医療費控除の出し忘れや、退職して年末調整を受けていない年の所得税は、還付申告で5年さかのぼって取り戻せます。提出できるのは対象年の翌年1月1日から5年間で、3月15日の期限はありません。すでに申告書を出した年の分は「更正の請求」で直します。
この記事の結論
確定申告の義務がない会社員などは、使い忘れた控除を還付申告で5年分さかのぼって反映できます。すでに申告書を出した年は、更正の請求(原則として法定申告期限から5年以内)が手続きになります。
- 還付申告は対象年の翌年1月1日から5年間提出できる(令和3年分は2026年12月31日まで)
- 典型例は医療費控除の出し忘れ、年の途中の退職、扶養控除の付け忘れ、ワンストップ特例の無効、住宅ローン控除の初年度
- 申告は年分ごとに、その年の控除額と様式で計算する
- 所得税が戻ると、住民税も市区町村で再計算される
- 申告済みの年は更正の請求、税額が少なかった年は修正申告で直す
還付申告はいつまでできる?対象年の翌年1月1日から5年間
「医療費控除を出し忘れていた」「ふるさと納税のワンストップ特例が無効になっていたのに気づかなかった」と、確定申告の時期が過ぎてから気づく方は少なくありません。納めすぎた所得税は、還付申告で取り戻せます。
還付申告とは、確定申告の義務がない人(年末調整を受けた会社員など)が、控除を反映して納めすぎた所得税を返してもらうための申告です。提出できる期間は、対象となる年の翌年1月1日から5年間です。「3月15日まで」という期限は納税が必要な人の確定申告の話で、還付申告には当てはまりません。混み合う2〜3月を避けて、都合のよい時期に提出できます。
| 対象の年分 | 還付申告を提出できる期間 |
|---|---|
| 令和3年分 | 2026年12月31日まで |
| 令和4年分 | 2027年12月31日まで |
| 令和5年分 | 2028年12月31日まで |
| 令和6年分 | 2029年12月31日まで |
| 令和7年分 | 2026年1月1日から2030年12月31日まで |
期限を過ぎた年分は、さかのぼって還付を受けることができません。複数の年分に心当たりがある場合は、古い年分から順に手続きしましょう。
5年さかのぼれる典型例は?
いずれも「源泉徴収で税金は納めたが、使えるはずの控除を反映していない」というパターンです。次のような年がないか確認してみましょう。
| ケース | 確認するポイント | 主な書類 |
|---|---|---|
| 医療費控除・セルフメディケーション税制の出し忘れ | 家族の分も合算できる。医療費控除は支払った医療費から保険金などで補填された額と10万円(総所得金額等が200万円未満なら5%)を差し引いた額 | 医療費控除の明細書、医療費通知 |
| 年の途中で退職し、年末調整を受けていない | 再就職せずに年を越した場合は、納めすぎになっている可能性が高い | 退職した会社の源泉徴収票 |
| 扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除などの付け忘れ | 令和7年分からは、19〜22歳の子の収入が多い場合に特定親族特別控除が使えることがある | 源泉徴収票、障害者手帳など |
| ふるさと納税のワンストップ特例が無効になっていた | 寄附先が6団体以上の年や、医療費控除などで確定申告をした年は、特例が使えず寄附金控除の申告が必要 | 寄附金受領証明書 |
| 住宅ローン控除の初年度の申告を忘れていた | 初年度は確定申告が必要。2年目以降は年末調整で受けられる | 借入金の年末残高証明書、登記事項証明書など |
| 生命保険料・地震保険料・iDeCoの掛金の証明書を出し忘れた | 年末調整に間に合わなかった証明書の分 | 各控除証明書 |
退職した年は特に漏れやすいケースです。年末調整を受けていないため、毎月の給与から差し引かれた源泉所得税が、基礎控除や社会保険料控除を反映しない状態で残っています。
過去の年分を計算するときの注意点は?
還付申告は、年分ごとに別々の申告書で行い、その年の法令と様式で計算します。近年は基礎控除や給与所得控除が毎年のように変わっているため、最新の年の金額で過去の年分を計算しないよう注意が必要です。
| 年分 | 基礎控除(所得税) | 給与所得控除の最低額 | 給与だけの人の所得税がかからない年収 |
|---|---|---|---|
| 令和6年分まで | 48万円(合計所得2,400万円以下) | 55万円 | 103万円 |
| 令和7年分 | 合計所得2,350万円以下なら58万〜95万円(132万円以下は95万円) | 65万円 | 160万円 |
| 令和8年分 | 合計所得2,350万円以下なら62万〜104万円(489万円以下は104万円) | 74万円(収入220万円以下) | 178万円 |
令和8年分の改正は2026年12月1日に施行され、その年の毎月の源泉徴収は改正前の税額表のまま行われ、12月の年末調整で精算されます。年末調整を受けずに年の途中で退職した人などは、確定申告や還付申告で精算することになります。改正の全体像は2026年度税制改正のポイントで確認できます。
無料ツール年分別の基礎控除を確認する令和7年分から令和10年分まで、合計所得に応じた基礎控除の額を年分ごとに確認できます。計算する
手続きの流れと還付額のイメージは?
