貸倒引当金(一括評価・法定繰入率)の計算方法|自動計算ツール

  • カテゴリ:法人税
  • 根拠:措法57の9
  • 入力3項目・その場で自動計算
  • 令和8年度の数値に対応

取引先が代金を払えなくなったときに備えて、あらかじめ経費として積み立てておくのが貸倒引当金です。中小法人は、売掛金や貸付金などの債権全体に業種ごとの一定の率を掛けて、簡単に繰入限度額を計算できる特例があります。この計算式は、その繰入限度額がいくらになるかを求めるものです。

この計算式を3行でいうと

  1. 繰入限度額は「(一括評価金銭債権-実質的に債権とみられない額)×法定繰入率」で計算します。
  2. 法定繰入率は業種で異なり、卸売業・小売業は1000分の10、製造業は1000分の8などと定められています。
  3. 同じ相手先に買掛金など逆方向の債務がある場合、その金額は実質的に債権とみられない額として差し引きます。

まずは計算してみる(自動計算ツール)

貸倒引当金(一括評価・法定繰入率)

措法57の9結果コピーリンク

中小法人は一括評価金銭債権に法定繰入率を掛けて引当計上できます(実質的に債権とみられない額は控除)。

繰入限度額 = (一括評価債権 − 控除額) × 法定繰入率
繰入限度額 ¥500,000
対象債権(控除後)¥50,000,000
繰入率10 / 1000
繰入限度額¥500,000
法定繰入率:卸小売10・製造8・金融保険3・割賦小売7・その他6(/1000)。
目次

こんなときに使います

  • 決算にあたり、売掛金や貸付金の貸倒れに備えてどこまで引当金を経費にできるか確認したいとき
  • 取引先の数が多く、個別に貸倒れリスクを見積もるより業種の一律の率で計算したいとき
  • 今期新たに融資や売掛取引を増やし、貸倒引当金の繰入限度額がどう変わるか知りたいとき
  • 同じ相手先に対して売掛金と買掛金の両方があり、引当金の計算にどう影響するか知りたいとき

入力する項目のかんたん解説

入力する項目どんな数字かどこを見ればよいか
一括評価金銭債権期末に残っている売掛金・受取手形・貸付金などの合計額です。個別に貸倒れの危険がある債権(個別評価金銭債権)は含めません。総勘定元帳の売掛金・受取手形・貸付金などの期末残高を合計します。
実質的に債権とみられない額同じ相手先に買掛金など逆方向の債務がある場合の、その債務の金額です。相殺できる分は実質的な債権とはみなされません。取引先ごとに売掛金と買掛金を突き合わせ、両方がある相手先の買掛金等の金額を集計します。
法定繰入率業種ごとに決められた繰入率です。1,000分のいくつという形で定められています。下の早見表から、自社の業種に対応する率を確認して入力します。

業種別の法定繰入率

業種区分法定繰入率
卸売業・小売業1,000分の10
製造業1,000分の8
金融業・保険業1,000分の3
割賦販売小売業等1,000分の7
その他の事業1,000分の6

計算のしくみ(3ステップ)

  1. 一括評価金銭債権を集計する:期末の売掛金・貸付金などのうち、個別に貸倒れの危険を見積もる債権を除いた分を合計します。
  2. 実質的に債権とみられない額を差し引く:同じ相手先に買掛金などの債務がある場合、その金額を一括評価金銭債権から控除します。
  3. 法定繰入率を掛ける:控除後の金額に、自社の業種の法定繰入率を掛けます。出てきた金額が、その期に損金算入できる繰入限度額です。

具体例で確かめる

例1 卸売業、一括評価債権5,000万円、控除額なしのケース

卸売業の法定繰入率は1,000分の10 繰入限度額 =(50,000,000円 - 0円)× 10/1,000

繰入限度額は50万円。この金額まで貸倒引当金として損金算入できる

例2 製造業で、実質的に債権とみられない額が300万円あるケース

一括評価債権5,000万円、実質的に債権とみられない額300万円、製造業の率は1,000分の8 繰入限度額 =(50,000,000円 - 3,000,000円)× 8/1,000

繰入限度額は37万6千円。控除額の分だけ限度額が小さくなる

例3 金融業・保険業のケース

一括評価債権5,000万円、控除額なし、金融業・保険業の率は1,000分の3 繰入限度額 =(50,000,000円 - 0円)× 3/1,000

繰入限度額は15万円。同じ債権額でも業種によって限度額は大きく変わる

ここを間違えやすい

1|個別評価金銭債権は一括評価には含めません

取引先の経営が悪化し、更生手続の申立てがあったなど個別に貸倒れの危険が高い債権は、個別評価金銭債権として別の規定で貸倒引当金を計算します。一括評価の対象からは除いてください。

2|実質的に債権とみられない額は相手先ごとに判定します

会社全体の売掛金合計と買掛金合計を単純に相殺するのではなく、同一の取引先について売掛金と買掛金の両方がある場合に、その相手先の買掛金等の金額を控除する仕組みです。

3|この特例が使えるのは中小法人等に限られます

法定繰入率による貸倒引当金の計上は、資本金1億円以下の中小法人など、一定の要件を満たす法人向けの特例です。対象外の法人は原則として貸倒引当金を損金算入できません。

4|法定繰入率と実績繰入率は選択制です

貸倒引当金の繰入限度額は、業種別の法定繰入率のほか、過去の貸倒実績から計算する実績繰入率でも求められます。どちらか有利な方を選べますが、このページでは法定繰入率での計算のみを扱います。

よくある質問

自社の業種がどの区分に当てはまるか分かりません。
日本標準産業分類などをもとに、主たる事業がどの区分に該当するかで判定します。複数の事業を営んでいる場合は、事業ごとに区分して計算することもあります。個別の判断は税理士に確認してください。
繰入限度額を超えて引当金を計上したらどうなりますか。
限度額を超えた部分は損金不算入となり、法人税の申告書で所得に加算します。会計上は限度額を超えて引き当てても構いませんが、税務上は認められません。
前期に計上した貸倒引当金はどうなりますか。
洗替方式といって、前期末の貸倒引当金は当期にいったん全額を取り崩して益金に戻し、当期末にあらためて繰入限度額の範囲で新たに引当金を計上します。
個人事業主でも同じ制度を使えますか。
青色申告をしている個人事業主にも、一括評価による貸倒引当金の制度があります。ただし適用要件や繰入率の考え方が異なる部分があるため、別途確認が必要です。

根拠となる法令・出典

本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。

  • 租税特別措置法第57条の9(中小法人等の貸倒引当金の特例)
  • 法人税申告書別表十一(一の二)関連の国税庁公表資料

税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。

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