- カテゴリ:源泉徴収
- 根拠:所法199・201
- 入力3項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
退職金を受け取るとき、会社はあらかじめ所得税を差し引いてから支給します。これが退職所得の源泉徴収です。「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで、税額の計算方法が大きく変わります。申告書を提出していれば勤続年数に応じた控除を使った有利な計算になりますが、提出していないと退職金の額面に一律20.42%がかかる、重い課税になってしまいます。
この計算式を3行でいうと
- 申告書を提出していれば、退職所得控除を差し引いて2分の1にした「課税退職所得」に税率を掛けて税額を計算します。
- 申告書を提出していない場合は、退職金の額面全体に一律20.42%を掛けた金額が源泉徴収されます。
- 法人役員などで勤続年数が短い場合は、2分の1を掛けない別の計算になることがあります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
退職所得の源泉徴収
所法199・201★結果コピーリンク「退職所得の受給に関する申告書」提出時は退職所得金額に速算表を適用(×102.1%)。未提出は一律20.42%です。
| 退職所得控除 | ¥15,000,000 |
| 課税退職所得(×1/2) | ¥5,000,000 |
| 所得税(速算) | ¥572,500 |
| ×102.1% | ¥584,522 |
こんなときに使います
- 会社を退職する社員に、退職金を支給することになったとき
- 退職する役員・従業員から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取ったとき
- 申告書の提出があるかないかで、源泉徴収税額がどれくらい変わるか確認したいとき
- 退職金の手取り額のおおまかな見込みを、退職前に本人へ説明したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 退職金 | 会社の規程にもとづいて支給する退職金の総額(額面)です。 | 退職金規程、退職金の計算書・辞令で確認します。 |
| 勤続年数 | 入社してから退職するまでの年数です。1年未満の端数は1年に切り上げて数えます。 | 雇用契約書、人事記録の入社日・退職日から計算します。 |
| 申告書提出 | 「退職所得の受給に関する申告書」を本人が会社に提出しているかどうかです。提出は1、未提出は0を入力します。 | 本人から提出された申告書の有無で確認します。 |
退職所得控除額の考え方
| 勤続年数 | 退職所得控除額のおおまかな考え方 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数(最低でも80万円) |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
勤続年数が長い人ほど、退職金のうち税金がかからない部分が大きくなる仕組みです。長く勤めた人の退職後の生活を支える性格が強いお金であることから、税負担が軽くなるよう配慮されています。この控除額の計算には勤続年数の入力が欠かせません。
計算のしくみ(3ステップ)
- 退職所得控除を差し引く:勤続年数に応じて計算される退職所得控除を、退職金の額面から差し引きます。勤続年数が長いほど、控除額も大きくなる仕組みです。
- 2分の1にして「課税退職所得」を出す:控除後の金額を2分の1にします。ただし、法人役員などで勤続年数が短い場合は、2分の1を掛けない別の計算になることがあります。
- 速算表で税率を掛けて税額を出す:申告書を提出している場合は、課税退職所得の金額に応じて所得税の速算表(税率・控除額)を当てはめ、復興特別所得税分を含めて102.1%を掛けて税額を出します。申告書を提出していない場合は、この計算をせず、退職金の額面全体に一律20.42%を掛けます。
申告書を提出しているかどうかで計算の手順がまったく異なるため、退職金を支払う前に申告書の提出を必ず確認することが実務上のポイントです。
具体例で確かめる
例1 退職金2,500万円、勤続年数30年、申告書提出ありのケース
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 ×(30年-20年)= 1,500万円 課税退職所得 =(25,000,000円-15,000,000円)× 1/2 = 5,000,000円 所得税額 = 5,000,000円 × 20% - 427,500円 = 572,500円 源泉徴収税額 = 572,500円 × 102.1%
源泉徴収税額は584,522円。2,500万円の退職金に対して、税負担は2%台におさまる
例2 同じ退職金500万円で、申告書提出の有無を比べるケース
未提出の場合:源泉徴収税額 = 5,000,000円 × 20.42% = 1,021,000円 提出ありで勤続年数25年の場合:退職所得控除 = 800万円 + 70万円 ×(25年-20年)= 1,150万円
未提出だと約102万円が源泉徴収される。控除額が退職金を上回るため、提出していれば税額はゼロになる
例3 退職金800万円、勤続年数10年、申告書提出ありのケース
退職所得控除 = 40万円 × 10年 = 400万円 課税退職所得 =(8,000,000円-4,000,000円)× 1/2 = 2,000,000円 所得税額 = 2,000,000円 × 10% - 97,500円 = 102,500円 源泉徴収税額 = 102,500円 × 102.1%
源泉徴収税額は104,652円。勤続年数が短いと控除額も小さくなり、税額が生じやすくなる
ここを間違えやすい
1|申告書の提出の有無で税額が大きく変わります
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないと、退職所得控除も2分の1の計算も使えず、退職金の額面全体に一律20.42%が源泉徴収されます。提出を忘れると、本人の手取りが大きく減ってしまうため、退職金を支払う会社側から本人に提出を案内しておくと親切です。
2|法人役員等で勤続年数が短い場合は計算が変わります
特定役員に該当する場合や、勤続年数が短い退職(短期退職手当等)に該当する場合は、2分の1を掛けない別の計算になることがあります。通常の従業員の退職金より税額が大きくなりやすいため、該当するかどうかは、個別に確認が必要です。
3|勤続年数の端数の数え方に注意します
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年として数えます。たとえば9年6か月の勤続なら10年として退職所得控除を計算します。この端数処理を忘れると、控除額がわずかに少なく計算されてしまいます。
4|住民税は別に計算・徴収されます
ここで計算しているのは所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額です。退職金には住民税もあわせて特別徴収されますが、その税額の計算は別の手続きで行われます。手取り額を本人に説明するときは、この住民税分もあわせて案内すると誤解を防げます。
よくある質問
- 申告書を出し忘れた場合、あとから還付を受けられますか。
- 本人が確定申告をすることで、一律20.42%で源泉徴収された税額と、本来の計算による税額との差額の還付を受けられる場合があります。年が明けてからでも申告可能ですので、出し忘れに気づいたら早めに準備しておくとよいでしょう。会社側としても、退職金を支払う前に申告書の提出を案内しておけば、このような手間を防げます。
- 退職金が少額でも源泉徴収は必要ですか。
- 金額の大小にかかわらず、退職金を支払う際は源泉徴収の計算自体は必要です。ただし退職所得控除の範囲内であれば、計算の結果として源泉徴収税額がゼロになることもあります。ゼロであっても、計算の記録は残しておくことをおすすめします。
- 勤続年数はどこからどこまでで数えますか。
- 原則として、その会社に入社した日から退職した日までの期間で数えます。休職期間の扱いや、以前に退職金を受け取ったことがある場合の通算など、細かい点は会社の規程や個別の事情によって異なる場合があるため、迷うときは確認したほうが安全です。
- 役員退職金も同じ計算方法ですか。
- 基本的な考え方は同じですが、勤続年数が短い法人役員等については、2分の1の計算をしない特別な取り扱いがあります。役員退職金の額を決める段階から、この点をあらかじめ個別に確認しておくことをおすすめします。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 所得税法第199条・第201条(退職所得の源泉徴収義務・税額の計算)、第30条(退職所得)
- 国税庁タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」
- 国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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