確定申告の要否と期限、事業所得と青色申告特別控除、不動産所得、譲渡所得、令和8年分の所得控除、住民税と国保への波及、法人成りの判断、繁忙期の運営。
CHAPTER 11所得税の確定申告 — 個人顧問先対応
個人の確定申告は、1月から3月に事務所の仕事量が一年で最も膨らむ業務である。所得区分の判定を誤ると税額そのものが変わり、按分や特例の適用漏れは翌年以降の住民税と国民健康保険料まで引きずる。令和8年(2026年)分は基礎控除・扶養の所得要件・生命保険料控除がまとめて動き、翌令和9年(2027年)分からは青色申告特別控除の要件が変わる。改正の切れ目を先に頭に入れてから、判定・計算・段取りの順で進める。
1. 確定申告の要否判定と期限
最初にやることは「この人は申告義務があるのか」「義務はないが申告した方が得なのか」の切り分けである。義務の有無で期限後申告のペナルティが変わり、有利不利の判定で提案の中身が変わる。両方を同じ表で見られるようにしておく。
申告義務がある人
| 区分 | 申告が必要になる基準 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 事業所得・不動産所得がある人 | 各種所得の合計額が所得控除の合計額を超え、税額が生じる場合 | 試算表、前年の申告書 |
| 給与所得者(1) | 給与の収入金額が2,000万円を超える | 源泉徴収票(年末調整されていない) |
| 給与所得者(2) | 給与以外の所得(副業、原稿料、暗号資産、太陽光売電など)の合計が20万円を超える | 支払調書、取引履歴 |
| 給与所得者(3) | 2か所以上から給与を受け、従たる給与とその他の所得の合計が20万円を超える | 源泉徴収票が2枚以上 |
| 給与所得者(4) | 同族会社の役員やその親族等が、その法人から貸付金の利子・不動産賃貸料等を受けている | 法人の勘定科目内訳明細書(借入金・地代家賃) |
| 公的年金等の受給者 | 公的年金等の収入が400万円を超える、または公的年金等以外の所得が20万円を超える | 公的年金等の源泉徴収票 |
| 退職所得がある人 | 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合(一律20.42%が源泉徴収されており精算が必要) | 退職所得の源泉徴収票 |
| 譲渡所得がある人 | 不動産・株式等の譲渡益がある場合。特例で税額がゼロになる場合も申告が適用要件 | 売買契約書、特定口座年間取引報告書 |
義務はないが申告した方が有利な人
- 源泉徴収された税額が年税額を上回っている(年の途中で退職した、給与が減った、扶養が増えた)
- 医療費控除・寄附金控除・雑損控除がある(年末調整では処理できない3つの控除)
- 住宅ローン控除の初年度
- 上場株式等の譲渡損失を翌年以降3年間繰り越したい、または配当と損益通算したい
- 事業で純損失が出ており、繰越または前年への繰戻し還付を受けたい
- 予定納税をしており、実績が見積りを下回っている
期限の一覧
| 手続 | 期限(令和8年=2026年分の申告) | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税の申告と納付 | 令和9年(2027年)2月16日から3月15日 | 還付申告のみの人は1月1日から提出できる。2月15日以前に出して構わない |
| 個人事業者の消費税・地方消費税の申告と納付 | 令和9年(2027年)3月31日 | 所得税と締切が違う。管理表の列を分け、所得税提出後に消費税を放置しない |
| 贈与税の申告と納付 | 令和9年(2027年)2月1日から3月15日 | 相続時精算課税の選択届出も同じ期限 |
| 振替納税(所得税) | 例年4月中旬 | 残高不足だと期限内納付にならず延滞税が付く。事前に案内する |
| 振替納税(消費税) | 例年4月下旬 | 所得税より約1週間遅い |
| 延納(所得税) | 3月15日までに納付すべき税額の2分の1以上を納付し、残額は5月31日まで | 申告書第一表の延納の届出欄に記載する。利子税がかかる |
| 青色申告承認申請書 | 適用を受けようとする年の3月15日。その年1月16日以後の新規開業は開業から2か月以内 | 1日でも遅れるとその年は白色。最優先で管理する |
| 予定納税額の減額申請(第1期・第2期分) | 7月15日 | 6月30日の現況で見積る |
| 予定納税額の減額申請(第2期分のみ) | 11月15日 | 10月31日の現況で見積る |
| 更正の請求 | 法定申告期限から5年 | 有利な特例の適用漏れに気付いたときの救済ルート |
| 還付申告 | その年の翌年1月1日から5年 | 過去分をまとめて出せる。医療費控除の遡及でよく使う |
| 準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 | 相続人全員が連署。付表の添付を忘れない |
振替納税と延納
振替納税は、口座振替により納付する制度である。申告期限までに「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を税務署または金融機関に提出しておけば、以後は自動で継続する。メリットは納付を約1か月遅らせられること、納付書を書きに行かなくてよいことの2点。デメリットは残高不足の一発失敗で、引落しができないと期限内納付として扱われず、法定納期限の翌日から延滞税が付く。
延納は、3月15日までに納付すべき税額の2分の1以上を納め、残りを5月31日まで待ってもらう制度である。届出は申告書第一表の「延納の届出」欄に金額を書くだけでよい。ただし延納期間中は利子税がかかる。資金繰りが苦しい先にはまず延納を案内し、それでも足りなければ税務署の納税相談(換価の猶予・納税の猶予)につなぐ。
期限後申告と加算税・延滞税
| 種類 | 割合 | 軽減・加重 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 納付すべき税額のうち50万円までの部分15%、50万円超300万円以下の部分20%、300万円超の部分30% | 税務調査の事前通知前に自主的に期限後申告をすれば5%。事前通知後で更正の予知前は10%(50万円超300万円以下の部分15%、300万円超の部分25%) |
| 過少申告加算税 | 追加税額の10% | 期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%。調査の事前通知前の自主的な修正申告は不適用 |
| 重加算税 | 仮装隠蔽があった場合、過少申告に代えて35%、無申告に代えて40% | 過去5年内に無申告加算税・重加算税を課されたことがあるときはさらに10%加重 |
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から納付日まで日割り。納期限の翌日から2か月以内と2か月超で割合が変わる | 割合は市中金利に連動して年ごとに改定される ※適用年分の割合は国税庁ホームページで要確認 |
| 利子税(延納・準確定申告等) | 延滞税より低い割合。必要経費算入できる場合がある | 同上 |
2. 所得10種類の一覧
所得税は、まず所得を10種類に分け、それぞれのルールで金額を計算し、総合課税のものだけを合算して累進税率をかける、という組み立てになっている。区分を間違えると計算方法も税率も変わる。迷ったら「その収入は何をした対価か」「継続反復しているか」「元手は資産か労務か」の3点で切る。
| 所得区分 | 主な内容 | 所得金額の計算方法 | 課税方法 |
|---|---|---|---|
| 利子所得 | 預貯金・公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金 | 収入金額がそのまま所得(必要経費なし) | 原則、源泉分離課税20.315%(申告不要) |
