法上の取締役・監査役・執行役等に加えて、次の者を含む(みなし役員)。
- 法人の使用人以外の者(会長、相談役、顧問など)で、その法人の経営に従事している者
- 同族会社の使用人のうち、次の持株要件をすべて満たし、かつ経営に従事している者
- その会社の株主グループを持株割合の大きい順に並べたとき、第3順位までのグループの持株割合の合計が50%を超えるまでの範囲に、その者の属する株主グループが含まれること
- その者の属する株主グループの持株割合が10%を超えること
- その者(配偶者および両者の持株割合が50%超の会社を含む)の持株割合が5%を超えること
使用人兼務役員
取締役営業部長のように、役員でありながら使用人としての職制上の地位を有し、常時使用人としての職務に従事している者は使用人兼務役員となる。使用人分の給与・賞与は損金算入できる(他の使用人と同時期に支給することが要件)。ただし次の者は使用人兼務役員になれない。
- 代表取締役、代表執行役、代表理事、清算人
- 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
- 合名会社・合資会社・合同会社の業務執行社員
- 取締役(監査等委員である者に限る)、監査役、会計参与
- 同族会社の役員のうち、前述のみなし役員の持株要件を満たす者
9. 欠損金の繰越控除と繰戻し還付
繰越控除
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 繰越期間 | 10年(平成30年(2018年)4月1日以後に開始した事業年度において生じた欠損金) |
| 控除限度額(中小法人等) | 繰越控除前の所得金額の100% |
| 控除限度額(それ以外の法人) | 繰越控除前の所得金額の50% |
| 要件 | 欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出していること。帳簿書類の保存も要件 |
| 控除の順序 | 古い事業年度に生じた欠損金から順に控除する |
| 使用する別表 | 別表七(一)。発生事業年度ごとに残高を管理する |
欠損金の繰戻し還付
当期に欠損金が生じた中小企業者等は、前1年以内に開始した事業年度に納付した法人税の還付を請求できる。
- 還付金額 = 前期の法人税額 ×(当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額)(分数は1を上限とする)
- 要件は、還付所得事業年度から欠損事業年度まで連続して青色申告書を提出していること、欠損事業年度の青色申告書を期限内に提出すること、その申告書と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出することの3つ。
- 還付されるのは法人税と地方法人税のみ。法人住民税は還付されず、還付を受けた法人税額を「控除対象還付法人税額」として翌期以後10年間の法人税割の課税標準から控除する。事業税に繰戻し還付の制度はない。
10. 中小企業の主要な優遇税制
| 制度 | 優遇内容 | 主な適用要件 | 適用期限 |
|---|---|---|---|
| 中小企業投資促進税制 | 取得価額の30%特別償却 または 7%税額控除(税額控除は資本金3,000万円以下の法人等に限る) | 機械装置160万円以上、測定工具・検査工具120万円以上、一定のソフトウェア70万円以上、車両総重量3.5トン以上の貨物自動車、内航船舶。事前の計画認定は不要 | 令和9年(2027年)3月31日まで※適用期限は最新の情報を要確認 |
| 中小企業経営強化税制 | 即時償却 または 10%税額控除(資本金3,000万円超1億円以下は7%) | 経営力向上計画の主務大臣認定が必須。類型ごとに工業会証明書または経済産業局の確認書が必要 | 令和9年(2027年)3月31日まで |
| 特定生産性向上設備等投資促進税制 | 即時償却 または 税額控除7%・4%(区分による)。控除限度は法人税額の20% | 生産性の向上に資する一定の設備の取得・事業供用 | 令和11年(2029年)3月31日まで |
| 賃上げ促進税制(中小企業向け) | 給与等支給額の増加額に対する税額控除。前年比+1.5%で15%、+2.5%で30%、子育て支援・女性活躍の上乗せ+5%で最大35% | 雇用者給与等支給額が前事業年度を上回ること。上乗せはプラチナくるみん・えるぼし等の認定 | 中堅企業向けは令和9年(2027年)3月31日で廃止、大企業向けは令和8年(2026年)3月31日で廃止 |
