- カテゴリ:法人税
- 根拠:法法24・所法25
- 入力3項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
会社が株主から自社の株式を買い取ったり、資本金を取り崩して株主にお金を払い戻したりすると、株主が受け取ったお金は「配当」と「株式の譲渡代金」の2つに分けて税金を計算します。この分け方を定めているのがみなし配当の制度です。受け取った金額がそのまま譲渡所得になるわけではない点に注意が必要です。
この計算式を3行でいうと
- 受け取ったお金のうち、資本金等対応額を超える部分が「みなし配当」として配当課税の対象になります。
- 残りの資本金等対応額と、もとの株式の取得費との差額が「株式の譲渡損益」として、別に譲渡所得の対象になります。
- 証券市場で普通に株式を売却した場合はみなし配当は生じません。全額が譲渡対価として扱われます。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
みなし配当(自己株式・資本の払戻し)
法法24・所法25★結果コピーリンク自己株式の取得等で株主が受け取る金銭のうち、資本金等の額を超える部分は配当とみなされます。譲渡損益も同時に計算。
| みなし配当(源泉20.42%対象) | ¥20,000,000 |
| 譲渡収入(資本金等対応額) | ¥30,000,000 |
| 譲渡損益 | ¥5,000,000 |
こんなときに使います
- 非公開の同族会社が、株主から自己株式を買い取ることになったとき
- 会社が資本金を減らして、株主にお金を払い戻す(資本の払戻し)ことになったとき
- 相続で取得した非上場株式を、発行会社に買い取ってもらうことを検討しているとき
- 受け取る金額のうち、いくらが配当扱いで、いくらが譲渡所得扱いになるのかを事前に知りたいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 交付を受けた金銭等 | 自己株式の買取りや資本の払戻しにより、会社から実際に受け取る金額です。 | 株式譲渡契約書や、会社から送付される支払通知書に記載された金額です。 |
| 資本金等の額のうち対応部分 | 会社の資本金等の額を、発行済株式の数などで株式1株ごとに割り振った金額です。 | 発行会社が計算して株主に通知します(みなし配当の支払通知書に記載されるのが一般的です)。自分で計算することは通常ありません。 |
| 株式の譲渡原価(帳簿価額) | その株式をもともと取得したときの費用です。購入代金や、相続・贈与で取得した場合は引き継いだ取得費を使います。 | 購入時の証券会社の取引報告書、相続税の申告書などで確認します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 受け取った金額を2つに分ける:交付を受けた金銭等のうち、資本金等対応額を超える部分を取り出します。
- みなし配当を計算する:交付金銭等から資本金等対応額を引いた金額が、配当とみなされます。
- 株式の譲渡損益を計算する:資本金等対応額を譲渡の対価とみなし、そこから株式の譲渡原価を引いた金額が譲渡損益になります。
2つの計算はそれぞれ別の所得として扱われます。みなし配当は配当所得、譲渡損益は株式等の譲渡所得として、別々の税率・別々の計算方法で税金がかかります。
具体例で確かめる
例1 自己株式を5,000万円で買い取ってもらったケース
みなし配当 = 50,000,000円 - 30,000,000円 = 20,000,000円 株式譲渡損益 = 30,000,000円 - 25,000,000円 = 5,000,000円(譲渡益)
みなし配当2,000万円+譲渡益500万円に分かれて課税される
例2 みなし配当は出るが、譲渡損になるケース
交付金銭2,000万円・資本金等対応額1,500万円・譲渡原価1,800万円のとき みなし配当 = 20,000,000円 - 15,000,000円 = 5,000,000円 株式譲渡損益 = 15,000,000円 - 18,000,000円 = -3,000,000円(譲渡損)
みなし配当500万円は課税される一方、譲渡損300万円が同時に発生することもある
例3 同じ株式を証券市場で売却した場合とのちがい
市場での売却なら、受け取った5,000万円の全額が譲渡対価 株式譲渡損益 = 50,000,000円 - 25,000,000円 = 25,000,000円(譲渡益)
みなし配当は生じず、全額が譲渡所得として分離課税になる
ここを間違えやすい
1|「みなし配当」が生じるかどうかは、買い取り方法で変わります
証券取引所を通じた市場での売却や、公開買付け(TOB)による譲渡には、みなし配当は生じません。非公開会社が特定の株主から直接買い取る場合などに問題になります。
2|資本金等対応額は、株主が自分で計算するものではありません
資本金等対応額は、発行会社が会社全体の資本金等の額をもとに計算し、みなし配当の支払通知書で株主に知らせます。株主側で任意に調整することはできません。
3|個人株主のみなし配当には源泉徴収があります
非上場株式のみなし配当は、支払いの際に所得税が源泉徴収されるのが原則です。確定申告では、総合課税を選べば配当控除の適用も検討できますが、他の所得と合算した税率次第で有利不利が変わります。
4|法人株主でも、全額が益金不算入になるとは限りません
法人株主が受け取るみなし配当は、受取配当等の益金不算入の対象になりますが、株式の保有区分(完全子法人株式・関連法人株式など)や保有期間の要件を満たすかどうかで、不算入となる割合が変わります。
よくある質問
- 資本金等対応額はどうやって決まるのですか。
- 会社の資本金等の額を、その買い取り直前の発行済株式総数で割り、株主が手放した株式数を掛けて計算するのが基本的な考え方です。実際の金額は発行会社が計算して通知します。
- みなし配当と譲渡損益は、両方とも同じ年の所得になりますか。
- はい。株式を手放した年分の所得として、みなし配当は配当所得、譲渡損益は株式等の譲渡所得にそれぞれ計上します。
- 譲渡損が出た場合、みなし配当と相殺できますか。
- できません。みなし配当は配当所得、譲渡損は譲渡所得と、所得の種類が異なるため、原則として損益通算はできません。ただし上場株式等の譲渡損失であれば、申告分離課税を選んだ配当所得と損益通算できる場合があります。
- 会社側(発行会社)では、この取引はどう処理されますか。
- 発行会社は、みなし配当に相当する部分について源泉徴収義務を負います。また、自己株式の取得は資本等取引として、税務上は損益に影響しない処理が基本です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 法人税法第24条(配当等の額とみなす金額)
- 所得税法第25条(配当等とみなす金額)
- 国税庁ホームページ「自己株式の取得とみなし配当」関連情報
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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