| 配当所得 | 法人からの剰余金の配当、株式投資信託の収益分配金 | 収入金額 − 株式取得のための負債利子 | 総合課税(配当控除あり)。上場株式等は申告分離課税または申告不要を選択できる |
| 不動産所得 | 土地・建物・船舶・航空機の貸付けによる所得 | 総収入金額 − 必要経費(− 青色申告特別控除) | 総合課税 |
| 事業所得 | 農業、製造、卸小売、サービス業、自由職業など事業から生ずる所得 | 総収入金額 − 必要経費(− 青色申告特別控除) | 総合課税 |
| 給与所得 | 俸給、給料、賃金、賞与、役員報酬 | 収入金額 − 給与所得控除額(− 特定支出控除) | 総合課税(源泉徴収・年末調整で完結することが多い) |
| 退職所得 | 退職手当、一時恩給、確定拠出年金の一時金 | (収入金額 − 退職所得控除額)× 2分の1。勤続5年以下の役員等は2分の1なし | 分離課税。申告書の提出があれば源泉徴収で完結 |
| 山林所得 | 取得後5年を超える山林の伐採または譲渡 | 総収入金額 − 必要経費 − 特別控除50万円(− 青色申告特別控除) | 分離課税(5分5乗方式) |
| 譲渡所得 | 土地・建物・株式・機械・ゴルフ会員権などの資産の譲渡 | 総合分は 収入金額 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除50万円 | 土地建物・株式等は申告分離課税。その他の資産は総合課税(長期は2分の1) |
| 一時所得 | 生命保険の満期一時金、懸賞金、法人からの贈与、ふるさと納税の返礼品 | 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除50万円 | 総合課税(2分の1を他の所得と合算) |
| 雑所得 | 公的年金等、副業、原稿料・講演料、暗号資産、事業に至らない各種の所得 | 公的年金等は 収入金額 − 公的年金等控除額。業務・その他は 収入金額 − 必要経費 | 総合課税(一部は分離課税) |
損益通算のルール
赤字を他の所得と相殺できるのは不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つだけである。「不・事・山・譲」と覚える。ただし次の制限がある。
- 土地等を取得するための負債の利子に相当する不動産所得の損失は、損益通算できない
- 生活に通常必要でない資産(別荘、書画骨董、貴金属、ゴルフ会員権など)の譲渡損失は、損益通算できない
- 土地建物等の譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できない(居住用財産の特例に該当する場合のみ可能)
- 株式等の譲渡損失は、上場株式等の配当所得等との間でのみ通算できる
- 雑所得の損失は損益通算できない(暗号資産・副業の赤字は切り捨て)
3. 事業所得(個人事業)の実務
青色申告特別控除
青色申告特別控除は、事業所得または事業的規模の不動産所得がある青色申告者が、記帳と申告の方法に応じて受けられる控除である。令和8年(2026年)分までの現行制度と、令和9年(2027年)分以後の改正後で要件が変わる。ここは顧問先への説明が必要になるので、2つの表で押さえる。
| 控除額 | 令和8年(2026年)分までの要件 |
|---|---|
| 65万円 | 正規の簿記の原則(複式簿記)による記帳、貸借対照表と損益計算書の添付、法定申告期限内の提出に加えて、e-Taxによる電子申告 または 優良な電子帳簿の保存(あらかじめ届出が必要)のいずれかを満たすこと |
| 55万円 | 複式簿記・貸借対照表添付・期限内申告は満たすが、上記の電子要件を満たさない場合 |
| 10万円 | 簡易な簿記による記帳など、上記以外の場合。期限後申告でもこの控除は受けられる |
| 控除額 | 令和9年(2027年)分以後の要件(改正後) | 実務対応 |
|---|---|---|
| 75万円(新設) | e-Taxによる申告に加えて、優良な電子帳簿の保存 または 電子取引データが帳簿に自動連携されていること | 会計ソフトの銀行明細・クレジット明細の自動連携を令和8年中に設定しておく |
| 65万円 | e-Taxによる電子申告が必須になる(従来の優良な電子帳簿ルート単独では65万円にならない) | 紙提出の顧問先は電子申告へ移行させる。利用者識別番号の取得を年内に済ませる |
| 55万円 | 複式簿記・期限内申告等の従来要件 | 変更なし |
| 10万円 | 簡易帳簿による控除は、前々年の収入金額が1,000万円を超える者は対象外になる | 該当先は複式簿記への切替えが必要。令和9年分に間に合うよう令和8年中に体制を整える |
青色事業専従者給与
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、その年12月31日現在15歳以上の者 |
| 従事要件 | その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事すること(年の途中の開業・従事は従事可能期間の2分の1超) |
| 届出期限 | その年3月15日まで。その年1月16日以後に開業した場合、または新たに専従者を有することとなった場合は、その日から2か月以内 |
| 金額の上限 | 届出書に記載した金額の範囲内。増額するときは変更届出書を先に出す |
| 妥当性の判断 | 労務の対価として相当かどうか。職務の内容、従事の程度と期間、他の使用人の給与、同種同規模の事業の水準で判断する |
| 重複適用の禁止 | 専従者給与を支払うと、その専従者について配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除は受けられない |
| 源泉徴収 | 通常の従業員と同じ。扶養控除等申告書の受領、源泉徴収、年末調整、給与支払報告書の提出まで行う |
| 白色申告の場合 | 事業専従者控除として、配偶者86万円・その他の親族50万円と、事業所得等を専従者数に1を加えた数で割った金額の、いずれか低い方 |
家事按分
個人事業では、支出のうち事業に対応する部分だけが必要経費になる。按分そのものより按分の根拠をどう残すかが実務の勝負どころである。税務調査で聞かれるのは割合の妥当性ではなく「その割合はどうやって出しましたか」だからである。次の表の「残す資料」を最低限そろえ、按分計算書を1枚作って毎年更新する。
| 経費項目 | 按分の基準 | 残す資料・根拠 | 実務上の目安 |
|---|---|---|---|
| 家賃・地代(賃借) | 事業使用面積 ÷ 総面積 | 間取り図に事業スペースを図示したもの、賃貸借契約書 | 30%から50%が多い。1部屋を専用にしていれば説明しやすい |
| 持家の減価償却費・固定資産税 | 同上(面積比) | 売買契約書、登記事項証明書、固定資産税納税通知書 | 建物の取得価額と経過年数の資料が必須 |
| 住宅ローンの支払利息 | 面積比。元本部分は経費にならない | 返済予定表、金融機関の年間取引明細 | 住宅ローン控除との関係を必ず確認する |
| 電気料金 | 面積比、または業務使用時間比 | 使用機器と1日の稼働時間のメモ、電力会社の明細 | 30%から50%。在宅時間の説明ができること |
| 水道・ガス | 原則として事業関連性が薄い | 飲食業・美容業など業務で使う場合のみ算定根拠を残す | 一般の業種では計上しない |
| 携帯電話・通信費 | 事業用の通話・通信の割合、または使用時間比 | 1か月分の通話明細で実測し、その月を年間に引き伸ばした計算メモ | 50%から80%。事業専用回線を分ければ全額 |
| インターネット回線 | 業務使用時間 ÷ 総使用時間 | 業務時間の記録、事業用端末の台数 | 50%から80% |
| 車両(ガソリン、保険料、車検、自動車税、減価償却費) | 事業走行距離 ÷ 総走行距離、または使用日数比 | 運行記録(日付・行先・目的・距離)、車検証、走行距離メーターの年初年末の写真 | 走行距離の実測が最も強い。2台目を事業専用にすると説明が楽になる |
