- カテゴリ:シミュレーション
- 根拠:法法34・所法28ほか
- 入力3項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
社長の報酬をいくらにするかは、「会社の税金」と「社長個人の税金・社会保険料」の綱引きです。報酬を上げれば会社の利益が減って法人税は下がりますが、そのぶん個人の所得税・住民税と社会保険料が増えます。この2つを合計した負担がいちばん小さくなる金額を、利益の額から自動で探すのがこのシミュレーションです。
この計算式を3行でいうと
- 報酬を上げると法人税は減り、個人の税金と社会保険料は増えます。合計負担が底になる金額がどこかにあります。
- このツールは会社の利益(と介護保険の有無・法人住民税の均等割)を入力すると、令和8年分の所得税・令和8年度の社会保険料率で、報酬を10万円刻みで動かしながら合計負担が最小になる点を探します。
- 役員報酬は事業年度が始まって3か月以内に決め、1年間同じ額を払い続けるのが原則。期中に上げた分は経費になりません。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
役員報酬の最適化シミュレーションSIM
法法34・所法28ほか★結果コピーリンク会社の利益(役員報酬・社保控除前)を入力すると、役員報酬をいくらに設定すれば「法人税等+個人の所得税住民税+社会保険料(労使計)」の総負担が最小になるかを走査して探索します。令和8年分の所得税(基礎控除104/67/62万円・給与所得控除74万円〜)、防衛特別法人税、協会けんぽ北海道の令和8年度料率、厚生年金の等級表で計算します。
| 報酬0円(全額法人課税)の総負担 | ¥6,376,100 |
| 報酬1,200万円の総負担 | ¥6,531,367 |
| 最適報酬5,800,000円の総負担 | ¥6,083,256 |
| 内訳: 法人税等(均等割・防衛特別法人税込) | ¥3,917,800 |
| 内訳: 個人の所得税・住民税(令和8年分基準) | ¥428,900 |
| 内訳: 社会保険料(労使計・協会けんぽ北海道R8) | ¥1,736,556 |
| 節減効果(報酬0円比) | ¥292,844 |
こんなときに使います
- 決算が近づき、来期の役員報酬をいくらにするか決めたいとき
- 今期の利益が例年より大きく(小さく)なりそうで、報酬を見直したいとき
- 「報酬を下げて会社に利益を残すべきか、上げて個人で受け取るべきか」を数字で判断したいとき
- 法人化した直後で、最初の役員報酬の水準を決めたいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 利益(役員報酬・社保控除前) | 役員報酬とその社会保険料の会社負担分を引く前の利益です。ここから報酬をいくら取るかを考える、いわば分け合う前の原資にあたります。 | 試算表の経常利益に、すでに計上している役員報酬と法定福利費(会社負担分)を足し戻した金額。来期の見込みで入れます。 |
| 40〜64歳(介護保険あり) | 社長が40歳以上65歳未満なら「1」を入れます。健康保険料に介護保険料(令和8年度1.62%)が上乗せされ、労使合計の社会保険料が増えます。 | 試算する役員の年齢。40歳になる月から65歳になる月の前月まで介護保険料がかかります(誕生日の前日基準)。 |
| 法人住民税均等割 | 赤字でもかかる法人住民税の固定部分です。札幌市に本店を置く資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の会社なら、道民税2万円+市民税5万円=7万円(初期値)です。 | 直前期の法人道民税・市民税の申告書の均等割欄。資本金等の額と従業者数の区分で決まります。 |
入力はこの3項目です。ツールは報酬を0円から利益の全額まで10万円刻みで動かし、それぞれについて次の3つを計算して合計し、いちばん小さくなる報酬額を表示します。
| 負担の内訳 | 中身 |
|---|---|
| 法人側の税金 | 法人税(年800万円以下15%・超える部分23.2%)・地方法人税10.3%・防衛特別法人税(法人税額から500万円を引いた額の4%、令和8年4月1日以後に開始する事業年度)・法人住民税(法人税割7.0%+入力した均等割)・事業税(3.5%/5.3%/7.0%)・特別法人事業税(事業税額の37%)を、それぞれの端数処理どおりに積み上げて計算します。 |
| 個人側の税金 | 役員報酬から給与所得控除(令和8年分は最低74万円)と社会保険料控除・基礎控除(令和8年分は合計所得489万円以下104万円、655万円以下67万円、それ以上は62万円)を引いた課税所得に所得税の超過累進税率(復興特別所得税込み)をかけ、住民税は基礎控除43万円で課税所得の10%+均等割5,000円(札幌市)を計算します。 |
| 社会保険料 | 健康保険(協会けんぽ北海道の令和8年度料率10.28%+子ども・子育て支援金0.23%、40〜64歳は介護保険1.62%を加算)と厚生年金(18.3%、標準報酬月額の上限65万円)を等級表にあてはめ、会社負担分と本人負担分の両方(会社だけが負担する子ども・子育て拠出金0.36%を含む)を合計して見ます。会社が払う分も実質的には同じ財布から出ていくためです。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 報酬額を仮に決める:たとえば月50万円(年600万円)と置きます。
