- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:評基通185
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
非上場株式を評価するもうひとつの方法が純資産価額方式です。会社を今すぐ清算したと仮定して、資産から負債を引いた正味の財産を株式数で割り、1株当たりの価値を求めます。ただし、土地や有価証券に含み益がある場合は、それを売却したときにかかる法人税等の負担分をあらかじめ差し引くのが特徴です。
この計算式を3行でいうと
- 評価額は「(相続税評価による純資産-含み益×37%)÷発行済株式数」で計算します。
- 含み益は、相続税評価額の純資産から帳簿価額の純資産を引いて求めます。マイナスなら0として扱います。
- おもに規模の小さな会社で重視される方式で、大会社では類似業種比準価額との組み合わせになります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
純資産価額方式
評基通185★結果コピーリンク非上場株式を、相続税評価の純資産から含み益への法人税相当額(37%)を控除して評価します。
| 相続税評価純資産 | ¥200,000,000 |
| 評価差額(含み益) | ¥50,000,000 |
| 法人税等相当額37% | ¥18,500,000 |
| 純資産価額 | ¥181,500,000 |
| 1株当たり | ¥18,150 |
こんなときに使います
- 土地や有価証券を多く保有する同族会社の株式を、相続や贈与の前に評価したいとき
- 設立から日が浅く、類似業種比準価額の実績が少ない会社の株式を評価したいとき
- 会社を解散・清算した場合の1株当たりの価値の目安を知りたいとき
- 含み益の大きい資産を持つ会社で、評価額がどう変わるか試算したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 相続税評価の総資産 | 会社が持つ土地・建物・有価証券などすべての資産を、相続税評価の方法で評価し直した合計額です。 | 直前期末(または課税時期)の資産を、財産評価基本通達の各評価方法で評価し直して合計します。 |
| 負債 | 相続税評価上、控除できる負債の合計額です。帳簿上の負債とほぼ同額になります。 | 直前期末の貸借対照表の負債の部をもとに計算します。 |
| 帳簿価額の純資産 | 資産・負債を評価し直す前の、決算書どおりの純資産の金額です。 | 直前期末の貸借対照表の純資産の部(帳簿価額)です。 |
| 発行済株式数 | 評価会社が発行している株式の総数です。自己株式がある場合は控除します。 | 株主名簿や決算書の注記で確認します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 相続税評価による純資産を求める:資産を相続税評価の方法で評価し直した金額から、負債を差し引きます。
- 含み益を求める:相続税評価による純資産から、帳簿価額の純資産を差し引きます。評価し直したことで増えた金額が含み益です。マイナスになる場合は0として扱います。
- 法人税相当額を控除して株式数で割る:含み益に37%を掛けた金額を、相続税評価による純資産から差し引き、発行済株式数で割ります。
具体例で確かめる
例1 土地の含み益が大きい会社のケース
相続税評価の総資産300,000,000円、負債100,000,000円、帳簿価額の純資産150,000,000円、発行済株式数10,000株 相続税評価純資産 = 300,000,000円 - 100,000,000円 = 200,000,000円 含み益 = 200,000,000円 - 150,000,000円 = 50,000,000円
評価額 = (200,000,000円-50,000,000円×37%)÷10,000株 = 1株18,150円
例2 含み益がほとんどないケース
相続税評価の総資産220,000,000円、負債100,000,000円、帳簿価額の純資産120,000,000円、発行済株式数10,000株 相続税評価純資産 = 220,000,000円 - 100,000,000円 = 120,000,000円 含み益 = 120,000,000円 - 120,000,000円 = 0円
評価額 = 120,000,000円 ÷ 10,000株 = 1株12,000円(37%控除は発生しない)
例3 含み損(評価額が帳簿価額より低い)のケース
相続税評価の総資産180,000,000円、負債100,000,000円、帳簿価額の純資産100,000,000円、発行済株式数10,000株 相続税評価純資産 = 180,000,000円 - 100,000,000円 = 80,000,000円 含み益 = 80,000,000円 - 100,000,000円 = マイナス20,000,000円 → 0円として扱う
評価額 = 80,000,000円 ÷ 10,000株 = 1株8,000円(37%を上乗せして評価が下がることはない)
ここを間違えやすい
1|含み益がマイナスでも37%を足して評価を上げることはできません
帳簿価額のほうが相続税評価額より大きい、いわゆる含み損の状態の場合、含み益は0として計算します。マイナスの含み益を使って評価額をかさ上げすることはできません。
2|同族株主以外が取得する株式には別の調整があります
会社を支配していない少数株主が取得する株式については、通常の純資産価額の80%相当額で評価する特例があります。該当するかどうかは株主構成によって変わるため、個別の判断が必要です。
3|資産の評価替えは項目ごとにルールが異なります
土地は路線価方式、上場株式は市場価格というように、資産の種類ごとに定められた評価方法で1つずつ評価し直す必要があります。帳簿価額をそのまま使ってよい資産と、評価し直しが必要な資産があります。
4|3年以内に取得した土地・建物は取得価額で評価します
課税時期前3年以内に会社が取得した土地や建物は、相続税評価額ではなく、取得時の価額(通常の取引価額)で評価するという特別なルールがあります。
よくある質問
- なぜ含み益から37%を差し引くのですか。
- 会社が資産を売却して含み益を実現すると、法人税等の負担が生じます。将来その負担が発生することを見込んで、あらかじめその分だけ評価額を差し引くという考え方です。
- 類似業種比準価額とはどう使い分けますか。
- 会社の規模によって決まります。小会社では純資産価額方式が原則で、大会社になるほど類似業種比準価額の比重が高くなります。いずれか低い金額を選べる場合もあります。
- 負債にはどんなものを含められますか。
- 借入金や未払金、退職給与引当金に相当する金額など、確実と認められる債務を含めます。単なる引当金で、実際の債務として確定していないものは含められない場合があります。
- 赤字続きの会社でも純資産価額はプラスになりますか。
- 資産と負債の差額で決まるため、赤字が続いていても保有資産の評価額が高ければプラスになることがあります。逆に含み損を抱えている会社では、ゼロに近づくこともあります。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達185(純資産価額)、186(純資産価額計算上の負債)
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
- 国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」記載方法
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