過大支払利子税制の計算方法|自動計算ツール

  • カテゴリ:国際税務
  • 根拠:措法66の5の2
  • 入力2項目・その場で自動計算
  • 令和8年度の数値に対応

海外の親会社やグループ会社との取引が多い法人では、利子の支払いを通じて日本の利益を海外に移し、税負担を軽くする手法が問題視されてきました。そこで設けられたのが過大支払利子税制です。会社の稼ぐ力に対して利子の支払いが大きすぎる場合、その超えた部分を経費として認めない仕組みになっています。

この計算式を3行でいうと

  1. 損金不算入額は「対象純支払利子-調整所得金額×20%」で計算します。マイナスなら不算入額はゼロです。
  2. 調整所得金額は法人税の所得金額に利子や減価償却費などを足し戻した、いわば会社の稼ぐ力を表す指標です。
  3. 損金にできなかった金額は捨てるのではなく、7年間繰り越して将来の所得から差し引くことができます。

まずは計算してみる(自動計算ツール)

過大支払利子税制

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純支払利子が調整所得金額の20%を超える部分は損金不算入。超過利子額は7年繰越です。

損金不算入 = 対象純支払利子 − 調整所得 × 20%
損金不算入額 ¥10,000,000
調整所得×20%¥40,000,000
損金不算入(7年繰越)¥10,000,000
目次

こんなときに使います

  • 海外の親会社やグループ会社から多額の借入れをしていて、支払利子が多いとき
  • 海外子会社との資金融通で、利子の支払額が利益に対して大きくなっているとき
  • 法人税の申告にあたり、支払利子の一部が経費にならないかどうかを確認したいとき
  • 過少資本税制など他の利子関連の規制と、どちらが厳しく効くかを比べたいとき

入力する項目のかんたん解説

入力する項目どんな数字かどこを見ればよいか
対象純支払利子支払利子等の合計から、対応する受取利子等を差し引いた金額です。国外の関連会社向けだけでなく、金融機関など第三者への支払利子も範囲に含まれます。法人税申告書の別表十七(二の二)、または総勘定元帳の支払利息・受取利息の集計から確認します。
調整所得金額法人税法上の所得金額に、純支払利子や減価償却費などを足し戻した金額です。会社にどれだけ稼ぐ力があるかを示す、税務上の体力の指標だとイメージしてください。別表四の所得金額をもとに、別表十七(二の二)で加算調整して計算します。

調整所得金額に足し戻す主な項目(イメージ)

足し戻す項目ひとこと解説
純支払利子いったん経費として差し引いた支払利子を、所得金額にもう一度足し戻します。
減価償却費建物や機械設備などの減価償却費も足し戻します。実際に現金が出ていく支出ではないためです。
その他の税務調整項目一定の受贈益や還付金など、税務上あらためて加算・減算が必要な項目を調整します。

これらを足し戻すのは、会計上の利益だけでなく、キャッシュベースでどれだけ利益を生み出す力があるかを測るためです。この調整所得金額が、利子負担の重さをはかる「ものさし」の役割を果たします。

計算のしくみ(3ステップ)

  1. 対象純支払利子を求める:支払利子等の合計から受取利子等を差し引きます。国外関連者向けだけでなく、金融機関などへの支払利子も原則として含まれます。
  2. 調整所得金額の20%と比べる:調整所得金額に20%を掛けた金額を基準額とし、対象純支払利子がこれを上回っているかを確認します。
  3. 超えた部分を損金不算入にする:対象純支払利子から基準額を差し引いた金額が、その事業年度に経費として認められない金額です。マイナスになる場合は不算入額はゼロです。

損金にできなかった金額は消えてなくなるわけではありません。7年間繰り越して、その後の事業年度で基準額に余裕がある年に改めて損金算入できます。繰り越した金額は事業年度ごとに管理し、法人税申告書に記載して繰越控除の適用を受ける必要があります。申告を忘れると、余裕がある年になっても控除を受けられなくなるため注意が必要です。

