配偶者居住権の評価額の計算方法|自動計算ツール

  • カテゴリ:相続税・贈与税
  • 根拠:相法23の2
  • 入力4項目・その場で自動計算
  • 令和8年度の数値に対応

配偶者が亡くなった夫や妻の自宅に、その後も住み続けられる権利が配偶者居住権です。この権利は、自宅そのものの所有権とは別に評価額が決まります。建物に住み続ける権利と、その敷地を利用する権利に分けて計算し、それぞれが相続税の対象になります。

この計算式を3行でいうと

  1. 配偶者居住権は「建物の居住権」と「敷地利用権」に分けて評価します。存続年数が長いほど評価額は高くなります。
  2. 存続年数は、配偶者が終身住み続けるなら平均余命をもとに決めます。期間を区切って設定することもできます。
  3. 居住権を設定すると残りの所有権部分の評価額は下がり、子など他の相続人が相続する財産の評価額が軽くなります。

まずは計算してみる(自動計算ツール)

配偶者居住権の評価

相法23の2結果コピーリンク

配偶者居住権(建物)と敷地利用権を相続税法23条の2の算式で評価します。複利現価率は法定利率3%・存続年数に応じた率(小数点3位)を自動計算します。

配偶者居住権 = 建物時価 − 建物時価 × (残存耐用年数 − 存続年数) ÷ 残存耐用年数 × 複利現価率 敷地利用権 = 土地時価 − 土地時価 × 複利現価率(各円未満切捨)
配偶者居住権等 合計 ¥22,146,000
複利現価率(法定利率3%・12年・小数点3位)0.701
建物の所有権部分(時価×(残存耐用年数−存続年数)÷残存耐用年数×複利現価率)¥2,804,000
配偶者居住権(建物)¥7,196,000
敷地所有権部分(土地時価×複利現価率)¥35,050,000
敷地利用権¥14,950,000
合計(配偶者側)¥22,146,000
所有権側(建物+土地の残り)¥37,854,000
残存耐用年数が存続年数以下(又は0以下)なら建物の全額が配偶者居住権。経過年数・存続年数の6か月以上は切上げ、未満は切捨て。存続年数は終身なら厚労省の完全生命表による平均余命。小規模宅地等の特例は敷地利用権にも適用可。
目次

こんなときに使います

  • 夫や妻が亡くなり、残された配偶者がそのまま自宅に住み続けたいとき
  • 自宅の所有権は子どもに相続させつつ、配偶者の住む場所は確保しておきたいとき
  • 遺産分割で、配偶者が自宅の所有権を取得すると預貯金などほかの財産を受け取れなくなりそうなとき
  • 配偶者居住権を設定した場合と、通常どおり所有権で相続した場合とで評価額の違いを比べたいとき

入力する項目のかんたん解説

入力する項目どんな数字かどこを見ればよいか
建物の相続税評価額配偶者居住権を設定する前の、建物そのものの相続税評価額です。固定資産税評価額がそのまま使われます。固定資産税の課税明細書、固定資産評価証明書で確認します。
敷地の相続税評価額建物が建っている土地の相続税評価額です。路線価方式または倍率方式で計算した、土地の相続税評価額を使います。
建物の残存耐用年数建物の法定耐用年数を1.5倍し、そこから新築からの経過年数(築年数)を引いた年数です。法定耐用年数は建物の構造(木造・鉄筋コンクリートなど)で決まります。築年数は登記簿の新築年月日から数えます。
存続年数配偶者居住権が続く年数です。配偶者が終身住み続ける設定なら、配偶者の年齢に応じた平均余命を使います。終身の場合は厚生労働省の完全生命表、期間を区切る場合は遺産分割協議書や遺言の内容で確認します。

計算のしくみ(3ステップ)

  1. 建物の配偶者居住権を計算する:建物の評価額から、残存耐用年数のうち存続年数を超える部分にあたる価値を差し引きます。存続年数が残存耐用年数に近づくほど、差し引かれる金額は小さくなります。
  2. 敷地利用権を計算する:土地の評価額に「1-複利現価率」を掛けます。複利現価率とは、存続年数に応じて決まる、将来の価値を現在の価値に割り引くための率です。
  3. 残りの所有権部分を確認する:建物・敷地それぞれの評価額から配偶者居住権・敷地利用権を差し引いた残りが、所有権を相続する人(多くは子)の評価額になります。

複利現価率は、存続年数と法定利率をもとに国税庁が定める複利現価表から確認します。存続年数が長いほど複利現価率は小さくなり、その分だけ配偶者居住権の評価額は高く、残りの所有権部分の評価額は低くなる関係にあります。

具体例で確かめる

例1 建物1,000万円・敷地5,000万円、残存耐用年数20年、存続年数12年のケース

複利現価表(法定利率3%)で存続年数12年に対応する複利現価率は0.701 建物の居住権 = 10,000,000円 - 10,000,000円 ×(20年-12年)÷20年 × 0.701 = 10,000,000円 - 2,804,000円 = 7,196,000円 敷地利用権 = 50,000,000円 ×(1-0.701) = 14,950,000円

