相続税を中心に、贈与税・譲渡所得・非上場株式(自社株)の評価を一つにつなげて解説する総合ガイドです。2026年10月17日時点の法令・通達・公表資料にもとづき、公認会計士・税理士の事務所がまとめました。全14ページ・156章、計算・判定ツール17種類、札幌・北海道の窓口情報つき。
相続・贈与・譲渡・株価|全14ページ
相続税は、贈与税・譲渡所得・自社株の評価と切り離せません。生前の贈与は相続税に加算され、相続した土地を売れば相続税額を取得費に加算でき、自社株の価額は相続でも売買でも税金を左右します。このガイドは4つの税金を同じ家族・同じ財産の時間の流れでつなぎ、2026年10月時点の改正まで反映しています。
このガイドの使い方
このガイドは、相続税を幹にして、贈与税・譲渡所得・非上場株式(自社株)の評価を一つにつないだ解説です。最初に、読み方と表示のルールを確認してください。
この章の結論
- 4つの税金を税目ごとに切り分けず、同じ家族・同じ財産の「生前→相続→相続後」の流れで読めるように並べています。
- 内容は2026年(令和8年)10月17日時点の法令・通達・公表資料によります。改正や期限には、施行中・通達案・要望段階などの確定度ラベルを付けています。
- 本文は一般の方向け、各章末の「専門家向け」は条文・通達・判例による根拠です。計算ツールは入力をブラウザの外に送らず、結果は概算です。
4つの税金を、時間の流れでつなぐ
相続の場面では、税金が一つで終わることはまれです。生前の贈与には贈与税、亡くなったときの財産には相続税がかかります。相続した不動産や株式を売れば、所得税・住民税(譲渡所得)がかかります。
会社を経営していれば、自社株をいくらと評価するかが、相続税・贈与税の額を左右します。会社や親族に株を売るときは、贈与税や所得税・法人税の「時価」が問題になり、相続税の評価額と同じになるとは限りません。
一般的な解説は税目ごとに分かれているため、「相続税では有利でも、売るときに不利になる」といった税金どうしの関係が見えにくくなります。このガイドは、同じ財産が時間とともにどの税金の対象になるかをたどれるように構成しています。
- 生前(贈与・売買・対策)暦年課税と相続時精算課税、生前贈与加算、親子間の売買、生前対策。贈与税・生前対策と二次相続
- 相続(評価・特例・申告)財産の評価、小規模宅地等の特例、税額の計算、申告と納税、民法の手続。相続税の基本・財産評価・小規模宅地等の特例・相続税の計算と税額控除・申告・納税・税務調査・相続手続と民法
- 相続後(売却・分割・納税)相続した不動産・株式の売却、代償分割、会社への株式の売却。相続・贈与と譲渡所得・非上場株式(自社株)の評価
税金をまたぐ判断は税目の交差点ケース集に、札幌・北海道に固有の情報は札幌・北海道の相続ガイドにまとめています。
基準日と確定度ラベル
このガイドの基準日は2026年10月17日です。この日に有効な法令・通達・期限・数値で書いています。期限のある特例は、期限と今の位置を並べて示します。例えば空き家の3,000万円控除期限ありは「2027年(令和9年)12月31日までの譲渡(2026年10月時点で期限内)」と書きます。
改正や期限に触れる箇所には、制度がどの段階にあるかを示すラベルを付けています。ラベルは次の7種類です。
| ラベル | 意味 | このガイドでの例 |
|---|---|---|
| 施行中 | 現在適用されている制度 | 生前贈与加算の7年への延長(2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から。経過措置で段階的に延び、2026年中の相続は3年のまま) |
| 成立・施行待ち | 法律などは決まっているが、適用はこれから | 防衛特別所得税(2027年分から) |
| 通達案 | 案が公表され、意見公募をしている段階 | 貸付用不動産・不動産小口化商品の評価見直し(2026年9月18日公表、10月18日締切。2027年1月1日以後の相続・贈与から適用予定) |
| 検討中 | 有識者会議などで検討している段階 | 非上場株式の評価方法の見直し(国税庁の有識者会議。適用時期は未定) |
| 要望段階 | 税制改正の要望が出ている段階 | 2027年度(令和9年度)税制改正要望(空き家の3,000万円控除の延長など。大綱は2026年12月の予定) |
| 新規適用終了 | 期限が来て、新たには使えない制度 | 教育資金の一括贈与の非課税(2026年3月31日で終了。それまでの拠出分は従来どおり) |
| 期限あり | 適用期限がある特例(日付は本文に記載) | 住宅取得等資金の贈与の非課税(2026年12月31日までの贈与) |
よくある誤り:未確定の情報や古い前提で判断する
- 「2024年から生前贈与は7年分加算される」は誤りです。2026年中に亡くなった場合の加算は3年分で、完全に7年になるのは2031年(令和13年)1月1日以後の相続からです。
- 「貸付用不動産の評価はもう改正された」は、2026年10月17日時点では誤りです。通達は案の段階で、まだ制定されていません。
- 「防衛特別所得税で不動産売却の税率が上がる」も誤りです。長期譲渡所得の合計20.315%は、2027年分以後も変わりません。
本文と「専門家向け」の2層構造
各章は、最初に「この章の結論」を置き、本文で理由と手順を説明します。専門用語は初めて出てきたところで言い換え、表・流れ図・計算例で数字を確かめられるようにしています。計算例には検算の式を残しています。
章の最後の「専門家向け:根拠と実務論点」は、税理士・会計事務所・金融機関の方に向けた欄です。根拠の条文、通達の番号、判例、実務で誤りやすい点をまとめています。出典は、ページの末尾にまとめて表示します。
言葉の意味が分からないときは用語集で確認できます。期限と税率は期限の早見表と税率・控除額の早見表にもまとめています。
計算ツールの使い方と注意
ガイドの各所に、相続税・贈与税・譲渡所得・株価の計算ツールを置いています。入力した内容はお使いのブラウザの中だけで計算し、どこにも送信しません。結果は概算で、計算の前提や根拠は各ツールの画面に表示します。
30秒診断や相続税シミュレーターで入れた家族構成などは、同じブラウザで開いた他の計算ツールにも引き継がれます。保存先は、そのブラウザの中だけです。
- 30秒診断:相続税はかかる?(基礎控除を超えるかの目安)
- 期限カレンダー(亡くなった日から主な期限を一覧)
- 相続税シミュレーター(相続税の総額と各人の納付税額)
- 売却の税金シミュレーター(相続した不動産を売るときの税金)
- 株価シミュレーター(自社株の評価)
読み方の提案:3つのコース
最初から順に読む必要はありません。今の状況に合わせて、次のどれかから読み始めてください。12の状況別の入口は状況別ナビにあります。
このガイドは一般的な解説です。個別の事情による判断は、税理士や税務署などに確認してください。
他の税金との関係
- 4つの税金がどこで重なるかは、4つの税金の関係:交差点マップで一覧にしています。
- 同じ土地・株式でも目的によって価額が違う「一物多価」は、交差点の考え方と一物多価の整理表で整理しています。
専門家向け:根拠と実務論点
確定度ラベルの判断基準
- 成立・施行待ち:法律・政省令が公布済みで、適用の開始前のもの。例:防衛特別所得税(所得税法等の一部を改正する法律=令和8年法律第12号、2026年3月31日成立・公布。2027年分以後)。
- 通達案:国税庁が案を公表し、行政手続法に基づく意見公募をしているもの。例:「貸付用不動産の評価について(法令解釈通達)(案)」。案文の通達制定日は空欄で、経過措置の基準日は最終通達で決まります。
- 検討中:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」(第1回2026年4月20日〜第6回9月16日)。第5回の骨子は、最終的には税制改正プロセスで決定すると明記し、適用時期・経過措置の記載がありません。
- 要望段階:財務省が2026年9月1日に公表した各府省庁の2027年度税制改正要望。2026年10月17日時点では、いずれも未確定です。
表記のルール
- 略称:相法=相続税法、措法=租税特別措置法、評基通=財産評価基本通達、相基通=相続税法基本通達、所基通=所得税基本通達、法基通=法人税基本通達、措通=租税特別措置法関係通達。
- 国税庁タックスアンサーの「令和8年4月1日現在法令等」は法令の基準日で、ページの更新日ではありません。
- 改正は「令和5年度税制改正(2024年1月1日以後の贈与から適用)」のように、改正年度と適用開始日をセットで示します。
- 統計は年分・事務年度と公表時期を併記します。相続税の申告事績は令和6年分(2025年(令和7年)12月公表)が最新で、令和7年分は2026年12月に公表される見込みです。
ガイドの各ページ(全14ページ・156章)
各ページは独立して読めますが、相続税の基本→財産評価→小規模宅地→税額計算→申告の順に読むと、全体がつながります。
4つの税金の関係:交差点マップ
相続税・贈与税・譲渡所得・非上場株式の評価は、別々の制度に見えても、同じ家族の同じ財産の上でつながっています。この章では、4つの役割と、税金どうしが重なる代表的な場面を一覧にします。
この章の結論
- 相続税と贈与税は、財産が移るのが「亡くなったとき」か「生前」かの違いです。生前贈与加算と相続時精算課税で、生前の贈与は相続税の計算に直接つながります。
- 相続・贈与で取得した財産を売ると、亡くなった人・贈与した人の取得費と取得時期を引き継いで譲渡所得を計算します。取得費加算や空き家の3,000万円控除が、売るときの税金を左右します。
- 同じ土地・株式でも、相続税の評価額と、売買で使う「時価」は別の計算です(一物多価)。どの税金のどの場面かで、使う価額が変わります。
相続税:亡くなった人の財産を受け継いだ人にかかる
相続税は、相続や遺贈(遺言による財産の移転)で財産を取得した人にかかります。財産の合計から借入金や葬式費用を差し引き、生前贈与の加算分などを加えた額が、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると申告が必要です。法定相続人が配偶者と子2人なら、基礎控除は4,800万円です。
税額は、財産をいくらと評価するかで決まります。土地は路線価などで評価します。路線価は、国税局が毎年1月1日時点で道路ごとに定める1㎡当たりの価額で、地価公示価格等の80%程度を目途にしています。
自宅や事業用の土地は、小規模宅地等の特例で評価額が最大80%減ります。この「評価」が、4つの税金をつなぐ要になります。詳しくは相続税の基本・財産評価・小規模宅地等の特例で説明します。
贈与税:生前の財産移転にかかり、相続税を補う
贈与税は、生前に財産をもらった人にかかります。生前に財産を移して相続税を減らすことを防ぐ役割があり、国税庁も贈与税を「相続税を補う税」と位置づけています。
課税の方法は2つです。暦年課税は、1年間にもらった額から110万円を引いた残りに累進税率をかけます。