| 火災保険料・地震保険料 | 面積比 | 保険証券 | 地震保険料控除との二重計上に注意 |
減価償却
| 取得価額 | 取扱い | 個人の場合の注意 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 取得した年に全額必要経費(消耗品費) | 税込経理か税抜経理かで判定額が変わる。免税事業者は税込で判定 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等償却(3分の1ずつ) | 償却資産税の対象外になるメリットがある。除却しても3年間償却を続ける |
| 20万円以上30万円未満(2026年3月31日までの取得) | 中小事業者の少額減価償却資産の特例により全額必要経費 | 年間合計300万円が限度。青色申告者に限る |
| 20万円以上40万円未満(2026年4月1日以後の取得) | 同特例の上限が40万円未満に引き上げられる | 令和8年分は年の途中で基準が変わる。取得日で分けて集計する |
| 上記以外 | 法定耐用年数による通常の減価償却 | 個人は定額法が原則。定率法を使うには「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」が必要 |
個人特有の論点として、減価償却は強制償却である点を押さえる。法人のように任意で償却を止めることはできず、償却しなかった年があってもその分は取り戻せない。赤字だから償却を止めておく、という処理はできない。
貸倒引当金
青色申告者は、年末の貸金(売掛金・受取手形・貸付金など)に対して一括評価の貸倒引当金を設定できる。繰入限度額は年末の貸金の帳簿価額の合計額 × 5.5%(金融業は3.3%)である。前年に繰り入れた金額は当年に全額戻入れする洗替え方式で処理する。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 330,000 | 貸倒引当金戻入額 | 330,000 | 前年繰入額の戻入れ(洗替え) |
| 貸倒引当金繰入額 | 418,000 | 貸倒引当金 | 418,000 | 期末貸金 7,600,000 × 5.5% |
純損失の繰越しと繰戻し還付
純損失の繰越控除(3年)
- 青色申告者は、損失が生じた年の翌年以後3年間にわたり所得から控除できる
- 損失の生じた年に青色申告書を期限内に提出していること
- その後の年も連続して確定申告書を提出していること(所得がなくても出す)
- 申告書第四表(損失申告用)を使う
- 白色申告者は変動所得の損失と被災事業用資産の損失に限られる
純損失の繰戻し還付(前年分)
- 前年分に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を受ける
- 損失の年と前年の両方が青色申告であること
- 損失の年の確定申告書を期限内に提出すること
- 「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を確定申告書と同時に提出する
- 還付されるのは所得税のみ。住民税は繰戻しがなく、翌年以降の繰越しで調整される
- 還付請求は税務署の調査対象になりやすい点を事前に伝える
開業初年度の注意点
- STEP1 届出書を期限管理表に落とす
個人事業の開業・廃業等届出書(1か月以内)、所得税の青色申告承認申請書(開業から2か月以内。1月1日から1月15日までの開業はその年3月15日)、青色事業専従者給与に関する届出書(2か月以内)、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書。青色申告承認申請書の期限徒過は取り返しがつかないため、開業相談の当日にその場で書かせる。 - STEP2 開業前の支出を開業費に集める
開業準備のために特別に支出した費用は繰延資産(開業費)として資産計上し、任意償却する。任意償却なので、黒字が出た年にまとめて償却できる。名刺・ホームページ制作費・研修費・内装費のうち資産にならないもの・打合せ費用などを、開業日前のレシートから拾う。仕入代金や10万円以上の資産、家賃・水道光熱費など経常的な費用は開業費にならない。 - STEP3 家事用資産の事業転用を計算する
自家用車や自宅パソコンを事業に使い始めた場合、取得価額から非業務期間の減価の額を控除した金額を取得価額とみなして償却を始める。非業務期間の減価は、法定耐用年数を1.5倍した年数に対応する旧定額法の償却率で、経過年数分を計算する。中古車を事業用にする相談は頻出なので計算パターンを持っておく。 - STEP4 消費税の立ち位置を決める
開業初年度は基準期間がないため原則として免税だが、インボイス発行事業者の登録をすれば登録日から課税事業者になる。取引先が事業者中心か消費者中心かで判断が分かれる。登録するなら簡易課税の選択、2割特例・3割特例の適用可否まで一体で検討する。 - STEP5 社会保険と共済を案内する
国民健康保険・国民年金への切替(退職から14日以内)、国民年金の付加保険料、小規模企業共済(掛金全額が小規模企業共済等掛金控除)、iDeCo、経営セーフティ共済(倒産防止共済。必要経費算入だが解約時に収入となる点と、令和6年10月以後の再加入制限に注意)。 - STEP6 帳簿と証憑の型を決める
会計ソフトの選定、銀行口座とクレジットカードの事業用分離、電子取引データの保存方法(ファイル名規則と保存場所)、レシートの保管方法。ここを開業時に固めるかどうかで、その後の毎年の作業時間が変わる。
4. 不動産所得
事業的規模の判定と効果
不動産の貸付けが事業として行われているかどうかは、原則として5棟10室基準で判定する。独立家屋なら5棟以上、アパート・マンションなど独立した室数なら10室以上であれば、特に反証がない限り事業的規模として扱う。土地の貸付けについては、おおむね5件を1室に相当するものとして換算する取扱いがある。
| 項目 | 事業的規模(5棟10室以上) | 事業的規模でない |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 65万円・55万円の適用あり | 10万円のみ |
| 青色事業専従者給与・事業専従者控除 | 適用あり | 適用なし |
| 賃貸用固定資産の取壊し・除却損 | 全額を必要経費に算入 | その年の不動産所得の金額を限度に算入(引ききれない部分は切捨て) |
| 貸倒損失 | 回収不能となった年の必要経費 | 収入計上した年に遡って、その収入がなかったものとして更正の請求 |
| 貸倒引当金 | 設定できる | 設定できない |
| 延納に係る利子税 | 不動産所得に対応する部分を必要経費に算入できる | 同左 |
必要経費
- 固定資産税・都市計画税(賦課決定のあった年分。原則として納期到来分または実際納付分でも可)
- 損害保険料(賃貸物件の火災保険。長期一括払いは期間対応で按分)
- 減価償却費(建物、建物附属設備、構築物。中古取得は簡便法による耐用年数)
- 修繕費(資本的支出との区分は後述)
- 管理会社への管理手数料、共用部分の水道光熱費、清掃費
- 入居者募集の広告宣伝費、仲介手数料
- 借入金の利息(元本は経費にならない。返済予定表で元利を分ける)
- 立退料(賃貸継続のためのものは必要経費。譲渡のためのものは譲渡費用)
- 税理士報酬、不動産関係の書籍代、物件視察の旅費交通費
土地等を取得するための負債の利子の損益通算制限
不動産所得に損失が生じたとき、その損失のうち土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、他の所得と損益通算できない。損失額の全部が通算できなくなるのではなく、土地取得分の利子を限度として制限される。
