- カテゴリ:社会保険
- 根拠:国年法28・厚年法44の3
- 入力2項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
老齢年金は原則65歳から受け取りますが、受給開始を早める「繰上げ」や遅らせる「繰下げ」を選ぶこともできます。繰上げは1か月早めるごとに0.4%減額され、繰下げは1か月遅らせるごとに0.7%増額されます(最大84%増)。金額だけを見ると繰下げが有利に思えますが、実際には何歳まで受け取り続けるかによって損得が入れ替わります。
この計算式を3行でいうと
- 繰下げは1か月ごとに0.7%増額(最大84%増)、繰上げは1か月ごとに0.4%減額される仕組みです。
- 繰下げで年金額が増えても、受け取る期間が短ければ総受給額では繰上げに逆転されることがあります。
- 何歳まで生きれば繰下げが得になるかという損益分岐年齢を計算すると、判断の目安になります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
年金の繰上げ・繰下げの損益分岐
国年法28・厚年法44の3★結果コピーリンク繰下げは1か月+0.7%(最大84%増)、繰上げは1か月−0.4%。何歳まで生きれば繰下げが得かの損益分岐年齢を計算します。
| 受給開始 | 70歳 |
| 増額後の年金(年) | ¥2,840,000 |
| 増額分(年) | ¥840,000 |
| 損益分岐年齢 | 81.9歳 |
| それ以上長生きなら | 繰下げが有利 |
こんなときに使います
- 65歳を迎える前後で、年金をいつから受け取り始めるか迷っているとき
- 繰下げで増える年金額と、何歳まで生きれば得になるかを具体的な数字で知りたいとき
- 早期リタイアや再雇用の収入と組み合わせて、繰上げを検討しているとき
- 配偶者や家族と、将来の年金受給計画を話し合う材料がほしいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 65歳時の年金額(年) | 65歳から受け取り始めた場合の、1年間あたりの年金見込み額です。老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計で入力します。 | 日本年金機構から届く「ねんきん定期便」や、日本年金機構のウェブサイト「ねんきんネット」の年金見込額で確認できます。 |
| 繰下げ年数(マイナスで繰上げ) | 65歳を基準に、何年遅らせて受け取り始めるか(繰下げ)、または何年早めるか(繰上げ)の年数です。繰上げにする場合はマイナスの数字を入力します。 | 何歳から受け取りたいかを自分で決めて入力します。繰下げは最長75歳まで、繰上げは最短60歳まで選べるとされています。 |
1年あたりの増減率の目安
| 選択 | 1年あたりの増減率 | 備考 |
|---|---|---|
| 繰下げ | プラス8.4%(0.7%×12か月) | 受給開始を1年遅らせるごとに増える割合です。 |
| 繰上げ | マイナス4.8%(0.4%×12か月) | 受給開始を1年早めるごとに減る割合です。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 増減率を計算する:繰下げなら「0.7%×繰下げ月数」、繰上げなら「0.4%×繰上げ月数」で増減率を求めます。
- 受給開始後の年金額を計算する:65歳時点の年金額に増減率を掛けた金額を足し引きします。繰下げなら増額、繰上げなら減額です。
- 損益分岐年齢を求める:受給開始年齢に「繰下げ年数÷増額率」を足すと、繰下げによって増えた分を、それまで我慢していた期間の差で取り戻せる年齢(損益分岐年齢)の目安になります。
- 自分の想定と比べる:損益分岐年齢が、自分や家族の健康状態・働き方の見通しと比べてどうかを確認します。在職中で収入がある間は繰下げを、リタイア後は早めの受給を選ぶ、といった組み合わせ方もあります。
実はこの式を計算すると、繰下げ年数が何年であっても、損益分岐年齢は受給を開始してからおよそ11年11か月後になるという特徴があります。増額率も繰下げ年数に比例して大きくなるため、受給開始からの経過年数という視点で見ると、結果がほぼ一定になるのです。
具体例で確かめる
例1 65歳時の年金額200万円、5年繰下げ(70歳から受給)のケース
繰下げ月数 = 5年 × 12か月 = 60か月 増額率 = 0.7% × 60か月 = 42% 70歳からの年金額 = 2,000,000円 ×(1 + 42%)
年額284万円に増額。損益分岐年齢は70歳+5年÷42%で、およそ81.9歳です。この年齢より長く受け取れば、65歳から受け取った場合より総受給額が多くなる計算です。
例2 65歳時の年金額200万円、3年繰下げ(68歳から受給)のケース
繰下げ月数 = 3年 × 12か月 = 36か月 増額率 = 0.7% × 36か月 = 25.2% 68歳からの年金額 = 2,000,000円 ×(1 + 25.2%)
