移転価格TNMMの計算方法|自動計算ツール

  • カテゴリ:国際税務
  • 根拠:措法66の4
  • 入力4項目・その場で自動計算
  • 令和8年度の数値に対応

海外の関連会社と取引をしている会社は、その価格が特別に安すぎたり高すぎたりして、日本の利益が不自然に少なくなっていないかをチェックされることがあります。これが移転価格税制です。TNMM(取引単位営業利益法)は、同じような業種の他社が出している利益率と比べて、自社の利益が見合っているかを確認する代表的な方法です。実際の利益が見合っていなければ、その差額が日本の所得に加算されます。

この計算式を3行でいうと

  1. あるべき利益は「売上高×比較対象企業の営業利益率」で計算します。実際の利益がこれを下回ると調整の対象になります。
  2. 調整額は「あるべき利益-実際の営業利益」です。プラスになった分だけ、日本の所得に加算されます。
  3. 比較対象企業の利益率は複数社の四分位レンジで求め、実際の利益がレンジの外にあれば中央値まで引き直されます。

まずは計算してみる(自動計算ツール)

移転価格(TNMM・売上高営業利益率)

措法66の4結果コピーリンク

国外関連者との取引で、比較対象企業の営業利益率をもとに「あるべき利益」を求め、実際が下回れば所得加算します。

あるべき利益=売上×比較利益率/調整額=あるべき利益−実際利益
課税所得調整(加算) ¥6,000,000
あるべき営業利益¥3,000,000
あるべき仕入(独立企業間価格)¥82,000,000
実際の営業利益¥-3,000,000
所得調整(加算)¥6,000,000
四分位レンジ外なら中央値へ引直し。
目次

こんなときに使います

  • 海外に子会社や関連会社があり、取引価格が税務上問題にならないか確認したいとき
  • 海外子会社との取引が赤字続きで、移転価格税制のリスクがないか事前にチェックしたいとき
  • 移転価格の文書化にあたり、自社の利益率が比較対象企業の水準と比べてどうか把握したいとき
  • 税務調査を見据えて、所得加算のリスクがどれくらいの金額になりうるか試算したいとき

入力する項目のかんたん解説

入力する項目どんな数字かどこを見ればよいか
売上高国外関連者との取引を含む、検証対象になる事業やセグメントの売上高です。損益計算書、またはセグメント別の管理資料で確認します。
販管費その事業にかかった販売費及び一般管理費(人件費や経費など)です。売上高から販管費とあるべき営業利益を差し引いて、国外関連者からの「あるべき仕入価格(独立企業間価格)」を逆算するために使います。損益計算書の販売費及び一般管理費の合計から確認します。
比較対象の営業利益率(中央値)独立した同業他社(比較対象企業)の売上高営業利益率の中央値です。移転価格文書化のための比較対象企業分析(ベンチマーク分析)の結果を使います。
実際の営業利益検証対象の取引・事業で実際に計上した営業利益です。赤字の場合はマイナスで入力します。損益計算書の営業利益、またはセグメント別の営業利益で確認します。

計算のしくみ(3ステップ)

  1. あるべき利益を計算する:売上高に、比較対象企業の営業利益率(中央値)を掛けます。独立した会社ならこれくらいの利益が出ているはず、という目安です。
  2. 実際の営業利益と比べる:実際の営業利益が、あるべき利益より少ないかどうか、赤字になっていないかを確認します。
  3. 調整額を計算する:あるべき利益から実際の営業利益を差し引きます。プラスになった金額が、日本の所得に加算される調整額の目安です。

具体例で確かめる

例1 売上高1億円、販管費1,500万円、比較対象の営業利益率3%、実際は300万円の赤字のケース(この計算機の初期値)

あるべき利益 = 100,000,000円 × 3% = 3,000,000円 あるべき仕入価格(独立企業間価格) = 100,000,000円 - 15,000,000円 - 3,000,000円 = 82,000,000円 調整額 = 3,000,000円 -(-3,000,000円)

調整額6,000,000円 → この金額が日本の所得に加算される可能性がある

例2 黒字ではあるが、比較対象企業の水準に届いていないケース(売上高2億円、比較対象の営業利益率4%、実際の営業利益200万円)