建物の居住権は7,196,000円、敷地利用権は14,950,000円。配偶者居住権等の評価額は合計22,146,000円(残りの所有権側は建物2,804,000円+土地35,050,000円=37,854,000円)

例2 残存耐用年数20年、存続年数5年と短いケース

建物800万円・敷地2,000万円、複利現価表(法定利率3%)で存続年数5年に対応する複利現価率は0.863 建物の居住権 = 8,000,000円 - 8,000,000円 ×(20年-5年)÷20年 × 0.863 = 8,000,000円 - 5,178,000円 = 2,822,000円 敷地利用権 = 20,000,000円 ×(1-0.863) = 2,740,000円

建物の居住権は2,822,000円、敷地利用権は2,740,000円(合計5,562,000円)。存続年数が短いほど評価額は小さくなる

配偶者居住権を使うメリット・注意点

観点内容
配偶者の生活の安定自宅の所有権を子が相続しても、配偶者は住む場所を法的な権利として確保できます。
遺産分割のバランス配偶者が所有権より評価額の低い居住権だけを取得すれば、預貯金など他の財産も受け取りやすくなります。
二次相続への影響配偶者が亡くなったときに居住権が消滅して相続税がかからないため、権利を分けなかった場合と比べて一次・二次相続を通じた税負担が変わることがあります。
自由度の制限配偶者居住権は譲渡できず、増改築や賃貸に出す際には所有者の承諾が必要になるなど、通常の所有権より自由度が制限されます。

配偶者居住権を設定するかどうかは、評価額の計算結果だけでなく、配偶者の今後の生活設計や、他の相続人との関係、将来その家をどうしたいかまで含めて検討する必要があります。いったん設定すると解消するのは簡単ではないため、専門家に相談しながら慎重に判断することをおすすめします。

ここを間違えやすい

1|複利現価率は毎回、存続年数に応じて表で確認します

複利現価率は一律の数字ではなく、存続年数と法定利率(現在は年3%)によって決まり、相続税法施行規則の複利現価表に載っている小数点3位までの数値(3%なら5年0.863・10年0.744・12年0.701・20年0.554など)を使います。法定利率は3年ごとに見直されるため、実際の申告では相続開始時の法定利率に対応する表の数値を確認して使ってください。

2|残存耐用年数の求め方を間違えやすい

残存耐用年数は「法定耐用年数×1.5-経過年数(築年数)」で求めます(経過年数・存続年数とも6か月以上の端数は切り上げ、6か月未満は切り捨てます)。登記簿上の残り年数をそのまま使ったり、法定耐用年数をそのまま使ったりすると評価額がずれてしまいます。

3|配偶者居住権は相続や遺贈でしか設定できません

配偶者居住権は、遺産分割協議、遺言、または家庭裁判所の審判によって設定します。配偶者が単に自宅に住み続けているというだけでは、自動的に配偶者居住権が発生するわけではありません。相続登記とあわせて、配偶者居住権の設定登記も必要になります。

4|配偶者居住権は譲渡や相続ができません

配偶者居住権は、配偶者本人が生きている間だけ認められる権利です。第三者に売ったり、配偶者が亡くなったときにさらに子へ相続させたりすることはできず、配偶者の死亡とともに消滅します。

よくある質問

存続年数を「終身」ではなく、たとえば10年など期間を区切ることはできますか。
できます。遺産分割協議や遺言で期間を定めた場合は、その年数を存続年数として使います。期間を定めない(終身)場合は、配偶者の相続開始時の満年齢と性別に応じた平均余命(厚生労働省の完全生命表)を使います。
配偶者が亡くなったとき、消滅した配偶者居住権に相続税はかかりますか。
かかりません。配偶者居住権は配偶者の死亡によって消滅する権利であり、相続の対象にはなりません。この点が、配偶者居住権を使った相続対策の大きな特徴のひとつとされています。ただし個々の家庭の事情によって有利不利は変わるため、設定前に試算しておくことが大切です。
小規模宅地等の特例は使えますか。
敷地利用権についても、要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できます。所有権を取得する人が持つ敷地所有権部分についても、それぞれが要件を満たせば特例の対象になります。どちらか一方だけでなく、両方の部分で別々に要件を確認する必要があります。
建物が古くて、法定耐用年数をすでに経過している場合はどうなりますか。
残存耐用年数がゼロ以下になる場合(残存耐用年数から存続年数を引いた年数がゼロ以下になる場合も同じ)は、計算式の分数部分をゼロとして扱うため、建物の評価額の全額が配偶者居住権の評価額になります。この場合、配偶者居住権が設定された建物の所有権部分の評価額はゼロになります。

根拠となる法令・出典

本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。

  • 相続税法第23条の2(配偶者居住権等の評価)
  • 民法第1028条から第1036条(配偶者居住権)
  • 国税庁タックスアンサー No.4666「配偶者居住権等の評価」

税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。

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