- カテゴリ:法人税
- 根拠:法法47
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
工場や店舗が火災にあい、保険金を受け取って建物や設備を買い直すことがあります。このとき、保険金でうまれた利益(保険差益)にそのまま課税されると、再建のための資金が目減りしてしまいます。そこで使えるのが圧縮記帳という制度です。税金がなくなるわけではなく、今は課税せず将来に先送りするしくみだと理解しておくと迷いません。
この計算式を3行でいうと
- 圧縮記帳は非課税ではなく「課税の繰延べ」。圧縮した分だけ代替資産の帳簿価額が下がり、将来の減価償却費が減って少しずつ課税されます。
- 圧縮限度額は、代替資産の取得価額と差引保険金の少ないほうに、保険差益の割合を掛けて計算します。
- 対象になるのは滅失・損壊した固定資産の保険金だけ。商品などの棚卸資産や休業補償の保険金には使えません。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
圧縮記帳(保険差益)
法法47★結果コピーリンク火災等で受け取った保険金で代替資産を取得したとき、保険差益のうち一定額を圧縮し課税を繰延べます。
| 保険差益(保険金−経費−簿価) | ¥28,000,000 |
| 差益割合 | 58.333% |
| 基礎 min(代替取得,保険金−経費) | ¥45,000,000 |
| 圧縮限度額 | ¥26,250,000 |
こんなときに使います
- 火災で工場や店舗が全焼し、火災保険金を受け取って建て替えるとき
- 台風・地震などの災害で機械設備が壊れ、保険金で新しい設備を買うとき
- 保険金で再建する前に、その年の税金がどれくらい繰り延べられるか事前に知りたいとき
- 保険会社から保険金の支払通知を受け取り、圧縮記帳の対象になるかを確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 保険金 | 火災や災害などで、滅失・損壊した資産について保険会社から受け取った保険金の額です。 | 保険会社からの保険金支払通知書で確認します。 |
| 滅失経費 | 焼け跡の取り壊し費用や後片付け費用など、資産が滅失・損壊したことに伴って支出した金額です。 | 解体業者などへの支払いの領収書・請求書で確認します。 |
| 被害直前の帳簿価額 | 焼失・損壊した資産の、被害を受ける直前の帳簿上の価額(未償却残高)です。 | 固定資産台帳の被害直前の残高欄で確認します。 |
| 代替資産の取得価額 | 滅失した資産に代わる新しい資産を取得するためにかかった金額です。 | 売買契約書や請求書の金額で確認します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 差引保険金を出す:受け取った保険金から、取り壊し費用など滅失に伴う経費を差し引きます。
- 保険差益を出す:差引保険金から、被害直前の帳簿価額を差し引きます。ここがそのままでは課税対象になる利益部分です。
- 圧縮限度額を出す:代替資産の取得価額と差引保険金のうち少ないほうに、保険差益の割合(保険差益÷差引保険金)を掛けます。
圧縮限度額の範囲内で代替資産の帳簿価額を減額し、同額を損金に算入することで、その事業年度の課税を抑えられます。減額した分だけ将来の減価償却費が減るため、利益は将来の年度で少しずつ課税される形になります。
具体例で確かめる
例1 工場が全焼し、保険金5,000万円を受け取ったケース
差引保険金 = 50,000,000円 - 2,000,000円 = 48,000,000円 保険差益 = 48,000,000円 - 20,000,000円(帳簿価額) = 28,000,000円 圧縮限度額 = min(45,000,000円, 48,000,000円) × 28,000,000円 / 48,000,000円
圧縮限度額26,250,000円 → 新工場の帳簿価額をこの分だけ減額できる
例2 一部だけ再取得した(代替資産のほうが少ない)ケース
差引保険金 = 30,000,000円 - 0円 = 30,000,000円 保険差益 = 30,000,000円 - 10,000,000円 = 20,000,000円 圧縮限度額 = min(15,000,000円, 30,000,000円) × 20,000,000円 / 30,000,000円
圧縮限度額10,000,000円 → 代替資産の取得価額そのものが圧縮の上限になる
例3 代替資産のほうが差引保険金より高いケース
差引保険金 = 20,000,000円 - 0円 = 20,000,000円 保険差益 = 20,000,000円 - 5,000,000円 = 15,000,000円 圧縮限度額 = min(30,000,000円, 20,000,000円) × 15,000,000円 / 20,000,000円
圧縮限度額15,000,000円 → 保険差益の全額まで圧縮できる(これが上限)
対象になるもの・ならないもの
| 区分 | 対象になる(○) | 対象にならない(×) |
|---|---|---|
| 滅失・損壊した資産 | 建物・機械・車両などの固定資産についての保険金 | 商品・原材料など棚卸資産についての保険金(別途、通常どおり益金) |
| 保険金の性質 | 資産の滅失・損壊に伴って支払われる保険金 | 休業補償など利益の減少を補う保険金(そもそも保険差益ではない) |
| 代替資産 | 滅失した資産と同じ区分の固定資産(建物なら建物など) | 異なる区分の資産(建物の代わりに土地のみを取得した場合など) |
ここを間違えやすい
1|非課税ではなく「課税の繰延べ」です
圧縮記帳をしても税金そのものがなくなるわけではありません。圧縮した分だけ代替資産の帳簿価額が下がり、その後の減価償却費が少なくなるため、将来の年度で少しずつ課税されることになります。
2|棚卸資産や休業補償の保険金は対象外です
圧縮記帳の対象になるのは固定資産の滅失・損壊についての保険金だけです。商品などの棚卸資産の保険金や、営業休止による損失を補う保険金は、通常どおりその事業年度の益金に算入します。
3|代替資産の取得には期限があります
原則として、滅失があった日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から2年以内(保険金の支払いが確定していない場合は特別勘定の設定を検討)に代替資産を取得する必要があります。期限を過ぎると適用できない場合があるため、早めに検討してください。
4|確定申告書への明細書添付が必要です
圧縮記帳の適用を受けるには、確定申告書に圧縮限度額の損金算入に関する明細書を添付することが要件になっています。添付を忘れると適用が認められない場合があります。
よくある質問
- 圧縮記帳をすると法人税が安くなりますか。
- その事業年度だけを見れば税負担は軽くなりますが、圧縮した分だけ代替資産の帳簿価額が下がるため、将来の減価償却費が減り、その分利益が増えて少しずつ課税されます。制度全体としては課税を繰り延べているだけで、税額が最終的に減るわけではありません。
- 圧縮記帳をしないという選択もできますか。
- できます。圧縮記帳は任意の制度なので、あえて適用せず保険差益をその年度に一括して益金に算入することも可能です。ただし、その年度の税負担が大きくなる場合があるため、資金繰りとあわせて検討することをおすすめします。
- 保険金を受け取った年と代替資産を取得した年が違う場合はどうなりますか。
- 保険金を受け取った事業年度中に代替資産をまだ取得していない場合は、将来取得する見込みで特別勘定を設定する方法があります。要件や期限が細かく定められているため、個別の確認が必要です。
- 土地を新たに取得した場合も対象になりますか。
- 原則として、滅失した資産と同一区分の固定資産を取得することが必要です。建物が滅失した場合に土地だけを新たに取得しても、圧縮記帳の対象にはならない場合があります。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 法人税法第47条(保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳)、法人税法施行令第84条
- 国税庁タックスアンサー No.5608「保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳」
- 法人税基本通達 第10章第5節「保険金等で取得した資産等の圧縮記帳」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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