法人の議事録とは?会社法の作成義務・記載事項と税務で困らない書き方

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法人の議事録は、株主総会や取締役会で何をどう決めたかを記録する書類で、株式会社では会社法により作成と本店での備置きが義務づけられています。役員変更などの登記に添付するほか、役員報酬や退職金の決定を税務調査で説明する証拠にもなるため、決議のたびに記載事項をそろえて作ることが大切です。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

株式会社の株主総会・取締役会の議事録は会社法上の義務で、記載事項は会社法施行規則で決まっています。登記・税務調査・金融機関への説明の証拠になるため、開催のたびに事実どおりの日付と内容で作成し、保管します。

  • 取締役会の議事録は、出席した取締役・監査役の署名か記名押印(電子なら電子署名)が必要
  • 役員報酬の改定(原則、期首から3か月以内)や役員賞与の事前確定届出、役員退職金は、議事録が判断の根拠になる
  • 株主全員の同意による書面決議(みなし決議)でも、議事録は作成する
  • 一人会社や家族経営の会社でも、株主総会の決議と議事録は省略できない
  • 後から日付をさかのぼって作った議事録は信用を失い、内容によっては事実の仮装とみられるおそれがある
目次

法人の議事録とは?作成が義務になる会議と根拠

議事録とは、会議の日時・場所・出席者・議題・議論の経過・決定事項を記録する文書です。会議の内容と決定に至った経緯を残すことで、責任の所在を明確にし、関係者の認識のずれや後日のトラブルを防ぎます。

法人の議事録には、法律で作成が義務づけられているものと、社内の会議で任意に作るものがあります。法律上の議事録は、会社の意思決定を証明する公式な記録として、登記や税務の場面で提出や提示を求められます。

会議・決定議事録の作成主な根拠署名・押印
株主総会(株式会社)義務会社法・会社法施行規則法律上の義務はない(定款の定めに従う)
取締役会(取締役会を置く会社)義務会社法・会社法施行規則出席した取締役・監査役の署名または記名押印
取締役の決定(取締役会を置かない会社)法律上の議事録の定めはない会社法登記などのために、取締役の過半数の一致を証する書面(決定書)を作る
合同会社の社員の決定法律上の議事録の定めはない会社法・定款登記などのために、総社員の同意書や決定書を作る
医療法人・一般社団法人などの社員総会・理事会それぞれの法律に定めがある医療法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律など各法律と定款による
社内の経営会議・部門会議任意社内の規程社内のルールによる
主な会議と議事録の作成義務(監査役会などを置く会社は、その議事録も必要です)

株主総会と取締役会の議事録は、会社法で定められた期間、本店に備え置く必要があり、株主や債権者から閲覧を求められることもあります。作成や備置きを怠ると、過料の対象になり得ます。議事録を作らずに会議を進めると、決定事項があいまいになって参加者の認識がずれるだけでなく、法的な問題が起きたときに経緯を説明できなくなります。

議事録には何を書く?株主総会・取締役会の記載事項

株主総会と取締役会の議事録に書く内容は、会社法施行規則で定められています。主な記載事項は次のとおりです。

記載事項株主総会議事録取締役会議事録
開催した日時・場所(その場にいない人がオンラインなどで出席した場合は、その出席の方法を含む)記載する記載する
議事の経過の要領とその結果記載する記載する
出席した役員などの氏名記載する記載する(出席した取締役・監査役は署名または記名押印する)
議長の氏名(議長がいる場合)記載する記載する
議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名記載する―
決議について特別の利害関係がある取締役の氏名―該当する取締役がいれば記載する
法律の規定に基づいて述べられた意見・発言の概要(監査役の意見など)あれば記載するあれば記載する
主な記載事項(会社法施行規則に基づく。会議の種類や状況によって、このほかの記載事項があります)

法律で求められるのは「議事の経過の要領」なので、発言をすべて書き起こす必要はありません。決定事項とその理由、反対意見の有無が読み取れるように、要点を整理して書きます。作成するときは、次の点を確認します。

  • 定足数と決議の要件を満たしたことがわかる(議決権を行使できる株主の数と議決権の数、出席した株主の数と議決権の数など)
  • 議案ごとに「原案どおり承認可決」などの結果を明記している
  • 役員報酬や退職金は、対象者・金額(または計算方法)・支給の時期を特定できる
  • 反対した取締役がいる場合は、異議をとどめた旨を記載している
  • 日付が実際の開催日と一致している
  • 取締役会の議事録は、出席した取締役・監査役全員の署名または記名押印がそろっている

取締役会で異議を残さないと「賛成」と推定される

取締役会の決議に参加した取締役で、議事録に異議をとどめなかった人は、その決議に賛成したものと推定されます(会社法)。決議に反対した場合は、その旨を議事録に記載してもらうことが、自分の責任の範囲を明確にするうえで大切です。