計算例を示す。物件取得価額8,000万円(建物3,000万円、土地5,000万円)、借入金6,000万円、当年の支払利息120万円、不動産所得の損失が180万円の場合を考える。借入金6,000万円のうち3,000万円が建物、残り3,000万円が土地に充てられたものとする。土地対応の利子は120万円 × 3,000万円 ÷ 6,000万円 = 60万円。損失180万円のうち60万円は損益通算できず、残り120万円だけが他の所得と通算できる。
修繕費と資本的支出
修繕費(その年の必要経費)
- 通常の維持管理、原状回復のための支出
- 退去後のクロス張替え、畳表替え、ハウスクリーニング
- 壊れた給湯器を同等品に交換
- 外壁の塗り替え(従来と同程度のもの)
資本的支出(資産計上して償却)
- 価値を高める、使用可能期間を延ばす支出
- 非常階段や避難設備の新設
- 用途変更のための模様替え(事務所を店舗に)
- グレードを上げた設備への取替え(差額部分)
| 順番 | 形式基準 | 判定 |
|---|---|---|
| 1 | 1件20万円未満の支出 | 修繕費としてよい |
| 2 | おおむね3年以内の周期で行われる支出 | 修繕費としてよい |
| 3 | 60万円未満、または前年末取得価額のおおむね10%以下 | 修繕費としてよい |
| 4 | 上記でも区分が不明な場合 | 支出額の30%と前年末取得価額の10%のいずれか少ない額を修繕費、残りを資本的支出とする(7対3基準。継続適用が条件) |
敷金・礼金の収入計上時期
| 受領するもの | 取扱い | 収入計上時期 |
|---|---|---|
| 礼金・権利金 | 返還を要しないので収入 | 原則として貸付けに係る契約の効力発生日(引渡しを要するものは引渡日) |
| 更新料・名義書換料 | 返還を要しないので収入 | 契約の効力発生日 |
| 敷金・保証金(全額返還するもの) | 預り金。収入ではない | 貸借対照表の負債に計上したまま |
| 敷金・保証金(一部返還不要のもの) | 返還を要しない部分が収入 | 返還不要が確定した日(契約時に確定していれば契約時、退去時に確定するなら退去時) |
| 家賃・共益費 | 収入 | 契約で支払日が定められていればその支払日。前受家賃も当年分の支払日到来分は収入 |
| 滞納家賃 | 収入 | 支払日が到来していれば未収でも収入計上する |
青色申告特別控除との関係
不動産所得と事業所得の両方がある場合、青色申告特別控除はまず不動産所得から控除し、控除しきれない金額を事業所得から控除する。この順序は決まっており、有利選択はできない。不動産所得が事業的規模でない場合、65万円・55万円の控除は事業所得がなければ受けられず、10万円が上限になる。ただし、事業所得があって65万円の要件を満たしていれば、その控除を不動産所得から先に引くことになる。
5. 給与所得者の還付申告
還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できる。2月16日を待つ必要はなく、1月中に出せば還付も早い。繁忙期の平準化のため、還付申告だけの顧問先は1月に処理してしまうのが事務所運営の基本方針になる。
医療費控除とセルフメディケーション税制
| 項目 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 控除額 | 支払医療費 − 保険金等で補填される金額 − (10万円 または 総所得金額等の5%のいずれか低い方) | 対象医薬品の購入費 − 保険金等で補填される金額 − 12,000円 |
| 上限 | 200万円 | 88,000円 |
| 対象 | 治療のための診療費、治療目的の医薬品、通院の交通費(公共交通機関)、入院時の部屋代・食事代、治療のための歯列矯正、介護保険サービスの一部 | スイッチOTC医薬品等の対象医薬品。レシートに対象品である旨の表示がある |
| 対象外 | 健康診断・人間ドック(重大な疾病が見つかり治療した場合は対象)、予防接種、美容目的、自家用車のガソリン代・駐車場代、健康食品 | 対象医薬品以外の一般用医薬品 |
| 追加要件 | なし | 健康診断、予防接種、がん検診など一定の取組を行っていること |
| 添付書類 | 医療費控除の明細書。医療保険者の医療費通知を添付すれば明細の記入を省略できる | セルフメディケーション税制の明細書。取組を証明する書類は保存(5年) |
ふるさと納税とワンストップ特例
ワンストップ特例は、確定申告をしない給与所得者が、寄附先の自治体に申請書を出すことで、確定申告なしに住民税から控除を受けられる制度である。次のいずれかに該当するとワンストップ特例は使えなくなる。
- 確定申告または住民税申告をする場合(医療費控除、住宅ローン控除の初年度、副業の申告、譲渡所得の申告など理由を問わない)
- 1年間の寄附先が6団体以上になった場合(同じ自治体への複数回の寄附は1団体と数える)
- 申請書を寄附した年の翌年1月10日必着で提出できなかった場合
- 申請後に住所や氏名が変わり、変更届出書を1月10日までに出していない場合
住宅ローン控除の初年度
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初年度 | 確定申告が必要。給与所得者でも年末調整では処理できない |
| 2年目以降 | 税務署から送られる「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関の年末残高等証明書を勤務先に提出して年末調整で処理する |
| 必要書類 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書、建物・土地の登記事項証明書、売買契約書または工事請負契約書の写し、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、本人確認書類。省エネ基準への適合が要件となる住宅は、住宅性能証明書等 |
| 適用期限 | 令和12年(2030年)12月31日までに居住の用に供した場合 |
| 既存住宅(中古) | 借入限度額は最大4,500万円、控除期間13年 |
| 床面積要件 | 令和8年(2026年)1月1日以後は50平方メートル以上から40平方メートル以上に緩和。ただし合計所得金額の要件に注意する |
特定支出控除
給与所得者が職務のために自ら支出した費用が、給与所得控除額の2分の1を超える場合、その超える部分を給与所得控除額に加算できる。対象は通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費。合計65万円が上限)である。
6. 譲渡所得
不動産の長期・短期の判定と税率
土地建物等の譲渡は申告分離課税で、長期と短期の判定は譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで行う。実際の所有年数が5年を超えていても、1月1日時点で5年以下なら短期になる。年末に売るか年明けに売るかで税率が倍近く変わるため、相談段階での確認が最重要になる。
| 区分 | 判定 | 税率(令和8年分) | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日で所有期間5年以下 | 39.63% | 所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9% |
| 長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日で所有期間5年超 | 20.315% | 所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5% |
| 居住用財産の軽減税率(10年超所有) | 譲渡した年の1月1日で所有期間10年超の居住用財産 | 課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%、6,000万円超の部分20.315% | 6,000万円以下は所得税10% + 復興0.21% + 住民税4% |
