- カテゴリ:有利判定・比較
- 根拠:評基通26・93
- 入力5項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
更地のまま相続する場合と、借入をしてアパートを建てて人に貸した場合とでは、同じ土地でも相続税の評価額が大きく変わることがあります。貸家の敷地は自用地よりも評価が下がり、建物も建築費より低い金額で評価されるためです。この計算機は、その評価効果を具体的な金額で確認するものです。
この計算式を3行でいうと
- 更地のままなら評価額は変わりませんが、借入でアパートを建てると土地は貸家建付地として、建物は固定資産税評価額をもとに評価が下がります。
- 建築費と同額を全額借入した場合、その借入金の残高は全額を財産から差し引けるため、評価額はさらに下がります。
- 効果は空室や借入の返済状況で変わり、借入を完済すると評価が更地より高くなることもあるため注意が必要です。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
アパート建築の相続税評価効果(更地 vs 貸家建付地)
評基通26・93★結果コピーリンク更地のまま相続した場合と、借入でアパートを建てて貸した場合の相続税評価額を比較します(現金→建物の評価差+貸家・貸家建付地の減額+債務控除)。
| 建築前(更地) | 10,000万円 |
| 建築後: 貸家建付地 | 8,200万円 |
| 建築後: 貸家(建物) | 3,080万円 |
| 建築後: 借入金(債務控除) | −8,000万円 |
| 建築後の正味 | 3,280万円 |
| 評価圧縮額 | 6,720万円 |
| (参考)貸付事業用の小規模宅地50%減 | 200㎡まで併用可(別計算) |
こんなときに使います
- 更地や駐車場のまま所有している土地があり、アパートやマンションの建築を検討しているとき
- 金融機関や不動産会社から、借入でアパートを建てる相続税対策を提案されたとき
- 相続税の試算をする中で、土地をそのまま残す場合と建築した場合の評価額の違いを具体的な数字で比べたいとき
- 借入金を差し引いても本当に評価額が下がるのか、おおよその金額のイメージをつかみたいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 土地の自用地評価額 | アパートを建てず、自分で使う場合の相続税評価額です。更地のまま相続する場合の評価額そのものでもあります。 | 路線価地域なら路線価×面積、それ以外は固定資産税評価額×倍率で計算します。路線価は毎年7月ごろに公表される、その年1月1日時点の価格で、国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。 |
| 建築費(全額借入) | アパートの建築にかかる費用で、全額を借入でまかなうことを前提にした金額です。この金額がそのまま相続時点の借入残高としても使われます。 | 建築会社の見積書、または金融機関の借入契約書に記載された借入金額。付随する設計料・登記費用などを含めるかは実態にあわせて判断します。 |
| 建物の固定資産税評価率 | 建築費に対して、建物の固定資産税評価額がどのくらいの割合になるかの目安です。一般的に建築費の50〜60%程度になることが多いとされます。 | 過去に建てた建物があれば固定資産税評価証明書、これから建てる場合は建築会社やハウスメーカーの目安資料で確認します。 |
| 借地権割合 | その土地の相続税評価額のうち、借地権が占める割合です。地域ごとに国税庁が30%から90%の範囲で定めています。都市部ほど高い割合になる傾向があります。 | 国税庁の路線価図に、路線価とあわせてAからGの記号で表示されています。 |
| 賃貸割合 | アパート全体の床面積のうち、実際に人に貸している部分の割合です。満室なら100%になります。 | 賃貸借契約書、入居状況の一覧表から「貸している部屋の床面積÷全体の床面積」で計算します。一時的な空室であれば賃貸中として数えられる場合もあります。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 更地のままの評価額を確認する:何も建てなければ、土地の評価額は自用地評価額のままです。これが比較の基準になります。
- 建築後の土地と建物の評価額を計算する:土地は「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で貸家建付地として評価し、建物は「建築費×固定資産税評価率×(1-借家権割合×賃貸割合)」で貸家として評価します。借家権割合は全国一律30%です。この減額は、賃貸中の不動産は所有者が自由に使ったり売却したりしにくいことを考慮したものです。