具体例で確かめる

例1 対象純支払利子5,000万円、調整所得金額2億円のケース

基準額 = 200,000,000円 × 20% = 40,000,000円 損金不算入額 = 50,000,000円 - 40,000,000円

損金不算入額は1,000万円。差額の4,000万円だけが経費として認められる

例2 利子負担が軽く、基準額の範囲におさまるケース

対象純支払利子3,000万円、調整所得金額2億円の場合 基準額 = 200,000,000円 × 20% = 40,000,000円

対象純支払利子(3,000万円)が基準額(4,000万円)以下なので不算入額はゼロ

例3 業績が悪化し調整所得金額が小さいケース

対象純支払利子5,000万円、調整所得金額5,000万円の場合 基準額 = 50,000,000円 × 20% = 10,000,000円

損金不算入額は4,000万円。利益が小さい年ほど不算入額が増えやすくなる

対象になる利子・対象になりにくい利子

区分対象になりやすいもの対象になりにくいものの例
借入先国外の親会社・グループ会社や金融機関からの借入金にかかる利子対象純支払利子の額が少額で、適用除外の要件を満たす借入
利子の性質社債の利子、金銭債務の保証料のうち利子に相当する部分金融機関に預けている預金・貯金から受け取る利子(受取側)
関連の有無国外関連者向け・第三者向けを問わず、純額で計算される支払利子グループ内の貸し借りで、受取利子と相殺されて純額がゼロ以下になるもの

実際にどこまでが対象になるかは、契約の内容や利率、資金の流れによって細かく判定が分かれます。取引ごとに個別の判定が必要です。

ここを間違えやすい

1|対象は国外関連者向けの利子だけではありません

かつては海外の関連会社への支払利子が中心でしたが、現在は金融機関など第三者への支払利子も原則として対象に含まれます。国内の銀行借入だけだから関係ない、とは言い切れません。海外展開をしていない会社でも、多額の借入れがある場合は一度確認しておくと安心です。

2|調整所得金額は「所得金額」そのものではありません

法人税の所得金額に、純支払利子や減価償却費などを足し戻して計算します。赤字の会社であっても、足し戻した結果として調整所得金額がプラスになることがあります。

3|過少資本税制と両方に該当する場合は重いほうが優先されます

国外支配株主等からの借入れが多い会社では、過少資本税制の対象にもなり得ます。両方を計算し、損金不算入額が大きいほうの制度が適用される仕組みになっています。

4|繰り越した超過利子額にも使用期限があります

損金にできなかった金額は7年間繰り越せますが、無期限ではありません。繰越期間中に基準額の余裕が生まれた年に使い切れないと、その分は切り捨てられます。

よくある質問

中小企業でも対象になりますか。
対象になり得ますが、対象純支払利子の額が少額であるなど一定の要件を満たせば、適用が除外される規定が設けられています。多くの中小企業では実際に不算入額が生じるケースは限られますが、個別の判定は税理士に確認することをおすすめします。
受取利子がある場合はどう扱いますか。
支払利子等の合計から、対応する受取利子等を差し引いた「純支払利子」で計算します。受取利子が支払利子を上回れば、対象純支払利子はゼロとして扱われます。
過少資本税制とはどう違いますか。
過少資本税制は負債と資本のバランス、つまり何倍まで借りているかに着目する制度です。過大支払利子税制は利益水準に対する利子負担の大きさに着目する制度で、着眼点が異なります。同じグループ内取引でも、どちらか一方だけが問題になることもあれば、両方に該当することもあるため、両方を計算して比べる必要があります。
繰り越した超過利子額はいつ使えますか。
その後の事業年度で、対象純支払利子が基準額(調整所得金額×20%)を下回った年に、その余裕の範囲内で繰越控除として損金に算入できます。毎年の申告で繰越額の管理が必要になるため、社内でも記録を残しておくと安心です。

根拠となる法令・出典

本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。

  • 租税特別措置法第66条の5の2(対象純支払利子等に係る課税の特例)、第66条の5の3(超過利子額の損金算入)
  • 国税庁「過大支払利子税制の概要」関連通達・パンフレット

税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。

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