修繕費と資本的支出の判定方法|自動計算ツール

  • カテゴリ:有利判定・比較
  • 根拠:法基通7-8-1〜5
  • 入力4項目・その場で自動計算
  • 令和8年度の数値に対応

建物や設備を修理・改良したときの支出は、その場で全額を経費にできる修繕費と、資産として計上し何年かに分けて経費にする資本的支出のどちらかに分かれます。同じ「修理」でも、内容によって扱いがまったく違うため、税務調査でも指摘されやすいポイントです。この計算機は、支出の内容から、修繕費か資本的支出かをおおまかに判定するものです。

この計算式を3行でいうと

  1. 壊れたものを元の状態に戻すだけの支出は修繕費、価値や耐久性を高める支出は資本的支出になるのが基本の考え方です。
  2. 20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行う支出は、内容にかかわらず修繕費にできます。
  3. 内容がはっきり分からない場合は、60万円未満か、前期末の取得価額の10%以下であれば修繕費として処理できます。

まずは計算してみる(自動計算ツール)

修繕費・資本的支出の判定

法基通7-8-1〜5結果コピーリンク

支出額と内容から、修繕費(全額損金)か資本的支出(資産計上・減価償却)かをフローチャートで判定します。

20万未満/周期3年以内→修繕費 原状回復→修繕費 / 価値・耐久性向上→資本的支出 判定不能なら60万未満 or 前期末取得価額10%以下→修繕費
修繕費(区分不明で60万円未満)
判定修繕費
理由区分不明で60万円未満
税効果全額損金
(参考)7:3特例継続適用で支出×30%(前期末価額10%上限)を修繕費に
実質判定が最優先(形式基準は補完)。蛍光灯→LED取替は修繕費、非常階段の新設は資本的支出、外壁塗装は原則修繕費(グレードアップは除く)。
目次

こんなときに使います

  • 建物や機械を修理・改良した支出を、修繕費と資本的支出のどちらで処理すべきか迷っているとき
  • 外壁塗装や設備の入れ替えなど、支出の内容によって判定が分かれそうな工事を行ったとき
  • 税務調査で修繕費の処理を指摘されないよう、あらかじめ判定の根拠を整理しておきたいとき
  • 金額が大きい支出について、全額をその年の経費にできるかどうかを事前に確認したいとき

入力する項目のかんたん解説

入力する項目どんな数字かどこを見ればよいか
支出額修理・改良にかかった費用の総額です。同じ工事の中で複数の作業がある場合は、原則として一連の工事全体をひとつの支出として判定します。工事業者からの請求書・見積書。内訳が分かる資料もあわせて保存しておきます。
おおむね3年以内の周期かどうか同じような修理・改良を、おおむね3年以内の周期で繰り返し行っているかどうかです。該当すれば1、しなければ0を入力します。過去の修理履歴、工事の記録。初めての工事で周期がまだ分からない場合は0として入力します。
工事の内容(原状回復・価値向上・不明)工事の中身が、壊れる前の状態に戻すもの(原状回復)か、性能や耐久性を高めるもの(価値向上)か、どちらともいえないかです。工事の見積書・仕様書に書かれた工事内容。0は原状回復、1は価値向上、2は不明にあたります。
前期末取得価額その資産(建物・設備など)の、前期末時点での取得価額です。内容がはっきりしない場合の金額基準の判定に使います。固定資産台帳、減価償却の明細。今期取得した資産にはこの基準は使えません。

計算のしくみ(3ステップ)

  1. 形式的な基準にあてはまるか確認する:支出額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行う支出であれば、内容にかかわらず修繕費として処理できます。まずこの基準から確認すると、判定の手間が省けます。
  2. 内容から実質的に判定する:形式基準にあてはまらない場合は、支出の中身で判定します。壊れた部分を元の状態に戻すだけの原状回復は修繕費、性能を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出です。この実質判定がもっとも重視されます。
  3. それでも判定できないときは金額基準を使う:内容から明確に判定できない場合、支出額が60万円未満か、前期末の取得価額のおおむね10%以下であれば、修繕費として処理してよいとされています。どちらか一方を満たせば修繕費にできます。

