- カテゴリ:有利判定・比較
- 根拠:所法28・30
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
同じ金額を受け取るのでも、退職金として受け取るか、給与に上乗せして毎年受け取るかで、手取り額は大きく変わります。退職金には退職所得控除や2分の1課税、ほかの所得と分けて計算する分離課税など、税負担を軽くする仕組みが複数用意されているためです。この計算機は、その手取りの差を具体的な金額で比べるものです。
この計算式を3行でいうと
- 退職金は「退職所得控除を引いて2分の1にしてから税率をかける」ため、同じ金額でも給与より税負担が軽くなりやすい仕組みです。
- 給与に上乗せする場合は、所得税・住民税に加えて社会保険料もかかるため、実質的な負担率はさらに高くなります。
- 退職金には功績倍率法にもとづく適正額の考え方があり、勤続5年以下の役員などは2分の1課税が使えない場合があります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
退職金でもらう vs 給与でもらう
所法28・30★結果コピーリンク同じ金額を役員退職金で受け取る場合と、毎年の給与に上乗せして受け取る場合の税・社会保険負担を比較します。退職金の「控除+1/2+分離課税」の優位性を数字で確認できます。
| 退職所得控除 | ¥15,000,000 |
| 退職金の税負担(所得税+住民税) | ¥1,861,869 |
| 退職金の手取り | ¥28,138,131 |
| 給与上乗せの税・社保負担 | ¥12,744,899 |
| 給与の手取り | ¥17,255,101 |
| ★手取り差(退職金の優位) | ¥10,883,030 |
こんなときに使います
- 役員や従業員に、退職金と給与のどちらで報酬を渡すのが有利か比較したいとき
- 役員の退任にあわせて、退職金の金額や受け取り方をあらかじめ検討しているとき
- 会社の資金繰りを踏まえて、給与への上乗せと退職金のどちらで支払うかを決めたいとき
- 顧問税理士との打ち合わせ前に、おおまかな税負担の差を自分で確認しておきたいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 受け取る金額 | 退職金として受け取る場合と、給与に上乗せして受け取る場合を比較する、もととなる金額です。税・社会保険料が引かれる前の総額で入力します。 | 会社が想定している退職金の支給予定額、または上乗せしたい給与の総額。会社の資金繰りとあわせて検討します。 |
| 勤続年数 | 退職所得控除の金額を決める年数です。1年未満の端数は1年に切り上げて計算します。 | 入社日(役員は就任日)から退職日までの年数。実際の在籍期間で数えます。 |
| 給与の場合の所得税限界税率 | 給与に上乗せしたときに、その上乗せ部分に対して実際にかかる所得税の税率です。もとの所得が多い人ほど高くなります。 | 源泉徴収票の課税所得金額を所得税の速算表にあてはめて確認します。顧問税理士に確認するのが確実です。 |
| 給与の場合の社保率(本人) | 給与に上乗せした場合にかかる社会保険料(健康保険・厚生年金など)のうち、本人負担分の割合です。 | 給与明細の社会保険料の欄、または加入している協会けんぽ・健康保険組合の保険料率表。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 退職金の税額を計算する:勤続年数から退職所得控除額を求めます(勤続20年以下は40万円×勤続年数〈最低80万円〉、20年を超える部分は70万円×超過年数を800万円に加えます)。受け取る金額からこの控除額を引いた残りをさらに2分の1にした金額に、分離課税で所得税(復興特別所得税を含む)と住民税10%をかけます。
- 給与の場合の税・社会保険料を計算する:受け取る金額に、所得税の限界税率(復興特別所得税を含む)と住民税10%、社会保険料率を合計した割合をかけます。給与は毎月の支給に分割しても、上乗せ部分の合計に対する負担率はおおむね変わりません。
- 手取り額を比べる:どちらも「受け取る金額-税・社会保険料」が手取りです。控除額が大きく、税率も軽減される退職金のほうが、多くの場合で手取りは多くなります。差が大きいほど、受け取り方を工夫する価値があるといえます。
具体例で確かめる
例1 勤続30年、3,000万円を受け取るケース
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 ×(30年-20年) = 1,500万円 退職所得 = (3,000万円-1,500万円)× 1/2 = 750万円 給与の場合の負担割合 = 所得税率23% × 1.021 + 住民税10% + 社保9% = 約42.5%