- 借入金を差し引く:相続の時点で残っている借入金は、財産から差し引ける債務です。建築後の土地と建物の評価額の合計から、借入金の残高を全額差し引いた金額が、アパートを建てた場合の評価額になります。
具体例で確かめる
例1 満室のアパートを全額借入で建てたケース
土地評価(建築後) = 10,000万円 ×(1-60%×30%×100%) = 8,200万円 建物評価 = 8,000万円 × 55% ×(1-30%×100%) = 3,080万円 評価額合計 = 8,200万円 + 3,080万円 - 借入金8,000万円
建築後の評価額は3,280万円。更地のままの10,000万円より6,720万円下がる
例2 入居率が8割で、一部空室があるケース
土地評価 = 10,000万円 ×(1-60%×30%×80%) = 8,560万円 建物評価 = 8,000万円 × 55% ×(1-30%×80%) = 3,344万円 評価額合計 = 8,560万円 + 3,344万円 - 借入金8,000万円
評価額は3,904万円。満室のときより624万円高くなる
例3 借入を完済したあとに相続が発生したケース
土地評価8,200万円 + 建物評価3,080万円 - 借入金0円(完済ずみ)
評価額は11,280万円。更地のままの10,000万円より高くなってしまう
更地のままと建築後で何が変わるか
| 区分 | 更地のまま | アパート建築後(借入残あり) |
|---|---|---|
| 土地の評価 | 自用地評価額そのまま | 自用地評価額から借地権・借家権・賃貸割合ぶんを減額(貸家建付地) |
| 建物の評価 | 該当なし | 固定資産税評価額をもとに、貸家として借家権割合ぶんを減額 |
| 債務控除 | 該当なし | 借入金の残高を全額差し引ける |
| 評価額が下がる度合い | 変化なし | 満室で、かつ借入残高が多いほど評価額は下がる |
ここを間違えやすい
1|相続直前の建築は税務否認のリスクがあります
亡くなる直前に多額の借入をしてアパートを建てるなど、租税回避の意図が明らかなケースでは、財産評価基本通達6項(この通達の定めにより難い場合の評価)にもとづき、通達どおりの評価が認められないことがあります。借入の時期、建築の目的、実際に賃貸事業として運営されているかなど、総合的な事情から個別に判断されます。
2|借家権割合は全国一律30%です
借地権割合は地域(路線価)によって30%から90%まで幅がありますが、借家権割合は全国どこでも30%で計算します。地域による違いがあるのは借地権割合だけです。
3|借入を返済し終えると効果は反転します
評価額が下がるのは、あくまで借入金が残っている間の効果です。完済後に相続が発生すると、債務控除がなくなるため、土地と建物の評価額の合計が更地のときより高くなる場合があります。長期のローンを組む場合は、完済時期と相続対策としての効果をあわせて考える必要があります。
4|空室リスクや収益性、将来の売却価格は別問題です
この計算は相続税評価額だけを比べるものです。実際の家賃収入で借入を返済できるか、将来売却するときにいくらになるかは、評価額の計算とは別に検討する必要があります。
よくある質問
- 自己資金で建てた場合も同じように評価は下がりますか。
- 土地と建物の評価が下がる効果は同じように働きますが、自己資金の場合は差し引ける借入金がないため、全額借入のケースに比べると評価額が下がる幅は小さくなります。手元資金の減り方も含めて、借入と自己資金のバランスを検討するとよいでしょう。
- 賃貸割合はどうやって数えればよいですか。
- 課税時期に実際に貸している部屋の床面積の合計を、建物全体の床面積の合計で割って計算します。退去後すぐに次の入居者を募集していて、空室期間が1か月程度など一時的なものであれば、賃貸中として扱ってよい場合があります。
- アパートではなく社宅として貸す場合も同じ計算でよいですか。
- いいえ。借地借家法の適用がない社宅の敷地は、貸家建付地としての評価減を受けられず、自用地としての評価額になります。この計算機は第三者に貸すアパート・賃貸住宅を前提にしています。
- 相続直前の建築だと、必ず評価が否認されますか。
- 必ず否認されるわけではありません。実際に賃貸事業として運営されているか、建築の経緯や目的はどうかなど、実態を踏まえて個別に判断されます。相続開始が近いタイミングでの建築を検討する場合は、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達26(貸家建付地の評価)、93(貸家の評価)、6(この通達の定めにより難い場合の評価)
- 国税庁タックスアンサー No.4614「貸家建付地の評価」/No.4602「土地家屋の評価」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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