年額約250万4千円に増額。損益分岐年齢は68歳+3年÷25.2%で、およそ79.9歳です。
例3 65歳時の年金額200万円、5年繰上げ(60歳から受給)のケース
繰上げ月数 = 5年 × 12か月 = 60か月 減額率 = 0.4% × 60か月 = 24% 60歳からの年金額 = 2,000,000円 ×(1 - 24%)
年額152万円に減額。早く受け取り始める分、長生きするほど65歳受給との差が縮まったり逆転したりします。60歳から受け取り始めることで、当面の生活資金を確保できるという安心感も、あわせて考えたい要素です。具体的な年齢は個別の試算で確認してください。
年数ごとの増減率早見表
| 受給開始年齢 | 65歳との差 | 増減率 |
|---|---|---|
| 60歳 | 繰上げ5年(下限の目安) | マイナス24% |
| 62歳 | 繰上げ3年 | マイナス14.4% |
| 64歳 | 繰上げ1年 | マイナス4.8% |
| 66歳 | 繰下げ1年 | プラス8.4% |
| 68歳 | 繰下げ3年 | プラス25.2% |
| 70歳 | 繰下げ5年 | プラス42% |
| 75歳 | 繰下げ10年(上限の目安) | プラス84% |
受給開始年齢を1年動かすごとに、増減率がどう変わるかを一覧にすると、自分が考えている年齢の増減率をすぐに確認できます。細かい月数の増減率は、計算のしくみで示した式にあてはめて求めます。1か月単位で選べるため、たとえば69歳3か月からの受給といった細かい設定も可能です。
ここを間違えやすい
1|損益分岐年齢を「平均寿命」で判断すると誤解しやすい
平均寿命は0歳児の平均余命であり、65歳や70歳まですでに生きた人のその後の平均余命は、平均寿命よりも長くなります。損益分岐年齢を考えるときは、平均寿命ではなく、その年齢まで生きた人のその後の見通しをもとに考えたほうが実態に近づきます。
2|老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に選べます
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、それぞれ別々に繰下げの時期を選ぶことができます。たとえば片方だけ早く受け取り、もう片方は遅らせるという選択も可能です。あわせて受け取る場合と、金額の増え方が変わってきます。
3|繰上げはあとから取り消せません
繰上げ請求をいったん行うと、あとから「やっぱり65歳から」に戻すことはできません。減額率は一生変わらず適用され続けるため、慎重な判断が必要です。
4|加給年金など付随する給付にも影響します
繰下げをしている間は、配偶者の加給年金などが支給されない期間が生じる場合があります。年金額そのものだけでなく、こうした付随する給付への影響もあわせて確認しておくと安心です。世帯全体で受け取れる金額を考えるときは、本人の年金額だけで判断しないようにしましょう。
よくある質問
- 繰下げの上限は何歳までですか。
- 最長75歳まで繰り下げることができるとされています。75歳まで繰り下げた場合の増額率は84%(0.7%×120か月)で、これが現在の制度における増額率の上限です。
- 繰上げの下限は何歳までですか。
- 最短60歳から受け取ることができるとされています。60歳まで繰り上げた場合の減額率は24%(0.4%×60か月)で、これが現在の制度における減額率の下限(最大の減額幅)です。
- 繰下げを申し出る前に気が変わったらどうなりますか。
- 繰下げの申出をする前であれば、待機をやめて65歳にさかのぼった年金をまとめて受け取るなど、複数の選択肢が用意されている場合があります。さかのぼって受け取る場合と、その時点までの増額分を受け取る場合とでは、受け取れる総額の考え方が異なります。取り扱いは制度改正の影響を受けることがあるため、年金事務所での確認をおすすめします。
- 損益分岐年齢だけで決めてよいですか。
- 損益分岐年齢はひとつの目安にすぎません。在職中の収入や税金・社会保険料への影響、配偶者の年金とのバランスなども考えたうえで、総合的に判断することが大切です。年金事務所の年金相談で、自分の状況に応じたシミュレーションを確認するのもひとつの方法です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 国民年金法第28条ほか(老齢基礎年金の支給繰上げ・繰下げに関する規定)
- 厚生年金保険法第44条の3(老齢厚生年金の支給繰下げに関する規定)
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」「年金の繰下げ受給」の案内
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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