退職金は課税対象が750万円まで圧縮され、給与でもらうより手取りが大きく増える
例2 勤続10年、2,000万円を受け取るケース
退職所得控除 = 40万円 × 10年 = 400万円 退職所得 = (2,000万円-400万円)× 1/2 = 800万円
勤続年数が短いと退職所得控除も小さくなるため、勤続30年のケースより課税対象の圧縮効果はゆるやかになる
例3 給与の限界税率が低い(10%)ケース
給与の場合の負担割合 = 所得税率10% × 1.021 + 住民税10% + 社保9% = 約29.2%
もともと所得が少なく限界税率が低い人ほど、退職金と給与の差は縮まる
退職金と給与のおもな違い
| 区分 | 退職金でもらう | 給与に上乗せしてもらう |
|---|---|---|
| 課税の方法 | ほかの所得と分けて計算する分離課税。退職所得控除と2分の1課税が使える | ほかの給与所得と合算し、総合課税で税率が決まる |
| 社会保険料 | 原則としてかからない | 健康保険・厚生年金保険の対象になる(上限あり) |
| 会社側の経費 | 適正額の範囲内で損金にできる | 適正な金額であれば損金にできる |
| 受け取るタイミング | 退職時に一括で受け取ることが一般的 | 在職中、毎月・毎年の給与に上乗せして受け取る |
ここを間違えやすい
1|退職金はいくらでも自由に決められるわけではありません
役員退職金として損金算入できる金額には、功績倍率法(最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率)などで計算した適正額という上限の考え方があります。適正額を超える部分は、税務上、損金として認められないことがあります。同業種・同規模の会社の水準も参考にされます。
2|勤続5年以下の役員などは2分の1課税が使えません
役員としての勤続年数が5年以下の「特定役員退職手当等」にあたる場合、2分の1課税の適用はありません。控除後の全額がそのまま課税対象になるため、短期間で退任する役員の退職金を検討する際は特に注意が必要です。
3|社会保険料には上限があります
厚生年金保険料などには標準報酬月額の上限が設けられているため、給与を大きく増やしても、それ以上は社会保険料が増えない場合があります。本ツールの社保率はあくまで目安として入力し、実際の負担は加入先の保険料率表で確認してください。
4|退職所得控除は「1年未満切り上げ」で計算します
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、たとえ1か月でも1年として切り上げて退職所得控除を計算します。切り捨てではない点に注意してください。
よくある質問
- 退職金には社会保険料はかからないのですか。
- 原則としてかかりません。退職金(退職手当)は労働の対償である賃金にあたらないとされているため、健康保険・厚生年金保険の保険料の対象になりません。給与として同じ金額を受け取ると社会保険料が上乗せでかかることを考えると、この点が給与に対する大きな優位性のひとつといえます。
- 会社側の負担(損金算入)はどう考えればよいですか。
- 退職金・給与のどちらも、適正な金額であれば会社の損金に算入できます。ただし退職金は功績倍率法などで計算した適正額を超えると、超えた部分が損金として認められないことがあるため、事前に金額の妥当性を検討しておくことが大切です。
- 分割で退職金を受け取ることはできますか。
- 原則として、退職の事実にもとづき一時に支払われるものが退職所得として扱われます。数年に分けて支給する場合は、税務上、退職所得と認められるかどうかの判断が必要になるため、事前に確認することをおすすめします。
- iDeCoや小規模企業共済の一時金と合算するとどうなりますか。
- 同じ年に複数の退職所得がある場合や、過去に他の退職金を受け取っている場合は、退職所得控除の計算が調整されることがあります。受け取る順番や時期によって有利・不利が変わるため、個別の状況に応じた確認が必要です。なお、在職中の役員報酬を引き下げて将来の退職金の原資にまわすこと自体は可能ですが、退職金の適正額は功績倍率法などで別途判断されるため、報酬を減らせばそのまま上限が増えるという単純な関係ではありません。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 所得税法第28条(給与所得)、第30条(退職所得)、第201条(源泉徴収)
- 国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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