相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べます(年齢は贈与の年の1月1日で判定)。年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除を超えた部分に一律20%がかかり、贈与した人が亡くなったときに相続税で精算します。年110万円の基礎控除は、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から使えます施行中。
暦年課税の贈与も、亡くなる前の一定期間の分は相続財産に加算されます(生前贈与加算)施行中。加算の期間は、2026年(令和8年)中の相続は3年以内、2027年(令和9年)〜2030年(令和12年)の相続は2024年1月1日以後の贈与、2031年(令和13年)以後の相続は7年以内です。精算課税の年110万円の基礎控除の部分は、相続のときに加算されません。詳しくは贈与税と生前贈与加算で説明します。
譲渡所得:受け継いだ財産を売るときの税金
土地・建物や株式を売って得た利益には、所得税と住民税がかかります(譲渡所得)。土地建物は他の所得と分けて計算します。売った年の1月1日に所有期間が5年を超えていれば長期で合計20.315%、5年以下なら短期で39.63%です。
相続や贈与で取得した財産は、亡くなった人・贈与した人の取得費と取得時期をそのまま引き継ぎます(所得税法60条)。相続税の評価額で買ったことにはなりません。親が昔安く買った土地を売ると、利益が大きく出ることがあります。
相続と売却をつなぐ特例が2つあります。1つは取得費加算です。相続税額がある人が、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続財産を売ると、その財産に対応する相続税を取得費に加えられます。
もう1つは空き家の3,000万円控除です期限あり。亡くなった人が一人で住んでいた1981年(昭和56年)5月31日以前の建築の家と敷地を、2027年12月31日までに売るときに使えます。ただし、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることも必要です。同じ家と土地に両方の特例は使えないため、有利なほうを選びます。
2027年分からは防衛特別所得税(所得税額の1%)が始まります成立・施行待ち。同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がるため、上乗せの合計は2.1%のままで、長期の20.315%も変わりません。内訳が所得税15%・復興特別所得税0.165%・防衛特別所得税0.15%・住民税5%に変わるだけです。詳しくは相続・贈与と譲渡所得で説明します。
非上場株式の評価:同じ株に、目的ごとの価額
自社株など取引相場のない株式は、相続税・贈与税では財産評価基本通達で評価します。取得した人とその同族関係者(親族など)の議決権の割合などで、原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)か配当還元方式かが決まります。評価額は、後継者が払う相続税・贈与税を直接左右します。
純資産価額方式で差し引く「評価差額に対する法人税額等相当額」は、2026年4月1日以後の相続・贈与から38%です(それより前は37%)施行中。
個人が会社に株を売る場合などの所得税・法人税の「時価」は、別の計算になります。所得税では、個人が法人に時価の2分の1未満で売ると、時価で売ったものとみなされます。売買実例などがない場合、この時価は財産評価基本通達の例により、次の条件で計算します(所得税基本通達59-6)。
- 評価方式は、売る人の売る直前の議決権で判定します。
- 売る人が中心的な同族株主なら、会社を小会社とみなします。
- 会社が持つ土地と上場株式は、売った時の時価で計算します。
- 純資産価額から法人税額等相当額を差し引きません。
評価方法の見直しが国税庁の有識者会議で検討されています検討中。適用時期は決まっておらず、2026年10月時点の評価は現行の通達で行います。詳しくは非上場株式(自社株)の評価で説明します。
交差点の代表例
税金どうしが重なるのは、次のような場面です。一つの判断が、別の税金の結果を変えます。
| 場面 | 関係する税金 | 押さえる論点 | 詳しいページ |
|---|---|---|---|
| 実家を相続して売る | 相続税・譲渡所得 | 相続時は小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減)。売るときは空き家の3,000万円控除か取得費加算のどちらか(同じ家と土地では選択) | 実家を相続したとき・空き家の3,000万円控除 |
| 自社株を後継者に渡す | 株式評価・贈与税・相続税・所得税 | 評価方式の判定、暦年課税か精算課税か、事業承継税制期限あり(特例承継計画は2027年9月30日までに提出、特例は2027年12月31日までの贈与・相続)、売るなら所得税の時価 | 自社株を後継者に渡すとき・事業承継税制と承継手法 |
| 相続税を払うために土地を売る | 相続税・譲渡所得 | 取得費加算(申告期限の翌日以後3年以内。目安は相続から3年10か月)。物納は延納でも金銭で納められない場合に限られ、特例で減額した土地は減額後の価額で収納 | 土地を売って納税・分割・納付・延納・物納 |
| 代償分割で遺産を分ける | 相続税・譲渡所得 | 代償金の分だけ双方の課税価格を調整。代償として自分の不動産を渡すと、渡した人に時価で譲渡所得。払った代償金は取得費にならない | 換価分割・代償分割・遺産分割協議書 |
| 親子間で土地を売買する | 贈与税・譲渡所得 | 時価より著しく低い価額なら差額にみなし贈与(土地建物の時価は通常の取引価額)。時価の2分の1未満で売って損が出ても、その損はなかったものとされる | 親子間の貸借・売買・みなし譲渡 |
| 配偶者居住権を設定する・消滅させる | 相続税・譲渡所得・贈与税 | 相続時は配偶者居住権と所有権に分けて評価。合意解除などで対価を受けると配偶者に総合課税の譲渡所得、無償なら所有者にみなし贈与。配偶者の死亡による消滅は課税なし | 配偶者居住権の評価・配偶者居住権の消滅 |
| 孫に贈与する | 贈与税・相続税 | 相続・遺贈で何も取得しない孫への贈与は生前贈与加算の対象外。孫が遺贈や死亡保険金を受けると加算の対象になり、相続税は2割加算(代襲相続人の孫を除く) | 生前贈与の設計・各人の税額と2割加算 |
| 相続した自社株を会社に売る | 株式評価・譲渡所得 | 原則はみなし配当(総合課税)。相続税額がある人が申告期限の翌日以後3年以内に売れば全額が譲渡所得になり、取得費加算とも併用可 | 金庫株とみなし配当の特例・所得税・法人税の時価 |
一物多価:同じ財産でも価額が違う
同じ土地や株式でも、どの税金のどの場面かで使う価額が違います。これを「一物多価」といいます。相続税の評価額で売買すれば安全、とは限りません。
| 場面 | 土地 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 相続・贈与(相続税・贈与税) | 路線価方式または倍率方式による評価額 | 財産評価基本通達による評価額(取得した人の議決権で評価方式を判定。純資産価額は法人税額等相当額38%を控除) |
| 個人間の売買(低額譲受けの判定) | 通常の取引価額(路線価ではない) | 財産評価基本通達による評価額(取得した人を基準に判定) |
| 個人から法人への売買・贈与(所得税) | 時価 | 所得税基本通達59-6による価額(売る人の議決権で判定、土地・上場株式は時価、法人税額等相当額は控除しない) |
| 法人側の取引(法人税) | 時価 | 法人税基本通達9-1-14などによる価額(中心的な同族株主なら小会社、土地・上場株式は時価、法人税額等相当額は控除しない) |
詳しい整理は交差点の考え方と一物多価の整理表にあります。
よくある誤り
- 「相続した土地の取得費は相続税の評価額」:誤りです。亡くなった人の取得費と取得時期を引き継ぎます。取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます(3,000万円で売れば150万円)。
- 「親子間なら路線価や時価の2分の1以上で売れば贈与税はかからない」:誤りです。「時価の2分の1」は法人に売ったときの所得税(みなし譲渡)の基準で、個人間の贈与税は個別に判定します。土地建物の時価は通常の取引価額です。
- 「2027年から譲渡所得の税率が上がる」:誤りです。合計の20.315%・39.63%は変わらず、内訳が変わるだけです。
他の税金との関係
- 交差点の具体例は税目の交差点ケース集で、家族の時間の流れに沿って確認できます。
- 相続財産を売ったときの取得費の引継ぎは相続・贈与で取得した資産の取得費と取得時期、取得費加算は相続税の取得費加算の特例で説明しています。
専門家向け:根拠と実務論点
4つの税金をつなぐ主な規定
- 相続税:相法15条(基礎控除)、22条(時価)。生前贈与加算は相法19条・令和5年改正法附則19条。加算の対象は相続・遺贈で財産を取得した人(相基通19-3)と精算課税の適用者です。
- 贈与税:相続時精算課税は相法21条の9以下。年110万円の基礎控除は相法21条の11の2・措法70条の3の2(2024年1月1日以後の贈与)で、同じ年に複数の特定贈与者がいれば110万円を按分します。
- 譲渡所得:取得費・取得時期の引継ぎは所法60条1項。限定承認・法人への贈与・法人への時価の2分の1未満の譲渡はみなし譲渡(所法59条1項、所令169条)。個人への2分の1未満の譲渡で生じた損失はなかったものとされます(所法59条2項)。
- 相続と譲渡の特例:取得費加算(措法39条)、空き家特例(措法35条3項。39条との併用不可)、相続株式の発行会社への譲渡(措法9条の7。39条と併用可)。
- 株式:評基通178〜189-7、186-2(38%。2026年3月25日付課評2-28ほか)。所得税の時価は所基通59-6、法人税は法基通9-1-14・4-1-6・2-3-4。
実務論点
- 取得費加算の分母は、売った人の債務控除前の課税価格(生前贈与加算・精算課税の分を含む)です。分子は小規模宅地等の減額後の価額です。相続税額は、納付税額に贈与税額控除・相次相続控除などを足し戻して判定します(措令25条の16第1項1号、措通39-4)。配偶者の税額軽減は足し戻さないため、軽減で納付税額が0になった人は対象外です。
- 空き家特例を当初申告で選ばなかった譲渡に、後から適用することはできません(措通35-18)。
- 所得税の譲渡人基準は、最高裁2020年(令和2年)3月24日判決(原判決破棄・差戻し)を受けた所基通59-6の2020年8月の改正で明確化されました。法基通9-1-14には判定時期の明文がありません。
- 個人間の低額譲受け(相法7条)の判定に「時価の2分の1」の数値基準はありません。土地建物の時価は通常の取引価額です(平成元年3月29日直評5・直資2-204)。
- 代償財産として不動産を渡した人は時価で譲渡したものとされ(所基通33-1の5)、支払った代償金は取得費になりません(所基通38-7)。配偶者居住権の消滅の対価は総合課税の譲渡所得(所基通33-6の8)、無償の合意解除・放棄は建物所有者へのみなし贈与です(相基通9-13の2)。
30秒診断:相続税はかかる?何から始める?