税務で議事録が重要になる場面は?役員報酬・賞与・退職金

税務調査では、役員に関わる支出や会社と役員の取引について、会社として正式に決めたことを確かめるために、議事録の提示を求められることがあります。議事録がない、または内容があいまいだと、その支出を損金にできることを説明しにくくなります。

場面議事録に残すこと税務で見られる点
役員報酬の決定・改定報酬の総額の上限(株主総会)、各役員の月額と改定後の支給開始月定期同額給与として、改定が原則として期首から3か月以内か
業績悪化による期中の減額減額の理由(経営状況の著しい悪化など)と金額減額の理由がやむを得ない事情に当たるか
役員賞与(事前確定届出給与)支給する役員・金額・支給日届出の内容と、議事録・実際の支給が一致しているか
役員退職金退職の事実、支給額(または役員退職慰労金規程による計算)、支給時期決議した日と損金に算入する事業年度、金額が過大でないか
決算の承認・剰余金の配当計算書類の承認、配当の金額と効力発生日確定した決算に基づく申告か、配当の源泉徴収の時期
会社と役員の取引不動産の賃貸借・売買や貸付・借入(利益相反取引)の承認と条件価格や利率が適正か
社内規程の制定出張旅費規程・社宅規程などの承認と施行日規程どおりに運用されているか
税務で議事録が確認されやすい場面の例

役員報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます(会社法)。株主総会で総額の上限を決め、各役員への配分を取締役会や取締役の協議に委ねる方法が一般的です。税務では、改定を事業年度の開始から原則3か月以内に行い、その後は毎月同じ額を支給する「定期同額給与」であれば、金額が過大でない限り損金にできます。議事録は、いつ・いくらに改定したかを示す一番の証拠です。

役員賞与を損金にするには、株主総会などで支給額と支給日を決議し、「事前確定届出給与」の届出をします。期限は、決議をした日から1か月を経過する日と、事業年度の開始から4か月を経過する日のいずれか早い日です(新設法人は設立から2か月)。届出と異なる金額や時期で支給すると、原則としてその支給額は損金になりません。

役員退職金は、株主総会の決議などで金額が具体的に確定した事業年度に損金に算入するのが原則です。実際に支払った事業年度に損金経理する方法も認められています。退職の事実と金額、決議の日付を議事録で示せるようにしておきます。

議事録を後から作る・日付をさかのぼるのは危険

税務調査の前になって、過去の株主総会の議事録をまとめて作ろうとするのは避けるべきです。実際の決議がないまま作った議事録や、日付をさかのぼった議事録は、証拠としての信用を失います。事実を仮装した書類と判断されれば、重加算税(過少申告の場合は35%)の対象になり得ます。決議はその都度行い、すぐに議事録を整えておくことが基本です。

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書面決議(みなし決議)でも議事録は必要?

株主総会では、取締役や株主が提案した議案について、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意した場合、その提案を可決する決議があったものとみなされます(会社法)。実際に集まらずに決議できるため、株主が少ない会社で使いやすい方法です。

この場合も議事録は必要で、決議があったとみなされた事項の内容、提案した人の氏名、決議があったとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載します。株主の同意書も、本店に備え置きます。

取締役会も、定款に定めがあれば、取締役全員の書面などによる同意で決議があったものとみなせます(監査役を置く会社では、監査役が異議を述べないことが条件)。この場合も、同じように議事録を作成します。

一人会社でも株主総会の決議は省略できない

株主と取締役が社長一人の会社でも、役員報酬の決定や決算の承認は株主総会の決議事項です。社長が一人で決めた内容を、株主総会の議事録(または書面決議の議事録)として残しておくと、税務や金融機関への説明がしやすくなります。

