- カテゴリ:所得税
- 根拠:所法30・地法50の2
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
退職金は、給与とは別の特別な計算方法で税金が決まり、長く勤めた人ほど税負担が軽くなるように退職所得控除という大きな非課税枠が用意されています。控除を差し引いた金額はさらに2分の1にされてから税率がかかるため、同じ金額の給与に比べて手取りがかなり多く残るのが特徴です。ここでは、退職金の額面から所得税と住民税を差し引いた、実際の手取り額の考え方を確認します。
この計算式を3行でいうと
- 退職金にかかる税金は、勤続年数に応じた退職所得控除を差し引いたあと2分の1にした「課税退職所得」をもとに計算します
- 所得税は課税退職所得に税率をかけて復興特別所得税を含めた金額、住民税は課税退職所得の10%(市町村民税6%+道府県民税4%)で計算します
- 勤続年数が長いほど退職所得控除が大きくなり、同じ退職金でも税負担が軽くなる仕組みです
まずは計算してみる(自動計算ツール)
退職金の手取り完全計算(所得税+住民税)
所法30・地法50の2★結果コピーリンク退職金から所得税(復興込・分離課税)と住民税10%(市6%+道4%)を差し引いた手取り額を、一般退職・特定役員(勤続5年以下の役員)・短期退職手当等の区分と障害者退職の加算まで含めて計算します。
| 退職所得控除(勤続30年) | ¥15,000,000 |
| 課税退職所得金額(千円未満切捨・一般(1/2課税)) | ¥7,500,000 |
| 所得税+復興特別所得税(1円未満切捨) | ¥1,111,869 |
| 住民税(市6%+道4%・各百円未満切捨) | ¥750,000 |
| 税額合計 | ¥1,861,869 |
| 手取り額 | ¥28,138,131 |
| 実効税率 | 6.206% |
こんなときに使います
- もうすぐ定年退職を迎え、退職金から実際にいくら税金が引かれて、手取りがいくらになるか知りたいとき
- 早期退職・希望退職の募集があり、勤続年数によって手取り額がどれくらい変わるか比べたいとき
- 転職にあたり、退職金を一時金でもらう場合の手取りをあらかじめ試算しておきたいとき
- 会社の役員が退職するにあたり、退職金の税金の計算方法が一般の社員と違うのか確認したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 退職金 | 会社から支給される退職金の額面(源泉徴収される前の金額)です。 | 退職金規程にもとづく支給額の通知、退職金の支払通知書。 |
| 勤続年数 | その会社に在籍していた年数です。1年未満の端数は1年に切り上げます。 | 雇用契約書や辞令に記載の入社日・退職日から数えます。 |
| 区分(0一般/1特定役員/2短期退職手当等) | 2分の1課税が使えるかどうかの区分です。役員等としての勤続年数が5年以下なら「1」(2分の1なし)、役員等以外で勤続5年以下なら「2」(控除後300万円超の部分は2分の1なし)、それ以外は「0」です。 | 退職時の役職(取締役・執行役・監査役等かどうか)と、その期間の年数から判断します。 |
| 障害者になったことによる退職(1/0) | 障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、退職所得控除に100万円が加算されます。該当すれば1を入れます。 | 「退職所得の受給に関する申告書」の該当欄(障害者手帳など)で確認します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 退職所得控除を求める:勤続年数に応じて決まる非課税の枠です。勤続20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数-20年)で、障害者になったことによる退職は100万円を加算します。勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。
- 課税退職所得を求める:退職金から退職所得控除を差し引き、その金額をさらに2分の1にして、千円未満を切り捨てます。特定役員退職手当等(役員等としての勤続5年以下)は2分の1にせず、短期退職手当等(役員等以外で勤続5年以下)は控除後300万円を超える部分を2分の1にしません。長期間勤めた退職金ほど、税金のかかる金額が小さく抑えられます。
- 所得税・住民税を計算し、手取りを出す:課税退職所得に所得税の速算表をあてはめ、復興特別所得税を含めて1.021倍した所得税額(1円未満切捨て)を求め、課税退職所得の10%(市6%・道4%、各百円未満切捨て)を住民税として計算します。退職金からこの所得税と住民税を差し引いた金額が手取り額です。
具体例で確かめる
例1 この計算機の初期値:勤続30年で退職金3,000万円(一般)のケース
