- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:民法1042
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
亡くなった人が遺言で「全財産を長男に」と書いていても、ほかの相続人が完全に無一文になるわけではありません。一定の近い親族には、最低限受け取れる取り分が法律で保障されています。これが遺留分です。実際にもらった財産がこの最低ラインに届かない場合は、多くもらった人に対して金銭で請求できます。
この計算式を3行でいうと
- 遺留分は「基礎財産×2分の1(直系尊属のみが相続人なら3分の1)×その人の法定相続分」で計算します。
- 兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分があるのは配偶者・子(代襲相続人を含む)・直系尊属だけです。
- 遺留分から、すでに受け取った財産や特別受益を差し引いた金額が、実際に請求できる侵害額です。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
遺留分侵害額
民法1042★結果コピーリンク兄弟姉妹以外の相続人に保障される最低限の取り分。侵害されている場合は金銭で請求できます。
| 総体的遺留分(1/2) | 5,000万円 |
| 個別的遺留分(×25%) | 1,250万円 |
| 受領済み財産 | 500万円 |
| 遺留分侵害額(請求可能額) | 750万円 |
こんなときに使います
- 遺言で「全財産を特定の相続人に譲る」と書かれていて、自分の取り分がどうなるか知りたいとき
- 生前贈与が特定の相続人にだけ偏っていて、不公平だと感じているとき
- 遺産分割の内容に納得できず、最低限もらえるはずの金額を確認してから話し合いたいとき
- 遺留分侵害額請求をするかどうか、金額の見込みを立てたうえで検討したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 遺留分算定の基礎財産 | 亡くなった人の相続財産に、一定の生前贈与を足し、債務を差し引いた金額です。単純な遺産の合計額とは異なります。 | 財産目録、預貯金や不動産の評価額、生前贈与の記録、借入金の残高などから計算します。 |
| 直系尊属のみ1/その他0 | 相続人が父母や祖父母などの直系尊属だけかどうかを指定します。配偶者や子が1人でもいる場合は「その他」を選びます。 | 戸籍をたどって相続人の範囲を確認します。 |
| その人の法定相続分 | 遺留分を計算したい本人が、民法上もらえるはずの相続分の割合です。 | 相続人の組み合わせから、民法の法定相続分の規定にあてはめて求めます。 |
| 既に受け取った財産 | 遺言による遺贈、生前贈与、遺産分割で実際に取得した財産などの合計額です。 | 遺言書の内容、贈与契約書、遺産分割協議書などで確認します。 |
4つの項目のうち、いちばん手間がかかるのは「遺留分算定の基礎財産」の把握です。不動産や非上場株式が含まれる場合は評価額そのものが専門的な判断を要するため、財産の一覧をつくるところから始めるとスムーズです。
計算のしくみ(3ステップ)
- 基礎財産を確定する:相続財産に、相続人への生前贈与(原則として相続開始前10年以内の特別受益)などを足し、債務を差し引いて基礎財産を求めます。
- 遺留分の金額を求める:基礎財産に、相続人全体の遺留分の割合(原則2分の1、直系尊属のみが相続人の場合は3分の1)を掛け、さらにその人の法定相続分を掛けます。
- 侵害額を求める:遺留分の金額から、その人がすでに受け取った財産(遺贈・生前贈与・遺産分割での取得分)を差し引きます。マイナスになる場合、侵害額はゼロとして扱います。
ポイントは、遺留分が「相続財産のうち、その人が実際に取得した分」ではなく「本来最低限もらえるはずだった金額」を先に計算し、そこから実際に受け取った分を引き算する、という順番で考えることです。すでに多くを受け取っていれば、遺留分の金額が大きくても侵害額はゼロになります。
具体例で確かめる
例1 基礎財産1億円、配偶者と子2人のうちの子1人(法定相続分25%)のケース
遺留分 = 100,000,000円 × 1/2 × 25% 既に受け取った財産500万円を差し引く 侵害額 = 12,500,000円 - 5,000,000円
遺留分は1,250万円、侵害額は750万円。この金額を目安に請求を検討できる
例2 相続人が直系尊属(父母)だけのケース
基礎財産6,000万円、相続人は父母のみで法定相続分50%、既に受け取った財産はゼロ 遺留分 = 60,000,000円 × 1/3 × 50%
