- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:評基通188-2
- 入力2項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
非上場企業の株式を相続や贈与で取得しても、会社の経営に関わらない少数株主であれば、会社の正味の値打ちをそのまま評価額にする必要はありません。そのかわりに使うのが配当還元方式です。過去の配当実績をもとに、株式を持ち続けたときに得られる利回りから逆算して評価額を求める、簡便な計算方法です。
この計算式を3行でいうと
- 評価額は「年配当金額÷10%×(1株当たり資本金等÷50円)」で計算します。年配当が2.5円未満やゼロなら2.5円とみなして計算します。
- 配当還元方式が使えるのは、会社の経営に影響力を持たない同族株主以外の少数株主だけです。
- 計算した配当還元価額が原則的評価方式の価額を上回るときは、原則的評価方式の価額のほうを使います。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
配当還元方式
評基通188-2★結果コピーリンク同族株主以外などが取得した非上場株式を、配当をもとに評価する簡便法です。
| 年配当÷10% | ¥50 |
| ×(資本金等/50円) | ¥500 |
こんなときに使います
- 非上場会社の役員や従業員が、経営には関わらない少数の株式を相続や贈与で取得したとき
- 創業家とは別に、古くからの縁故者や社員株主が名義株を持っていて、その評価額を知りたいとき
- 自社株を後継者以外の親族や従業員に分散して渡すときの、贈与税・相続税の目安をあらかじめ知りたいとき
- 原則的評価方式で計算した金額が高すぎると感じ、自分が配当還元方式を使える立場かどうかを確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 年配当金額(1株・50円換算) | 1株当たり資本金等の額を50円とみなした場合に換算しなおした、1年分の配当金額です。実際に受け取った1株当たりの配当額そのものではありません。 | 過去の配当実績、株主総会議事録、法人税申告書の別表などから計算します。 |
| 1株当たり資本金等 | 会社の資本金等の額を、発行済株式数で割った金額です。額面50円の株式を前提に換算するための基準になります。 | 法人税申告書別表五(一)や、決算書の資本金等の欄から確認します。 |
入力する2つの項目は、どちらも会社の決算書や申告書から確認できる数字です。むずかしいのは金額そのものより、そもそも配当還元方式を使ってよい株主かどうかの判定なので、その点は後の章であわせて確認してください。
計算のしくみ(3ステップ)
- 年配当金額を確認する:1株当たり資本金等の額を50円とみなした場合の、1年分の配当金額を求めます。配当がない年や、金額が2.5円に満たない場合は2.5円として扱います。
- 資本金等の換算比率を求める:1株当たり資本金等の額を50円で割り、額面50円換算での比率を求めます。この会社の株式数を、額面50円の株式に置き換えるとどうなるかを表す比率です。
- 2つを掛け合わせて評価額を出す:年配当金額を10%で割り戻し、そこに資本金等の換算比率を掛けます。出た金額が原則的評価方式の価額を上回る場合は、原則的評価方式の価額のほうを評価額とします。
この計算式は複雑に見えますが、要するに「毎年もらえる配当金を、利回り10%で割り戻すといくらの元本に相当するか」を求めているだけです。会社が持つ土地や自社ビルなどの資産価値そのものは反映しない仕組みなので、原則的評価方式より評価額が低めに出やすい傾向があります。
具体例で確かめる
例1 年配当金額5円、1株当たり資本金等500円のケース
評価額 =(5円 ÷ 10%)×(500円 ÷ 50円) = 50円 × 10
評価額は1株500円
例2 配当の実績が少なく、2.5円に満たないケース
年配当金額が1円しかなかったが、下限の2.5円として計算する 評価額 =(2.5円 ÷ 10%)×(500円 ÷ 50円)= 25円 × 10
評価額は1株250円。無配や少額配当でも評価額がゼロになることはない
例3 配当還元価額が原則的評価額を上回ってしまうケース
配当還元方式で計算した価額が1株800円、原則的評価方式(類似業種比準価額と純資産価額の組み合わせ)で計算した価額が1株650円だった場合 配当還元価額のほうが高いため、原則的評価方式による650円を採用する
最終的な評価額は1株650円。配当実績の多い会社では、配当還元方式のほうが必ず低くなるとは限らない
配当還元方式を使える人・使えない人
| 区分 | 配当還元方式を使えるか |