居住用財産の特例
| 特例 | 内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 居住用財産の譲渡益から3,000万円を控除 | 自己が居住していた家屋とその敷地。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡。前年・前々年に同特例等を受けていないこと。配偶者や親族等への譲渡でないこと |
| 10年超所有の軽減税率 | 3,000万円控除後の課税譲渡所得に軽減税率を適用 | 譲渡年1月1日で家屋・敷地とも所有期間10年超。3,000万円特別控除と併用できる |
| 特定居住用財産の買換え特例 | 買換えにより譲渡益への課税を将来に繰り延べる | 所有期間10年超、居住期間10年以上、譲渡対価1億円以下など。3,000万円控除・軽減税率とは選択(併用不可) ※適用期限は最新の情報を要確認 |
| 被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除 | 相続した旧耐震の空き家を耐震改修または取壊しのうえ譲渡した場合 | 昭和56年5月31日以前建築、相続開始直前に被相続人が一人暮らし、相続時から譲渡時まで空き家、譲渡対価1億円以下、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。相続人が3人以上の場合の控除額は1人2,000万円 |
取得費と譲渡費用
取得費
- 購入代金、建築代金、購入手数料、登録免許税、不動産取得税、印紙税
- 建物は所有期間中の減価償却費相当額を控除する(非業務用は法定耐用年数の1.5倍の年数による旧定額法相当)
- 取得費が不明、または取得費が譲渡収入の5%に満たない場合は、概算取得費として譲渡収入金額の5%を取得費にできる
- 相続税の取得費加算(相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡)
譲渡費用
- 仲介手数料、売主負担の印紙税
- 貸家を売るために支払った立退料
- 建物を取り壊して土地を売るための取壊し費用と建物の損失額
- より有利な条件で売るために契約解除した際の違約金
- 借地権を売るときの名義書換料
- 測量費、分筆費用
- 対象外:修繕費、固定資産税、抵当権抹消費用、引越費用、遺産分割のための費用
株式等の譲渡
| 口座区分 | 源泉徴収 | 申告の要否 | 実務のポイント |
|---|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | あり(20.315%) | 申告不要を選択できる | 年間取引報告書1枚で完結。損失がある年や複数口座の通算をする年は申告した方が有利になることがある |
| 特定口座(源泉徴収なし) | なし | 申告が必要 | 年間取引報告書の金額をそのまま転記する |
| 一般口座 | なし | 申告が必要 | 取得価額を自分で計算する。取引報告書の積上げが必要 |
| NISA口座 | 非課税 | 申告不要 | 損失はないものとされ、他の口座の利益と通算できない |
上場株式等の譲渡損失は、確定申告により上場株式等の配当所得等と損益通算でき、引ききれない損失は翌年以後3年間繰り越せる。繰越しの適用を受けるには、損失の年に確定申告をし、その後も取引がない年を含めて連続して申告書を提出する必要がある。1年でも出し忘れると繰越しが切れる。
暗号資産
暗号資産の取引による所得は、従来は原則として雑所得(総合課税)で、最高税率は住民税と合わせて55%、損失の繰越しもできなかった。この取扱いが改正され、申告分離課税(約20%=所得税15%と住民税5%)とし、損失は3年間繰り越せることとされた。
7. 令和8年分の所得控除・税額控除
令和8年(2026年)分は、基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件がまとめて動いた年である。年末調整で処理済みの内容と重複するが、確定申告では年末調整の誤りを直す場面が出てくるので、金額を手元に置いておく。
人的控除
| 控除 | 令和8年(2026年)分の内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 本則62万円。令和8年・9年分は特例加算があり、合計所得金額489万円以下の人に最大42万円が上乗せされ、基礎控除額は最大104万円になる。上乗せ額は合計所得金額の区分に応じて段階的に減る | 令和10年分以後は本則62万円に戻る予定。翌々年の税負担が増えることを事業主に説明しておく |
| 給与所得控除 | 最低保障額が65万円から74万円に引き上げられた | 基礎控除の特例加算と合わせ、令和8年・9年の課税最低限は178万円になる |
| 配偶者控除 | 38万円(老人控除対象配偶者は48万円)。配偶者の合計所得金額62万円以下。本人の合計所得金額900万円以下が満額、900万円超で逓減し1,000万円超で不適用 | 所得要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられた |
| 配偶者特別控除 | 配偶者の合計所得金額62万円超133万円以下 | 下限が58万円超から62万円超に変わった |
| 扶養控除 | 一般38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円、老人扶養親族48万円、同居老親等58万円。扶養親族の合計所得金額62万円以下 | 所得要件が62万円以下に引き上げられた |
| 特定親族特別控除 | 19歳以上23歳未満で合計所得金額62万円超123万円以下の親族について、最大63万円 | 「源泉控除対象親族」として月次の給与計算にも反映される点が従来と異なる。年末調整での処理漏れを確定申告で拾う |
| 障害者控除 | 27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円 | 扶養控除の対象にならない16歳未満の扶養親族についても適用がある |
| 寡婦控除・ひとり親控除 | 寡婦27万円、ひとり親35万円 | いずれも合計所得金額500万円以下。事実上婚姻関係と同様の事情にある者がいないこと |
| 勤労学生控除 | 27万円。合計所得金額89万円以下 | 所得要件が85万円以下から89万円以下に引き上げられた |
物的控除
| 控除 | 控除額 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 社会保険料控除 | 支払額の全額 | 生計を一にする親族の国民年金・国保を本人が払っていれば本人の控除になる。国民年金は控除証明書が必須。過年度分をまとめて払った年は全額がその年の控除 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 支払額の全額 | 小規模企業共済(月7万円が上限)、iDeCo、心身障害者扶養共済。個人事業主に対する最も有効な節税提案の1つ |
| 生命保険料控除 | 新契約は一般・介護医療・個人年金の各4万円、合計12万円が限度。令和8年・9年分は、23歳未満の扶養親族がいる場合に一般生命保険料控除の限度額が6万円に引き上げられる(合計限度額12万円は据置き) | 子育て特例は限度額の枠の使い方が変わるだけで、合計上限は増えない。介護医療・個人年金で既に枠を使い切っている人には効果がない |
| 地震保険料控除 | 最高5万円(旧長期損害保険料は最高1万5千円、合計5万円が限度) | 賃貸物件分を必要経費にしている場合、その部分は控除にできない |
| 医療費控除 | 最高200万円 | セルフメディケーション税制との選択 |
| 寄附金控除 | (寄附金の額と総所得金額等の40%相当額のいずれか低い方)− 2,000円 | 政党等・認定NPO法人等・公益社団法人等への寄附は税額控除との選択ができる。有利判定が必要 |