相続税がかかるかどうかは、遺産の総額と法定相続人の数でおおよそ判定できます。診断ツールで目安を出し、申告が必要かどうかと、最初にすることを確認しましょう。
この章の結論
- 遺産の総額(借入金・葬式費用を引き、保険金・退職金は非課税枠を引いた額)が、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると申告が必要です。
- 判定は特例を使う前の金額で行います。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額を0円にする場合も、申告書を出さなければ特例を使えないため、申告が必要です。
- 2024年(令和6年)中に亡くなった人のうち、相続税がかかったのは10.4%です(2025年(令和7年)12月公表の国税庁の統計)。
30秒診断で目安を出す
計算ツールを表示するには JavaScript を有効にしてください。
配偶者の有無と子の数(0〜5人)を選び、財産を種類ごとに入れると、基礎控除を超えるかどうか、税額の目安(法定相続分どおりに分け、配偶者の税額軽減を使った場合)、次に読む章を表示します。土地は路線価×面積、建物は固定資産税評価額が目安です。死亡保険金は、非課税枠を自動で差し引きます。
父母や兄弟姉妹が相続人になる場合は、相続税シミュレーターで計算してください。死亡退職金があるときは、非課税枠を引いた残りを「その他の財産」に含めると目安になります。入力はブラウザの外に送信されません。結果は目安で、土地の評価の補正、生前贈与加算、特例の適用で変わります。
診断の前提:遺産の総額と基礎控除
判定に使う「遺産の総額」は、正確には課税価格の合計額(税金を計算するもとになる金額)です。次のように集計します。
- 土地は路線価などによる評価額、建物は固定資産税評価額で数えます。預貯金・株式なども含めます。
- 死亡保険金と死亡退職金は、それぞれ500万円×法定相続人の数までが非課税です。受け取った額から非課税枠を引いた残りを加えます。非課税枠を使えるのは、受取人が相続人の場合だけです。
- 亡くなった人の借入金などの債務と葬式費用は差し引きます。
- 相続時精算課税で贈与を受けた財産と、生前贈与加算施行中の対象の贈与(2026年(令和8年)中の相続は3年以内の分)を加えます。
法定相続人の数には、相続を放棄した人も含めます。養子は、実子がいれば1人、いなければ2人まで数えます。基礎控除は次のとおりです。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 家族の例 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 子1人だけ |
| 2人 | 4,200万円 | 配偶者と子1人 |
| 3人 | 4,800万円 | 配偶者と子2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 配偶者と子3人 |
| 5人 | 6,000万円 | 配偶者と子4人 |
基礎控除以下でも申告が必要な場合
申告が必要かどうかは、小規模宅地等の特例などを使う前の金額で判定します。この特例と配偶者の税額軽減は、申告書に記載して書類を添付することが適用の条件です。そのため、特例で税額が0円になる場合でも申告書の提出が必要です。
計算例:特例で0円になるが、申告は必要なケース
前提:相続人は配偶者と子1人(基礎控除4,200万円)。財産は自宅の土地3,000万円(200㎡、特例前)、自宅の建物500万円、預貯金2,000万円、子が受け取った死亡保険金1,500万円です。葬式費用は200万円です。配偶者が自宅を相続し、特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)に当たるものとします。
| 項目 | 特例を使う前 | 特例を使った後 |
|---|---|---|
| 自宅の土地 | 3,000万円 | 600万円 |
| 自宅の建物 | 500万円 | 500万円 |
| 預貯金 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 死亡保険金(非課税1,000万円を引いた後) | 500万円 | 500万円 |
| 葬式費用 | △200万円 | △200万円 |
| 課税価格の合計 | 5,800万円 | 3,400万円 |
死亡保険金の非課税:500万円×2人=1,000万円(1,500万円−1,000万円=500万円)
特例の減額:3,000万円×80%=2,400万円(200㎡は330㎡以下なので全体が対象)
特例前:3,000万円+500万円+2,000万円+500万円−200万円=5,800万円
特例後:5,800万円−2,400万円=3,400万円
答え:特例前の5,800万円が基礎控除4,200万円を超えるため、申告が必要です。特例を使うと3,400万円で基礎控除以下になり相続税は0円ですが、特例を使うには申告書の提出が必要です。
この例を30秒診断に入れると、土地・建物3,500万円、預貯金2,000万円、死亡保険金1,500万円、借入金・葬式費用200万円で「基礎控除を超える」と判定されます。診断は特例を反映しないため、特例前の判定と一致します。
相続税がかかる人の割合
国税庁の統計では、2024年中に亡くなった人は1,605,378人でした。そのうち相続税がかかった(税額のある申告書が出された)人は166,730人で、割合は10.4%、おおよそ10人に1人です。これとは別に、特例などで税額が0円になった申告が39,755人分あります。
数字は「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月公表)によるもので、これが最新です。2025年分(令和7年分)は2026年12月に公表される見込みです。北海道の数字や税務調査の状況は数字で見る相続税にまとめています。
何から始めるか:最初の4ステップ
- 期限を確認する相続放棄は知った時から3か月、相続税の申告は知った日の翌日から10か月です。まず期限カレンダーで日付を出します。
- 相続人を確定する戸籍で法定相続人を確かめ、基礎控除の計算に使う人数を数えます。相続人の調査:戸籍と法定相続情報
- 財産と債務を洗い出す通帳、固定資産税の名寄帳、保険金の支払通知などで集計し、30秒診断で基礎控除と比べます。財産と債務の調べ方
- 申告が必要か決めて準備する基礎控除を超える、または近い場合は、評価と特例を確認して申告の準備をします。基礎控除と申告が必要な人・小規模宅地等の特例の全体像
よくある誤り
- 「基礎控除以下なら申告はいらない」:判定は特例を使う前の金額です。特例で0円にする場合は申告が必要です。
- 「相続放棄した人がいると基礎控除が減る」:法定相続人の数には、放棄した人も含めます。ただし、放棄した人が受け取った死亡保険金に非課税枠は使えません。
- 「死亡保険金は全額が遺産」「全額が非課税」:相続人が受け取った分は、500万円×法定相続人の数までが非課税で、残りが課税されます。
他の税金との関係
- 判定に入る生前の贈与は、贈与税の課税方法で扱いが違います。生前贈与加算と相続時精算課税の加算で確認できます。
専門家向け:根拠と実務論点
- 基礎控除は相法15条1項。法定相続人の数は放棄がなかったものとして数え、養子は実子ありで1人・実子なしで2人までです(同条2項・3項)。特別養子、配偶者の実子で被相続人の養子となった人、代襲相続人などは実子とみなされます。不当に負担を減らす養子は数えません(相法63条)。
- 申告義務は相法27条1項。申告義務者は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用しないで計算して納付税額がある人です(相基通27-1)。
- 小規模宅地等の特例(措法69条の4)と配偶者の税額軽減(相法19条の2第3項)は、申告書への記載と書類の添付が要件です。小規模宅地等には、やむを得ない事情がある場合の宥恕規定があります。
- 判定の課税価格の合計には、相続時精算課税の財産(2024年1月1日以後の贈与は年110万円の基礎控除後)と、加算対象期間内の暦年贈与を含みます。
- 課税割合10.4%は、相続税額のある申告書の被相続人数÷死亡者数(人口動態統計)です。税額0円の申告(外書39,755人)を含めると約12.9%です。令和6年分は、2025年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く)の集計です。
- 国税庁の相続税の申告要否判定コーナーでも概算の判定ができます。ただし2割加算は考慮されず、法定相続人が0人または6人以上の場合は税額を試算できません。
相続が起きたら:期限カレンダー
相続には、7日から10年まで、性質の違う期限が並びます。亡くなった日を入れて自分の期限を一覧にし、数え方の注意を押さえましょう。
この章の結論
- 税金の主な期限は、亡くなったことを知った日の翌日から4か月(準確定申告)と10か月(相続税の申告・納付)です。相続放棄・限定承認は、知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
- 数え始めは手続ごとに違います。知った日が月の末日なら、期限は最後の月の末日です。国税の期限が土日祝日・年末年始に当たるときは翌日に延びます。
- 売却の特例にも期限があります。取得費加算は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が対象です。空き家の3,000万円控除は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡が対象です(制度自体は2027年(令和9年)12月31日まで)。
期限カレンダーで自分の期限を出す
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亡くなった日と、亡くなったことを知った日(同じなら空欄)を入れると、主な手続と税金の期限を一覧にします。国税の期限が土日祝日・年末年始に当たる場合は、翌開庁日で表示します。相続放棄など税金以外の期限は日付をずらさず、土日祝日などに当たるときは印を付けて表示します。一覧は印刷でき、入力した内容はブラウザの外に送信されません。
結果は概算です。取得費加算などの期限は、申告期限が休日で延びた場合でも、延びる前の期限から数えた早めの日付で表示します(延びた日から数えてよいかは国税庁の資料で確認できていないため)。2024年(令和6年)4月1日より前の相続の相続登記(2027年3月31日と知った日から3年の遅い日)と、2023年(令和5年)4月1日より前の相続の具体的相続分(相続開始から10年と2028年3月31日の遅い時とされています)は、経過措置を反映して表示します。過ぎた期限には「経過」と表示します。手続ごとの要件や例外は各章で確認してください。死亡後の手続の全体は死亡後の手続一覧:期限順、相続税の準備の進め方は申告までの10か月のスケジュールにまとめています。
主な期限の一覧
- 7日以内死亡届(死亡の事実を知った日から。国外で亡くなった場合は3か月以内)。市区町村の窓口に出します。
- 10日・14日以内年金受給権者死亡届(厚生年金は10日、国民年金は14日)。日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は、原則として省略できます。
- 14日以内世帯主変更届(必要な場合)。国民健康保険は死亡日の翌日に資格を失うため、区役所などで速やかに手続します。
- 3か月以内相続放棄・限定承認(自己のために相続の開始があったことを知った時から)。家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることもできます。
- 4か月以内準確定申告(亡くなった人の所得税)。相続の開始を知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までです。
- 10か月以内相続税の申告・納付(知った日の翌日から)。提出先は亡くなった人の住所地の税務署です。延納・物納を希望する場合も、この期限までに申請します。
- 1年遺留分侵害額の請求(相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年)。知らなくても、相続開始から10年を過ぎると請求できなくなります。
- 3年以内相続登記(相続の開始と不動産の取得を知った日から)施行中。2024年(令和6年)4月1日より前に開始した相続は、2027年3月31日と、知った日から3年のいずれか遅い日までです。生命保険金の請求権の時効も3年です。
- 申告期限から3年以内遺産が未分割のまま申告した場合に、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を受けるための分割。申告時に分割見込書を出しておき、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。
- 申告期限の翌日以後3年取得費加算を使える譲渡の期限です。目安は相続開始から3年10か月です。
- 3年を経過する日の属する年の12月31日空き家の3,000万円控除を使える譲渡の期限(相続開始日から数えます)期限あり。制度自体は2027年12月31日までの譲渡が対象です。
- 申告期限から5年以内相続税の更正の請求(払いすぎた税金を取り戻す手続)。遺産分割の確定など特定の理由が生じたときは、それを知った日の翌日から4か月以内にも請求できます。
- 10年具体的相続分(特別受益・寄与分)を主張して遺産分割ができる期間(相続開始から)施行中。2023年(令和5年)4月1日より前に開始した相続は、相続開始から10年と2028年(令和10年)3月31日のいずれか遅い時まで猶予があるとされています。
計算例:2026年(令和8年)6月9日に亡くなった場合
計算例:2026年6月9日(火)に亡くなり、相続人が同じ日に知った場合
| 手続・特例 | 期限 | 数え方 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 2026年9月9日(水) | 知った時から3か月 |
| 準確定申告 | 2026年10月9日(金) | 翌日(6月10日)から4か月を経過した日の前日 |