| 少額減価償却資産の特例 | 取得価額の全額を損金算入 | 取得価額40万円未満(令和8年(2026年)4月1日以後取得。同年3月31日までの取得は30万円未満)。年間限度額300万円。常時使用する従業員400人以下 | 令和11年(2029年)3月31日取得分まで |
| 研究開発税制 | 試験研究費の額に応じた税額控除。戦略技術領域型は控除率40%から50%(控除限度は法人税額の10%) | 試験研究費の範囲に該当すること。戦略技術領域型は令和8年(2026年)4月1日以後 | 制度ごとに異なる |
賃上げ促進税制の要点
- 控除上限は法人税額の20%。所得が小さい年は控除しきれないことが多い。
- 控除しきれなかった金額は5年間の繰越しができる(中小企業向けのみ)。ただし繰越控除を適用する事業年度において、雇用者給与等支給額が前事業年度を上回っていることが必要である。
- 教育訓練費に係る上乗せ措置は全規模で廃止された。過年度の記憶で提案しないこと。
- 計算の基礎は「継続雇用者」ではなく「雇用者給与等支給額」(国内雇用者に対する給与等)である。役員および役員の親族等に対する給与は除く。
少額減価償却資産と減価償却の金額区分
| 取得価額 | 選択できる処理 | 備考 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額損金(消耗品費等) | 年間限度額なし。償却資産税の対象外 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年均等償却 または 少額減価償却資産の特例 または 通常償却 | 一括償却資産は償却資産税の対象外。除却しても3年間償却を続ける |
| 20万円以上40万円未満 | 少額減価償却資産の特例 または 通常償却 | 特例は年300万円まで。償却資産税の対象になる |
| 40万円以上 | 通常償却(各種特別償却・税額控除の検討) | 中小企業投資促進税制・経営強化税制の対象になるか確認 |
計画認定を伴う制度の手続の流れ
- STEP 1 設備の特定と類型の判定
導入予定設備の型式・取得価額・事業供用予定日を確定する。中小企業経営強化税制では類型により必要書類が変わるため、ここで判定する。 - STEP 2 証明書または確認書の取得
生産性向上設備の類型は設備メーカー経由で工業会証明書を取得する。それ以外の類型は投資計画を作成し、認定経営革新等支援機関の事前確認を経て経済産業局の確認書を取得する。工業会証明書は発行まで1か月以上かかることがあるので、設備発注の前に着手する。 - STEP 3 経営力向上計画の申請・認定
認定支援機関の支援を受けて計画を作成し、事業分野を所管する主務大臣へ申請する。原則として設備取得前に認定を受ける。取得後の申請は取得日から60日以内に受理される必要があり、かつその事業年度末までに認定を受けなければならない。 - STEP 4 設備の取得と事業供用
適用は事業供用日の属する事業年度である。期末ぎりぎりの納品では据付・試運転が終わらず供用が翌期にずれる。決算月の2か月前には稼働させる段取りを組む。 - STEP 5 申告書への添付
該当する別表、適用額明細書、経営力向上計画の認定申請書および認定書の写し、工業会証明書または確認書の写しを添付して申告する。添付漏れは特例不適用に直結する。 - STEP 6 先端設備等導入計画(固定資産税の特例)
償却資産に係る固定資産税の軽減を受ける場合は、市区町村の認定を受ける先端設備等導入計画を別に申請する。認定経営革新等支援機関の確認書が必要で、こちらも設備取得前の認定が原則である。法人税の特例とは所管も期限も別なので、二重に管理する。
11. 同族会社の留意点
同族会社の判定
株主等の上位3グループが有する株式数または議決権の合計が発行済株式総数等の50%を超える会社を同族会社という。判定は別表二で行い、期末現在の状況で判断する。中小企業のほぼすべてが該当する。1グループだけで50%を超える会社は特定同族会社となる。
役員貸付金と認定利息
会社が役員に金銭を貸し付けている場合、無利息や低利では役員に対する経済的利益の供与となり、適正利息との差額が役員給与(定期同額給与に該当しないので損金不算入)かつ役員の給与所得として源泉徴収の対象になる。適正な利率は次のとおりである。
- 会社が他から借り入れて役員に貸し付けた場合 その借入金の利率
