- カテゴリ:法人税
- 根拠:法基通9-3-5の2
- 入力2項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
経営者向けの生命保険や医療保険など、法人が契約する定期保険等は、2019年の改正で経理処理のルールが大きく変わりました。保険料の一部を経費(損金)にできず、資産として計上しなければならないケースがあるのです。どのくらいの割合を資産計上する必要があるかは、最高解約返戻率という数値で決まります。この記事では、区分の判定方法と資産計上額の計算方法をやさしく解説します。
この計算式を3行でいうと
- 最高解約返戻率が50%以下なら保険料は全額損金。50%を超えると、区分に応じて資産計上が必要になります。
- 資産計上の割合は50〜70%で4割、70〜85%で6割、85%超はさらに詳しい計算が必要です。
- 最高解約返戻率70%以下かつ年間保険料30万円以下なら、区分にかかわらず全額損金にできる特例があります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
法人保険の資産計上割合(最高解約返戻率)
法基通9-3-5の2★結果コピーリンク定期保険等の保険料は最高解約返戻率に応じて資産計上が必要です(2019年改正後ルール)。
| 適用区分 | 当初4割期間は60%資産計上 |
| 資産計上額(年) | ¥600,000 |
| 損金算入額(年) | ¥400,000 |
| 取崩し | 資産計上期間経過後に均等取崩しで損金化 |
こんなときに使います
- 決算対策として、経営者向けの生命保険(定期保険等)への加入を検討しているとき
- 保険会社から提案を受けたが、保険料が全額損金になるのか、資産計上が必要なのか確認したいとき
- すでに加入している保険について、決算時にどのくらいを資産計上すればよいか計算したいとき
- 複数の保険プランを比較して、初年度からのキャッシュアウトと損金効果を見比べたいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 年間保険料 | その保険契約で1年間に支払う保険料の合計額です。月払いの場合は月額×12か月で計算します。 | 保険証券、保険会社から届く払込案内、口座振替の明細で確認できます。 |
| 最高解約返戻率 | 契約期間中、いちばん高くなるときの「解約返戻金÷それまでに払った保険料の合計」の割合(%)です。契約した年によって最も高くなる時期は異なります。 | 保険会社が契約時に交付する設計書・提案書に「最高解約返戻率」として明記されています。担当者に確認することもできます。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 最高解約返戻率を確認する:保険会社の設計書に記載されている、契約期間を通じていちばん高くなる解約返戻率を確認します。
- 区分にあてはめる:50%以下・50〜70%・70〜85%・85%超の4つの区分のどれに該当するかを判定します。区分によって資産計上する割合が変わります。
- 資産計上額と損金算入額を計算する:年間保険料に区分ごとの資産計上割合をかけた金額が資産計上額、残りが損金算入額です。
資産計上した金額は、そのまま経費にならないわけではありません。契約後半の一定の時期になると取り崩しが始まり、その分を損金に算入していくしくみになっています。取り崩しの具体的な時期や金額は契約ごとに異なるため、保険会社が示すシミュレーション表で確認してください。
具体例で確かめる
例1 最高解約返戻率80%(70〜85%区分)のケース
年間保険料100万円、最高解約返戻率80%は「70%超85%以下」の区分 資産計上額 = 1,000,000円 × 60%(区分の資産計上割合)
資産計上額60万円、損金算入額40万円
例2 最高解約返戻率60%(50〜70%区分)のケース
年間保険料100万円、最高解約返戻率60%は「50%超70%以下」の区分 資産計上額 = 1,000,000円 × 40%(区分の資産計上割合)
資産計上額40万円、損金算入額60万円
例3 少額特例にあてはまるケース
最高解約返戻率65%(70%以下)、年間保険料25万円(30万円以下) 少額特例の条件を両方満たしている
資産計上は不要。保険料25万円は全額損金にできる
資産計上割合の早見表
| 最高解約返戻率 | 資産計上割合 | 損金算入割合 |
|---|---|---|
| 50%以下 | 0%(資産計上なし) | 100%(全額損金) |
| 50%超70%以下 | 40% | 60% |
| 70%超85%以下 | 60% | 40% |
| 85%超 | 当初10年間は保険料×最高解約返戻率×90% | 残額 |
ここを間違えやすい
1|「保険料は全額経費になる」という古い知識のままにしない
2019年の改正より前は、多くの定期保険が全額損金にできました。改正後は最高解約返戻率によって資産計上が必要になるケースが増えています。加入を検討する際は必ず最新のルールで確認してください。
2|少額特例の30万円は、1人あたりの合計で判定します
年間保険料30万円以下かどうかは、その保険契約単独ではなく、同じ被保険者について契約している他の保険の保険料も合算して判定します。複数の保険に入っている場合は注意が必要です。
3|解約するタイミングで多額の益金が出ることがあります
資産計上していた金額は、解約して解約返戻金を受け取ったときに、その差額が益金に算入されます。退職金の支給や大規模な修繕など、経費が出る年に合わせて出口を計画しておくことが大切です。
4|第三分野保険には別の特例があります
医療保険やがん保険など第三分野保険で、保険料の払込期間が保険期間より短い「短期払い」の場合は、年換算した保険料が30万円以下であれば全額損金にできる特例があります。定期保険とは判定基準が異なるため混同しないようにしてください。
よくある質問
- 資産計上した保険料は、いつか経費になるのですか。
- はい。契約後半の一定の期間で取り崩しが行われ、その分が損金に算入されていきます。取り崩しが始まる時期や金額は契約内容によって異なるため、保険会社のシミュレーション資料で確認してください。
- すでに加入している古い保険にもこのルールは適用されますか。
- 2019年7月8日より前に契約した保険には、改正前の取扱いが適用される経過措置があります。加入時期によってルールが異なるため、保険証券に記載された契約日を確認してください。
- 掛け捨てタイプの医療保険でも資産計上は必要ですか。
- 解約返戻金がほとんどない、または全くない掛け捨てタイプの保険は、最高解約返戻率が低くなるため、多くの場合は全額損金にできます。ただし契約内容によって異なるため、設計書で最高解約返戻率を確認してください。
- 資産計上の判定は契約者(法人)が複数の保険に入っている場合、まとめて判定するのですか。
- 資産計上割合の判定自体は契約ごとに行います。ただし少額特例の30万円の判定だけは、同じ被保険者にかかる保険料を合算して判定する点に注意してください。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 法人税基本通達9-3-5、9-3-5の2(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)
- 令和元年6月28日付法令解釈通達「法人税基本通達等の一部改正について」(保険料の資産計上に関する改正)
- 国税庁ホームページ 法人税関係質疑応答事例(保険料の税務処理関連)
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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