| 相続税の申告・納付 | 2027年4月9日(金) | 翌日から10か月 |
| 相続登記 | 2029年(令和11年)6月9日(土) | 相続の開始と取得を知った日から3年 |
| 未分割の場合の分割(特例の適用) | 2030年(令和12年)4月9日(火) | 申告期限から3年 |
| 取得費加算の譲渡期限 | 2030年4月9日(火) | 申告期限の翌日以後3年 |
| 空き家の3,000万円控除の譲渡期限 | 2027年12月31日 | 本来は2029年12月31日だが、制度の期限が先に来る |
| 相続税の更正の請求 | 2032年(令和14年)4月9日(金) | 申告期限から5年 |
相続税:6月9日に知った→翌日の6月10日から数えて10か月→2027年4月9日
取得費加算:申告期限2027年4月9日の翌日から3年→2030年4月9日
空き家特例:相続開始日から3年を経過する日は2029年6月8日→その年の12月31日→制度の期限(2027年12月31日までの譲渡)が先
答え:最初の大きな期限は9月9日の相続放棄で、税金では10月9日の準確定申告と2027年4月9日の相続税です。空き家の3,000万円控除は、延長がなければ2027年12月31日までに売る必要があります。
相続登記の例のように、税金以外の期限が土日祝日に当たる場合に延びるかどうかは、提出先に確認してください。
期限の数え方の注意
税金の期限は「知った日の翌日から」数えます。6月9日に亡くなったことを知った場合、10か月の期限は翌年の4月9日です。通常は亡くなった日に知るので、亡くなった日と同じ日付が目安になります。
ただし、知った日(亡くなった日)が月の末日なら、期限は最後の月の末日です(例:9月30日→翌年7月31日。国税通則法10条1項、民法143条)。「同じ日付」の7月30日ではありません。
国税の期限が土曜・日曜・祝日に当たるときは、その翌日が期限になります。年末の12月29日〜31日と、1月2日・3日も休日と同じ扱いです。休みが続くときは、休み明けの日が期限です。
数え始めの日は手続ごとに違います。相続税・準確定申告・相続放棄は「知った日(時)」、相続登記は「相続の開始と不動産の取得を知った日」から数えます。空き家の3,000万円控除は「相続開始日(亡くなった日)」、取得費加算と更正の請求は「申告期限」が起点です。知った日は相続人ごとに違うことがあり、例えば相続人以外で遺言により財産を受けた人は、遺贈を知った日が基準です。
期限を過ぎるとどうなるか
- 相続放棄・限定承認:3か月以内に家庭裁判所へ申述しないと、単純承認(借金も含めて無条件に引き継ぐこと)をしたものとみなされます。間に合わないときは、期限内に伸長を申し立てます。相続放棄・限定承認
- 相続税:期限後の申告や過少申告には、加算税・延滞税がかかることがあります。加算税・延滞税
- 未分割の申告:後で分割したときに配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を受けるには、申告書に分割見込書を添付しておくことが条件です。遺産が未分割のときの申告
- 相続登記:正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(登記官の催告を経てから)。相続登記の義務化と住所変更登記
よくある誤り
- 「相続税の申告期限は亡くなった日から10か月」:正しくは、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。通常は同じ日付になりますが、月末に知った場合は最後の月の末日です。
- 「取得費加算は相続から3年以内に売れば使える」:期限は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日で、目安は相続開始から3年10か月です。
- 「空き家の3,000万円控除は相続から3年以内」:相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、制度の期限(2027年12月31日までの譲渡)も満たす必要があります。
他の税金との関係
- 準確定申告で納める亡くなった人の所得税は、相続税の債務控除の対象です。還付される所得税は相続財産になります。準確定申告:亡くなった人の所得税
- 相続した財産を売る時期によって、取得費加算と空き家の3,000万円控除を使えるかが決まります。
専門家向け:根拠と実務論点
- 死亡届:戸籍法86条1項。年金受給権者死亡届:厚生年金保険法98条4項(10日)、国民年金法施行規則24条1項(14日)。マイナンバー収録者等の省略は厚年則41条6項・国年則24条7項。世帯主変更:住民基本台帳法25条。
- 熟慮期間:民法915条1項(伸長は同項ただし書)。期間内に限定承認・放棄をしないときは単純承認とみなされます(921条2号)。遺留分侵害額請求権の期間制限:民法1048条。具体的相続分の期間制限:民法904条の3(経過措置は令和3年法律第24号附則3条とされ、附則の条文で要確認)。
- 準確定申告:所得税法125条1項。相続税の申告:相法27条1項(知った日の例は相基通27-4)。期間の計算は国税通則法10条1項(国税)・民法140条・143条(民法上の期間)により、知った日が月の末日なら最後の月の末日に満了します。休日の延長は国税通則法10条2項・同法施行令2条2項(土曜日と12月29日〜31日を含む)で、1月2日・3日も一般の休日に当たるとされています(国税通則法基本通達(徴収部関係)第10条関係)。
- 分割見込書:相法19条の2第2項・3項、措法69条の4。分割後の更正の請求は相法32条1項(4か月)。4か月と申告期限から5年のいずれか遅い日まで請求できるのは、配偶者の税額軽減に限った取扱いです(相基通32-2)。
- 取得費加算:措法39条1項。空き家特例:措法35条3項(2027年12月31日までの譲渡)。相続登記:不動産登記法76条の2、過料は164条1項、施行前の相続は令和3年改正法附則5条6項。更正の請求:国税通則法23条1項。
- 未確認の論点:相続税の申告期限が休日で延びた場合に、取得費加算・措法9条の7の期限を延長後の日で数えるかは、国税庁の明示資料を確認できていません。年金・世帯主変更の届出期間の初日の扱いも同様です。いずれも余裕のある日程で手続するのが安全です。
状況別ナビ:あなたのケースから読む
「親が亡くなった」「実家を売りたい」「自社株がある」など、よくある12の状況ごとに、最初に知っておきたい要点と読む章をまとめました。気になる状況から読み始めてください。
この章の結論
- 状況ごとに、押さえるべき要点を1〜2文と、読むべき章へのリンクで示しています。
- 税金をまたぐ判断(実家を売る、自社株を渡す、二次相続など)は、ケース集の章から読むと全体の流れがつかめます。
- 相続が起きた直後なら、3か月(相続放棄)・4か月(準確定申告)・10か月(相続税)の期限を先に確認してください。
相続が起きたとき
まず相続税がかかるかと期限を確かめ、財産の種類や家族の状況に応じて読み進めます。
親が亡くなった。相続税がかかるか知りたい
遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかで決まります。死亡保険金・死亡退職金や、生前の贈与の一部も判定に入ります。
実家(自宅)を相続した
自宅の土地は小規模宅地等の特例で330㎡まで評価額が80%減る場合があり、取得する人によって要件が違います。売るなら、空き家の3,000万円控除期限あり(2027年(令和9年)12月31日までの譲渡)と取得費加算を比べます。
配偶者が亡くなった(二次相続が心配)
配偶者は、取得した遺産のうち1億6,000万円か法定相続分の多いほうまで相続税がかかりません(申告が必要)。ただし次の相続では配偶者の税額軽減がなく、基礎控除も600万円減るため、一次と二次の合計で分け方を考えます。
相続人が道外・海外にいる
申告書は、相続人ではなく亡くなった人の住所地の税務署に出します。海外に住む相続人は納税管理人を定めて申告し、日本国内にある財産は相続人がどこに住んでいても課税されます。
財産や会社があり、生前に備えたいとき
対策は、効果と同時にリスクや期限も確認します。2026年(令和8年)10月時点で決まっていない改正もあるため、確定度ラベルにも注意してください。
賃貸アパート・駐車場を持っている
アパートの敷地は貸家建付地として評価が下がり、小規模宅地等の特例(貸付事業用は200㎡まで50%減)も使える場合があります。2027年1月1日以後の相続・贈与では、5年以内に取得した貸付用不動産の評価が変わる予定です通達案。
会社を経営していて自社株がある
自社株は、相続・贈与の評価と、会社に売るときなどの所得税・法人税の時価が別の計算です。事業承継税制の特例は、特例承継計画を2027年9月30日までに出し、2027年12月31日までの贈与・相続が対象です期限あり。
子や孫への生前贈与を考えている
2026年中に亡くなった場合の生前贈与加算は3年で、2027年以後の相続から段階的に延び、2031年(令和13年)以後は7年になります施行中。相続・遺贈で財産を取得しない孫への贈与は加算されません。
遺言を書きたい・認知症に備えたい
自筆証書遺言は、今も全文・日付・氏名の自書と押印が必要です(財産目録はパソコンで作成可)。押印を任意にする改正は成立済みで、施行はこれからです成立・施行待ち。家族信託をしても、相続税は原則として財産を直接持つ場合と同じです。
売る・買い取ってもらう・連絡が来たとき
相続後の売却や税務署からの連絡は、相続税と所得税の両方に関わることが多い場面です。
相続した不動産を売りたい
取得費と取得時期は、亡くなった人のものを引き継ぎます。相続税額がある人が、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売れば取得費加算が使えます。長期の税率は合計20.315%で、防衛特別所得税が始まる2027年分以後も変わりません成立・施行待ち。
相続した株式を会社に買い取ってもらいたい
原則は、資本金等の額を超える部分がみなし配当(総合課税)です。相続税額がある人が申告期限の翌日以後3年以内に売れば全額が譲渡所得になる特例があり、届出書は売る時までに会社経由で出します。
税務署から連絡が来た(調査・お尋ね)
税務署から「相続についてのお尋ね」が届くことがあり、国税庁の申告要否判定コーナーは回答の作成にも使えます。申告漏れは修正申告で、払いすぎは更正の請求(法定申告期限から5年以内)で直します。
札幌・北海道の不動産がある
2026年中の相続・贈与には、2026年7月1日に公表された令和8年分の路線価・評価倍率を使います。路線価のない地域は、固定資産税評価額に倍率をかけて評価します。
迷ったときの入口
状況が複数重なる場合や、どこから読むか決められない場合は、次の3つから始めてください。
- 相続税がかかるかの目安:30秒診断
- いつまでに何をするか:期限カレンダー
- 税金どうしの関係:4つの税金の関係:交差点マップ
言葉の意味は用語集で、よくある質問はよくある質問の一覧で探せます。
よくある誤り:「相続税がかからない=手続はない」
相続税がかからなくても、亡くなった人に申告が必要な所得があれば準確定申告(4か月以内)が必要です。不動産を相続すれば、相続登記(3年以内)も必要です。相続した不動産や株式を売って利益が出れば、売った人に譲渡所得の確定申告が必要になります。
他の税金との関係
- 実家を相続して売る、自社株を後継者に渡すなど、複数の税金が重なる場面は交差点の考え方と一物多価の整理表で全体を確認できます。
専門家向け:根拠と実務論点
状況別に最初に確認する根拠
- 相続税の要否と期限:相法15条・27条1項、相基通27-1。配偶者の税額軽減は相法19条の2(申告要件あり)。
- 自宅・賃貸の土地:措法69条の4(特定居住用330㎡・80%、貸付事業用200㎡・50%、相続開始前3年以内に新たに貸し付けた宅地等の原則除外)。貸付用不動産の評価見直しは通達案で、2027年1月1日以後の相続・贈与から適用予定です。
- 売却:所法60条1項、措法39条(取得費加算)、措法35条3項(空き家特例。2027年12月31日までの譲渡。39条とは選択)。
- 自社株:評基通178〜189-7(186-2は2026年4月1日以後の取得から38%)、所基通59-6。発行会社への譲渡は所法25条1項5号(みなし配当)と措法9条の7(届出は譲渡の時まで、発行会社は翌年1月31日までに税務署へ提出)。事業承継税制の特例措置は措法70条の7の5・70条の7の6。
- 海外の相続人:相法1条の3(納税義務者の区分)、国税通則法117条(納税管理人)。1億円以上の有価証券等を持つ居住者の相続で非居住者が取得する場合は、所法60条の3(国外転出時課税)も確認します。
- 遺言・認知症:民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号。押印の任意化は公布から1年以内、保管証書遺言の創設は3年以内の政令で定める日に施行)。信託は相法9条の2により、受益者が信託財産を取得したものとみなされます。
最初に聞き取る事項
死亡日と知った日、相続人と遺言の有無、財産の種類(土地の利用区分・自社株・国外財産)、2024年(令和6年)以後の暦年贈与と精算課税の届出の有無、相続人の住所(国外を含む)を最初にそろえると、期限と特例の判断に必要な情報がそろいます。
改正トラッカー:2026年10月時点の改正と期限
相続税・贈与税・譲渡所得・株式評価に関わる改正と特例の期限を、2026年(令和8年)10月17日時点の状態ごとに一覧にしました。「すでに決まったこと」と「まだ決まっていないこと」を分けて確認できます。
この章の結論
- 2027年(令和9年)1月1日から、生前贈与加算の対象期間が延び始め、防衛特別所得税が始まります。貸付用不動産の評価見直しも同日以後の相続・贈与から適用される予定ですが、2026年10月17日時点ではまだ通達案です。
- 期限が近い特例は、住宅取得等資金の贈与の非課税(2026年12月31日の贈与まで)、結婚・子育て資金の一括贈与(2027年3月31日の拠出まで)、法人版事業承継税制の特例承継計画の提出(2027年9月30日まで)です。義務化の施行前に始まった相続の相続登記(原則2027年3月31日まで)と、相続登記の登録免許税の免税(同日の登記まで)も期限が近づいています。
