顧客データをClaudeやGeminiに入れる前に決めておくべきことは3つです。入れてよい情報と入れない情報の線引き、固有名詞や数値を伏せる匿名化、データの扱いに関する設定とプランの確認です。経理・税務で使う場合は、出力を国税庁の一次情報で確かめる運用も欠かせません。
この記事の結論
個人情報・営業秘密・金融機関への提出書類などは、入力する前に立ち止まり、必要なら匿名化してから使います。「迷ったら入れない」「出力は人が確認する」を社内の共通ルールにすれば、過度に怖がらずに活用できます。
- マイナンバー・口座番号・健康に関する情報などは、設定やプランにかかわらず入力しない
- 顧客名や取引先名は「A社」「B氏」に置き換え、金額は丸めるか仮の値にする
- 入力データの学習への利用、履歴の保存、共有の設定とプランの条件を、使い始める前に確認する
- 税務の回答は、年分を確かめたうえで国税庁の一次情報で裏取りする
顧客データをAIに入れると、何が問題になる?
AIに入力した内容は、サービス提供者のサーバーで処理されます。設定やプランによっては、入力した内容が保存されたり、モデルの改善(学習)に使われたりすることがあります。問題になるのは「AIを使うこと」そのものではなく、入力した情報がどこで、どの目的で扱われるかです。
ここを曖昧にしたまま使い始めると、情報漏えいや信頼の失墜といった、取り返しのつかないトラブルにつながりかねません。主なリスクは次の4つです。
| リスク | 内容 | 確認するもの |
|---|---|---|
| 情報漏えい・信用の低下 | 顧客や取引先の情報が社外に出るおそれがある。一度の漏えいが取引関係全体に響く | サービスの設定・社内ルール |
| 個人情報保護法 | 顧客・従業員の個人情報は、本人に示した利用目的の範囲で扱う必要がある。AIへの入力もその利用にあたる | 自社の利用目的の公表内容、個人情報保護委員会の注意喚起 |
| マイナンバー(番号法) | 個人番号は、社会保障・税などの法律で決められた事務以外では利用・提供・保管できない | 番号法と、特定個人情報の取扱いの社内規程 |
| 取引先との契約 | 秘密保持契約などで、第三者への開示や目的外の利用が禁じられていることがある | 契約書の秘密保持条項 |
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しています。個人情報を含む指示文を入力するときは、利用目的の範囲内かを十分に確認することが求められています。また、入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、法令違反となる可能性があるとされています。
入れてよい情報・入れてはいけない情報の線引き
まず押さえたいのは、入力する情報の性質です。社内では、情報を次の3つに分けて扱うと判断がぶれにくくなります。
| 区分 | 情報の例 | 扱い |
|---|---|---|
| 入力しない | マイナンバー、預金口座やクレジットカードの番号、パスワード、健康・病歴などの配慮が必要な個人情報、取引先から秘密保持を求められた資料 | 設定やプランにかかわらず入力しない |
| 匿名化してから入力 | 顧客の氏名・住所・電話番号、取引先名と取引金額の組み合わせ、従業員の給与・評価、金融機関に出す資料、未公開の事業計画 | 固有名詞を記号に、数値を丸めるか仮の値にしてから相談する |
| そのまま入力してよい | 公表されている情報、制度や勘定科目についての一般的な質問、自社で作った書式のひな形、架空のデータ | そのまま使える(出力の確認は必要) |
匿名化を行ったうえで相談する形にすると、リスクを大きく下げられます。たとえば「A社」「金額は仮に○○万円」として相談すれば、出力の有用性をほぼ保ったまま、機密の流出を避けられます。
名前を伏せても「組み合わせ」で特定される
氏名や社名を伏せても、地名・業種・取引の時期・金額がそろうと、誰のことか分かってしまう場合があります。取引先の数が限られる業種や地域ほど、組み合わせで特定されないかを確認してから入力しましょう。
匿名化のやり方:経理・税務の相談で使える置き換えのルール
匿名化は、担当者のその場の判断に任せず、置き換えのルールを決めておくと漏れが減ります。経理・税務の相談なら、次の5つで十分に実用的です。