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 ×(30年-20年)= 1,500万円 課税退職所得 =(30,000,000円 - 15,000,000円)× 1/2 = 7,500,000円 所得税 =(7,500,000円 × 23% - 636,000円)× 1.021 = 1,111,869円 住民税 = 7,500,000円 × 10% = 750,000円
手取り = 30,000,000円 - 1,111,869円 - 750,000円 = 28,138,131円(実効税率約6.2%)
例2 勤続4年の一般従業員が退職金600万円を受け取る(短期退職手当等)ケース
退職所得控除 = 40万円 × 4年 = 160万円、控除後 = 6,000,000円 - 1,600,000円 = 4,400,000円 課税退職所得 = 300万円 × 1/2 +(440万円 - 300万円)= 2,900,000円(300万円超の部分は2分の1にしない) 所得税 =(2,900,000円 × 10% - 97,500円)× 1.021 = 196,542円、住民税 = 2,900,000円 × 10% = 290,000円
手取り = 6,000,000円 - 196,542円 - 290,000円 = 5,513,458円(全額を2分の1にできる場合の手取り5,654,928円より約14万円少ない)
例3 勤続35年・退職金1,800万円で、控除が退職金を上回るケース
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 ×(35年-20年)= 1,850万円 > 退職金1,800万円 → 課税退職所得は0円
課税退職所得が0円なら、所得税・住民税ともにかからず、退職金の全額が手取りになる
ここを間違えやすい
1|退職所得は他の所得と合算しません
退職所得は、給与所得や事業所得とは分離して税額を計算する分離課税です。他の所得と合算して税率が決まるわけではないため、一般的に税負担が軽くなります。
2|申告書を出さないと、天引きされすぎることがあります
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、退職金の支払い時に正しい税額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。提出していないと一律20.42パーセントが源泉徴収され、あとで確定申告をして精算する必要があります。
3|勤続5年以下の退職金・役員退職金は税負担が重くなることがあります
役員等としての勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等は控除後の金額の全部について、役員等以外で勤続5年以下の短期退職手当等は控除後300万円を超える部分について、2分の1計算が使えません。長期間勤めた場合と同じ感覚で見積もらないよう注意してください。
4|勤続年数の端数は切り上げます
勤続10年2か月のように1年未満の端数がある場合、退職所得控除の計算では1年に切り上げて数えます。切り捨てではありません。
よくある質問
- 退職金を年金のように分割で受け取る場合も、同じ計算方法ですか。
- いいえ、一時金として一括で受け取る場合は退職所得、年金形式で分割して受け取る場合は雑所得として扱われ、計算方法が異なります。
- iDeCoの一時金も退職所得控除の対象になりますか。
- 確定拠出年金の老齢給付金を一時金で受け取る場合も退職所得とみなされます。ただし、会社の退職金と受け取る時期が近いと、控除額の計算で調整が必要になる場合があります。
- 退職所得の確定申告が必要になるのはどんな人ですか。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない人や、医療費控除など他の控除を受けるために確定申告をする人は、退職所得の金額も申告書に記載する必要があります。
- 住民税はいつ、どうやって納めますか。
- 退職金にかかる住民税は、他の所得とは別に、退職金の支払い時に会社が特別徴収(源泉徴収と同様に天引き)して納めるのが原則です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 所得税法第30条・第31条(退職所得)・第201条(退職所得の源泉徴収)、地方税法第50条の2・第328条(退職所得に係る分離課税)
- 国税庁タックスアンサー No.2725「退職所得の源泉徴収」
- 国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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