過少資本税制の計算方法|自動計算ツール

  • カテゴリ:国際税務
  • 根拠:措法66の5
  • 入力3項目・その場で自動計算
  • 令和8年度の数値に対応

海外に親会社を持つ会社が、出資ではなく借入れの形でお金を受け取ると、支払う利子を経費にできるぶん税負担を軽くすることができます。このような借入れへの偏りを防ぐために設けられたのが過少資本税制です。海外の支配株主からの負債が、その株主の出資額の3倍を超えている場合、超えた部分に対応する利子を経費として認めない仕組みになっています。

この計算式を3行でいうと

  1. 損金不算入額は「支払利子×(平均負債-資本持分×3)÷平均負債」で計算します。負債が資本持分の3倍以内なら不算入額はゼロです。
  2. 国外支配株主等とは、海外の親会社など会社の意思決定に強い影響力を持つ株主のことです。
  3. 過大支払利子税制と両方に該当する場合は、不算入額が大きいほうの制度だけが適用されます。

まずは計算してみる(自動計算ツール)

過少資本税制

措法66の5結果コピーリンク

国外支配株主等への負債が資本持分の3倍を超える部分に対応する支払利子を損金不算入とします。

損金不算入 = 支払利子 ×(平均負債 − 資本持分×3) ÷ 平均負債
損金不算入額 ¥10,000,000
平均負債¥900,000,000
資本持分×3(安全比率)¥600,000,000
損金不算入¥10,000,000
総負債/自己資本の判定も併用。過大支払利子税制と比較適用。
目次

こんなときに使います

  • 海外の親会社から、出資ではなく貸付けの形で多額の資金を受け入れているとき
  • 海外グループ会社との資金調達を、借入れ中心で行っているとき
  • 法人税の申告で、海外の株主への支払利子が損金にできるかどうかを確認したいとき
  • 出資を増やすか借入れのままにするか、今後の資本構成の見直しを検討しているとき

入力する項目のかんたん解説

入力する項目どんな数字かどこを見ればよいか
国外支配株主等への平均負債その事業年度中の、国外支配株主等からの借入金の平均残高です。期中に増減があれば、月末残高などをもとに平均を計算します。総勘定元帳の借入金勘定、金銭消費貸借契約書、法人税申告書別表十七(三の二)で確認します。
国外支配株主等の資本持分国外支配株主等が会社に出資している資本の金額です。資本金だけでなく、資本剰余金なども含めて計算します。株主名簿、資本金等の額の計算に関する明細書(別表五(一))で確認します。
国外支配株主等への支払利子その事業年度に国外支配株主等へ支払った利子等の合計額です。利子に準じる保証料などを含めて考える場合があります。総勘定元帳の支払利息勘定、金銭消費貸借契約書の利率・返済条件から確認します。

「資本持分」に含まれる主な項目

項目ひとこと解説
資本金登記簿に記載されている、会社の資本金の額です。
資本剰余金資本金として計上しなかった出資額(資本準備金など)も含めて考えます。
利益剰余金の扱い過去の利益の積み重ねである利益剰余金は、通常この資本持分には含めません。

資本持分は、あくまで国外支配株主等が出資として払い込んだ金額を基準に考えます。会社の純資産全体とは範囲が異なる点に注意してください。増資や減資があった年は、期中の変動をふまえて金額を確認する必要があります。

計算のしくみ(3ステップ)

  1. 基準となる資本持分の3倍を求める:国外支配株主等の資本持分に3を掛けます。これが「このラインまでの負債なら問題にしない」という基準になります。
  2. 平均負債が基準を超えているか確認する:国外支配株主等への平均負債が、資本持分の3倍を超えているかを確認します。超えていなければ、この制度による損金不算入額はゼロです。
  3. 超過部分に対応する利子を計算する:支払利子に「(平均負債-資本持分×3)÷平均負債」を掛けます。この割合が、負債のうち基準を超えている部分の比率にあたります。

この制度はあくまで国外支配株主等との間の負債・利子が対象です。国内の金融機関からの借入れなど、支配関係のない相手からの借入れは対象になりません。負債の平均残高は、期首・期末だけでなく期中の変動もふまえて計算するため、借入れや返済が多い会社ほど集計に注意が必要です。

