- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:評基通179
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
非上場会社の株式を相続や贈与で評価するとき、経営に影響力を持つ株主(同族株主など)に適用されるのが原則的評価方式です。会社の利益や配当の水準を業種平均と比べる類似業種比準価額と、会社の正味財産をもとにする純資産価額を、会社規模に応じて組み合わせて1株あたりの評価額を求めます。
この計算式を3行でいうと
- 大会社は類似業種比準価額、小会社は純資産価額が基本です。どちらも低い方を選べる場合があります。
- 中会社は「類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)」で計算します。Lの割合は0.90・0.75・0.60のいずれかです。
- 会社規模の判定を誤ると計算式そのものが変わるため、評価の前に会社規模を確定させておく必要があります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
非上場株式の原則的評価(総合)
評基通179★結果コピーリンク会社規模に応じて、類似業種比準価額と純資産価額を組み合わせた1株あたりの原則的評価額を計算します。
| 方式 | 中会社: 類似×90%+純資産×10% |
| 類似業種比準価額 | ¥2,555 |
| 純資産価額 | ¥18,150 |
| 評価額 | ¥4,114 |
こんなときに使います
- 非上場会社のオーナー経営者が、自社株の相続税評価額を試算したいとき
- 事業承継の準備として、後継者に株式を贈与する前に評価額の目安を知りたいとき
- 類似業種比準価額と純資産価額のどちらが評価額を左右するか、会社規模ごとの違いを知りたいとき
- 決算内容の変化(利益や配当、純資産の増減)が評価額にどう影響するか、あらかじめ確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 類似業種比準価額 | 業種が似ている上場会社の株価をもとに、配当・利益・純資産の3要素を比較して算定した1株あたりの価額です。 | 類似業種比準価額の計算明細書(国税庁公表の業種別データを使用)で算定します。 |
| 純資産価額 | 会社の資産と負債をすべて相続税評価額で計算しなおし、含み益への法人税相当額を控除した後の、1株あたりの正味財産の価額です。 | 純資産価額の計算明細書で算定します。 |
| 会社規模(0大/1中/2小) | 従業員数・総資産・取引金額から判定した、大会社・中会社・小会社の区分です。 | 会社規模の判定(Lの割合)の計算であらかじめ確認しておきます。 |
| Lの割合(中会社) | 中会社と判定された場合に使う加重平均の割合です。会社規模の判定にあわせて0.90・0.75・0.60のいずれかが決まります。 | 会社規模の判定の結果とあわせて確認します。大会社・小会社の場合は使いません。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 会社規模を確認する:あらかじめ会社規模(大会社・中会社・小会社)を判定しておきます。会社規模によって、このあとの計算式が変わります。
- 会社規模に応じた計算式を選ぶ:大会社は類似業種比準価額、小会社は純資産価額を基本とします。中会社は、類似業種比準価額にLの割合を、純資産価額に(1-Lの割合)を掛けて合計します。
- 低い方を選べる場合は比較する:大会社では類似業種比準価額と純資産価額の低い方、小会社では純資産価額と(類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5)の低い方を選ぶことができます。低い方を選んだほうが、評価額は小さくなります。
会社規模の3区分すべてに共通しているのは、「類似業種比準価額と純資産価額という2つのものさしを、規模に応じた比率で混ぜ合わせる」という考え方です。大会社ほど類似業種比準価額(業種平均との比較)の比重が大きく、小会社ほど純資産価額(その会社の実際の財産)の比重が大きくなります。
具体例で確かめる
例1 中会社(Lの割合0.90)、類似業種比準価額2,555円、純資産価額18,150円のケース
評価額 = 2,555円 × 0.90 + 18,150円 × (1-0.90) = 2,299.5円 + 1,815円
評価額は1株4,114.5円
例2 大会社、類似業種比準価額6,200円、純資産価額5,100円のケース