- それ以外の場合 貸付けを行った日の属する年の特例基準割合による利率(毎年国税庁が公表。近年は年1%前後で推移している)※適用する利率は最新の情報を要確認
同族会社の行為または計算の否認
同族会社の行為または計算で、これを容認した場合に法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものは、税務署長が否認できる(法人税法132条)。個別の否認規定に触れていなくても適用されうる包括規定である。次のような取引に注意する。
- 役員個人所有の不動産を、周辺相場と乖離した高額な賃料で会社が賃借する
- 実態のない役員名義の外注費・コンサルティング料を支払う
- グループ内で著しく有利または不利な条件による資産の譲渡を行う
- 合理的な事業目的のない組織再編により欠損金を引き継ぐ
留保金課税
特定同族会社が利益を過大に内部留保した場合、通常の法人税とは別に留保金課税が課される。ただし期末資本金1億円以下の中小法人は適用除外のため、実務で遭遇する機会は限られる。適用除外から外れるのは資本金5億円以上の法人による完全支配関係がある子法人などである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税標準 | 当期留保金額 − 留保控除額 |
| 留保控除額 | 次のうち最も多い金額。所得基準額(所得等の金額の40%)/定額基準額(年2,000万円)/積立金基準額(期末資本金の25%相当額 − 期末利益積立金額) |
| 税率 | 年3,000万円以下の部分10%、3,000万円超1億円以下の部分15%、1億円超の部分20% |
| 使用する別表 | 別表三(一) |
12. 申告書提出前の最終チェックリスト
数字が合っていても、添付漏れや届出漏れで特例が使えなくなれば意味がない。送信前に次を確認する。担当者チェックと管理者レビューの2段階で回す。
決算書との整合
- 別表四の当期利益が損益計算書の当期純利益と一致している
- 別表五(一)の繰越損益金期末残高が貸借対照表の繰越利益剰余金と一致している
- 別表五(一)の納税充当金期末残高が貸借対照表の未払法人税等と一致している
- 勘定科目内訳明細書の各合計が試算表の残高と一致している
別表相互の整合
- 別表五(一)の検算式(期首利益積立金 + 別表四留保総計 − 中間分・確定分の法人税等 = 期末利益積立金)が一致している
- 別表五(二)の期末未納税額が別表五(一)の未納法人税等と一致している
- 別表五(二)の納税充当金繰入額が別表四の「損金経理をした納税充当金」と一致している
- 別表五(二)の充当金取崩しによる事業税納付額が別表四の減算額と一致している
- 別表十五の交際費損金不算入額が別表四に転記されている
- 別表十六の償却超過額・認容額が別表四と別表五(一)の両方に反映されている
- 別表六(一)の控除所得税額が別表四の加算と別表一の税額控除の両方に反映されている
- 別表七(一)の当期控除額が別表四の欠損金当期控除額と一致している
税額計算
- 所得金額が千円未満切捨て、税額が百円未満切捨てで処理されている
- 軽減税率の年800万円の判定が正しい(事業年度が1年未満なら月数按分)
- 所得金額10億円超の場合に軽減税率が17%になっていることを確認した
- 地方法人税・防衛特別法人税の課税標準が所得税額控除前の法人税額になっている
- 住民税法人税割の課税標準が所得税額控除後の法人税額になっている
- 防衛特別法人税の基礎控除500万円が正しく適用されている(事業年度1年未満は按分)
- 中間納付額が納付書控えと一致し、二重計上・計上漏れがない
- 均等割の資本金等の額の区分と従業者数の区分が正しい
特例・税額控除
- 適用額明細書を作成し、すべての租税特別措置を漏れなく記載した
- 少額減価償却資産の特例の年間限度額300万円を超えていない
- 賃上げ促進税制の控除上限(法人税額の20%)を超えていない
- 繰越税額控除がある場合、当期の適用要件(給与等支給額の増加)を満たしている
- 経営力向上計画の認定書・工業会証明書等の写しを添付した
申告手続・添付書類
- 別表二の同族会社判定を期末現在の株主名簿で行った
- 決算報告書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書を添付した
- 申告期限の延長の特例を受けている場合、見込納付の要否と金額を検討した
- 地方税の申告書提出先(都道府県・市区町村)と提出期限を確認した