- 令和9年度税制改正は要望段階、非上場株式の評価方法の見直しは有識者会議で検討中です。どちらも「決まった」ものではありません。
下のツールは、主な期限までの残り日数を今日の日付で自動計算して表示します。日付は2026年10月時点で確定・公表されているもの(通達案・要望段階を含む)で、最新の改正で変わることがあります。表の「状態」欄のラベルの意味は、このガイドの使い方で説明しています。
計算ツールを表示するには JavaScript を有効にしてください。
相続税・贈与税の改正と期限
令和8年度税制改正(2026年3月31日成立・公布)で決まった相続税・贈与税の改正は、教育資金の一括贈与の終了、事業承継税制の計画提出期限の延長など少数です。生前贈与加算の延長と相続時精算課税の年110万円の基礎控除は、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から適用されている改正です。このうち生前贈与加算は、経過措置で段階的に変わる途中です。
| 制度 | 状態 | いつから・いつまで | ポイント | 詳しい章 |
|---|---|---|---|---|
| 生前贈与加算(暦年課税)の期間延長 | 施行中 | 2026年12月31日までの相続は3年以内、2027年1月1日〜2030年(令和12年)12月31日の相続は2024年1月1日以後の贈与、2031年(令和13年)1月1日以後の相続は7年以内 | 延長された部分(3年より前)の贈与は合計から100万円を控除。2026年中の相続はまだ3年 | 生前贈与加算 |
| 相続時精算課税の年110万円の基礎控除 | 施行中 | 2024年1月1日以後の贈与から(期限なし) | 暦年課税の110万円とは別枠。基礎控除の部分は相続時に加算されない | 相続時精算課税 |
| 教育資金の一括贈与の非課税(1,500万円) | 新規適用終了 | 2026年3月31日までの拠出で終了 | 既存の契約は続き、30歳到達や贈与者の死亡のときに従来のルールで課税されることがある | 教育資金・結婚子育て資金 |
| 住宅取得等資金の贈与の非課税(省エネ等住宅1,000万円・それ以外500万円) | 期限あり | 2026年12月31日までの贈与 | 令和8年度改正で延長されていない。贈与者が60歳未満でも精算課税を選べる特例も同じ期限 | 住宅取得等資金の非課税 |
| 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税(1,000万円) | 期限あり | 2027年3月31日までの拠出 | 令和8年度改正では変更なし。期限到来での廃止が要望されている(未確定) | 教育資金・結婚子育て資金 |
| 法人版事業承継税制(特例措置) | 期限あり | 特例承継計画の提出は2027年9月30日まで(1年6か月延長)。贈与・相続の適用は2027年12月31日まで | 延長されたのは計画の提出期限だけ。期限後のあり方は令和9年度改正で結論を得る方針 | 事業承継税制 |
| 個人版事業承継税制 | 期限あり | 個人事業承継計画の提出は2028年(令和10年)9月30日まで(2年6か月延長)。適用は2028年12月31日まで | 適用期限そのものは延長されていない | 事業承継税制 |
財産評価・非上場株式の評価の改正と検討状況
財産の評価方法は、法律ではなく主に国税庁の通達で決まります。通達が改正されて適用されているもの、案が公表されたもの、検討が始まった段階のものを分けて見てください。
| 制度 | 状態 | いつから・いつまで | ポイント | 詳しい章 |
|---|---|---|---|---|
| マンション(居住用の区分所有財産)の評価 | 施行中 | 2024年1月1日以後の相続・贈与 | 評価水準が0.6未満の物件は区分所有補正率で評価額を引き上げる。係数見直しの公表は2026年10月時点で確認できない | マンションの評価 |
| 貸付用不動産・不動産小口化商品の評価見直し | 通達案 | 2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用予定。通達案は2026年9月18日公表、意見公募は10月18日締切で、通達は未制定 | 5年以内に取得・新築した貸付用不動産は通常の取引価額が原則(一定の場合は取得価額をもとにした80%評価も選べる)。小口化商品は取得時期を問わない | 2027年からの評価見直し |
| 純資産価額の法人税額等相当額(37%→38%) | 施行中 | 2026年4月1日以後の相続・遺贈・贈与 | 防衛特別法人税の創設に伴う通達改正。2026年3月31日以前の取得は37% | 純資産価額方式 |
| 評価明細書(令和8年4月1日以降用)の新設 | 施行中 | 2026年4月1日以後の取得に使う(2026年7月3日公表) | 表を第1表の1〜第7表の3と付表に再編。様式は申告日ではなく取得日で選ぶ | 評価明細書の様式 |
| 非上場株式の評価方法の見直し | 検討中 | 適用時期は未定 | 国税庁の有識者会議(2026年4月から開催)が、残余利益方式への原則一本化などの骨子を示した段階。最終的には税制改正の過程で決まる | 見直しの検討状況 |
譲渡所得・所得税の改正と期限
相続した不動産や株式を売るときの税金に関わる改正です。2027年分から所得税の仕組みが一部変わりますが、土地建物や株式の譲渡の合計税率は変わりません。
| 制度 | 状態 | いつから・いつまで | ポイント | 詳しい章 |
|---|---|---|---|---|
| 防衛特別所得税の創設・復興特別所得税の見直し | 成立・施行待ち | 2027年分から | 所得税額の1%を加え、復興特別所得税は2.1%から1.1%に下げて2047年(令和29年)分まで延長。長期譲渡所得の合計20.315%は不変 | 譲渡所得の仕組み |
| ミニマムタックス(極めて高い所得の負担の適正化措置)の見直し | 成立・施行待ち | 2027年分から | 控除額を3億3,000万円から1億6,500万円に、税率を22.5%から30%に変更(2026年分までは改正前) | 譲渡所得の仕組み |
| 空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産) | 期限あり | 2027年12月31日までの譲渡 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であることも必要。取得した相続人が3人以上なら各2,000万円。延長は要望段階 | 空き家の3,000万円控除 |
| 居住用財産の買換え・譲渡損失の特例 | 期限あり | 2027年12月31日までの譲渡(2年延長) | 2028年1月1日以後に住む災害危険区域等の新築家屋は、買換資産から除外 | その他の特例 |
| 低未利用土地等の100万円控除 | 期限あり | 2028年12月31日までの譲渡(3年延長) | 譲渡価額800万円以下(市街化区域など)または500万円以下の要件は変更なし | その他の特例 |
民法・不動産登記の改正
税金ではありませんが、相続の手続に直接かかわる改正です。相続登記の義務化は、施行前に起きた相続も対象になる点に注意してください。
| 制度 | 状態 | いつから・いつまで | ポイント | 詳しい章 |
|---|---|---|---|---|
| 相続登記の申請義務化 | 施行中 | 2024年4月1日施行。施行前の相続は2027年3月31日(または知った日から3年のいずれか遅い日)まで | 取得を知った日から3年以内に申請。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 相続登記の義務化 |
| 住所等変更登記の申請義務化 | 施行中 | 2026年4月1日施行。施行前の変更は2028年3月31日まで | 変更から2年以内に申請。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料 | 相続登記の義務化 |
| 所有不動産記録証明制度 | 施行中 | 2026年2月2日開始 | 相続人は亡くなった人名義の不動産の一覧を請求できる。登記上の氏名・住所が一致しないと抽出されないことがある | 相続登記の義務化 |
| 相続登記の登録免許税の免税 | 期限あり | 2027年3月31日までの登記 | 価額100万円以下の土地と、数次相続の中間の登記が対象。延長・拡充は要望段階 | 相続登記の義務化 |
| 遺言制度の見直し(令和8年法律第45号) | 成立・施行待ち | 2026年6月24日公布。押印の任意化などは公布から1年以内、保管証書遺言の創設は3年以内の政令で定める日 | 2026年10月17日時点では施行されておらず、自筆証書遺言には押印が必要 | 遺言の種類と作り方 |
| 成年後見制度の見直し(同じ法律) | 成立・施行待ち | 公布から2年6か月以内の政令で定める日 | 後見・保佐・補助を補助に一元化する内容。現在は3つの類型のまま | 認知症の相続人がいる場合 |
令和9年度税制改正要望(資産税関係)
要望段階 各府省庁の令和9年度税制改正要望は、財務省が2026年9月1日に公表しました。令和9年度税制改正大綱は2026年12月に決定される予定で、2026年10月17日時点ではいずれも未確定です。
| 要望した府省庁 | 要望の内容 | 関係する現行の期限・制度 |
|---|---|---|
| 経済産業省・厚生労働省 | 事業承継税制の抜本的な見直し・強化(要望書に「延長」の文言はない) | 法人版特例措置の適用は2027年12月31日まで |
| 経済産業省 | 非上場株式の評価方式の見直しに当たり、事業承継を妨げないよう慎重な検討 | 有識者会議で検討中 |
| 国土交通省 | 住宅取得等資金の贈与の非課税についての「所要の措置」(延長とは明記していない) | 2026年12月31日の贈与まで |
| 国土交通省 | 空き家の3,000万円控除の4年延長(2031年12月31日まで)と築年要件などの見直し | 2027年12月31日の譲渡まで |
| こども家庭庁・金融庁 | 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税を期限到来で廃止(同日までの拠出分は経過措置) | 2027年3月31日の拠出まで |
| 金融庁 | 死亡保険金の非課税限度額に「500万円×配偶者と未成年の被扶養法定相続人の数」を加算 | 現行は500万円×法定相続人の数 |
| 金融庁 | 株式のみなし譲渡も取得費加算の対象になることの法令上の明確化、上場株式等の相続税評価の見直し | 取得費加算は期限のない制度 |
| 法務省 | 相続登記の登録免許税の免税の2年延長・拡充 | 2027年3月31日の登記まで |
2027年1月1日に変わること
2027年1月1日を境に、次の3つの取扱いが変わります(評価の見直しは予定)。2026年中の相続・贈与・譲渡には、これまでのルールが適用されます。
- 2027年1月1日以後の相続生前贈与加算の対象が「2024年1月1日以後の贈与」に広がり始めます(2030年12月31日までの相続)。延長部分の100万円控除が問題になるのは、2027年1月2日以後の相続からです。
- 2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与(予定)貸付用不動産・不動産小口化商品の評価見直しが適用される予定です通達案。2026年12月31日までの相続・贈与は従来の評価によります。
- 2027年分の所得から防衛特別所得税(所得税額の1%)が始まり、復興特別所得税は1.1%に下がります。源泉徴収税額の計算(所得税率×102.1%)と、譲渡所得の合計税率20.315%は変わりません。ミニマムタックスの見直しも2027年分からです。
よくある誤り:「延長された」「改正された」という情報
- 事業承継税制の特例措置は延長されていません。延びたのは特例承継計画の提出期限(2027年9月30日)だけで、贈与・相続の適用期限は2027年12月31日のままです。
- 住宅取得等資金の非課税は、2026年10月時点で延長が決まっていません。2026年12月31日までの贈与が対象です。
- 貸付用不動産の評価は「改正済み」ではありません。通達案の段階で、最終版では文言・数値や経過措置の基準日が変わる可能性があります。
- 自筆証書遺言は、2026年10月17日時点では現行の方式(全文・日付・氏名の自書と押印)で作る必要があります。
改正が他の税金に及ぶところ
- 貸付用不動産の通達案は、非上場株式の純資産価額で会社の土地・建物を評価するときには適用されません:純資産価額方式(38%への改正)
- 38%への改正は、資産管理会社の株式の評価額にも影響します:法人化・資産管理会社
- 生前贈与加算の延長は、暦年課税と相続時精算課税の選び方を変えます:7年加算後の生前贈与の設計
- 防衛特別所得税で変わるのは、相続した不動産・株式を売るときの税率の内訳だけです:売却の税金シミュレーター
専門家向け:根拠と実務論点
根拠法令・通達
- 令和8年度改正法:所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号、2026年3月31日成立・公布)。相続税・贈与税関係は、教育資金の一括贈与の新規適用終了(措法70条の2の2)、計画提出期限の延長(円滑化省令17条2項・4項)、認定医療法人の移行計画の認定期限の延長(2029年(令和11年)12月31日まで)、農地等の納税猶予に係る利子税の特例の延長(2031年3月31日まで)、国等に対する相続財産の贈与の非課税の専修学校の範囲の見直し(措法70条)の5点です。住宅取得等資金(措法70条の2)・結婚子育て資金(措法70条の2の3)・小規模宅地等の特例・税率・基礎控除は改正されていません。
- 生前贈与加算:相続税法19条1項、令和5年改正法附則19条、相基通19-1・19-2・19-7。相続時精算課税の基礎控除:相続税法21条の11の2・21条の15・21条の16、措法70条の3の2。
- 評価:評基通186-2(令和8年3月25日付課評2-28ほか)、明細書通達の一部改正(令和8年6月26日付課評2-46ほか)、「居住用の区分所有財産の評価について」(令和5年9月28日付課評2-74・課資2-16)、「貸付用不動産の評価について(法令解釈通達)(案)」(相続税法22条。評基通の第2章〜第4章とマンション通達の定めにかかわらず評価する個別通達の構成)。
