- カテゴリ:所得税
- 根拠:所法72
- 入力4項目・その場で自動計算
- 令和8年度の数値に対応
災害や盗難、横領によって住宅や家財に損害を受けたときは、雑損控除を使って所得税を軽くできる場合があります。控除額は2つの計算方法のうち多い方を選べる仕組みで、その年だけで引ききれない場合は翌年以降に繰り越すこともできます。
この計算式を3行でいうと
- 控除額は「損失額-保険金等-総所得金額等の10%」と「災害関連支出-5万円」を計算し、多い方を使います。
- 対象になるのは災害・盗難・横領による損失です。詐欺や恐喝による被害は対象になりません。
- その年の所得から引ききれない金額は、翌年以後3年間にわたって繰り越して控除できます。
まずは計算してみる(自動計算ツール)
雑損控除
所法72★結果コピーリンク災害・盗難・横領による損失は、2つの計算のうち多い方を所得控除できます(3年繰越可)。
| ①損失−保険−所得10% | ¥1,400,000 |
| ②災害関連支出−5万 | ¥450,000 |
| 控除額(大きい方) | ¥1,400,000 |
こんなときに使います
- 台風や大雨、火災などの災害で自宅や家財に被害を受けたとき
- 空き巣や車上荒らしなどの盗難被害にあったとき
- 横領の被害を受けて、財産を失ってしまったとき
- 被害額が大きく、その年の所得だけでは控除を使いきれるか心配なとき
入力する項目のかんたん解説
| 入力する項目 | どんな数字か | どこを見ればよいか |
|---|---|---|
| 損失額(時価ベース) | 被害を受けた資産の、被害当時の時価にもとづく損失額です。購入価格そのものではありません。 | 罹災証明書、修理見積書、盗難被害届などで確認・算定します。 |
| 保険金等で補填された金額 | 火災保険や地震保険などから受け取った保険金、損害賠償金の合計です。 | 保険会社の支払通知書で確認します。 |
| うち災害関連支出 | 損失額のうち、後片付けや取り壊し、原状回復にかかった費用の金額です。 | 業者への支払いの領収書で確認します。 |
| 総所得金額等 | その年のすべての所得を合計した金額です。年収そのものではありません。 | 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」や確定申告書の所得金額の合計欄で確認します。 |
計算のしくみ(3ステップ)
- 差引損失額を計算する:損失額(時価ベース)から保険金等で補填された金額を差し引きます。
- 2つの計算方法を試す:(1)差引損失額から総所得金額等の10%を引いた金額と、(2)損失額のうち災害関連支出から5万円を引いた金額の、2つを計算します。
- 多い方を控除額にする:2つのうち金額が大きいほうを雑損控除額として所得から差し引きます。
具体例で確かめる
例1 水害で被害額300万円、保険金100万円、うち片付け費用50万円、総所得600万円のケース
計算1 =(3,000,000円-1,000,000円)-6,000,000円×10% = 1,400,000円 計算2 = 500,000円-50,000円 = 450,000円
多い方の1,400,000円が雑損控除額
例2 空き巣被害で盗難額80万円、保険金なし、総所得400万円のケース
計算1 =(800,000円-0円)-4,000,000円×10% = 400,000円 計算2 = 災害関連支出がないため計算できない
雑損控除額は400,000円
例3 災害の後片付け費用が多くかかったケース(損失200万円、うち片付け費用180万円、総所得800万円)
計算1 =(2,000,000円-0円)-8,000,000円×10% = 1,200,000円 計算2 = 1,800,000円-50,000円 = 1,750,000円
多い方の1,750,000円が雑損控除額(このケースは計算2が上回る)
災害減免法との選択
災害による損失については、雑損控除のかわりに災害減免法による税金の軽減を選ぶこともできます。所得金額が1,000万円以下の方が対象で、所得に応じて所得税が軽減または免除されます。雑損控除と災害減免法はどちらか一方しか選べないため、被害額や所得の状況によって有利な方を選ぶ必要があります。
ここを間違えやすい
1|詐欺や恐喝の被害は対象になりません
雑損控除の対象は災害・盗難・横領による損失に限られます。振り込め詐欺やロマンス詐欺のような詐欺・恐喝の被害は、たとえ大きな金額でも雑損控除の対象外です。
2|損失額は「購入したときの金額」ではなく「時価」で計算します
何年も前に購入した資産は、時間の経過とともに価値が下がっている場合があります。損失額は被害を受けた時点の時価を基準に算定する必要があります。
3|生活に通常必要でない資産は対象にならない場合があります
別荘や貴金属、美術品など、通常の生活に必要とはいえない資産の損失は、雑損控除の対象にならないことがあります。個別の判断が必要なため、該当しそうな場合は税理士に確認することをおすすめします。
4|その年に引ききれなくても3年間繰り越せます
損失額が大きく、その年の所得から控除しきれない場合は、翌年以後3年間にわたって繰り越して控除できます。繰越を受けるには、控除を受けられなかった年も含めて確定申告を続ける必要があります。
よくある質問
- 雑損控除を受けるには確定申告が必要ですか。
- 必要です。会社員の方でも年末調整では適用されないため、雑損控除を受ける年は確定申告をしてください。
- 家財道具はどこまで対象になりますか。
- 生活に通常必要な家具、家電、衣類などは対象になります。ただし生活に通常必要でないと判断される資産は対象外になる場合があります。
- 盗難にあったことに気づくのが遅れた場合はどうなりますか。
- 被害に気づいた年ではなく、実際に被害が発生した年分の雑損控除として計算するのが原則です。届出や証明書類の準備状況によって取り扱いが異なる場合があるため、早めに税務署や税理士に相談することをおすすめします。
- 火災保険の保険金がまだ確定していない場合はどうすればよいですか。
- 保険金の額が確定していない場合は、見込額で申告し、後日確定額との差額が生じたときに修正するなどの対応が必要になる場合があります。個別の状況に応じた判断が必要です。
根拠となる法令・出典
本ページは次の公的資料にもとづいて作成しています(最終確認:2026年8月)。
- 所得税法第72条(雑損控除)
- 災害減免法(災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律)
- 国税庁タックスアンサー No.1110「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
税制は毎年改正されます。実際の申告にあたっては最新の条文・通達および税理士の確認をお願いします。
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