- 納付書または電子納税の準備が完了し、納付期限を顧問先に伝えた
- 翌期の中間申告の要否(前期確定法人税額20万円超)と時期を確認した
- 役員給与の改定時期・事前確定届出給与の届出状況を翌期分として引き継いだ
- 申告書控えとe-Taxの受信通知を所定のフォルダに保存した
13. 提出後の手続
納付と電子納税
| 納付方法 | 特徴 | 限度額等 |
|---|---|---|
| ダイレクト納付 | e-Taxから口座振替を指示する。事前に届出書の提出が必要(利用可能まで1か月程度) | 限度額なし。日付指定も可能で実務上の第一選択 |
| インターネットバンキング | 登録方式(e-Taxで納付情報を登録)と入力方式(納付区分番号を手入力) | 限度額なし |
| クレジットカード納付 | 国税クレジットカードお支払サイトから納付。決済手数料は納税者負担 | 1,000万円未満かつカードの利用限度額以内 |
| スマホアプリ納付 | キャッシュレス決済アプリで納付 | 1回30万円以下 |
| コンビニ納付 | QRコードまたはバーコード付納付書 | 30万円以下 |
e-Taxのメッセージボックス
送信した申告データの受付結果は、e-Taxのメッセージボックスに受信通知(メール詳細)として格納される。これが電子申告を行った証跡になるため、次の運用を徹底する。
- 受付日時・受付番号・受付ファイル名が記載された受信通知をPDFで保存し、申告書控えと同じフォルダに格納する。保存期間に限りがあるため送信後すぐに取得する。
- 税務署からの「お知らせ」もここに届く。確認する担当と頻度を事務所ルールとして決めておく。
更正の請求
申告した税額が過大だった場合、法定申告期限から5年以内に更正の請求ができる。更正の請求書に、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を添付する。税務署が調査のうえ、理由があると認めれば減額更正が行われ、税金が還付される。
修正申告と加算税・延滞税
申告した税額が過少だった場合は修正申告を行う。更正があるまではいつでも提出できる。加算税の率は次のとおりで、いつ気づいて出したかで大きく変わる。
| 種類 | 原則の率 | 加重される場合 | 軽減される場合 |
|---|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 10% | 期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15% | 調査の事前通知前の自主的な修正申告は課されない。事前通知後・調査による更正の予知前は5%(加重部分10%) |
| 無申告加算税 | 15% | 50万円超の部分20%、300万円超の部分30% | 調査の事前通知前の自主的な期限後申告は5%。一定の要件を満たす場合は不適用 |
| 重加算税 | 35%(無申告の場合40%) | 過去5年以内に同税目で無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合は10%加算 | 仮装隠蔽がある場合に課されるもので、軽減はない |
| 不納付加算税(源泉所得税) | 10% | — | 納税の告知を予知しない自主納付は5% |
延滞税は、法定納期限の翌日から完納の日までの日数に応じて課される。率は次の2段階である。
- 納期限の翌日から2か月を経過する日まで 年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
- 2か月を経過した日以後 年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
近年の実勢では前段が年2%台、後段が年8%台である※適用される割合は最新の情報を要確認。2か月を境に率が4倍近くになるため、資金が足りない場合でも一部納付を行って本税を減らすほうが有利になる。納付が困難な事情がある場合は、換価の猶予や納税の猶予の申請を検討する。
14. 各種届出書の一覧と提出期限
設立時に提出するもの(税務署)