|---|---|
| 同族株主のいる会社で、経営に影響力を持たない少数株主(役員でない、議決権割合が一定未満など) | 使える場合があります |
| 会社を実質的に支配している同族株主グループの中心的な株主とその親族 | 原則として使えません。類似業種比準価額や純資産価額など原則的評価方式を使います |
| 同族株主のいない会社の株主のうち、議決権割合が一定未満の少数株主 | 使える場合があります |
| 会社の経営を実質的に支配している株主 | 原則として使えません |
| 役員(社長・専務・常務など会社の経営に深く関わる立場の役員)が取得した株式 | 持株比率が小さくても、原則として使えないことがあります |
誰が配当還元方式を使えるかは、株主どうしの親族関係や議決権の持ち合い状況によって細かく決まります。判定を誤ると評価額が大きく変わるため、個別の判断が必要です。同じ会社の株式でも、取得する人の立場によって配当還元方式になったり原則的評価方式になったりするため、「この会社の株式だから配当還元方式」という単純な決め方はできません。
ここを間違えやすい
1|「年配当金額」は実際に受け取った配当額そのものではありません
入力する年配当金額は、1株当たり資本金等の額を50円とみなして換算しなおした金額です。額面が50円でない会社の場合、実際に受け取った配当額をそのまま入力すると評価額がずれてしまいます。
2|無配当だからといって評価額がゼロになるわけではありません
年配当金額が2.5円に満たない場合や、配当をまったく行っていない場合でも、2.5円として計算する決まりになっています。無配イコール評価額ゼロではない点に注意してください。業績が悪く配当を出せない年が続いていても、少額の評価額は必ず残ると考えておく必要があります。
3|誰でも自由に配当還元方式を選べるわけではありません
配当還元方式は、会社の経営に影響力を持たない少数株主だけに認められる簡便な評価方法です。取得する株主が同族株主の中心的なメンバーにあたる場合は、たとえ実際の持株数がわずかであっても、原則的評価方式を使わなければなりません。「少数株式だから当然に配当還元方式」という思い込みは禁物です。
4|原則的評価額との比較を忘れないでください
配当還元方式で計算した価額が、原則的評価方式で計算した価額を上回る場合は、原則的評価方式の価額を使います。配当実績の多い会社では、この逆転が起こることがあります。
よくある質問
- 配当還元方式と原則的評価方式のどちらを使うかは、誰が決めるのですか。
- 納税者が自由に選べるものではありません。株式を取得する人が同族株主に該当するかどうか、議決権割合がどの程度かといった法律上の基準にもとづいて判定されます。判定を誤ると税務調査で否認され、追加の税負担が生じるおそれがあります。
- 1株当たり資本金等の額が50円ちょうどでない会社は、どう計算しますか。
- 資本金等の額を発行済株式数で割った金額を、さらに50円で割ることで、額面50円換算の比率を求めます。この比率を年配当金額の換算や、最終的な評価額の計算に使います。
- 直前期が赤字で配当を出していない場合はどうなりますか。
- 年配当金額はゼロとして扱われますが、評価額の計算では2.5円が下限になるため、評価額そのものがゼロになることはありません。赤字が続いている会社でも、資本金等の額が大きければそれなりの評価額になる点に注意してください。
- 従業員持株会が保有する株式にも配当還元方式は使えますか。
- 従業員持株会を通じて株式を取得する少数株主は、多くの場合で配当還元方式の対象になります。ただし持株比率や規約の内容、退職時の買い取り条件などによって判断が分かれることがあるため、個別の確認が必要です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達188(同族株主以外の株主等が取得した株式等の評価)、188-2(配当還元方式)
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
- 国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の記載方法
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
関連する計算ツール
← 税務計算ツール集(全168式)の一覧にもどるこの計算、実際の数字で確かめませんか
札幌のジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)が、御社の実額をもとに試算し、次に打つ手までご提案します。初回のご相談は無料です。
初回相談(無料)を申し込む料金・契約の流れを見る