- 対象の年分を決めるその年に申告書を出していないかを、申告書の控えやe-Taxの送信履歴で確認します。出していれば更正の請求になります。
- 書類をそろえる各年の源泉徴収票、医療費の明細や医療費通知、寄附金受領証明書などを年分ごとにまとめます。源泉徴収票をなくした場合は勤務先に再発行を依頼します。
- 年分ごとに申告書を作るその年の様式と控除額で計算します。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは過去の年分も作成できます(対応している年分は国税庁のサイトで確認してください)。
- 提出するe-Tax(マイナンバーカード方式など)か、書面で提出します。還付金を受け取る本人名義の口座を記入します。
- 還付金を受け取る還付金はおおむね申告から1か月〜1か月半ほどで指定口座に振り込まれます。住民税は、税務署から市区町村に情報が届き、あらためて計算されます。
医療費控除の申告では、領収書の提出は不要ですが、自宅で5年間保存する必要があります。健康保険の医療費通知(医療費のお知らせ)を添付すると、その分の明細の記入を省略できます。
計算例:医療費30万円を申告し忘れていた会社員
- 例えば、課税所得が300万円程度(所得税率10%)の会社員が、年300,000円の医療費を申告し忘れていた場合です(保険金などの補填はなし)。
- 医療費控除は、300,000円−100,000円=200,000円です。
- 所得税の還付は、200,000円×10%=20,000円です。
- 復興特別所得税の分は、20,000円×2.1%=420円です。
- 住民税(税率10%)も再計算され、200,000円×10%=20,000円の負担が減ります。
- 合わせて、20,420円+20,000円=40,420円が戻る計算です。
- 同じ状況が3年分あれば、40,420円×3=121,260円になります。
税率や控除額は個人の状況と年分で変わります。自分の税率を確かめるときは、所得税の速算表で計算すると目安がつかめます。
無料ツール所得税額を速算表で計算する課税所得を入れると、所得税と復興特別所得税の額の目安がわかります。計算する
すでに申告した年の分は「更正の請求」
その年の確定申告書をすでに提出している場合は、還付申告ではなく「更正の請求」という別の手続きになります。期限は原則として法定申告期限から5年以内で、計算誤りや控除漏れの事実を示す書類を添えて提出します。どちらに当たるか迷ったら、その年の申告書の控えがあるかどうかで判断するのが早道です。
| 手続き | 使う場面 | 期限 |
|---|---|---|
| 還付申告 | 申告をしていない年に、控除の反映などで税金が戻る | 対象年の翌年1月1日から5年間 |
| 更正の請求 | 申告済みの年に、計算誤りや控除漏れで税金を納めすぎていた | 原則として法定申告期限から5年以内 |
| 修正申告 | 申告済みの年に、税額が少なかった(売上の計上漏れなど) | 誤りに気づいたら、税務署から更正を受ける前に早めに |
個人事業主で売上の計上誤りがある場合は、還付ではなく修正申告が必要なこともあります。控除漏れで戻る税金と、計上漏れで追加になる税金が同じ年に混在している場合は、書類をそろえた段階で全体を確認してから動くと安全です。日頃から使える控除を押さえておきたい個人事業主の方は、個人事業主の節税メニューも参考になります。
還付申告・更正の請求・修正申告のどれに当たるかは、年分ごとの申告の状況で変わります。書類がそろった段階で、初回無料で確認できます。
無料で相談する札幌・北海道で還付申告をするときのポイント
提出先は「いま住んでいる所」の税務署
過去の年分の還付申告も、提出する時点の住所地を所轄する税務署に出します。札幌市内なら、北区・東区は札幌北、白石区・厚別区は札幌東、豊平区・南区・清田区は札幌南、西区・手稲区は札幌西の各税務署で、中央区は住所によって札幌中か札幌西の税務署です。
2026年7月10日からは、これらの税務署あての書類を郵送する場合は札幌業務センターあてになりました。e-Taxなら来署も郵送も必要ありません。年末年始(12月29日〜1月3日)は税務署の窓口が閉まるため、期限が12月31日の年分はe-Taxか郵送で早めに提出しましょう。
雪による住宅の損害は雑損控除の対象
雪の重みや落雪で住宅や家財が壊れた損害は、雑損控除の原因となる「災害」にあたります。控除額は「損害額+災害関連支出−保険金等」から総所得金額等の10%を引いた額と、「災害関連支出−保険金等」から5万円を引いた額のいずれか多い方です。被害の拡大や発生を防ぐための緊急の支出は、災害関連支出に含まれます。
申告していなかった年も、還付申告や更正の請求で5年さかのぼれます。修理の見積書や写真、保険金の支払通知を残しておきましょう。
よくある質問
還付申告をすると、税務署から問い合わせが来ることはありますか?
申告の内容について、確認の連絡や書類の提示を求められることはあります。医療費の領収書や各種の証明書を保存しておけば、落ち着いて対応できます。
医療費の領収書が残っていない年も申告できますか?
健康保険から届く医療費通知(医療費のお知らせ)に記載された分は、通知を添付して申告できます。通知に載っていない医療費は、医療機関や薬局に領収書の再発行などを相談し、支払いの事実を確認できるものをそろえます。
亡くなった親の分の還付も受けられますか?
亡くなった年の所得税は、相続人が準確定申告で精算します。過去の年分で還付申告をしていない年があれば、相続人が還付申告をして受け取れる場合があります。受け取った還付金は相続財産に含まれます。
還付申告をしたら、住民税の手続きも必要ですか?
原則として不要です。税務署に提出した申告の情報は市区町村に送られ、住民税があらためて計算されます。すでに納めた住民税が多かった場合は、市区町村から還付や減額の通知が届きます。
まとめ
納めすぎた所得税は、還付申告なら対象年の翌年1月1日から5年間、申告済みの年なら更正の請求で原則として法定申告期限から5年以内に取り戻せます。医療費控除の出し忘れや退職した年、ワンストップ特例の無効などに心当たりがあれば、年分ごとに書類をそろえ、その年の控除額で計算しましょう。5年分をまとめて手続きすると資料集めや計算に手間がかかるため、期限の近い古い年分から順に進めると安心です。
札幌の公認会計士・税理士事務所
還付申告・更正の請求のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)
