- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:評基通185・186-2
- 入力6項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
非上場株式の評価方式のひとつに、純資産価額方式があります。会社を今すぐ解散したらいくら残るかという考え方にもとづき、資産と負債を相続税のルールで評価し直して1株あたりの金額を出します。含み益に対する税金相当分をあらかじめ差し引く点が特徴です。
この計算式を3行でいうと
- 総資産・負債を相続税評価額と帳簿価額で入力すると、評価差額と、法人税等相当額37%控除後の1株あたり純資産価額を計算します。
- 評価差額がマイナス、つまり相続税評価のほうが帳簿より低い場合は、37%控除は行わず評価純資産をそのまま株式数で割ります。
- 議決権割合50%以下の同族株主グループが取得する株式は、原則的な評価額の80%相当まで下げて評価できます。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
純資産価額の完全計算(37%控除・80%評価)
評基通185・186-2★結果コピーリンク相続税評価ベースと帳簿ベースの資産・負債から評価差額を求め、法人税等相当額37%を控除した1株あたり純資産価額を計算します。議決権割合50%以下の同族株主グループは80%評価も表示。
| 相続税評価の純資産 | ¥200,000,000 |
| 帳簿の純資産 | ¥150,000,000 |
| 評価差額(含み益) | ¥50,000,000 |
| 法人税等相当額(37%) | ¥18,500,000 |
| 控除後純資産 | ¥181,500,000 |
| 1株あたり(100%) | ¥18,150 |
| 1株あたり(80%評価) | ¥14,520 |
こんなときに使います
- 会社規模が小会社に区分され、純資産価額方式で自社株を評価するとき
- 株式保有特定会社・土地保有特定会社などに該当し、純資産価額方式が原則になったとき
- 会社が土地や有価証券の含み益を多く抱えていて、評価額への影響を試算したいとき
- 少数株主として株式を取得する場合に、80%評価が使えるか確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 総資産(相続税評価) | 会社の資産を、相続税の評価ルールで評価し直した合計額です。 | 直前期末の資産を財産評価基本通達にもとづいて評価し直した金額です。 |
| 総資産(帳簿価額) | 決算書に記載されている、資産の帳簿上の金額の合計です。 | 直前期末の貸借対照表の資産合計欄で確認します。 |
| 負債(相続税評価) | 会社の負債を、相続税の評価ルールで評価し直した合計額です。 | 通常は帳簿価額とほぼ同額ですが、未払いの退職金や保証債務などの扱いには注意が必要です。 |
| 負債(帳簿価額) | 決算書に記載されている、負債の帳簿上の金額の合計です。 | 直前期末の貸借対照表の負債合計欄で確認します。 |
| 発行済株式数(自己株控除後) | 自己株式(自社が保有する自社株)を除いた、実際に発行されている株式の数です。 | 株主名簿や決算書の注記から確認します。 |
| 80%評価(議決権50%以下グループ) | 株式を取得する人が属する同族株主グループの、取得後の議決権割合が50%以下かどうかです。 | 株主名簿や議決権割合の判定結果から確認します。該当すれば1、しなければ0を入力します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 評価純資産を出す:総資産(相続税評価)から負債(相続税評価)を引きます。
- 帳簿純資産を出す:総資産(帳簿価額)から負債(帳簿価額)を引きます。
- 評価差額に37%を掛けて控除する:評価純資産から帳簿純資産を引いた評価差額に37%を掛け、評価純資産から差し引きます。評価差額がマイナスの場合は、この控除は行いません。
- 発行済株式数で割る:ここまでの金額を発行済株式数(自己株控除後)で割ると、1株あたりの純資産価額になります。議決権割合50%以下の同族株主グループが取得する場合は、この金額にさらに80%を掛けます。
相続税評価額と帳簿価額の差(評価差額)は、いわば会社が抱えている含み益です。含み益をそのまま株価に反映すると、将来その資産を売却したときにかかる税金分まで株価に乗ってしまうため、37%という一定の割合で調整します。
具体例で確かめる
例1 標準的な数値例(この計算機の初期値)のケース
評価純資産 = 3億円 - 1億円 = 2億円 帳簿純資産 = 2億5,000万円 - 1億円 = 1億5,000万円 評価差額 = 2億円 - 1億5,000万円 = 5,000万円 1株純資産価額 =(2億円 - 5,000万円×37%)÷ 10,000株
1株あたり18,150円(評価差額に対する法人税等相当額1,850万円を控除した金額)