- 固有名詞を記号にする顧客名・取引先名・担当者名を「A社」「B氏」に置き換えます。社名の一部や略称も残しません。
- 番号を消す電話番号、住所の番地、口座番号、契約番号、マイナンバーは削除します。
- 数値を丸めるか仮の値にする判断に影響しない範囲で「約85万円」「仮に100万円」とします。増減の割合だけを伝える方法もあります。
- 日付と地名をぼかす「3月中旬」「道内の取引先」などとし、特定につながる情報を減らします。
- 対応表は社内で管理する「A社=実際の社名」の対応表はAIに渡さず、社内の決めた場所で保管します。
具体例:督促文の相談を匿名化する
匿名化の前:「株式会社〇〇(担当:〇〇様・電話番号つき)への売掛金852,000円が3か月入金されていない。丁寧な督促文を作りたい」
匿名化の後:「取引先A社への売掛金(約85万円)が3か月未入金。関係を保ちながら支払いを促す、丁寧な督促文の例を作ってほしい」
社名・金額・振込先を入れるのは、出力をもとに社内で文面を仕上げる段階で行います。
試算表や売上の一覧を相談したいときも、取引先名の列を記号に置き換え、金額は千円単位に丸めるなどしてから使います。分析に必要なのは数字の傾向であることが多く、実名がなくても答えの質はほとんど変わりません。
設定とプランで確認すること
ClaudeやGeminiには、入力したデータをモデルの学習に使うかどうかなどに関する設定やプランの違いがあります。業務で使うなら、データの取り扱いに配慮した条件で利用しているかを、使い始める前に確認することが大切です。
- 入力したデータが学習に使われるかどうかと、その設定の変え方
- 会話の履歴がどこに保存され、削除できるか
- 業務向けのプランの利用条件(データの取扱い、管理者による利用者の管理)
- 会社として契約したアカウントで使い、個人の無料アカウントで業務データを扱わない
- 共有リンクや外部サービスとの連携で、誰が内容を見られるか
- 利用規約やプライバシーポリシーが改定されていないか
設定や提供条件は変わることがあるため、最新の料金・仕様は各公式サイトでご確認ください。確認した日付と設定の内容を記録しておくと、担当者が替わっても運用を引き継げます。AI全般の動きは中小企業のAI活用・最新技術でも整理しています。
小さな会社でも作れる社内ルール
仕組みとして安全に配慮していても、最終的に「何を入力するか」を判断するのは人です。とくに複数人で使う場合は、担当者ごとの判断のばらつきが漏えいの原因になりがちです。A4で1〜2枚のルールでも、次の項目を決めておけば十分に機能します。
| ルールの項目 | 決めておく内容 |
|---|---|
| 使うAIとアカウント | 会社が契約したサービス・アカウントに限る |
| 入力の線引き | 3区分の表と、匿名化の置き換えのルール |
| 使う業務 | 文章の下書き・資料の整理・調べ物など、使ってよい業務を限定する |
| 出力の確認 | 顧客に出す文書や税務・契約に関わる内容は、担当者以外も確認してから使う |
| 誤って入力したとき | 報告先と、会話の削除・記録・顧客への説明の手順 |
| 成果の測り方 | 作業時間の短縮など、続けるかどうかを判断する指標 |
誤って顧客の情報を入力したときは、会話を削除し、何をどこまで入力したかを記録して責任者に報告します。個人データの漏えい等に当たる場合は、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要になることがあるため、入力した情報の内容に応じて確認します。
地域で続ける商売ほど、情報管理の評判は資産になる
札幌・北海道のように取引先や顧客との距離が近い地域では、情報の扱いに関する評判が広まりやすい面があります。「あの会社は顧客情報の管理がしっかりしている」という信頼は、地域でビジネスを続けるうえで大きな資産です。逆に一度の漏えいが地域内の評判に響くことを考えると、AI利用の入口でルールを整えておく価値は十分にあります。
どの情報をAIに入れてよいかは、業種や扱う顧客データで変わります。情報の線引きや社内ルールづくりを、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談するAIの出力は人が確認する:税務の答えは一次情報で裏取り