- 3つの負担を計算する:会社に残る利益(利益-報酬-会社負担の社会保険料)に法人税・地方法人税・防衛特別法人税・法人住民税・事業税・特別法人事業税を順に計算し、個人側の所得税・住民税(令和8年分)を計算し、社会保険料の労使合計を足します。
- 報酬を10万円ずつ動かして繰り返す:0円から利益の全額まで同じ計算を繰り返し、合計がいちばん小さくなった報酬額を最適点として表示します。
なぜ「底」ができるのか
役員報酬を上げていくと、法人の利益はまっすぐ減っていきます。一方で個人側の負担は、所得税の累進税率が上がるにつれてだんだん急に増えていきます。この2つを足すと、途中でいったん下がってから再び上がるU字のかたちになります。その底が最適点です。
もうひとつ効いてくるのが社会保険料です。厚生年金は標準報酬月額65万円(令和8年度)で頭打ちになるため、報酬がその水準を超えると保険料の増え方がゆるやかになります。この段差も、最適点の位置を決める重要な要素です。
具体例で確かめる
例1 利益2,000万円の会社(この計算機の初期値:介護保険あり・均等割7万円)
報酬 0円 → 法人税等 6,376,100円(個人の税金・社会保険料はゼロ) 報酬 1,200万円 → 総負担 6,531,367円(個人の所得税が23%帯に入り、社会保険料も労使計で年約288万円に増える) 報酬 580万円 → 法人税等 3,917,800円+所得税・住民税 428,900円+社会保険料(労使計)1,736,556円=6,083,256円
最適報酬の目安 580万円/総負担 6,083,256円(報酬0円と比べて292,844円の節減)
例2 利益800万円の会社
法人の所得800万円以下の部分は法人税率15%(地方税を含めても2割強)と低め 一方、個人側は給与所得控除(最低74万円)と基礎控除104万円(令和8年分)があるため、一定額までは報酬に回したほうが軽くなりやすい
利益が小さい会社ほど、利益に占める報酬の割合を高めにしたほうが有利になりやすい(実際の最適点はツールで確認してください)
ここを間違えやすい
1|役員報酬は期の途中で自由に変えられません
損金(経費)になるのは原則として定期同額給与、つまり事業年度開始の日から3か月以内に決めて、その後1年間毎月同じ額を払う給与だけです。期の途中で増額すると、増えた部分は経費になりません。決めるのは決算後すぐ、が鉄則です。
2|税金だけで決めると資金繰りが苦しくなります
最適点は「税と社会保険の合計が最小になる点」であって、「会社にとって最善の点」とは限りません。借入返済、設備投資、将来の役員退職金の原資まで含めて考える必要があります。
3|このツールが見ていないもの
配偶者控除・扶養控除、iDeCoや小規模企業共済、生命保険料控除、ふるさと納税、住宅ローン控除、家族への役員報酬の分散、役員退職金の準備、消費税などは反映していません。これらを入れると最適点は動きます。あくまで出発点としてお使いください。
4|報酬を極端に下げると社会保険で不利になることがあります
役員報酬をゼロにすると、社会保険の被保険者資格を失い、国民健康保険・国民年金に切り替わる場合があります。将来の厚生年金額や、傷病手当金・出産手当金といった保障も小さくなります。
よくある質問
- 役員報酬をゼロにしても問題ありませんか。
- 法律上は可能です。ただし社会保険の資格を失い、生活費を会社から借りる形にすると役員貸付金が膨らんで金融機関の評価を下げます。設立初年度など収入の見込みが立たない時期に限った選択と考えてください。
- 賞与(ボーナス)を出して調整できませんか。
- 役員賞与を損金にするには、あらかじめ税務署に事前確定届出給与の届出をし、届け出た日に届け出た額をそのまま支給する必要があります。1円でも金額が違ったり日付がずれたりすると全額が損金不算入になります。
- 業績が悪化した場合、期の途中で減額できますか。
- 経営状況の著しい悪化など、やむを得ない事情(業績悪化改定事由)があれば減額が認められます。ただし単に利益が思ったより出なかったという理由では認められません。減額の経緯を議事録に残してください。
- 配偶者を役員にして報酬を分けたほうが得ですか。
- 累進税率が緩和されるため有利になることが多い一方で、実際に職務に従事している実態と、その職務に見合った金額であることが前提です。実態のない支給は否認されます。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 法人税法第34条(役員給与の損金不算入)、法人税法施行令第69条
- 所得税法第28条(給与所得)、第86条(基礎控除)、第89条(税率)
- 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防衛特別法人税・令和8年4月1日以後開始事業年度)、地方税法(法人住民税・法人事業税・個人住民税)
- 国税庁タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」/No.5209「役員の範囲」
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料額表」、日本年金機構「厚生年金保険の標準報酬月額」
税制・保険料率は毎年改正されます。実際の役員報酬設計にあたっては最新の条文・料率および税理士の確認をお願いします。
関連する計算ツール
← 税務計算ツール集(全169式)の一覧にもどるこの計算、実際の数字で確かめませんか
札幌のジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)が、御社の実額をもとに試算し、次に打つ手までご提案します。初回のご相談は無料です。
初回相談(無料)を申し込む料金・契約の流れを見る