具体例で確かめる

例1 平均負債9億円、資本持分2億円、支払利子3,000万円のケース

資本持分の3倍 = 200,000,000円 × 3 = 600,000,000円 損金不算入額 = 30,000,000円 ×(900,000,000円-600,000,000円)÷900,000,000円

損金不算入額は1,000万円。支払利子3,000万円のうち3分の1が経費にならない

例2 負債が資本持分の3倍以内におさまっているケース

平均負債4億円、資本持分2億円の場合 資本持分の3倍 = 200,000,000円 × 3 = 600,000,000円

平均負債(4億円)が基準(6億円)以下なので損金不算入額はゼロ

例3 出資を増やして資本持分を厚くしたケース

平均負債9億円のまま、資本持分を2億円から4億円に増やした場合 資本持分の3倍 = 400,000,000円 × 3 = 1,200,000,000円

平均負債(9億円)が基準(12億円)以下となり、損金不算入額はゼロになる

過大支払利子税制との比較

比較する視点過少資本税制過大支払利子税制
着目する点負債と資本のバランス(何倍まで借りているか)利益水準に対する利子負担の大きさ
対象となる相手国外支配株主等(海外の支配的な株主)国外関連者に限らず、第三者への支払利子も含む
両方に該当する場合損金不算入額を計算し、過大支払利子税制の金額と比較する損金不算入額を計算し、過少資本税制の金額と比較する

ここを間違えやすい

1|対象は「国外支配株主等」との取引に限られます

国内の金融機関からの借入れや、支配関係のない海外の取引先からの借入れは、この制度の対象にはなりません。会社の意思決定に強い影響力を持つ海外の株主との間の負債・利子だけが対象です。

2|資本持分は資本金だけで判断しません

資本持分には資本金のほか、資本剰余金なども含めて計算します。単純に登記簿上の資本金の額だけで3倍ラインを計算すると、実際の判定と食い違うことがあります。

3|総負債と自己資本の比率による判定も別途あります

国外支配株主等への負債だけでなく、会社全体の総負債が自己資本の一定倍率を超えていないかという判定も併用されます。どちらか有利な基準を選べるわけではなく、両方の要件を確認する必要があります。この判定はやや専門的なため、実務では税理士とともに別表を作成しながら確認するのが一般的です。

4|過大支払利子税制と重複するときは大きいほうが優先されます

同じ支払利子について、過少資本税制と過大支払利子税制の両方で損金不算入額が計算される場合があります。この場合は金額が大きいほうの制度が適用され、両方が重ねて適用されるわけではありません。

よくある質問

国外支配株主等とは具体的にどんな相手ですか。
会社の発行済株式の一定割合以上を保有するなど、実質的に会社を支配していると認められる海外の株主等をいいます。海外の親会社が典型例ですが、株式保有割合以外の実質的な支配関係で判定される場合もあり、判断に迷うときは個別に確認したほうが安全です。
資本持分を増やせば必ず対象から外れますか。
資本持分を厚くして負債とのバランスを3倍以内に収めれば、この制度による損金不算入は生じなくなります。ただし増資には別の手続きや税務上の検討事項もあるため、実行前に専門家へ相談することをおすすめします。
中小企業でも関係がありますか。
海外に親会社や支配的な株主がいない会社であれば、通常は対象になりません。外資系企業の日本法人や、海外資本を受け入れているベンチャー企業、海外投資ファンドから出資と貸付けの両方を受けている会社などでは、あらかじめ確認しておくと安心です。
過大支払利子税制とはどちらを先に計算しますか。
決まった順序があるわけではありません。実務では両方の制度でそれぞれ損金不算入額を計算し、金額の大きいほうを適用する、という進め方になります。どちらも別表で計算過程を示す必要があるため、申告書の作成には一定の準備期間を見ておくと安心です。

根拠となる法令・出典

本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。

  • 租税特別措置法第66条の5(国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例)
  • 国税庁「過少資本税制の概要」関連通達・パンフレット

税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。

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