AIの出力にも誤りが含まれることを忘れないでください。顧客に提示する文書や、税務・契約に関わる内容は、人が確認してから使う前提です。税務の質問は、次の順番で確かめると誤りを防げます。
- AIの回答で論点をつかむどの制度が関係し、何を確かめればよいかを整理するところまでに使います。
- 国税庁の一次情報で確かめるタックスアンサーなどで、要件・金額・期限を確認します。
- 年分と改正の時期を確かめるどの年分の取扱いか、改正前の古い情報ではないかを見ます。
- 金額は計算ツールや会計ソフトで検算する個人情報を入れずに計算できる方法を使います。
- 判断が分かれるものは専門家に確認する個別の事情で結論が変わるものは、税理士に相談します。
例:令和8年分の改正は古い情報で答えられやすい
令和8年分は、基礎控除が所得に応じた段階制(合計所得489万円以下は104万円など)になりました。ただし年の途中の毎月の源泉徴収には反映されず、12月の年末調整で精算します。改正前の情報のまま答えるAIもあるため、年分を指定して質問し、回答を国税庁の資料で確かめましょう。
給与の計算のように個人のデータを扱う作業は、AIに従業員の情報を入れるより、金額だけで計算できるツールを使うほうが安全で、計算の誤りも防げます。経理での具体的な使い方はClaude Cowork 経理活用ガイドで手順を紹介しています。
無料ツール給与の源泉徴収税額を計算する従業員の氏名などを入れずに、月額の給与から源泉徴収税額(甲欄)を確認できます。計算する
よくある質問
顧客から同意をもらえば、そのまま入力してもよいですか?
同意は一つの方法ですが、それだけでは足りません。サービス提供者が入力データをどう扱うか、取引先との契約に反しないかは別に確認が必要です。同意がある場合も、入力する情報は目的に必要な範囲に絞りましょう。
マイナンバーが載った書類を、AIで読み取ってもよいですか?
源泉徴収票や扶養控除等申告書などを読み取らせる場合は、マイナンバーの欄を隠すか、番号のない控えを使ってください。マイナンバーは法律で利用できる事務が決められており、それ以外の目的での利用や保管は認められていません。
会計ソフトやメールに組み込まれたAI機能も、同じ考え方ですか?
同じです。組み込まれた機能でも、入力した内容が提供会社でどう扱われるか(学習への利用、保存の場所、管理者の設定)を確認し、3区分のルールに沿って使います。
税理士に渡す資料も、AIで整理してからのほうがよいですか?
匿名化すると申告や決算の資料として使えなくなるため、元の資料は安全な方法で税理士に直接渡すのが基本です。税理士には法律上の守秘義務があります。AIで整理するなら、匿名化しても困らない集計や下書きにとどめましょう。
ChatGPTやCopilotなど、ほかの生成AIでも考え方は同じですか?
同じです。入力の線引き、匿名化、設定とプランの確認、出力の確認の4つは、サービスにかかわらず共通です。設定の名前や提供条件はサービスごとに異なるため、各公式サイトで確認してください。
まとめ
顧客データをClaudeやGeminiで扱う前に、入れてよい情報の線引き、匿名化のルール、データの扱いに関する設定とプランの確認をそろえておけば、過度に怖がらずに活用できます。「迷ったら入れない」を社内で共有し、税務や契約に関わる出力は一次情報と人の目で確かめてください。便利さと安全のバランスを保つ仕組みづくりが、長く使い続けるための土台になります。
札幌の公認会計士・税理士事務所
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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
- 国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)
- 国税庁 タックスアンサー No.1199 基礎控除
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。AIサービスの設定・料金・提供条件は変わることがあるため、各公式サイトでご確認ください。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