| 届出書 | 提出期限 | 添付書類・要点 |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 | 定款の写しを添付。登記事項証明書の添付は不要 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期終了の日のいずれか早い日の前日まで | 提出漏れは繰越欠損金・各種特例をすべて失う。最優先で出す |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 | 役員報酬だけでも給与支払事務所に該当する |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限なし | 給与の支給人員が常時10人未満。提出した月の翌月末までに承認があったものとみなされ、翌々月の納付分から適用 |
| 棚卸資産の評価方法の届出書 | 設立第1期の確定申告期限まで | 提出しない場合は最終仕入原価法(法定評価方法) |
| 減価償却資産の償却方法の届出書 | 設立第1期の確定申告期限まで | 提出しない場合、法人は定率法が法定償却方法(建物・建物附属設備・構築物は定額法のみ) |
異動があったときに提出するもの
| 事由 | 届出書 | 提出期限・提出先 |
|---|---|---|
| 事業年度の変更 | 異動届出書 | 遅滞なく。定款変更を決議した株主総会議事録の写しを添付 |
| 本店所在地の移転 | 異動届出書 | 遅滞なく。令和5年(2023年)1月1日以後は異動前の納税地の所轄税務署へ提出すれば足り、異動後の税務署への提出は不要 |
| 商号・代表者・資本金の変更 | 異動届出書 | 遅滞なく。資本金の変更は消費税・法人住民税均等割の判定に直結する |
| 納税地の変更 | 異動届出書 | 遅滞なく |
| 給与支払事務所の移転・廃止 | 給与支払事務所等の移転・廃止届出書 | 移転・廃止の日から1か月以内 |
| 解散・清算結了 | 異動届出書 | 遅滞なく。解散の日までの事業年度について申告が必要 |
消費税関係の届出書
| 届出書 | 提出期限 | 要点 |
|---|---|---|
| 消費税課税事業者届出書(基準期間用・特定期間用) | 該当することとなった場合、速やかに | 基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたとき |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 速やかに | 設立時の資本金が1,000万円以上の場合。法人設立届出書に記載すれば提出を省略できる |
| 消費税課税事業者選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(設立第1期はその課税期間中) | 2年間の継続適用義務。調整対象固定資産を取得すると3年縛りになる |
| 消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(設立第1期はその課税期間中) | 基準期間の課税売上高5,000万円以下が要件。2年間の継続適用義務 |
| 消費税課税事業者選択不適用届出書/簡易課税制度選択不適用届出書 | 適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで | 提出を忘れると意図せず選択が継続する。届出書の控えを顧問先ファイルで一元管理する |
| 消費税課税期間特例選択・変更届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで | 3か月または1か月ごとの課税期間に短縮。還付を早く受けたい場合に使う |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 登録を受けようとする課税期間の初日から起算して15日前の日まで | 新設法人は事業を開始した課税期間の末日までに申請すれば、その課税期間の初日に遡って登録を受けられる |
| 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 | 速やかに | 基準期間の課税売上高が1,000万円以下となったとき |
Q. 中間申告が必要かどうかは、どこで判定するか。
A. 法人税は、前事業年度の確定法人税額を前期の月数で割って6を乗じた額が10万円超、つまり前期の確定法人税額が20万円超(前期が12か月の場合)のときに中間申告義務がある。消費税は前課税期間の確定消費税額(国税部分)が48万円を超える場合に中間申告が必要で、金額に応じて年1回・3回・11回と回数が変わる。決算報告の際に翌期の中間納付額とその時期を伝え、資金繰り表に織り込ませる。