例2 評価差額がマイナスになるケース(含み損がある会社)
評価純資産 = 1億8,000万円 - 8,000万円 = 1億円 帳簿純資産 = 2億2,000万円 - 8,000万円 = 1億4,000万円 評価差額 = 1億円 - 1億4,000万円 = マイナス4,000万円(マイナスのため37%控除なし) 1株純資産価額 = 1億円 ÷ 5,000株
1株あたり20,000円。評価差額がマイナスのときは、評価純資産をそのまま株式数で割るだけになる
例3 同じ会社を、議決権割合50%以下のグループが取得するケース
例1と同じ会社(原則的な1株純資産価額18,150円)を、議決権割合50%以下の同族株主グループが取得する場合 80%評価 = 18,150円 × 80%
1株あたり14,520円。原則的な評価額より20%低い金額になる
会社規模と評価方式の関係
純資産価額方式は、会社規模にかかわらずすべての非上場株式の評価で関わってくる基本の方式です。会社規模によって、ほかの方式とどう組み合わせるかが変わります。
| 会社規模 | 原則の評価方式 | 純資産価額との関係 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額方式 | 計算した類似業種比準価額が純資産価額を上回る場合は、純資産価額を選べます。 |
| 中会社 | 類似業種比準価額と純資産価額の併用方式 | 併用方式で計算した金額が純資産価額を上回る場合は、純資産価額を選べます。 |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 一定の割合までは類似業種比準価額との併用も選べます。 |
ここを間違えやすい
1|「帳簿価額」と「相続税評価額」を混同しないでください
決算書の数字をそのまま両方の欄に入力すると、含み益・含み損が計算に反映されず、本来の評価額と大きくずれてしまいます。2種類の金額を用意する手間を省略しないでください。
2|直前期末から3年以内に取得した土地・建物には特別なルールがあります
相続税評価額(路線価や固定資産税評価額)ではなく、課税時期における通常の取引価額に近い金額で評価します。取得直後に相続税評価額を使うと、路線価などが実勢価格より低いことを利用して評価差額を不自然に大きくできてしまうため、それを防ぐための規定です。
3|営業権や生命保険金の計上漏れに注意してください
決算書に載っていない権利や、保険事故が発生していない生命保険契約の権利(解約返戻金相当額)なども、相続税評価上は資産に含める必要がある場合があります。決算書だけを見て資産を洗い出すと漏れが生じやすい部分で、これらを見落とすと評価額が実態より低く出てしまいます。
4|80%評価は「株式を取得する人」の議決権割合で判定します
会社全体の同族株主グループの議決権割合ではなく、実際にその株式を取得する人が属するグループの、取得後の議決権割合が50%以下かどうかで判定します。中心的な同族株主に該当する場合は対象外になるなど、細かい条件があります。
よくある質問
- 37%という数字は何ですか。
- 評価差額(含み益)に対して、将来その資産を売却した際にかかるとみなされる法人税等相当額の割合です。会社を清算した場合に生じる税負担を考慮して、評価額を圧縮するための仕組みです。
- 評価差額がマイナスのときはどうなりますか。
- 37%の控除は行わず、評価純資産をそのまま発行済株式数で割ります。含み損がある会社では、この処理によって評価額が不当に下がりすぎないようになっています。
- 80%評価はどんな人でも使えますか。
- 使えません。同族株主のうち、株式を取得したあとの議決権割合が50%以下となるグループに属する人が対象です。中心的な同族株主に該当するかどうかなど細かい条件があるため、個別の確認が必要です。
- 純資産価額方式は必ず使わなければいけませんか。
- 会社規模によって異なります。小会社は原則として純資産価額方式、大会社は類似業種比準価額方式が原則ですが、いずれの規模でも、計算の結果、純資産価額のほうが低くなる場合はそちらを選べます。株式保有特定会社や土地保有特定会社に該当する場合は、会社規模にかかわらず純資産価額方式が原則になります。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達185(純資産価額)、186-2(評価差額に対する法人税額等相当額)
- 財産評価基本通達186(純資産価額計算上の負債)
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
関連する計算ツール
← 税務計算ツール集(全168式)の一覧にもどるこの計算、実際の数字で確かめませんか
札幌のジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)が、御社の実額をもとに試算し、次に打つ手までご提案します。初回のご相談は無料です。
初回相談(無料)を申し込む料金・契約の流れを見る