| 雑損控除 | 差引損失額 − 総所得金額等の10%、または災害関連支出 − 5万円のいずれか多い方 | 災害・盗難・横領による損失に限る。詐欺・恐喝は対象外。3年間繰り越せる |
税額控除と復興特別所得税
- 配当控除(課税総所得金額1,000万円以下の部分は配当所得の10%、超える部分は5%)
- 住宅借入金等特別控除、住宅耐震改修特別控除、住宅特定改修特別税額控除、認定住宅新築等特別税額控除
- 政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除(寄附金控除との選択)
- 外国税額控除、災害減免法による軽減免除(雑損控除との選択)
- 復興特別所得税は令和8年分は基準所得税額の2.1%。令和9年(2027年)分以後は1.1%に引き下げられ、これに代わって防衛特別所得税(所得税額の1%)が課される
8. 住民税・国民健康保険料への波及
個人の顧問先に対して最も価値のある説明は、所得税の税額そのものよりその所得が翌年度の住民税と国民健康保険料にいくら跳ね返るかである。所得税は申告と同時に納めるが、住民税は翌年6月から、国保料は翌年度から請求が来る。時差があるため、事業主の資金繰り感覚から抜け落ちやすい。
3つの負担の性質
| 負担 | 計算のしかた | 負担が発生する時期 |
|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 課税所得に5%から45%の超過累進税率。令和8年分は所得税額に2.1%の復興特別所得税 | 申告と同時(翌年3月15日または振替日) |
| 個人住民税 | 所得割は課税所得に対して一律10%(市町村6%、道府県4%)。これに均等割(森林環境税を含めておおむね年5,000円程度) | 翌年6月から。普通徴収は6月・8月・10月・翌年1月の4回払い |
| 国民健康保険料(税) | 所得割は「総所得金額等 − 基礎控除43万円」に市区町村ごとの料率。医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40歳以上65歳未満)の合計でおおむね10%から15%。これに均等割・平等割。世帯単位で賦課限度額あり | 翌年度(6月頃に決定通知、以後分割納付) |
| 国民年金保険料 | 所得に関係なく定額 | 毎月 |
数値例で説明する
事業所得が前年400万円から当年700万円に増えた個人事業主(40歳、国保加入、扶養は配偶者のみ、他に大きな所得控除なし)を例に、増加分300万円が生む負担を並べる。
| 負担 | 増加額の計算 | 金額 | 負担する時期 |
|---|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 増加した課税所得300万円が税率20%の区分に乗る場合、300万円 × 20% × 1.021 | 約61万円 | 令和9年3月(申告時) |
| 個人住民税(所得割) | 300万円 × 10% | 30万円 | 令和9年6月から令和10年5月 |
| 国民健康保険料(所得割) | 300万円 × 料率12%と仮定(自治体により異なる。賦課限度額に達すればそれ以上は増えない) | 約36万円 | 令和9年度(6月頃から分割) |
| 予定納税 | 増えた所得税額をもとに翌年の予定納税基準額が算定され、7月と11月に3分の1ずつ | 所得税額の3分の2相当を前払い | 令和9年7月・11月 |
| 合計 | — | 約127万円(増えた所得の4割強) | — |
9. 予定納税と減額申請
予定納税のしくみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 予定納税基準額が15万円以上の人 |
| 予定納税基準額 | 前年分の課税総所得金額に係る所得税額(復興特別所得税を含む)から源泉徴収税額を差し引いた金額。原則として譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得は除いて計算する |
| 通知 | その年6月15日までに税務署から「予定納税額の通知書」が送付される |
| 第1期分 | 予定納税基準額の3分の1。納期は7月1日から7月31日 |
| 第2期分 | 予定納税基準額の3分の1。納期は11月1日から11月30日 |
| 精算 | 翌年の確定申告で年税額から控除する。納めすぎは還付される |
減額申請
| 申請の区分 | 見積りの基準日 | 提出期限 | 減額できる対象 |
|---|---|---|---|
| 第1期分・第2期分の減額 | その年6月30日の現況 | 7月15日 | 第1期分と第2期分の両方 |
| 第2期分のみの減額 | その年10月31日の現況 | 11月15日 | 第2期分のみ |
減額が認められる理由は、その年の申告納税見積額が予定納税基準額に満たないと見込まれる場合である。具体的には次のようなケースが該当する。
- 廃業、休業、失業した
- 売上の減少、大口取引先の喪失、災害・盗難・横領による損失で業績が悪化した
- 多額の設備投資を行い減価償却費が増えた
- 本人・家族の医療費が多額にかかり、医療費控除が増える見込みである
- 扶養親族が増えた、配偶者控除の適用を受けることになった
- 前年に臨時的な所得があり、その年は見込まれない
提出書類は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」で、その年の申告納税見積額の計算根拠として、6月30日または10月31日までの損益計算書と年間見込みの計算資料を添付する。承認されると税務署から通知が届く。承認前に納期限が来る場合でも、申請中であれば結論を待つのが通常の扱いになるが、却下されると延滞税が生じる可能性があるため、税務署の担当部門に確認しながら進める。
10. 個人から法人へ(法人成り)
判断材料
| 観点 | 個人事業 | 法人 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 税率構造 | 所得税5%から45%の超過累進 + 住民税10% | 中小法人は年800万円以下の所得15%(適用期限は令和9年3月31日までに開始する事業年度)、800万円超は23.20% | 所得が800万円前後で逆転が起きやすい。ただし1年だけの数字で決めない |
| 事業主の報酬 | 事業主本人への給与は必要経費にならない | 役員報酬は損金。本人は給与所得控除を受けられる | 法人所得を圧縮しつつ給与所得控除も使えるのが最大のメリット |
| 所得の分散 | 青色事業専従者給与(届出額の範囲、専従要件あり) | 家族を役員・従業員にして報酬を支払える(不相当に高額な部分は損金不算入) | 専従要件がない分、法人の方が柔軟 |
| 社会保険 | 常時5人未満の個人事業所は任意適用(一部業種は5人以上でも任意) | 社長1人でも強制加入 | 会社負担分がまるごと増える。法人成りの最大のコスト |
| 赤字の場合 | 純損失を3年繰越し。所得ゼロなら住民税所得割もゼロ | 欠損金を10年繰越し。ただし赤字でも均等割が年7万円程度かかる | 赤字が続く見込みなら法人は不利 |
| 決算期 | 12月31日に固定 | 任意に設定できる | 繁忙期や在庫の多い時期を避けられる |
| 消費税 | 基準期間の課税売上高等で判定 | 新設法人は基準期間がないため、資本金1,000万円未満なら第1期は原則免税 | インボイス登録をすると免税にならない。後述 |
| 信用力・採用 | 取引先によっては法人でないと口座を開けない | 一般に高い | 取引先の要請が動機になるケースが多い |
| 事業承継 | 個々の資産を相続・贈与 | 株式の承継。事業承継税制の特例(特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日) | 承継を視野に入れるなら法人化が扱いやすい |
| コスト | ほぼゼロ | 設立費用(株式会社でおおむね25万円前後、合同会社はより低額)、毎年の決算・申告コスト、社会保険の事務 | 年間の追加コストを織り込んで比較する |