あるべき利益 = 200,000,000円 × 4% = 8,000,000円 調整額 = 8,000,000円 - 2,000,000円

調整額6,000,000円 → 黒字であっても、水準に届いていなければ調整の対象になりうる

例3 実際の利益が比較対象企業の水準を上回っているケース(売上高1億5,000万円、比較対象の営業利益率3%、実際の営業利益600万円)

あるべき利益 = 150,000,000円 × 3% = 4,500,000円 調整額 = 4,500,000円 - 6,000,000円 = -1,500,000円

調整額がマイナスのため、この基準では所得加算は生じない

四分位レンジと引き直しの考え方

実際の利益率の位置取り扱いの目安
比較対象企業の四分位レンジの中(分布の中間50%程度)原則として、この基準による所得加算は行われない
四分位レンジより下レンジの中央値まで所得を引き直して加算する
四分位レンジより上通常、この基準による追加の調整は行われない

ここを間違えやすい

1|販管費だけで税額が決まるわけではありません

調整額は「あるべき営業利益-実際の営業利益」で決まり、販管費の数字単独で調整額が変わるわけではありません。販管費は、売上高からあるべき営業利益と販管費を差し引いて、国外関連者からの仕入れの独立企業間価格(あるべき仕入価格)を逆算するために使います。

2|比較対象企業の選び方で結果は大きく変わります

業種、事業規模、果たしている機能やリスクが自社と近い会社を比較対象に選ぶ必要があります。選定方法が違えば、比較対象の営業利益率も変わり、調整額の見え方も変わります。

3|一時的な赤字がすぐ問題になるとは限りません

進出したばかりで先行投資がかさんでいるなど、赤字に合理的な理由がある場合は、その事情を説明できるよう記録を残しておくことが大切です。

4|二重課税を避けるための制度もあります

移転価格税制の適用によって日本と海外の両方で課税されてしまう場合に備えて、事前確認制度(APA)や相互協議(MAP)といった仕組みがあります。心配な場合は早めに専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

TNMMとはどんな方法ですか。
取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method)の略で、検証したい取引や事業の営業利益率を、独立した比較対象企業の営業利益率と比べることで、価格が独立企業間価格に沿っているかを確認する方法です。
調整額が出たら、必ず税務署から指摘されますか。
この計算機の結果はあくまで目安です。実際の税務調査では、比較対象企業の選定方法や個々の取引の実態を踏まえて、より詳細な検証が行われます。
販管費の数字は何に使いますか。
「売上高-販管費-あるべき営業利益」で、国外関連者からの仕入れの独立企業間価格(あるべき仕入価格)を逆算するために使います。この計算機の初期値では1億円-1,500万円-300万円=8,200万円が独立企業間価格で、実際の仕入価格8,800万円(売上1億円-販管費1,500万円+赤字300万円)との差額600万円が調整額と一致します。
実際の利益率が比較対象企業より高い場合はどうなりますか。
調整額がマイナスになる場合、通常はこの基準による追加の所得加算は行われません。ただし、取引の実態や価格の算定根拠を示す記録は、日頃から整えておくことが望まれます。
移転価格の文書化は必ず必要ですか。
前事業年度の国外関連者との取引合計が50億円以上、または無形資産取引が3億円以上の場合は、独立企業間価格を算定するための書類(ローカルファイル)を確定申告期限までに作成・保存する義務があります(同時文書化)。それ未満でも、税務調査で求められれば一定の期間内に同様の資料を提示・提出する必要があります。

根拠となる法令・出典

本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。

  • 租税特別措置法第66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)、租税特別措置法施行令第39条の12(独立企業間価格の算定方法・取引単位営業利益法・四分位法による幅)
  • 国税庁「移転価格事務運営要領」(比較対象取引の選定・四分位法に関する部分)
  • 国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」

税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。

関連する計算ツール

← 税務計算ツール集(全169式)の一覧にもどる

この計算、実際の数字で確かめませんか

札幌のジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)が、御社の実額をもとに試算し、次に打つ手までご提案します。初回のご相談は無料です。

初回相談(無料)を申し込む料金・契約の流れを見る
0
目次