- カテゴリ:個人の譲渡所得
- 根拠:措法37の12の2
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
上場株式などを売って損失が出た年は、その損失を翌年以降に持ち越して、将来の利益と相殺できます。これが譲渡損失の繰越控除です。相殺できれば、その分だけ将来の税金が軽くなります。ただし繰り越せる期間は3年間だけで、途中で申告を1年でも休むと権利を失う点に注意が必要です。
この計算式を3行でいうと
- 繰り越せる期間は最長3年間。翌年以降に出た譲渡益や配当(申告分離課税分)と相殺できます。
- 相殺できた金額に、上場株式等の税率20.315%を掛けた金額が、軽くなる税金の目安になります。
- 繰越控除を使い続けるには、利益がゼロの年も含めて、毎年連続して確定申告をする必要があります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
上場株式の譲渡損失の繰越控除
措法37の12の2★結果コピーリンク本年の譲渡損失を翌年以後3年間の譲渡益・配当と相殺した場合の税還付効果を試算します。
| 1年目: 相殺1,000,000円 | ¥203,150 還付相当 |
| 2年目: 相殺1,000,000円 | ¥203,150 還付相当 |
| 3年目: 相殺500,000円 | ¥101,575 還付相当 |
| 3年で使い切れない損失 | ¥500,000 |
| 税効果合計(20.315%) | ¥507,875 |
こんなときに使います
- 去年、株や投資信託を売って大きな損失が出てしまったとき
- 今年は株で利益が出たが、去年の損失と相殺して税金を減らしたいとき
- 配当金にも税金がかかっているが、繰り越した損失で取り戻せないか知りたいとき
- 損失が出た年から確定申告を続けているが、この先何年分の利益まで相殺できるか確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 本年の譲渡損失 | その年に株式や投資信託などを売って生じた損失の合計額です。複数の証券会社で取引している場合はすべて合算します。 | 証券会社が発行する「年間取引報告書」の譲渡損益の欄で確認できます。 |
| 翌年の利益(譲渡益+配当) | 繰り越した損失と相殺したい、翌年に見込む譲渡益と、申告分離課税を選ぶ配当の合計です。 | 翌年分の年間取引報告書、または証券会社の取引画面の実現損益で確認します。 |
| 翌々年の利益 | 2年目に見込む譲渡益と配当の合計です。まだ確定していない場合は見込み額を入力します。 | 同上(翌々年分の年間取引報告書)。 |
| 3年目の利益 | 繰越控除が使える最後の年に見込む譲渡益と配当の合計です。 | 同上(3年目分の年間取引報告書)。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 損失が出た年に申告する:損失が出た年の確定申告で「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除明細書」を提出し、損失額を確定させます。この年は税金の還付がなくても、申告そのものが翌年以降の権利を作ります。
- 翌年以降、利益と相殺する:翌年に譲渡益や申告分離課税を選んだ配当があれば、繰り越した損失から順に差し引きます。相殺しきれなかった損失は、さらに翌年へ繰り越します。
- 相殺した分だけ税金が軽くなる:相殺できた金額に、上場株式等の税率20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)を掛けた金額が、軽くなる税額の目安です。
繰越控除が使える期間は、損失が出た年の翌年から数えて3年間です。3年間で使いきれなかった損失は、4年目以降には繰り越せず消えてしまいます。
具体例で確かめる
例1 損失300万円を3年かけて使いきるケース
1年目:損失300万円-利益100万円=残り200万円(この年の軽減額 = 100万円×20.315%) 2年目:残り200万円-利益100万円=残り100万円(軽減額 = 100万円×20.315%) 3年目:残り100万円-利益50万円=残り50万円(軽減額 = 50万円×20.315%)
3年間の軽減額の合計は約50万7,875円。ただし3年目で使いきれなかった50万円分の損失は、4年目には繰り越せず消滅する
例2 2年目で損失を使いきるケース
1年目:損失150万円-利益100万円=残り50万円 2年目:残り50万円-利益100万円=相殺できるのは50万円分だけ(利益100万円のうち50万円分には課税される)
2年間で相殺できた合計は100万円。軽減額は約20万3,150円で、3年目に繰り越す損失はゼロ
例3 途中の年に申告を忘れたケース
1年目:損失200万円を申告し繰越を開始 2年目:利益が出なかったため申告不要と考え、確定申告をしなかった 3年目:利益150万円が出たが…
2年目の申告を欠いた時点で繰越控除は打ち切りとなり、3年目の利益150万円と相殺することはできない
相殺できる利益・できない利益
| 区分 | 相殺できる(○) | 相殺できない(×) |
|---|---|---|
| 株式・投資信託の譲渡益 | 特定口座・一般口座で申告した上場株式等の譲渡益 | NISA口座(つみたて投資枠・成長投資枠)内で生じた譲渡益 |
| 配当・分配金 | 申告分離課税を選んで確定申告した上場株式等の配当・分配金 | 確定申告不要制度のままにした配当、総合課税を選んだ配当 |
| 他の所得 | 該当なし | 給与所得、事業所得など株式等以外の所得 |
ここを間違えやすい
1|利益がゼロの年も申告を休むと権利を失います
繰越控除を続けるには、相殺できる利益がない年でも確定申告を続ける必要があります。1年でも申告を欠くと、それ以降は繰り越した損失を使えなくなります。
2|NISA口座の損失は最初から対象外です
NISA口座内で生じた譲渡損失は、税務上そもそも生じなかったものとして扱われます。繰越控除の対象にならないだけでなく、特定口座など他の口座の利益と相殺することもできません。
3|配当は「申告分離課税」を選んだ場合だけ相殺できます
配当を確定申告不要制度のままにしたり、総合課税を選んで申告したりすると、繰越損失との相殺には使えません。繰越損失がある年は、配当を申告分離課税で申告するかどうかを事前に検討してください。
4|3年間で使いきれない損失は繰り越せません
繰越控除の期間は最長3年間です。損失が大きく、3年間の利益だけでは相殺しきれない場合、残った分は切り捨てられ、4年目以降の利益と相殺することはできません。
よくある質問
- 損失を繰り越すには、具体的に何を提出すればよいですか。
- 損失が出た年の確定申告書に「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除明細書」を添付します。翌年以降、相殺する年も含めて、繰越控除を受ける旨を記載した確定申告書を毎年提出します。
- 会社員で確定申告をしたことがありませんが、この制度は使えますか。
- 使えます。給与所得者であっても、繰越控除を受けるための確定申告は別途必要です。特定口座(源泉徴収あり)で普段は申告不要でも、繰越控除を使う年は申告してください。
- NISA口座と特定口座の両方で取引しています。損益通算はどうなりますか。
- NISA口座内の損益は税務上ないものとして扱われるため、特定口座など課税口座の損益とは通算できません。通算・繰越の対象になるのは課税口座分の損益だけです。
- 相殺する順番に決まりはありますか。
- その年に出た譲渡益や配当に対して、繰り越している損失のうち古い年のものから順に相殺していく扱いになります。複数年の繰越損失がある場合は、この順序に沿って計算します。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 租税特別措置法第37条の12の2(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除等)
- 国税庁タックスアンサー No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
- 国税庁タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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