消費税の観点
法人成りの消費税メリットは、個人と法人が別人格であるため、法人には基準期間がなく、第1期は原則として免税事業者になる点にあった。ただし、インボイス制度の下ではこの前提が崩れている。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 第1期の免税 | 資本金または出資の額が1,000万円未満であれば、基準期間がないため原則として免税 |
| 第2期の判定 | 特定期間(前事業年度開始の日から6か月)の課税売上高と給与等支払額のいずれもが1,000万円を超える場合に課税事業者になる。片方が1,000万円以下なら免税を維持できる |
| 特定新規設立法人 | 他の者に支配され、その者の課税売上高が5億円を超えるなどの場合は、資本金1,000万円未満でも免税にならない |
| インボイス登録との関係 | インボイス発行事業者の登録を受けると、登録日から課税事業者になる。免税のメリットは消える |
| 個人の2割特例 | 令和8年(2026年)9月30日の属する課税期間をもって終了する。個人事業者は令和8年分が最後である |
| 個人の3割特例 | 令和9年(2027年)分と令和10年(2028年)分の2年間、個人事業者のみが対象。基準期間・特定期間の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス発行事業者であることが要件。納付税額は売上税額の3割 |
| 仕入側の経過措置 | 免税事業者からの課税仕入れについて控除できる割合は、2026年10月1日から80%が70%に下がる(2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%、2031年10月1日以後は0%) |
手続一覧
| 区分 | 手続 | 期限 |
|---|---|---|
| 法人設立 | 定款作成・公証人の認証(株式会社)、出資の払込み、設立登記 | 登記申請日が設立日になる |
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立の日から2か月以内 |
| 税務署 | 青色申告の承認申請書 | 設立の日から3か月を経過した日と最初の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時(提出月の翌月支払分から適用) |
| 税務署 | 消費税課税事業者選択届出書、簡易課税制度選択届出書、インボイス登録申請 | 適用を受けようとする課税期間の開始前など。新設法人は設立事業年度中でよい特例がある |
| 都道府県・市町村 | 法人設立届出書 | 各自治体の条例による(おおむね設立から1か月から2か月以内) |
| 個人側 | 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業) | 廃業の日から1か月以内 |
| 個人側 | 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 取りやめようとする年の翌年3月15日まで |
| 個人側 | 事業廃止届出書(消費税) | 事由が生じた場合速やかに |
| 個人側 | 給与支払事務所等の廃止届出書 | 廃止の日から1か月以内 |
| 個人側 | 予定納税額の減額申請(廃業により所得が減る場合) | 7月15日または11月15日 |
| 資産の引継ぎ | 棚卸資産・固定資産の売買契約書、賃貸借契約書(不動産を個人所有のまま貸す場合) | 設立後速やかに。売買は消費税の課税取引になる |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届、被保険者資格取得届 | 事実発生から5日以内 |
| 労働保険 | 労働保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届 | 成立から10日以内など |
| その他 | 許認可の承継または再取得、銀行口座・リース・保険・賃貸借の名義変更、取引先への通知 | 設立前から段取りする |
11. 確定申告期の事務所運営
受付から提出までのフロー
- STEP1 12月 事前準備
顧問先リストを申告区分(事業、不動産、還付のみ、譲渡、贈与)で分類し、難易度と想定工数を入れる。担当者を割り当て、資料依頼書とチェックシートを発送する。前年の申告書を見て、今年変わりそうな論点(扶養の異動、物件の売買、住宅取得、専従者の変更)に付箋を立てておく。 - STEP2 1月 還付申告と資料回収
還付申告のみの先は1月中に処理して提出まで終わらせる。事業所得・不動産所得の先には資料回収の督促を入れる。1月31日が法定調書・給与支払報告書・償却資産申告の期限であり、この山と重ならないよう順番を決める。 - STEP3 2月上旬 入力と1次確認
資料到着順に入力する。入力完了時に担当者が自己チェックリストで1次確認を行い、前年比較表を出力して増減理由を書き込む。理由が書けない増減は、必ず顧問先に確認する。 - STEP4 2月中旬から3月上旬 レビューと説明
入力者と別の職員が2次チェックを行う。所長または管理者が最終確認。顧問先に申告書案を提示し、税額・納付方法・納付期限を説明して同意を得る。電子申告の利用同意(電子署名または利用者識別番号の確認)を取る。 - STEP5 3月中旬 送信と納付案内
e-Taxで送信し、受信通知(メッセージボックス)を必ず開いて受付結果を確認する。送信しただけで終わらせない。納付書または振替納税の案内、納付期限、消費税の期限(3月31日)を書面で渡す。 - STEP6 4月 振替確認と振り返り
振替日の翌営業日に、振替不能の連絡が来ていないかを確認する。申告期の振り返りを行い、遅れた原因、追加で発生した論点、翌年に前倒しできる作業を記録に残す。この記録が翌年の段取りの元になる。
資料回収
資料回収は依頼書の書き方で7割が決まる。「必要書類をお持ちください」では集まらない。顧問先の属性ごとに、実物の名前で列挙したチェックシートを作る。
| 区分 | 依頼する資料(実物の名称で書く) |
|---|---|
| 共通 | マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)の写し、還付口座の通帳の見開き、前年の申告書控え、税務署から届いた封筒一式 |
| 事業所得 | 売上帳・請求書控え、通帳全ページ、クレジットカード明細、経費のレシート・領収書、借入金の返済予定表、リース契約書、棚卸表(12月31日現在)、固定資産の売買契約書・納品書、専従者を含む給与台帳と源泉徴収簿 |
| 不動産所得 | 賃貸借契約書(新規・更新分)、管理会社の年間収支報告書、固定資産税納税通知書、火災保険の証券、借入金の返済予定表、修繕の見積書と請求書の内訳、退去精算書 |
| 所得控除 | 国民年金保険料控除証明書、国民健康保険の年間納付額のお知らせ、生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、小規模企業共済の掛金払込証明書、iDeCoの掛金払込証明書、医療費通知と領収書、寄附金受領証明書(ふるさと納税を含む) |
| 譲渡 | 売買契約書(売却時・購入時の両方)、仲介手数料の領収書、登記事項証明書、測量・解体の請求書、特定口座年間取引報告書、暗号資産の年間取引報告書 |
進捗管理表
進捗は工程ごとの列で管理する。「未着手・作業中・完了」の3段階では、どこで止まっているかが分からない。全職員が同じ表を見て、朝礼で滞留を潰す。
| 顧客 | 区分 | 担当 | 資料依頼 | 資料到着 | 入力 | 1次 | 2次 | 説明・同意 | 送信 | 受信確認 | 納付案内 | 振替確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A(製造業) | 事業・消費税 | 甲 | 12/10 | 1/20 | 2/3 | 2/4 | 2/6 | 2/10 | 2/12 | 2/12 | 2/12 | — |