遺留分は1,000万円。直系尊属だけが相続人の場合は、割合が2分の1ではなく3分の1になる
例3 すでに遺留分以上を受け取っていたケース
基礎財産8,000万円、法定相続分12.5%、既に受け取った財産600万円の場合 遺留分 = 80,000,000円 × 1/2 × 12.5% = 5,000,000円 侵害額 = max(5,000,000円 - 6,000,000円, 0)
侵害額はゼロ。すでに遺留分を上回る財産を受け取っているため、追加の請求はできない
遺留分の割合と、遺留分がない人
| 区分 | 遺留分の有無・割合の考え方 |
|---|---|
| 配偶者・子(代襲相続人を含む) | 遺留分があります。相続人全体の遺留分(原則2分の1)に、それぞれの法定相続分を掛けて計算します。 |
| 直系尊属(父母・祖父母)のみが相続人の場合 | 遺留分があります。この場合、相続人全体の遺留分は3分の1になります。 |
| 兄弟姉妹(代襲する甥・姪を含む) | 遺留分はありません。遺言で財産をもらえなくても、金銭請求はできません。 |
| 相続放棄をした人 | 遺留分はありません。相続人としての地位そのものがなくなるためです。 |
ここを間違えやすい
1|基礎財産は「遺産の合計額」と同じではありません
基礎財産には、亡くなった時点の財産だけでなく、相続人への生前贈与(原則として相続開始前10年以内の特別受益にあたるもの)も加算し、借入金などの債務を差し引きます。財産目録の金額だけで計算すると、遺留分が本来より少なく出てしまうことがあります。
2|兄弟姉妹には遺留分がありません
子も直系尊属もおらず、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言によって財産を受け取れなかったとしても遺留分侵害額請求はできません。遺留分があるのは配偶者・子・直系尊属だけです。「きょうだいには遺言で財産を渡さない」という内容の遺言書も、法律上は有効に成立します。
3|時効に注意してください
遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った日から1年で時効になります。知らないまま相続開始から10年が経過した場合も、請求できなくなります。
4|請求できるのは金銭だけです
現在の遺留分侵害額請求は、金銭の支払いを求める権利として整理されています。以前の制度のように不動産の共有持分そのものを取り戻す形ではなく、あくまで金銭債権として相手方に請求する仕組みです。請求を受けた側にまとまった現金がない場合は、支払いについて裁判所に猶予を求められることもあります。
よくある質問
- 遺留分侵害額請求は、誰に対して行うのですか。
- 遺言や生前贈与によって、本来の遺留分を超える財産を受け取った相続人や受遺者に対して請求します。対象者が複数いる場合は、遺贈が先か贈与が先かなど財産を受け取った順序によって、請求できる相手や金額の配分が変わることがあります。
- 生前贈与はどこまでさかのぼって基礎財産に含めますか。
- 相続人への贈与は原則として相続開始前10年以内のもの、相続人以外への贈与は原則として相続開始前1年以内のものが対象です。当事者双方が遺留分を侵害すると知っていて行った贈与は、この期間を問わず含まれる場合があります。
- 遺留分の放棄はできますか。
- 相続開始前であれば、家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することができます。相続開始後は、あらためて放棄の手続きをするのではなく、単に請求をしないことで結果的に権利を行使しない形になります。ある相続人が遺留分を放棄しても、ほかの相続人の遺留分が自動的に増えるわけではない点も覚えておくとよいでしょう。
- 話し合いで解決できない場合はどうすればよいですか。
- まずは相手方に金額を明示して請求し、合意できなければ家庭裁判所の調停や訴訟で解決することになります。時効が近い場合は、正確な金額が固まっていなくても、内容証明郵便などで請求の意思表示だけは早めにしておくことが重要です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)、第1043条から第1049条(遺留分侵害額の請求)
- 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」(遺留分制度の見直し)
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