- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:評基通178
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
非上場会社の株式を相続税や贈与税のために評価するとき、いちばん最初に決めなければならないのが会社規模です。大会社・中会社・小会社のどれに当たるかによって、そのあとの評価方法がまったく変わります。この判定は、従業員数・総資産価額・取引金額という3つの数字を、業種別の基準表にあてはめて行います。
この計算式を3行でいうと
- 従業員が70人以上の会社は、業種を問わず自動的に大会社と判定され、以降の計算は不要になります。
- 70人未満の場合は、総資産価額と従業員数による区分(低い方を採用)と、取引金額による区分を比べ、高い方を採用します。
- 業種(卸売業・小売サービス業・その他)ごとに基準となる金額や人数が異なるため、業種別の基準表で確認します。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
会社規模の判定(Lの割合)
評基通178★結果コピーリンク従業員数・総資産・取引金額から、大会社/中会社(Lの割合0.90・0.75・0.60)/小会社を判定します。非上場株式の評価方式を決める入口です。
| 総資産×従業員による区分 | 中会社の中(L=0.75) |
| 取引金額による区分 | 中会社の中(L=0.75) |
| 判定(高い方) | 中会社の中(L=0.75) |
| 評価方式 | 併用方式:類似×L+純資産×(1−L) |
こんなときに使います
- 非上場会社の株式を相続や贈与で取得し、評価方法を決める前段階として会社規模を確認したいとき
- 類似業種比準価額と純資産価額のどちらを重視した評価になるか、あらかじめ見当をつけたいとき
- 事業承継や自社株対策を検討していて、自社が大会社・中会社・小会社のどれにあたるか知りたいとき
- 決算内容が変わり、前回の評価から会社規模の区分が変わっていないか確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 業種 | 会社の主な事業が、卸売業・小売サービス業・それ以外のどれにあたるかです。基準表は業種ごとに異なります。 | 売上高の構成から、どの業種に区分されるかを確認します。複数の事業を行っている場合は、取引金額の内容から判定します。 |
| 従業員数 | 会社で働く従業員の人数です。継続して勤務している人に加え、パートやアルバイトなど臨時雇用の人は労働時間などで人数に換算します。 | 賃金台帳、労働者名簿などから人数を数えます。 |
| 帳簿総資産 | 直前期末における、帳簿価額ベースの総資産の金額です。時価ではありません。 | 決算書の貸借対照表(資産の部合計)で確認します。 |
| 年間取引金額 | 直前期における、1年間の売上高です。 | 決算書の損益計算書(売上高)で確認します。 |
4つの項目のうち、業種の判定がいちばん悩ましいポイントです。卸売業・小売サービス業・その他のどれに当てはまるかによって、そのあとの基準表そのものが変わるため、迷った場合は税理士など専門家に相談することをおすすめします。
計算のしくみ(3ステップ)
- 従業員数が70人以上かを確認する:70人以上であれば、業種を問わず自動的に大会社と判定され、以降の計算は不要です。
- 総資産価額と従業員数による区分を確認する:70人未満の場合、業種別の基準表で「総資産価額による区分」と「従業員数による区分」をそれぞれ確認し、低い方(小さい方の区分)を採用します。
- 取引金額による区分と比較する:業種別の基準表で「取引金額による区分」を確認し、ステップ2で採用した区分と比べて、高い方(大きい方の区分)を最終的な会社規模とします。中会社と判定された場合は、あわせてLの割合(0.90・0.75・0.60のいずれか)も決まります。
具体的な金額・人数の基準表は、業種(卸売業・小売サービス業・その他)ごとに、国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書 第1表の2」に定められています。正確な区分は、そのときどきの基準表と照らし合わせて確認してください。
具体例で確かめる
例1 従業員80人の会社のケース
従業員数が70人以上かどうかだけを確認する
総資産や取引金額を計算するまでもなく、大会社と判定される
例2 従業員25人、総資産5億円、取引金額3億円、業種「その他」のケース
従業員25人は70人未満なので、大会社ではない 基準表にあてはめると、総資産5億円・従業員25人の区分は中会社(Lの割合0.60)だったとする 取引金額3億円の区分は中会社(Lの割合0.75)だったとする 2つを比べて、高い方の区分を採用する
最終的な会社規模は中会社、Lの割合は0.75と判定される