| B(アパート2棟) | 不動産 | 乙 | 12/10 | 2/18 | — | — | — | — | — | — | — | — |
| C(給与・医療費) | 還付 | 丙 | 12/10 | 1/8 | 1/9 | 1/9 | 1/10 | 1/12 | 1/12 | 1/12 | — | — |
| D(自宅売却) | 譲渡 | 甲 | 12/10 | 1/25 | 2/20 | 2/21 | — | — | — | — | — | — |
繁忙期の品質確保と二重チェック
前倒しできる作業
- 還付申告のみの先を1月中に完了させる
- 11月から12月の月次を12月中に締める
- 減価償却の当年分を12月に計算しておく
- 資料依頼書を12月上旬に発送する
- 譲渡・相続がある先の資料収集を年内に始める
- 電子申告の利用者識別番号・委任状を年内に整える
二重チェックの型
- 入力者と確認者を必ず分ける。自分の入力は自分で見つけられない
- 確認者は申告書の数字から原始資料へ遡る(申告書から証憑への逆方向)
- 前年比較表を必ず出し、増減の理由を全項目書かせる
- 納税額が前年から大きく動いた先は所長が確認する
- チェックした人の氏名と日付を記録に残す
- 疲労が溜まる3月第2週は、新規の複雑案件を入れない
12. 個人確定申告のチェックリスト
受付・基礎情報
- 本人確認書類とマイナンバーを確認し、写しを保管したか
- 住所・氏名・世帯構成に前年からの変更がないか本人に確認したか
- 還付口座の名義が本人であり、口座番号を通帳原本または写しで確認したか(旧姓・屋号名義の口座は還付できない)
- 前年の申告書控えと突き合わせ、今年なくなった所得・新しく増えた所得を洗い出したか
- 税務署から届いた書類(予定納税額の通知、お知らせ)をすべて回収したか
- 資料はお預り証を発行して受領したか
所得の網羅性
- 源泉徴収票をすべて回収したか(年の途中で転職した場合は前職分も)
- 公的年金等の源泉徴収票、企業年金・個人年金の支払通知を確認したか
- 副業・単発の報酬、原稿料、講演料、アフィリエイト収入の申告漏れがないか
- 特定口座年間取引報告書、一般口座の取引、配当金の支払通知書を確認したか
- 暗号資産、FX、太陽光の売電収入、フリマアプリの継続的な販売がないか聞き取ったか
- 生命保険の満期金・解約返戻金、損害保険の満期金がないか(一時所得)
- 不動産の売却、株式の売却、ゴルフ会員権の譲渡がないか
- 贈与を受けていないか(贈与税申告の要否と、相続時精算課税の選択)
事業所得・不動産所得
- 期末棚卸高を実地棚卸に基づいて計上したか
- 売掛金・買掛金・未払金の期ズレを確認したか(12月納品分の売上計上漏れ)
- 家事按分の割合を按分計算書で説明できるか、前年と変わっていないか
- 生活費・所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金を経費に入れていないか(事業主貸で処理)
- 固定資産の除却・売却を台帳に反映したか(除却損、譲渡所得の判定)
- 少額減価償却資産の特例は、取得日が2026年3月31日以前か4月1日以後かで判定額を分けたか(30万円未満と40万円未満)、年間300万円の限度内か
- 青色事業専従者給与が届出額の範囲内か、専従要件を満たすか、実際に支払われているか
- 専従者について配偶者控除・扶養控除を重複適用していないか
- 借入金の返済額を元本と利息に分け、利息のみを経費にしたか
- 不動産所得の事業的規模の判定(5棟10室)が今年も同じか
- 土地等を取得するための負債の利子による損益通算の制限を検討したか
- 修繕費と資本的支出の区分を工事内訳書で判定したか
- 礼金・更新料を収入計上し、敷金を預り金として区分したか
- 貸倒引当金の洗替え処理をしたか
所得控除・税額控除
- 令和8年分の改正後の金額(基礎控除、扶養等の所得要件62万円以下、配偶者特別控除62万円超133万円以下)で判定したか
- 特定親族特別控除(19歳以上23歳未満、合計所得62万円超123万円以下)の適用漏れがないか
- 生命保険料控除の子育て特例(23歳未満の扶養親族がいる場合の一般4万円から6万円)を反映したか
- 国民年金・国民健康保険料は控除証明書または納付額のお知らせで金額を確認したか。家族分を本人が払っている分を入れたか
- 小規模企業共済・iDeCoの掛金払込証明書を回収したか
- 医療費控除とセルフメディケーション税制の有利判定を行い、提出前に確定させたか
- ふるさと納税の件数を確認し、ワンストップ特例が無効になる場合はすべて寄附金控除に入力したか
- 住宅ローン控除の初年度に必要な添付書類がすべてそろっているか
- 住宅ローン控除と居住用財産の3,000万円特別控除等の重複適用禁止に抵触していないか
- 源泉徴収税額と予定納税額を正しく転記したか
提出前・提出後
- 前年比較表を出力し、増減の理由をすべて書き込んだか
- 入力者以外の職員が2次チェックを行い、記録を残したか
- 純損失・上場株式等の譲渡損失・雑損控除の繰越しがある場合、今年も申告書を提出して繰越しを継続したか
- 青色申告特別控除の要件(複式簿記、貸借対照表の添付、期限内申告、電子申告)を満たしているか
- 消費税の申告が必要な先を別リストで管理し、3月31日の期限を押さえたか
- 2割特例・簡易課税・原則課税の有利判定を行ったか(令和8年分が2割特例の最終年)
- e-Taxの受信通知を開き、受付日時と受付番号を確認して保存したか
- 納付方法・納付期限・振替日を書面で案内したか
- 翌年の予定納税の見込みを伝えたか
- 住民税・国民健康保険料への影響を金額で説明したか
- 申告書控え、決算書、添付資料一式を保存し、預かり資料を返却して受領印をもらったか
Q. 3月10日に「不動産を売っていた」と初めて聞かされた。期限に間に合わない場合はどうするか。
A. まず、居住用財産の3,000万円特別控除など、期限内申告が適用要件になっている特例に該当しないかを最優先で確認する。該当するなら、概算でも期限内に申告することを最優先し、後日修正申告または更正の請求で正す方針を本人に説明して同意を得る。該当しない場合でも、期限後申告になると無申告加算税と延滞税が生じるため、資料が不足していても合理的な見積りで期限内に提出する。取得費が不明なら概算取得費5%で仮計算し、後日実額の資料が出たら更正の請求(法定申告期限から5年)で取り戻す。いずれの場合も、判断の経緯と本人の同意を書面で残す。
Q. 顧問先から「所得税がゼロなのに、なぜ国民健康保険料がこんなに高いのか」と聞かれた。
A. 国民健康保険料の所得割は、総所得金額等から基礎控除相当額(43万円)だけを差し引いた金額に料率を掛けて計算する。所得税で使った扶養控除、生命保険料控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除は一切考慮されない。そのため、所得控除が積み上がって所得税がゼロになっていても、国保料はしっかりかかる。国保料を下げたいなら、所得控除ではなく総所得金額等そのものを下げる方向、つまり必要経費の適正な計上と青色申告特別控除(65万円)の確保が効く。この違いを最初に説明しておくと、翌年の問い合わせが減る。
- 合計所得金額
- 各種所得の金額の合計額(損益通算後、純損失等の繰越控除前)。扶養や配偶者控除の判定、基礎控除の特例加算の判定に使う。
- 総所得金額等
- 合計所得金額から純損失・雑損失等の繰越控除を差し引いた後の金額。医療費控除の5%基準、寄附金控除の40%基準、国民健康保険料の算定に使う。
- 課税総所得金額
- 総所得金額等から所得控除を差し引いた後の金額。税率をかける対象になる。
- 予定納税基準額
- 前年分の課税総所得金額に係る所得税額から源泉徴収税額を控除した金額。原則として譲渡所得・一時所得・雑所得等は除いて計算する。