具体例で確かめる

例1 支出額50万円、周期に該当せず、内容が不明なケース

20万円未満でも周期3年以内でもないため形式基準は該当なし 内容が不明のため金額基準で判定:60万円未満に該当

修繕費として全額を損金にできる

例2 支出額150万円、前期末取得価額1,000万円、内容が不明なケース

60万円未満ではないため、前期末取得価額の10%と比較 前期末取得価額の10% = 1,000万円 × 10% = 100万円 支出額150万円 は 100万円を超えている

金額基準にもあてはまらないため、資本的支出として資産計上し減価償却する

例3 内容が「価値向上」とはっきりしているケース

形式基準に該当しなくても、内容が価値向上であれば、その時点で実質判定が優先される

金額の大小にかかわらず、資本的支出として資産計上する

修繕費と資本的支出の判定フロー

判定の順序基準結果
1支出額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期修繕費(内容を問わない)
2内容が明らかに原状回復修繕費
3内容が明らかに価値向上・耐久性の向上資本的支出
4内容が不明で、60万円未満または前期末取得価額の10%以下修繕費
5上記のいずれにもあてはまらない資本的支出

ここを間違えやすい

1|実質的な内容の判定がいちばん優先されます

20万円未満や60万円未満といった金額の基準は、あくまで内容だけでは判定しづらいときの補助的な基準です。内容が明らかに価値向上であれば、金額が小さくても資本的支出と判定されることがあります。逆に内容が明らかに原状回復であれば、金額が大きくても修繕費として処理できる場合があります。

2|同じ「修理」でも内容によって扱いが変わります

たとえば蛍光灯をLEDに取り替える程度の工事は修繕費として扱われやすい一方、非常階段を新たに設置するような工事は、建物の価値や機能を高めるものとして資本的支出になりやすいとされています。同じ「設備の更新」でも、性能が向上したかどうかで結論が変わるため、個別の内容で確認する必要があります。

3|外壁塗装は原則として修繕費ですが例外もあります

老朽化した外壁を塗り直すだけなら原則として修繕費ですが、あわせて断熱性能を大きく高めるなど、明らかなグレードアップを伴う場合は資本的支出と判定されることがあります。塗装の目的や仕様書の記載内容、使用する塗料のグレードなども判断材料になります。

4|資本的支出は一度に経費にできません

資本的支出と判定されると、その支出額は資産として計上し、対象となる資産の残りの耐用年数などにもとづいて、複数年に分けて減価償却費として経費にしていくことになります。全額をその年の経費にしたい場合との資金繰りの見通しの差が大きくなる点にも注意してください。

よくある質問

ひとつの工事で修繕費と資本的支出が混ざる場合はどうしますか。
ひとつの支出の中に原状回復の部分と価値向上の部分が両方含まれる場合は、金額を合理的に区分できるのであれば、それぞれ修繕費と資本的支出に分けて処理します。区分が難しい場合は、全体を実質的な内容で判定することになります。見積書の内訳を工事項目ごとに分けてもらうと、区分の根拠を残しやすくなります。
修繕費と資本的支出の区分がはっきりしない場合、必ず60万円基準を使ってよいですか。
60万円未満や前期末取得価額の10%以下という基準は、内容から明らかに区分できない場合にだけ使える簡便的な基準です。内容が明確なときは、金額が小さくても内容にもとづいて判定する必要があります。形式基準を先に適用してよいのは、あくまで判定に迷うケースに限られます。
個人事業主でも同じ基準が使えますか。
個人の所得税でも、法人税とほぼ同じ考え方で修繕費と資本的支出を区分する基準が定められています。20万円未満・3年以内の周期・60万円未満・取得価額の10%以下といった数値基準も共通しており、基本的な判定の流れは同じと考えて差し支えありません。
災害で壊れた設備を復旧する費用も同じ判定ですか。
被災前の状態に戻すための費用は原則として修繕費(災害損失)として扱われますが、復旧にあわせて性能を大きく向上させた部分がある場合は、その部分は資本的支出として区分されることがあります。被災資産の原状回復費用には、通常の修繕費とは別の簡便的な計算方法が認められている場合もあるため、被害の規模が大きいときはあわせて確認するとよいでしょう。

根拠となる法令・出典

本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。

  • 法人税基本通達7-8-1から7-8-5(資本的支出と修繕費の区分)
  • 国税庁タックスアンサー No.1379「修繕費とならないものの判定」/No.2107「資本的支出を行った場合の減価償却」

税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。

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