- カテゴリ:消費税
- 根拠:消法36
- 入力3項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
免税事業者と課税事業者を行き来するとき、棚卸資産(在庫)に含まれる消費税の扱いにズレが生じないよう調整する仕組みがあります。免税事業者から課税事業者になった場合は、それまで控除できなかった在庫分の消費税をあとから控除に加えることができます。逆に課税事業者から免税事業者になる場合は、すでに控除していた在庫分の消費税を最後に取り戻す必要があります。
この計算式を3行でいうと
- 調整税額は「棚卸資産の取得価額(税込)×税率÷(100+税率)」で計算します。在庫に含まれる消費税相当額を求める式です。
- 免税事業者から課税事業者になるときは、期首棚卸資産の調整税額を仕入税額控除に加算できます。
- 課税→免税になるときは、期末棚卸資産の調整税額をその期間の仕入税額控除から除く必要があります。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
棚卸資産の調整(免税⇔課税)
消法36★結果コピーリンク免税事業者が課税事業者になった場合、期首棚卸資産に含まれる消費税を仕入税額控除に加算できます(課税→免税は期末分を控除不可)。
| 棚卸に含まれる消費税 | ¥500,000 |
| 取扱い | 課税事業者となった課税期間で仕入税額控除に加算 |
こんなときに使います
- 免税事業者からインボイス登録などで課税事業者になり、期首に在庫が残っているとき
- 課税事業者から免税事業者に戻ることになり、期末の在庫の扱いを確認したいとき
- 棚卸資産に係る消費税額の調整の明細書を作る前に、金額の目安を知りたいとき
- 在庫の多い小売業・製造業で、事業者区分が変わる際の消費税への影響を試算したいとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 棚卸資産の取得価額(税込) | 対象になる棚卸資産(商品・製品・原材料など)を仕入れたときの金額の合計で、税込の金額です。 | 棚卸表・在庫リスト、仕入れたときの請求書や領収書で確認します。 |
| 税率 | その棚卸資産を仕入れたときにかかった消費税率です。 | 標準税率10%か軽減税率8%かを、仕入れた品目にあわせて判断します。 |
| 免税→課税1/課税→免税0 | 今回どちらの切り替えを計算するかを選ぶ区分です。 | 免税事業者から課税事業者になるなら1、課税事業者から免税事業者になるなら0を入力します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 対象になる棚卸資産を確認する:免税→課税の場合は課税事業者になった課税期間の期首棚卸資産、課税→免税の場合は課税事業者としての最後の課税期間の期末棚卸資産が対象です。
- 含まれる消費税相当額を計算する:棚卸資産の取得価額(税込)に、税率÷(100+税率)を掛けます。
- 加算するか除外するかを判定する:免税→課税なら仕入税額控除にこの金額を加算し、課税→免税ならこの金額をその課税期間の仕入税額控除から除きます。
免税事業者だった間は、仕入れの消費税を控除できませんでした。その分を在庫という形で清算するのが免税→課税の調整であり、逆に課税事業者でなくなる際は、控除済みの分を清算するのが課税→免税の調整だとイメージすると分かりやすくなります。
具体例で確かめる
例1 免税事業者から課税事業者になり、期首棚卸資産(税込550万円、税率10%)があるケース
調整税額 = 5,500,000円 × 10 ÷ 110 = 500,000円
500,000円を、課税事業者になった課税期間の仕入税額控除に上乗せできる
例2 同じ在庫を抱えたまま、課税事業者から免税事業者に戻るケース
調整税額 = 5,500,000円 × 10 ÷ 110 = 500,000円
500,000円を、課税事業者として最後の課税期間の仕入税額控除から除く必要がある
例3 軽減税率の食料品在庫(税込108万円、税率8%)が期首にあるケース
調整税額 = 1,080,000円 × 8 ÷ 108 = 80,000円
免税→課税であれば、80,000円を仕入税額控除に加算できる
免税→課税と課税→免税のちがい
| 項目 | 免税事業者→課税事業者 | 課税事業者→免税事業者 |
|---|---|---|
| 対象になる棚卸資産 | 課税事業者になった課税期間の期首棚卸資産 | 免税事業者になる直前、課税事業者として最後の課税期間の期末棚卸資産 |
| 消費税額の扱い | 仕入税額控除に加算できる | 仕入税額控除から除かれる(取り戻し) |
| 簡易課税・2割特例の場合 | 調整は行わない | 調整は行わない |
ここを間違えやすい
1|対象は「課税仕入れ等に係る」棚卸資産だけです
調整の対象になるのは、課税仕入れ等に該当する棚卸資産だけです。輸入した棚卸資産など、扱いが異なるものが含まれていないか確認してください。
2|免税→課税では明細の保存が要件です
棚卸資産の明細を記録した書類を保存していないと、この調整を受けられません。期首の時点で在庫の一覧を残しておくことを忘れないようにしてください。
3|簡易課税・2割特例を選んでいる期間は調整不要です
簡易課税や2割特例は、みなし仕入率や一律の割合で仕入税額を計算する方式です。実際の棚卸資産の金額にもとづくこの調整は必要ありません。
4|課税→免税の調整を忘れると、あとで確認を求められることがあります
最後の課税期間の申告で、期末棚卸資産の分を控除に含めたままにしておくと、本来より多く控除した状態になります。忘れずに調整して申告してください。
よくある質問
- 棚卸資産とは具体的に何を指しますか。
- 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料など、販売や製造のために保有している資産のことです。
- 免税→課税の場合、いつの時点の在庫を数えますか。
- 課税事業者になった課税期間の初日の前日、つまり課税事業者になる直前の時点で持っている棚卸資産を数えます。
- 調整をし忘れた場合はどうなりますか。
- 免税→課税の調整を忘れると、本来受けられる仕入税額控除を受け損ないます。課税→免税の調整を忘れると、本来より多く控除した状態のままになり、後日の確認で修正が必要になることがあります。
- 簡易課税を選んでいる期に事業者区分が変わった場合はどうなりますか。
- 簡易課税ではみなし仕入率で仕入税額を計算するため、実際の棚卸資産の金額にもとづくこの調整は行いません。2割特例を選んでいる期間も同様です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 消費税法第36条(納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整)
- 消費税法施行令(棚卸資産の範囲及び調整の計算方法に関する規定)
- 国税庁「棚卸資産に係る消費税額の調整」に関する案内
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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