- 所得税:防衛財確法・復興財確法(令和8年法律第12号による改正)、措法41条の19、35条3項、36条の2・36条の5・41条の5・41条の5の2、35条の3。
- 登記・民法:不動産登記法76条の2・76条の5・119条の2・164条、令和3年改正法附則5条6項・7項、措法84条の2の2(2026年4月1日前は84条の2の3)、民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号、2026年6月17日成立)。
実務論点
- 通達案の経過措置は、通達制定日前5年以内に取得したもの以外の土地等(または同日前5年以内に相続等で取得した土地等)の上に、同日までに新築(建築中を含む)した家屋等を除外する構成です。制定日前5年以内に購入した土地の上の家屋等は除外されず、基準日となる通達制定日は未定です。5年以内は、対価を伴う取得等の時(原則として引渡しの時)から判定する案です。
- 通達案は評基通185(純資産価額)による評価には適用しない旨を明記しています。185の「課税時期前3年以内に取得等した土地等・家屋等は通常の取引価額」のルールとは別のものです。
- 生前贈与加算の100万円控除が働くのは、相続開始日が2027年1月2日以後の場合です(国税庁タックスアンサーNo.4161)。
- 評価明細書は取得日で選びます(2024年1月1日〜2026年3月31日の取得は令和6年1月1日以降用)。令和8年分の類似業種の業種目別株価等は、2026年10月17日時点で8月分まで公表されています。
- 令和9年度税制改正大綱の公表後は、住宅取得等資金・結婚子育て資金・事業承継税制・空き家特例・登録免許税の免税の扱いを確認し直す必要があります。
よくある誤解15:訂正コーナー
相続・贈与の情報には、改正前の説明や条件を省いた説明が混ざっています。2026年(令和8年)10月17日時点の法令・通達に照らして、よく見かける15の誤解を訂正します。
この章の結論
- 改正に関する誤解が最も多く、2026年中の相続の生前贈与加算はまだ3年、防衛特別所得税で売却の税率は上がらず、貸付用不動産の評価見直しは通達案の段階です。
- 「税額が0円なら申告はいらない」は誤りです。小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は、申告書の提出が適用の条件です。
- 名義預金は名義でなく実態で、借入れの効果は評価差で、配偶者の取り分は一次・二次の合計税額で判断します。
見出しが誤解で、開くと訂正と詳しい章へのリンクが出ます。
申告と期限の誤解
誤解1:特例を使えば基礎控除以下になるので、申告はいらない
正しくは:申告が必要かどうかは、小規模宅地等の特例を使う前の課税価格の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかで判定します。小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減は申告書の提出が適用の条件なので、これらを使って税額が0円になる場合も申告が必要です。
詳しくは:基礎控除と申告が必要な人、小規模宅地等の申告手続
誤解2:相続税の申告期限は、亡くなった日から10か月
正しくは:期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」で、知った日は相続人ごとに違うことがあります。通常は死亡日に知るため、死亡日と同じ日付の10か月後が期限になり(例:1月6日に死亡→11月6日)、その日が土日祝日などなら翌日に延びます。ただし、月の末日に知った場合は10か月後の月の末日が期限です(例:9月30日→翌年7月31日)。
詳しくは:申告までの10か月のスケジュール、期限カレンダー
誤解3:小規模宅地等の特例は、申告した後で使うかどうか決められる
正しくは:原則として、申告期限までに遺産分割で宅地の取得者が決まり、取得者全員が選ぶ宅地に同意し、申告書に記載して明細書などを添付する必要があります。期限までに分割できないときは「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。当初の申告で選んだ宅地を、後から別の宅地に入れ替えることは原則できません。
生前贈与・遺贈・名義預金の誤解
誤解4:2024年(令和6年)から、生前贈与は7年分が相続税に加算される
誤解5:相続時精算課税の110万円と暦年課税の110万円は同じ枠
正しくは:別の枠です。相続時精算課税の年110万円の基礎控除(2024年1月1日以後の贈与から)施行中は暦年課税の110万円とは別に使え、この部分は贈与者が亡くなっても相続税に加算されません。ただし、精算課税を選んだ贈与者からの贈与はすべて精算課税になり、同じ年に複数の特定贈与者から受けた場合は110万円を按分します。
詳しくは:相続時精算課税、暦年課税と精算課税の選び方
誤解6:孫に遺贈すれば相続税の節税になる
正しくは:孫(亡くなった子に代わって相続する孫を除く)が遺贈で財産を取得すると、その孫の相続税額は2割加算されます(孫を養子にした場合も原則として加算されます)。また、遺贈(死亡保険金の受取人になる場合を含みます)で財産を取得した孫は生前贈与加算の対象になり、加算対象期間内の贈与も相続財産に加えられます。反対に、相続・遺贈で何も取得しない孫への生前贈与は加算されません。
詳しくは:各人の税額と2割加算、生前贈与加算
誤解7:家族の名義の預金は、その家族の財産
正しくは:名義が家族でも、亡くなった人がお金を出し、管理・運用もしていた預金は、亡くなった人の財産(名義預金)として相続税の対象になることがあります。判断では、資金を出した人、管理・運用していた人、贈与の合意があったかどうかが見られます。国税庁の調査事例には、基礎控除以下に見せるため預金を家族名義に移していた無申告の事案に、重加算税が課されたものがあります。
詳しくは:名義預金と贈与の証拠、税務調査で指摘されやすい点
不動産・売却・税率の誤解
誤解8:貸付用不動産は、取得価額の80%で評価されるようになった
正しくは:見直しは2026年10月17日時点で通達案の段階です通達案(2026年9月18日公表、意見公募は10月18日締切、通達は未制定)。案では、2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から、5年以内に取得・新築した貸付用不動産を課税時期の「通常の取引価額」で評価するのが原則です。取得価額をもとにした80%の評価は、取得価額が取得時の通常の取引価額に相当すると認められる場合に選べる方法です。
誤解9:借入れでアパートを建てれば、借入金の分だけ相続税が減る
正しくは:借入金は債務として差し引けますが、借りた現金も財産なので、借入れそのものでは課税価格は変わりません。課税価格が下がるのは、現金が時価より評価額の低い土地・建物に換わった部分(評価差)で、借入れをせずに建てても同じだけ下がります。購入や借入れの経緯によっては、総則6項により鑑定評価額などで課税されることがあります(最高裁令和4年4月19日判決)。
詳しくは:不動産と相続税、総則6項と最高裁令和4年判決、下の計算例
誤解10:空き家の3,000万円控除と取得費加算は、両方使える
正しくは:同じ資産を売った場合は、空き家の3,000万円控除期限あり(2027年12月31日までの譲渡)と取得費加算のどちらか一方を選びます。一方、自分が住んでいた家に使うマイホームの3,000万円控除と取得費加算は併用できます。
計算例:借入れをしてもしなくても、課税価格の下がり方は同じ(誤解9)
前提(仮定):1億円で一棟の賃貸マンション(土地4,000万円・建物6,000万円)を取得し、2026年中に相続が起きたとします。土地の路線価による評価は土地価格の80%、建物の固定資産税評価額は建築費の60%、借地権割合60%・借家権割合30%・満室とします。
土地(貸家建付地):4,000万円×80%=3,200万円、3,200万円×(1−60%×30%×100%)=2,624万円
建物(貸家):6,000万円×60%=3,600万円、3,600万円×(1−30%)=2,520万円
評価額の合計:2,624万円+2,520万円=5,144万円
| 取得の方法 | 相続時の財産 | 相続時の債務 | 課税価格の変化 |
|---|---|---|---|
| 1億円を借り入れて取得 | 不動産5,144万円 | 借入金1億円 | 4,856万円減る |
| 手元の現金1億円で取得 | 不動産5,144万円(現金1億円は減る) | なし | 4,856万円減る |
答え:どちらも5,144万円−1億円=−4,856万円で、課税価格は同じだけ下がります。差を生んでいるのは評価差で、借入金ではありません。
家族・自社株・登記の誤解
誤解12:相続を放棄すると、生命保険金も受け取れない
正しくは:相続を放棄しても、受取人として指定されていれば死亡保険金は受け取れます。ただし相続税では遺贈で取得したものとみなされ、放棄した人には非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えません。非課税枠や基礎控除を計算する「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます。
詳しくは:生命保険金などのみなし相続財産、相続放棄・限定承認
誤解13:配偶者は1億6,000万円まで税金がかからないので、全部を配偶者に相続させるのが得
正しくは:配偶者の税額軽減(1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い額まで)で一次相続の税は減りますが、配偶者が亡くなる二次相続では軽減がなく基礎控除も減るため、合計の税が増えることがあります。夫の遺産2億円・妻固有の財産1,000万円・子2人の設例(二次は10年超後、財産の増減なし)では、妻が全部取得すると一次と二次の合計は4,018万円、妻の取得を26%にすると2,198万円でした。前提で結論が変わるため、二次相続まで試算して分け方を決めます。
詳しくは:二次相続まで考えた遺産分割、配偶者の相続と二次相続
誤解14:自社株の純資産価額は、評価差額の37%を差し引いて計算する
誤解15:相続登記はしなくても罰則はない
正しくは:相続登記は2024年4月1日から義務になり施行中、不動産の取得を知った日から3年以内に申請が必要です。正当な理由なく怠ると、登記官からの催告を経て10万円以下の過料の対象になります。施行前に起きた相続も対象で、期限は2027年3月31日(または知った日から3年のいずれか遅い日)です。
詳しくは:相続登記の義務化
誤解を避けるための確認ポイント
誤解の多くは、制度の時点・財産の取得者・判定の基準の確認を飛ばすことから生まれます。次の点を確かめてください。
情報を読むときのチェックリスト
- いつ時点の情報で、施行中か・通達案か・要望段階か
- 判定の基準日はどれか(亡くなった日・贈与を受けた日・売った日・株式を取得した日)
- 財産を取得したのは誰か(相続人か、相続人以外か、何も取得しない人か)
- 申告が適用の条件になっていないか(小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減など)
- 計算例の前提(財産額・家族構成・分け方)が自分の場合と同じか
よくある誤り:一部だけ正しい説明をそのまま使う
「孫への贈与は加算されない」は、孫が遺贈・死亡保険金・死亡退職金を受け取らず、相続時精算課税も選んでいない場合に限って正しい説明です。暦年課税の110万円以下の贈与も、相続・遺贈で財産を取得した人なら加算対象期間内の分は加算されます。条件の部分まで確認してください。
誤解が税金をまたぐところ
- 名義預金は、贈与が成立していたかという贈与税の問題でもあります:名義預金と贈与の証拠の残し方
- 空き家の控除と取得費加算のどちらが有利かは、納めた相続税額と売却益の大きさで変わります:相続税の取得費加算の特例
- 孫への遺贈・贈与は、相続税の2割加算と生前贈与加算の両方に関わります:生前贈与と相続を比べる
- 自社株の価額は、相続税の評価と所得税・法人税の時価で計算が違います:所得税・法人税上の時価
専門家向け:根拠と実務論点
各項目の根拠
- 誤解1:相続税法27条1項、19条の2、措法69条の4(申告書への記載と明細書等の添付が適用要件)。申告要否は特例を適用しない課税価格の合計額で判定します(国税庁No.4205)。
- 誤解2:相続税法27条1項、国税通則法10条1項(期間の計算。月の初日から起算する期間は最後の月の末日に満了)・2項(休日の延長)。
- 誤解3:措法69条の4(未分割の宅地等は相続税法32条を準用)、措通69の4-25・69の4-26。選択の同意は第11・11の2表の付表1で行い、訴訟中でも例外はないとした裁決があります(平成26年8月8日)。
- 誤解4:相続税法19条1項、令和5年改正法附則19条、相基通19-1・19-2・19-7。
- 誤解5:相続税法21条の11の2・21条の15・21条の16、措法70条の3の2。
- 誤解6:相続税法18条(2割加算。代襲相続人の孫は除かれ、孫養子は原則として対象)、19条(加算の対象は相続・遺贈で財産を取得した人)。
- 誤解7:国税庁「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」事例6、東京地判平成20年10月17日。贈与証があっても受贈者が知らなければ書面による贈与は成立しないとした裁決があります(令和3年9月17日)。
- 誤解8:「貸付用不動産の評価について(法令解釈通達)(案)」、相続税法22条。
- 誤解9:相続税法13条・14条、評基通6、最判令和4年4月19日(民集76巻4号411頁)。
- 誤解10:措法35条3項・39条(同一資産での併用不可)。当初申告で空き家特例を適用しなかった譲渡に、後から適用することはできません(措通35-18)。
- 誤解11:防衛財確法・復興財確法(令和8年法律第12号による改正)。
- 誤解12:相続税法3条1項1号、12条1項6号、15条2項。
- 誤解13:相続税法19条の2・20条、相基通16-1。相次相続控除は一次で配偶者が実際に相続税を負担した場合だけ働きます。
- 誤解14:評基通186-2(令和8年3月25日付課評2-28ほか)。