一人で会社を運営するときの注意点は、マイクロ法人を成功させるためのポイントもあわせてご覧ください。

議事録はどう作る?準備から保管までの流れと記載例

  1. 議事次第を準備する議題とその順番、それぞれの議題で決めたいことを事前に整理し、招集通知や資料とあわせて準備します。議事次第があると会議の進行がスムーズになり、議事録も作りやすくなります。
  2. 当日は決定事項を中心に記録する出席者と定足数、議案ごとの結果、主な意見や異議を中心にメモを取ります。すべての発言を書き留める必要はありません。
  3. 会議後すぐに清書し、内容を確認する記憶が新しいうちに議事録の形に整え、議長や出席者に内容の確認を求めます。
  4. 署名・記名押印をする取締役会の議事録は、出席した取締役・監査役が署名または記名押印します。株主総会の議事録も、定款で定めている場合や登記で必要な場合は押印します。
  5. 登記が必要な決議は申請する役員の就任・重任・辞任、本店移転、商号や目的の変更、増資などは、決議した議事録を添付して変更の登記をします。株主総会の決議が必要な登記では、株主リストの添付も求められます。
  6. 本店に備え置き、保管する原本は本店に備え置き、電子データで作成した場合は検索しやすい形で保存します。税務に関わる議事録は、帳簿書類と同じように長く保管しておくと安心です。
項目記載例
表題第○回定時株主総会議事録
日時・場所○年○月○日 午前○時○分から、本店会議室にて開催
出席状況議決権を行使できる株主の総数○名・議決権の総数○個、出席株主数○名・その議決権の数○個
出席役員・議長出席取締役○○(議長)、出席監査役○○
議事の経過と結果(第1号議案)第○期計算書類承認の件:議長が内容を説明し、審議の結果、原案どおり承認可決した
議事の経過と結果(第2号議案)取締役の報酬額決定の件:取締役の報酬総額を年額○円以内とし、各取締役への配分は取締役の協議に一任することを承認可決した
閉会議長は午前○時○分に閉会を宣言した
作成者議事録の作成に係る職務を行った取締役 ○○
株主総会議事録の記載例(会社の機関設計や定款の定めに合わせて調整します)

発言を会話形式で記録する方法は、議論の流れを伝えやすい反面、決定事項が埋もれやすくなります。法律上の議事録は要旨形式でまとめ、詳しい議論の記録が必要な社内会議では会話形式を併用するなど、目的で使い分けます。社内会議の議事録は、表計算ソフトのひな形に「議題・決定事項・担当者・期限」の欄を設けておくと、作成と共有の手間が減ります。

議事録でよくある失敗と防ぎ方

失敗例何が困るか防ぎ方
長文の中に決定事項が埋もれている何が決まったのかが読み取れない議案ごとに結果を一文で明記し、理由は要点だけ書く
すべての発言を書こうとする作成に時間がかかり、要点が伝わらない決定事項・理由・担当者・期限を中心にまとめる
「役員報酬を改定した」とだけ書く税務調査で改定の時期と金額を示せない対象者・金額・支給開始月を具体的に書く
実際の開催日と議事録の日付が違う証拠としての信用を失う開催日に作成し、日付は事実どおりに記載する
取締役会の議事録に署名・押印が漏れている法律の要件を欠く出席者全員の署名・記名押印を確認してから保管する
定款の決議要件を確認していない決議の効力が争われるおそれがある定款と会社法の要件を事前に確認する
作って保管するだけで誰も見ない決めたことが実行されない担当者と期限を記載し、次の会議の冒頭で進み具合を確認する
議事録でよくある失敗と防ぎ方

特定の出席者の意見だけを強調せず、公平に記録することも大切です。作成後に関係者へ内容の確認を求める習慣をつけると、記録の正確さと社内の信頼が高まります。

議事録の作成は会社の業務ですが、役員報酬や退職金など税務に関わる決議は、決める前に税理士と内容を確認しておくと安心です。当事務所の会計・税務顧問では、決算・申告とあわせて、こうした決議の時期や内容も確認しています。

よくある質問

株主総会の議事録に押印は必要ですか?

会社法上、株主総会の議事録に署名や押印の義務はありません。ただし、定款で議長や出席取締役の署名・押印を定めている場合は、それに従います。代表取締役の選定など登記の種類によっては、議事録に押した印鑑について印鑑証明書の添付が求められることもあります。

議事録は電子データで作成してもよいですか?

作成できます。会社法では議事録を電磁的記録で作ることが認められており、取締役会の議事録を電子で作る場合は、署名や記名押印に代わる措置として電子署名を行います。登記に使う場合は、法務局が求める電子署名の要件を事前に確認します。

議事録と契約書は何が違いますか?

契約書は、会社と相手方が合意した内容を示す対外的な書類です。議事録は、その取引を会社としてどう決めたかという社内の意思決定と経緯の記録です。社長と会社の間の不動産の賃貸借などでは、取引を承認した議事録と契約書の両方をそろえておきます。

議事録はいつまで保管すればよいですか?

株主総会と取締役会の議事録は、会社法で定められた期間、本店に備え置く必要があります。税務では、法人の帳簿書類は原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)の保存が必要です。役員の在任期間や過去の決議を確かめる場面もあるため、実務上は期限を設けずに保管しておくと安心です。

社内の会議でも議事録を作ったほうがよいですか?

法律上の義務はありませんが、決定事項と担当者・期限を残しておくと、認識のずれや決めたことの放置を防げます。目的に合わせて形式を簡単にし、会議の後すぐに共有することが、読まれる議事録にするコツです。

まとめ

法人の議事録は、株主総会や取締役会で会社として何を決めたかを示す公式な記録です。株式会社では会社法で作成と備置きが義務づけられ、記載事項も決まっています。役員報酬・賞与・退職金などの税務上の判断や登記の根拠にもなるため、決議のたびに事実どおりの日付と具体的な内容で作成し、きちんと保管しておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

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