類似業種比準価額と純資産価額を比べ、低い方を選ぶ 6,200円 と 5,100円 のうち、低いのは5,100円
評価額は1株5,100円。大会社でも、純資産価額の方が低ければそちらを選べる
例3 小会社、類似業種比準価額3,000円、純資産価額9,000円のケース
折衷額 = 3,000円 × 0.5 + 9,000円 × 0.5 = 6,000円 純資産価額9,000円と折衷額6,000円を比べ、低い方を選ぶ
評価額は1株6,000円。小会社では、純資産価額をそのまま使うより低く出ることがある
会社規模ごとの計算式一覧
| 会社規模 | 評価額の計算式 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額。ただし純資産価額の方が低い場合は、純資産価額を選ぶこともできます。 |
| 中会社 | 類似業種比準価額×Lの割合 + 純資産価額×(1-Lの割合)。 |
| 小会社 | 純資産価額。ただし(類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5)の方が低い場合は、そちらを選ぶこともできます。 |
どの区分でも、計算した結果のうち低い方を選べるようになっている点が共通しています。これは、非上場株式には市場で売買できない分の不利益があることを考慮し、評価額が過大にならないよう配慮した仕組みだと理解しておくとよいでしょう。会社規模が大きいほど類似業種比準価額の比重が増えるのは、規模の大きい会社ほど上場会社の株価水準と比較しやすい、という考え方にもとづいています。
ここを間違えやすい
1|この評価方式が使えるのは同族株主など経営に影響力を持つ株主だけです
経営に影響力を持たない少数株主が株式を取得する場合は、この原則的評価方式ではなく、配当還元方式という別の簡便な評価方法を使います。まず取得する株主の立場(同族株主かどうか、議決権割合はどの程度か)を確認する必要があります。
2|会社規模の判定を誤ると、計算式全体が変わってしまいます
大会社・中会社・小会社のどれにあたるかによって計算式が異なるため、会社規模の判定を誤ると評価額も大きく変わります。このページの計算をする前に、会社規模の判定を済ませておいてください。
3|純資産価額には議決権割合による調整があります
相続や贈与によって株式を取得した後の議決権割合が50%以下になる同族株主グループに属する場合、純資産価額を80%に減額して計算できる特例があります。誰がどれだけ議決権を持つかによって、この調整の有無が変わるため、株主構成の一覧を整理してから計算することをおすすめします。
4|類似業種比準価額と純資産価額は、それぞれ別に算定が必要です
このページでは2つの価額を入力値として使いますが、実際にはそれぞれ専用の計算明細書にもとづいて別途算定する必要があります。どちらも決算数値や業種データが変われば、そのたびに変動します。
よくある質問
- 類似業種比準価額と純資産価額、どちらが高くなりやすいですか。
- 会社の状況によって異なります。利益や配当が業種平均より高い会社は類似業種比準価額が高くなりやすく、創業から年数がたって含み益の大きい資産(土地など)を多く持つ会社は、純資産価額が高くなりやすい傾向があります。
- Lの割合が0.90と0.60では、評価額にどれくらい差が出ますか。
- 類似業種比準価額と純資産価額の差が大きいほど、Lの割合による影響も大きくなります。Lの割合が高いほど類似業種比準価額の比重が増し、低いほど純資産価額の比重が増すため、2つの価額の差が大きい会社ほど、どちらの区分になるかで評価額が変わりやすくなります。
- 赤字の会社でも、この評価方式で計算しますか。
- 赤字であっても、類似業種比準価額・純資産価額それぞれの計算方法にしたがって算定します。ただし配当や利益がマイナスの場合の取り扱いなど、通常の黒字会社とは異なる調整が必要になることがあります。
- 評価額の計算は自分でもできますか。
- 類似業種比準価額や純資産価額の算定には、業種データの参照や資産・負債の評価替えなど専門的な作業が必要です。評価額を誤ると税額が大きく変わり、金額そのものも高額になりやすい取引であるため、税理士に依頼して計算することが一般的です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達179(取引相場のない株式の評価の原則)、185(純資産価額の計算方法)
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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