- 誤解15:不動産登記法76条の2・164条1項、不動産登記規則187条、令和3年改正法附則5条6項。
数字で見る相続税:全国と北海道
国税庁の最新の統計から、相続税がかかる人の割合、相続財産の中身、税務調査の状況を全国と北海道で比べます。数字はいずれも2026年(令和8年)10月17日時点で最新の公表分です。
この章の結論
- 令和6年分(2024年中に亡くなった人)で相続税がかかったのは、全国で10.4%、北海道(札幌国税局管内)で5.7%です。どちらも前年より上がりました。
- 相続財産で最も多いのは現金・預貯金等で、全国34.9%、北海道44.9%です。土地は全国30.2%、北海道22.0%にとどまります。
- 令和6事務年度の相続税の実地調査は全国9,512件で、82.3%で申告漏れなどが見つかりました。これらの統計は、2026年12月頃に新しい年分へ更新される見込みです。
全国の相続税の申告状況(令和6年分)
国税庁は2025年(令和7年)12月に「令和6年分 相続税の申告事績の概要」を公表しました。2024年中に亡くなった人について、2025年10月31日までに提出された申告書をまとめたものです。令和7年分(2025年中に亡くなった人)は、過去の公表時期からみて2026年12月頃に公表される見込みです。
| 項目 | 令和5年分 | 令和6年分 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 被相続人数(死亡者数) | 1,576,016人 | 1,605,378人 | 101.9% |
| 相続税がかかった被相続人数 | 155,740人 | 166,730人 | 107.1% |
| 課税割合 | 9.9% | 10.4% | 0.5ポイント上昇 |
| 課税価格 | 21兆6,335億円 | 23兆3,846億円 | 108.1% |
| 税額 | 3兆53億円 | 3兆2,446億円 | 108.0% |
| 1人当たりの課税価格 | 1億3,891万円 | 1億4,025万円 | 101.0% |
| 1人当たりの税額 | 1,930万円 | 1,946万円 | 100.8% |
申告した被相続人数、課税価格、税額は、いずれも基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で最も多くなりました。課税割合は、相続税がかかった被相続人数を死亡者数で割った割合です(166,730人÷1,605,378人≒10.4%)。亡くなった人のおよそ10人に1人に相続税がかかった計算で、相続税を納めた相続人は361,260人でした。このほか、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などで税額が0円になった申告が39,755人分(課税価格2兆155億円、1人当たり5,070万円)あり、上の表には含まれていません。
申告の方法では、相続税の申告のe-Tax利用率が令和6年度の50.3%から、令和7年度は速報値で70.2%に上がっています。
相続財産の内訳
相続税額のある申告書に記載された相続財産を種類別に見ると、全国では現金・預貯金等が土地を上回って最も多くなっています。「相続財産の中心は土地」という説明は、最新の統計には当てはまりません。北海道は全国より現金・預貯金等の割合がさらに高く、土地の割合が低いのが特徴です。
| 財産の種類 | 全国の金額 | 全国の構成比 | 北海道の金額 | 北海道の構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 現金・預貯金等 | 8兆5,602億円 | 34.9% | 2,447億円 | 44.9% |
| 土地 | 7兆4,074億円 | 30.2% | 1,197億円 | 22.0% |
| 有価証券 | 4兆3,676億円 | 17.8% | 706億円 | 13.0% |
| 家屋 | 1兆1,901億円 | 4.8% | 292億円 | 5.4% |
| その他 | 3兆162億円 | 12.3% | 802億円 | 14.7% |
| 合計 | 24兆5,415億円 | 100% | 5,445億円 | 100% |
北海道は札幌国税局管内の数値です。金額は単位未満を丸めた公表値のため、内訳の合計が合計欄と一致しないことがあります。課税価格は相続財産から債務・葬式費用を差し引き、生前贈与などを加えた金額なので、相続財産の合計とは一致しません。
前年(令和5年分)と比べると、全国では有価証券の割合が上がり、土地の割合が下がりました。財産の評価は、土地なら路線価、上場株式なら取引価格などで行います。種類ごとの評価方法は財産評価の基本から読めます。
北海道(札幌国税局管内)の状況
札幌国税局も2025年12月に令和6年分の申告事績を公表しました。北海道の課税割合は5.7%で、全国の約半分です。申告した被相続人数・課税価格・税額は平成27年分以降で最も多くなった一方、1人当たりの課税価格と税額は前年より下がりました。
| 項目 | 北海道(令和5年分) | 北海道(令和6年分) | 全国(令和6年分) |
|---|---|---|---|
| 被相続人数(死亡者数) | 75,120人 | 76,669人 | 1,605,378人 |
| 相続税がかかった被相続人数 | 3,970人 | 4,336人 | 166,730人 |
| 課税割合 | 5.3% | 5.7% | 10.4% |
| 課税価格 | 5,089億円 | 5,346億円 | 23兆3,846億円 |
| 税額 | 606億円 | 633億円 | 3兆2,446億円 |
| 1人当たりの課税価格 | 1億2,818万円 | 1億2,330万円 | 1億4,025万円 |
| 1人当たりの税額 | 1,526万円 | 1,460万円 | 1,946万円 |
北海道の1人当たりの課税価格は、全国より約1,700万円低くなっています(1億4,025万円−1億2,330万円=1,695万円)。相続財産に占める現金・預貯金等の割合は44.9%で全国より10.0ポイント高く、土地は22.0%で全国より8.2ポイント低い構成です。税額が0円になった申告は844人分(課税価格485億円)ありました。北海道の統計の詳しい読み方は数字で見る北海道の相続税で解説しています。
税務調査の状況(令和6事務年度)
国税庁は2025年12月に、令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の相続税の調査等の状況を公表しました。実地調査は、資料情報などから申告漏れが想定される事案を選んで行われます。そのため非違割合は、申告全体のうち誤りがある割合ではありません。
| 項目 | 全国 | 札幌国税局 |
|---|---|---|
| 実地調査の件数 | 9,512件 | 291件 |
| 申告漏れなどの非違があった件数 | 7,826件 | 246件 |
| 非違割合 | 82.3% | 84.5% |
| 追徴税額(本税と加算税の合計) | 824億円 | 13億2,200万円 |
| 実地調査1件当たりの追徴税額 | 867万円 | 454万円 |
| 簡易な接触の件数 | 21,969件 | 947件 |
全国の申告漏れ課税価格は2,942億円で、実地調査1件当たり3,093万円でした。申告漏れが見つかった財産は、国税庁資料のグラフによると現金・預貯金等が1,247億円(43.3%)で最も多く、土地837億円(29.1%)、有価証券393億円(13.6%)と続くとされています。重加算税が課されたのは1,065件で、非違があった件数の13.6%です。
無申告の事案への実地調査は650件で、追徴税額は142億円(1件当たり2,187万円)でした。海外資産に関連する事案の実地調査は1,359件に増え、海外資産の申告漏れは209件・97億円見つかっています。
「簡易な接触」は、文書・電話・来署依頼による面接で申告漏れや計算誤りを正してもらう取組みで、実地調査とは別に集計されています。全国では追徴税額138億円で、札幌国税局の947件は公表を始めた平成28事務年度以降で最も多い件数です。調査の流れは税務調査の実態で詳しく解説しています。
贈与税の申告と令和8年分の路線価
令和7年分(2025年中の贈与)の贈与税の申告状況は、2026年5月に公表されました。申告人員は47万人、申告納税額は5,038億円(前年比28.0%増)で、暦年課税の申告は39万人、相続時精算課税の申告は8万人です。令和6事務年度の贈与税の実地調査は2,778件で、非違の83.4%が無申告、1件当たりの追徴税額は443万円でした。
令和8年分の路線価(2026年1月1日時点、2026年7月1日公表)は、2026年中の相続・贈与の土地の評価に使います。全国の最高路線価は、東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通りで1㎡当たり5,336万円(前年比11.0%上昇)でした。都道府県庁所在都市の最高路線価は44都市が上昇、3都市が横ばいで、下落はありません。
道内の最高路線価は、札幌市中央区北5条西3丁目の道道札幌停車場線通り(札幌駅前通り)で1㎡当たり832万円(前年比7.5%上昇)でした。道内30税務署の最高路線価は上昇11・横ばい15・下落4で、上昇率は富良野28.0%、小樽18.9%、札幌南12.5%が上位です。詳しくは令和8年分 北海道・札幌の路線価をご覧ください。
よくある誤り:統計の読み違い
- 課税割合10.4%は「相続税額のある申告書」を出した被相続人の割合です。税額0円の申告(39,755人分)は含まれず、申告書を出した人の割合とは違います。
- 非違割合82.3%は、選んで実地調査をした事案の結果です。申告の8割に誤りがあるという意味ではありません。
- 実地調査の件数を申告した被相続人数で割って「調査に入る確率」とするのは誤りです。調査は事務年度単位で、対象はおもに前の年分以前の申告のため、母数が合いません。
- 銀座の11.0%や札幌の7.5%は、個別の最高路線価の変動率です。地域全体の地価の平均とは別の数字です。
数字が他の税金とつながるところ
- 贈与税の調査では非違の83.4%が無申告で、財産別では現金・預貯金等が62.9%を占めます:贈与税の申告・納付・期間制限
- 家族名義の預金は、相続税では名義預金、贈与税では贈与の成立の問題になります:名義預金と贈与の証拠の残し方
- 路線価による評価額は、売買の価格や所得税・法人税の時価とは別の数字です:一物多価の整理表
専門家向け:根拠と実務論点
統計の定義と注意点
- 申告事績の「課税価格」は、相続財産の価額+相続時精算課税の財産−債務・葬式費用+相続開始前3年以内の贈与財産です。令和6年分は2025年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く)のデータで、被相続人数は厚生労働省「人口動態統計」の数値です。
- 調査の「1件当たり」は、非違がなかった件を含む実地調査件数で割った値です(824億円÷9,512件≒866万円。公表値867万円との差は、追徴税額の億円未満の端数によるものとみられます)。申告漏れ課税価格は、申告漏れ相続財産の額に債務・葬式費用と3年以内の生前贈与の増減を反映したもので、申告漏れ相続財産の合計2,879億円とは一致しません。
- 札幌国税局の追徴税額13億2,200万円は、本税11億6,200万円と加算税1億6,000万円の合計です。簡易な接触による追徴税額にも加算税が含まれており、簡易な接触でも加算税が課されることがあります。
- 国税庁の調査事例には、相続開始前に引き出した現金を相続人の自宅の金庫に保管して申告から外した事案(重加算税)や、相続人全員が国外に住む無申告事案が挙げられています。
- e-Tax利用率のうち、令和7年度の全国70.2%は速報値です。札幌国税局管内の令和6年度の利用率は44.7%でした。
よくある質問
相続税・贈与税・譲渡所得・自社株の評価をまたぐ質問を中心に、よく寄せられる10の質問に答えます。いずれも2026年(令和8年)10月17日時点の法令・通達にもとづく一般的な回答です。
この章の結論
- 相続税は、遺産の正味の額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるとかかり、特例で0円になる場合も申告が必要です。
- 生前贈与の加算期間は、2026年中の相続ならまだ3年です。2027年(令和9年)以後の相続から段階的に7年へ延びます。
- 相続した不動産や自社株を売るときの取得費加算・みなし配当の特例は、相続税の申告期限の翌日以後3年以内の譲渡が条件です。
相続税がかかるか・申告の進め方
相続税は、いくらの遺産からかかりますか?
遺産の正味の額(課税価格の合計額)が、基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるとかかります。法定相続人が配偶者と子2人の3人なら4,800万円、子2人だけなら4,200万円です。正味の額には、死亡保険金・死亡退職金のうち非課税枠(それぞれ500万円×法定相続人の数)を超える部分、相続時精算課税の贈与財産、加算対象期間内の暦年課税の贈与を含め、借入金・葬式費用は差し引きます。土地は路線価などによる評価額で計算します。令和6年分(2024年中に亡くなった人)では、亡くなった人のうち相続税がかかったのは10.4%でした。
詳しくは:30秒診断、基礎控除と申告が必要な人
相続税の申告は、自分でできますか?
できます。相続人が自分で申告書を作り、亡くなった人の死亡時の住所地を管轄する税務署に、e-Tax・郵便・時間外収受箱などで提出できます。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」では、申告が必要かどうかの目安や、小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減を使った場合の税額を試算できます。ただし、申告書を作る機能はありません。2026年中に亡くなった人の申告には令和8年分用の様式を使い、控用の様式はなくなったので控えは自分で作って保管します。土地の評価や特例の要件で税額が大きく変わるため、不動産や自社株がある場合は専門家への相談も検討してください。
詳しくは:申告書の構成と令和8年分の様式、専門家への依頼
遺産分割がまとまらないときは、申告はどうしますか?
