- カテゴリ:相続税・贈与税
- 根拠:評基通189-3
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
同族会社の株式を評価するとき、会社の資産の中で株式や出資の占める割合が高いと「株式保有特定会社」に区分され、原則は純資産価額方式で評価します。ただし、株式等を除いた評価額(S1)と、株式等の評価額から法人税相当額を差し引いた金額(S2)を合計するS1+S2方式を選ぶこともできます。どちらが有利かは会社ごとに異なるため、まず計算のしくみを見ていきましょう。
この計算式を3行でいうと
- 株式保有特定会社の株式は、純資産価額方式のほかS1(株式等を除く評価)+S2(株式等の評価額)を合計する方式を選べます。
- S2は、株式等の相続税評価額から、含み益(評価差額)に37%を掛けた金額を差し引いて求めます。
- S1+S2が純資産価額を上回るときは、純資産価額のほうが評価額の上限になります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
S1+S2方式(株式保有特定会社)
評基通189-3★結果コピーリンク株式保有特定会社は原則純資産評価ですが、S1(株式等を除いた原則的評価)+S2(株式等の純資産価額)の合計を選択できます。
| S1(株式等抜きの原則評価) | ¥2,000 |
| 株式等の評価差額 | ¥3,000 |
| S2(37%控除後) | ¥6,890 |
| S1+S2 | ¥8,890 |
| 純資産価額との低い方 | ¥8,890 |
こんなときに使います
- 同族会社の株式を相続や贈与で評価するとき、その会社が「株式保有特定会社」に該当すると言われたとき
- 会社が持株会社化していて、資産の大部分を子会社株式や有価証券が占めているとき
- 純資産価額方式で評価すると税額が大きくなりそうで、ほかに選べる評価方法がないか確認したいとき
- S1+S2方式と純資産価額方式のどちらが有利になるか、事前に見比べておきたいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| S1(株式等を除いた原則的評価) | 会社が保有する株式等と、それに対応する受取配当をいったん除外したうえで、通常どおり類似業種比準方式や純資産価額方式を使って再計算した1株あたりの評価額です。 | この金額はこのツールの外で別途計算しておく必要があります。会社の規模区分に応じた評価方式で算定します。 |
| 株式等の相続税評価(1株あたり) | 会社が保有している株式・出資を、相続税評価の方法で評価した金額を、発行済株式数で割った1株あたりの金額です。 | 上場株式なら株価をもとに、非上場株式ならその発行会社の評価額をもとに算出します。 |
| 株式等の帳簿価額(1株あたり) | 会社の帳簿に記載されている、株式等の取得時の価額を1株あたりに割り戻した金額です。 | 会社の貸借対照表・株主資本等変動計算書で確認できます。 |
| 純資産価額(比較用) | 株式等を除外せず、通常の純資産価額方式でそのまま計算した場合の1株あたり評価額です。 | 別途、純資産価額方式で計算した結果をここに入力します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 評価差額を求める:株式等の相続税評価額から帳簿価額を引いて、含み益にあたる評価差額を計算します。
- S2を計算する:株式等の相続税評価額から、評価差額に37%を掛けた金額(法人税相当額)を差し引きます。
- S1とS2を合計する:株式等を除いた原則的評価額(S1)と、S2を足します。
- 純資産価額と比べる:S1+S2が通常の純資産価額を超える場合は、純資産価額のほうを評価額として採用します。
具体例で確かめる
例1 S1+S2が純資産価額を下回るケース
評価差額 = 8,000円 - 5,000円 = 3,000円 S2 = 8,000円 - 3,000円 × 37% = 6,890円 S1+S2 = 2,000円 + 6,890円 = 8,890円(純資産価額12,000円を下回るためそのまま採用)
1株あたりの評価額は8,890円。純資産価額方式より約26%低く評価される
例2 S1+S2が純資産価額を上回るケース
評価差額 = 15,000円 - 3,000円 = 12,000円 S2 = 15,000円 - 12,000円 × 37% = 10,560円 S1+S2 = 5,000円 + 10,560円 = 15,560円(純資産価額9,000円を上回るため9,000円が上限)
1株あたりの評価額は純資産価額と同じ9,000円。この場合はS1+S2方式を選ぶ理由がない
S1+S2方式と純資産価額方式の比べ方
| 状況 | 有利になりやすい方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 保有する株式等に大きな含み益があるとき | S1+S2方式 | 評価差額が大きいほど37%の圧縮効果が大きくなるためです。 |
| 株式等以外の資産にも大きな含み益があるとき | 純資産価額方式 | 純資産価額方式は会社全体の含み益に37%を掛けて圧縮するため、株式等以外の含み益も圧縮対象になります。 |
| どちらか判断がつかないとき | 両方を計算して比較 | 選択制のため、両方を試算していつも評価額が低いほうを選べます。 |
ここを間違えやすい
1|S1の計算はこのツールの外で必要です
S1は、株式等とそれに対応する受取配当を除いて類似業種比準価額や純資産価額を再計算した金額です。この再計算自体が専門的な作業になるため、通常は税理士に依頼して求めます。
2|株式保有特定会社に該当するかどうかは毎回の判定が必要です
会社の総資産に占める株式や出資の割合が高い会社は「株式保有特定会社」に区分されますが、該当するかどうかは評価する時点の資産構成で決まります。以前は該当しなかった会社が、資産構成の変化で該当することもあります。個別の判定が必要です。
3|帳簿価額と時価のズレが結果を左右します
株式等の帳簿価額は取得したときの金額のままです。取得から時間が経ち含み益が大きくなっているほど、評価差額が大きくなり、S2の圧縮効果も大きくなります。
4|S1+S2方式は「選択できる」だけで強制ではありません
株式保有特定会社に該当しても、必ずS1+S2方式を使わなければならないわけではありません。純資産価額方式のほうが評価額が低くなる場合は、そちらを選ぶことができます。
よくある質問
- 株式保有特定会社に該当するかどうかは、どうやって判定しますか。
- 会社の総資産の中で、株式や出資が相続税評価額ベースでどれくらいの割合を占めるかで判定します。具体的な判定基準は個別の状況によって確認が必要なため、税理士にご相談ください。
- S1+S2方式と純資産価額方式は、どちらを選んでもよいのですか。
- はい。株式保有特定会社に該当する場合、納税者はどちらか一方を選択できます。両方を試算して、評価額が低いほうを選ぶのが一般的です。
- なぜ評価差額に37%を掛けるのですか。
- 会社を解散して含み益を実現させた場合にかかる法人税等相当額を見積もって差し引く考え方です。個人が相続する株式の評価に、法人段階の税負担を織り込む仕組みです。
- S1の計算は自分でできますか。
- 会社が保有する株式等とそれに対応する受取配当を除いたうえで、通常の類似業種比準方式や純資産価額方式を再計算する必要があり、専門的な知識が必要です。税理士への相談をおすすめします。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 財産評価基本通達178(取引相場のない株式の評価上の区分)、185(純資産価額方式)
- 財産評価基本通達189(特定の評価会社の株式)、189-3(株式保有特定会社の株式の評価)
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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