例3 総資産・従業員数による区分と、取引金額による区分が大きく異なるケース
総資産価額・従業員数による区分が小会社、取引金額による区分が中会社(Lの割合0.60)だったとする 高い方の区分を採用するため、小会社ではなく中会社を採用する
最終的な会社規模は中会社、Lの割合は0.60。取引金額が大きいだけで区分が引き上がることがある
会社規模と評価方法の関係
| 会社規模 | 原則的評価方式の考え方 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額を基本とし、純資産価額の方が低ければそちらを選ぶこともできます。 |
| 中会社 | 類似業種比準価額とLの割合、純資産価額と(1-Lの割合)を組み合わせて計算します。 |
| 小会社 | 純資産価額を基本とし、類似業種比準価額と純資産価額を半分ずつ組み合わせた金額の方が低ければそちらを選ぶこともできます。 |
なお、この会社規模の判定が問題になるのは、同族株主など会社の経営に影響力を持つ株主が株式を取得する場合です。経営に影響力を持たない少数株主が取得する場合は、会社規模にかかわらず配当還元方式という別の簡便な評価方法を使います。
ここを間違えやすい
1|業種の判定を誤ると、すべての基準がずれます
卸売業・小売サービス業・その他のどれに区分されるかで、基準となる金額や人数がまったく異なります。複数の事業を行っている会社は、直前期の取引金額の内訳から、主たる業種を慎重に判定する必要があります。日本標準産業分類上の業種と、この判定における業種区分は必ずしも一致しません。
2|従業員数のカウント方法に注意してください
従業員数は、単純な在籍人数ではありません。継続して勤務する従業員に、パートやアルバイトなど臨時従業員の労働時間を一定の方法で換算した人数を加えて計算します。役員は原則として従業員数に含めませんが、使用人兼務役員の扱いなど細かい論点もあるため、正確な人数の算定には注意が必要です。
3|「総資産」は帳簿価額であって時価ではありません
会社規模の判定に使う総資産は、直前期末の決算書に計上されている帳簿価額です。含み益のある土地などを時価に置き換えて判定するわけではありません(時価は純資産価額の計算のほうで別途使います)。帳簿価額と時価が大きく離れている会社ほど、この違いを意識しておく必要があります。
4|会社規模は毎期変わる可能性があります
従業員数や取引金額は決算のたびに変動します。前回の評価で中会社だったからといって、今回も同じ区分になるとは限りません。評価のたびに、最新の決算数値で判定し直す必要があります。事業拡大で従業員が増えた結果、区分が引き上がって評価額が変わることもあります。
よくある質問
- 持株会社のように、事業をほとんど行っていない会社はどう判定しますか。
- 取引金額がほとんどない会社は、業種の判定や取引金額による区分の考え方が特殊になることがあります。子会社株式の配当収入が中心の持株会社などは、事業実態に応じた個別の判断が必要になるため、慎重な検討が求められます。
- グループ会社がある場合、従業員数は合算しますか。
- 合算しません。会社規模の判定は、あくまで評価対象となる会社単体の従業員数・総資産・取引金額で行います。グループ全体の規模で判定するわけではない点に注意してください。
- 設立したばかりで、直前期の実績がない場合はどうしますか。
- 直前期の決算数値がない、または期間が短い場合は、開業後の状況に応じた特別な評価方法が定められています。通常の会社規模の判定とは異なる取り扱いになることがあります。
- 大会社と判定されると、税負担は必ず重くなりますか。
- 一概には言えません。大会社は類似業種比準価額を基本とするため、その会社の純資産価額のほうが大きい場合は、むしろ評価額が下がることもあります。実際に両方の方法で試算して比較することが大切です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達178(取引相場のない株式の評価上の区分)、179(取引相場のない株式の評価の原則)
- 国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」第1表の2(評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書)
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
関連する計算ツール
← 税務計算ツール集(全168式)の一覧にもどるこの計算、実際の数字で確かめませんか
札幌のジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)が、御社の実額をもとに試算し、次に打つ手までご提案します。初回のご相談は無料です。
初回相談(無料)を申し込む料金・契約の流れを見る