申告期限は延びないため、分割がまとまらなくても、期限内に法定相続分などで財産を取得したものとして申告・納税します。この場合、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は使えませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割したときに更正の請求で適用を受けられます(分割の日の翌日から4か月以内)。「遺産分割がまとまらなかった」ことは、期限に遅れた正当な理由にはなりません。
計算例:基礎控除を超えるかの判定
前提(仮定):法定相続人は配偶者と子2人の3人。財産は自宅の土地4,000万円(路線価による評価額、面積330㎡以下)、建物500万円(固定資産税評価額)、預貯金2,500万円、死亡保険金2,000万円(受取人は配偶者)。借入金と葬式費用は合わせて300万円です。
死亡保険金の非課税枠:500万円×3人=1,500万円 → 課税される部分は2,000万円−1,500万円=500万円
課税価格の合計:4,000万円+500万円+2,500万円+500万円−300万円=7,200万円
基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
答え:7,200万円が4,800万円を超えるため、申告が必要です。配偶者が自宅を取得して小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)を使うと、土地が4,000万円×80%=3,200万円減り、課税価格の合計は4,000万円で基礎控除以下になります。この場合も、特例を使うための申告は必要です。
生前贈与と相続した不動産の売却
生前贈与は、今からでも意味がありますか?
意味はありますが、贈与から相続までの期間で効果が変わります。暦年課税の贈与は、2026年中の相続なら亡くなる前3年以内、2027年以後の相続では段階的に延びて、2031年(令和13年)以後の相続では7年以内の分が相続財産に加算されます施行中(延長された部分の贈与は合計から100万円を控除)。相続や遺贈で財産を取得しない孫や子の配偶者への贈与は、加算されません。相続時精算課税を選んだ場合、年110万円の基礎控除の部分は加算されず、それを超える部分は贈与時の価額で加算されます。どちらの方式が有利かは財産の額や家族構成で変わるため、比べてから選びます。
詳しくは:生前贈与の設計、暦年課税と相続時精算課税の選び方
相続した実家を売るとき、使える特例は何ですか?
代表的なのは「空き家の3,000万円控除」期限ありと「相続税の取得費加算」で、同じ資産についてはどちらか一方を選びます。空き家の控除は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家(区分所有登記のあるマンションなどは除く)で、相続の直前に亡くなった人が1人で住んでいたこと(老人ホーム入所の特例あり)、売却代金1億円以下などが要件です。売る期限は2027年12月31日までで、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。家と敷地を取得した相続人が3人以上なら、控除額は1人2,000万円です。取得費加算は、相続税額がある人が相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売った場合に、売った財産に対応する相続税額を取得費に加える特例です。相続後に自分が所有者として住んでいた場合は、マイホームの3,000万円控除も検討します。
自社株の評価と会社による買取り
自社株(非上場株式)の評価は、いつの数字で行いますか?
評価の基準日は「課税時期」で、相続なら亡くなった日、贈与なら贈与で取得した日です。ただし類似業種比準方式で使う会社の配当・利益・純資産は、課税時期の直前に終わった事業年度(直前期末)の数字を使います。比べる類似業種の株価は、課税時期の月・前月・前々月・前年平均・2年間の平均のうち最も低いもので、令和8年分は2026年10月17日時点で8月分まで公表されています。純資産価額は課税時期の資産・負債で計算するのが原則ですが、直前期末から著しい増減がなければ直前期末の資産・負債をもとに計算できます。2026年4月1日以後の取得なら、評価差額に対する法人税額等相当額は38%です施行中。評価方法の見直しは有識者会議で検討中検討中で、現在は現行の通達で評価します。
相続した自社株を会社に買い取ってもらうと、税金はどうなりますか?
原則として、受け取った金額のうち資本金等の額を超える部分は「みなし配当」として総合課税の配当所得になり、会社が20.42%を源泉徴収します。ただし、相続税額がある人が相続税の申告期限の翌日以後3年以内に発行会社に売る場合は、特例でみなし配当とされません。受け取った金額の全額が株式の譲渡収入になり、利益に20.315%がかかります。この特例は取得費加算と併用でき、売る時までに届出書を会社経由で税務署に出す必要があります。相続税額がない人(配偶者の税額軽減で0円になった人など)は、この特例を使えません。贈与税額控除で納める額が0円になった人は、控除を足し戻した相続税額で判定します。
詳しくは:金庫株とみなし配当の特例、自社株を後継者に渡すとき
税務調査・海外の相続人・札幌の窓口
相続税の税務調査は、どのくらい行われていますか?
令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の相続税の実地調査は全国で9,512件で、このうち82.3%で申告漏れなどが見つかり、1件当たりの追徴税額は867万円でした。このほか、文書・電話・来署依頼で誤りを正してもらう「簡易な接触」が21,969件ありました。実地調査は資料情報などから申告漏れが想定される事案を選んで行われるため、82.3%は申告全体のうち誤りがある割合ではありません。申告から調査までの時期を示した公表資料はなく、「申告後○年で来る」とは言えません。
相続人が海外に住んでいる場合は、どうなりますか?
海外に住む相続人も、財産を取得すれば日本の相続税の申告・納税が必要になることがあります。日本の不動産や国内の営業所(支店など)に預けた預金などの国内財産は、相続人の住所や国籍にかかわらず課税されます。国外の財産まで課税されるかは、亡くなった人と相続人の住所・国籍・在留資格などで決まります。国内に住所がない相続人は「納税管理人」を定めて税務署に届け出て、申告・納税します。申告期限は、国内の相続人と同じく知った日の翌日から10か月以内です。
札幌で相続の手続は、どこでしますか?
相続税の申告書は、亡くなった人の死亡時の住所地を管轄する税務署に出します(札幌市内は札幌中・札幌北・札幌南・札幌西・札幌東の5署で、中央区は札幌中と札幌西に分かれます)。札幌市内の不動産の相続登記は所在地を管轄する札幌法務局(中央区は本局、ほかの区は北・白石・南・西の各出張所)、相続放棄や遺言書の検認は亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所(札幌市なら札幌家庭裁判所)で行います。固定資産の名寄帳(無料)は区を担当する市税事務所、評価証明書(1通450円)は市税事務所か市役所本庁舎2階の税の証明窓口で取得でき、区役所では取得できません。
詳しくは:札幌の相続の窓口
よくある誤り:提出先と期限の取り違え
- 相続税の申告書の提出先は、相続人の住所地ではなく、亡くなった人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。贈与税は、贈与を受けた人の住所地の税務署です。
- 取得費加算とみなし配当の特例の期限は「相続から3年」ではなく、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです(通常は相続開始から約3年10か月)。
- 空き家の3,000万円控除の期限も「相続から3年」ではなく、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
4つの税金をまたぐ質問
- 実家を相続して住む・貸す・売るときは、小規模宅地等の特例(相続税)と、空き家の控除・取得費加算(所得税)を合わせて考えます:実家を相続したとき
- 自社株の承継では、株価の評価・贈与税・事業承継税制・会社による買取りの税金がつながります:自社株を後継者に渡すとき
- 生前贈与と相続のどちらが有利かは、贈与税と相続税の両方で比べます:生前贈与と相続を比べる
専門家向け:根拠と実務論点
- 遺産の額と基礎控除:相続税法15条、12条1項6号・7号、13条、19条・21条の15。申告要否は小規模宅地等の特例を適用しない課税価格の合計額で判定します(相続税法27条1項)。
- 自分で申告:提出先は相続税法27条1項・62条・附則3項。申告要否判定コーナーの試算は2割加算を考慮せず、法定相続人が0人または5人を超える場合は税額を試算できません。
- 未分割の申告:相続税法19条の2・32条、措法69条の4。3年以内に分割できないやむを得ない事情があるときは、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に承認申請をします。
- 生前贈与:相続税法19条、令和5年改正法附則19条、相基通19-3(加算の対象は相続・遺贈で財産を取得した人)、相続税法21条の11の2・21条の15・21条の16。
- 実家の売却:措法35条1項・3項、39条。空き家の控除の譲渡価額1億円以下は、他の相続人の譲渡分も含めて判定します。当初申告で空き家特例を適用しなかった譲渡に、後から適用することはできません(措通35-18)。
- 自社株の評価時点:評基通178・179・182・183・185・186-2。類似業種の比準数値は、課税時期が直後期末に近くても直前期末の数値によります。
- 発行会社への譲渡:所得税法25条1項5号、措法9条の7、措令5条の2(届出書は譲渡の時まで。発行会社は翌年1月31日までに税務署へ提出)、措法39条。
- 海外の相続人:相続税法1条の3、国税通則法117条。一時居住者・外国人被相続人の判定に使う在留資格は入管法別表第一のもので、永住者などは含まれません。
- 札幌の窓口:相続放棄は民法915条(知った時から3か月)、相続登記は不動産登記法76条の2。札幌市中央区の税務署の境界は、札幌国税局の別紙で番地ごとに確認します。
ジェイスタート会計事務所は、公認会計士・税理士の事務所として、生前対策から相続税の申告、不動産の売却、会社・事業の次世代への引き継ぎまでを支援しています。ご相談の内容は守秘義務のもとで取り扱います。
- 相続税・贈与税・譲渡所得税の申告
- 土地の評価(不整形地補正・小規模宅地等の特例)
- 非上場株式の評価・同族会社の自社株集約
- 生前対策・相続時精算課税の活用
- 不動産売却における特別控除の適用
- 事業承継税制のご提案と活用
相続税の申告期限は10か月。特例の適用は期限内申告が前提です。まずは期限とご状況をお知らせください。初回のご相談は無料です。お問い合わせには原則として翌営業日までにお返事します。
このページの出典・参考資料(69件)
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱「六 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」
- e-Gov 貸付用不動産の評価について(法令解釈通達)(案)
- 国税庁 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議
- 財務省 令和9年度税制改正要望
- 国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
- 国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要
- 国税庁 No.4152 相続税の計算
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
- 国税庁 令和8年分の路線価等について
- e-Gov 所得税法60条
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 国税庁 財産評価基本通達の一部改正(令和8年3月25日付)
- 国税庁 所得税基本通達 第59条関係
- 国税庁 法人税基本通達 9-1-7〜9-1-15の2
- 国税庁 No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
- 国税庁 所得税基本通達 第33条関係
- 国税庁 相続税法基本通達 第9条関係
- 国税庁 相続税法基本通達 第19条関係
- 国税庁 配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例
- e-Gov 租税特別措置法9条の7
- 国税庁 延納・物納
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
- 国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき
- 国税庁 相続税法基本通達 第4章 申告及び納付
- 国税庁 相続税の申告要否判定コーナー
- e-Gov 戸籍法
- 日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
- e-Gov 住民基本台帳法
- e-Gov 民法
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)相続税の申告
- 法務省 相続登記の申請義務化について
- e-Gov 保険法
- 国税庁 No.4138 相続人が外国に居住しているとき
- 財務省 令和8年度税制改正の解説(相続税・贈与税関係)
- 法務省 民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱「二 資産課税」
- 国税庁 No.4511 結婚・子育て資金の一括贈与
- 国税庁 法人版事業承継税制のあらまし(令和8年7月)
- 国税庁「居住用の区分所有財産」の評価が変わりました
- 国税庁 取引相場のない株式等の評価明細書の様式等の一部改正(令和8年6月26日)
- 国税庁 令和8年度税制改正のあらまし(株式等・土地建物等の譲渡)
- 国税庁 No.3226 低未利用土地等を売った場合の特例
- 法務省 住所等変更登記の申請義務化
- 法務省 所有不動産記録証明制度
- 法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 裁判所 最高裁令和4年4月19日判決(裁判要旨)
- 札幌国税局 令和6年分 相続税の申告事績の概要
- 札幌国税局 令和6事務年度における相続税の調査等の状況
- 国税庁 令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
- 国税庁 令和8年分 都道府県庁所在都市の最高路線価
- 札幌国税局 令和8年分の税務署別最高路線価
- 国税庁 実績評価資料(e-Tax利用率)
- 国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和8年分用)
- 国税庁 タックスアンサー 相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例
- 国税庁 財産評価基本通達 178・179(取引相場のない株式の評価)
- 国税庁 令和8年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等
- 札幌国税局 税務署所在地・案内
- 札幌法務局 管轄のご案内
- 札幌市 市税の証明の窓口での請求
このページは、2026年10月17日時点で確認できた法令・通達・国税庁などの公表資料にもとづく一般的な解説です。税制や運用は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の申告・手続の際は、最新の公表資料を確認するか、税理士などの専門家にご相談ください。
計算例・設例の数値は説明のための仮定です。計算ツールの結果は概算で、正確性や個別の結果を保証するものではありません。確定度ラベル(施行中・成立・施行待ち・通達案・検討中・要望段階など)は2026年10月17日時点の状態を示します。
最終確認日:2026年10月17日 作成:ジェイスタート会計事務所(公認会計士・税理士)
