税務調査の流れは、税務署からの事前通知、日程の調整と準備、調査当日の聞き取りと帳簿の確認、調査結果の説明、修正申告または更正の順に進みます。個人事業主も法人も、通知を受けてから慌てないよう、帳簿・証憑・預金の動きを説明できる状態にしておくことがいちばんの準備です。
この記事の結論
通常の税務調査は、事前に電話で通知がある任意の調査です。通知を受けたら対象の税目と期間を確認し、帳簿と証憑で取引を説明できる状態に整えます。
- 事前通知では、調査の日時・場所・目的・税目・対象期間・確認する帳簿書類などが伝えられる
- 当日は事業の概況の聞き取りから始まり、売上・経費・在庫・預金の動きを帳簿と証憑で確認される
- 問題がなければ「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」で終わり、誤りがあれば修正申告か更正になる
- 追加の納税には、本税のほか過少申告加算税(原則10%)と延滞税がかかる
- さかのぼれる期間は原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年
税務調査とは?任意調査・強制調査・行政指導の違い
税務調査は、提出された申告書の内容が正しいかを、税務署の職員が帳簿や書類で確かめる手続きです。通常の調査は納税者の協力のもとで行う任意調査ですが、調査官には質問をし、帳簿書類の提示や提出を求める権限(質問検査権)があります。正当な理由なく拒むと、罰則の対象になり得ます。
| 種類 | 内容 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 実地調査(任意調査) | 調査官が事業所や自宅を訪れ、帳簿書類を確認する。原則として事前通知がある | 対象の税目・期間・帳簿を確認して準備する |
| 事前通知のない調査 | 事前に通知すると正確な事実の把握が難しいと判断された場合などに、例外として行われる | 調査官の身分証明書を確認し、税理士に連絡する |
| 申告内容の確認(行政指導) | 申告内容に誤りの可能性があるとき、電話や文書で見直しや資料の提出を求められる | 調査か行政指導かを確認し、誤りがあれば自主的に修正する |
| 強制調査(査察) | 悪質な脱税が疑われる場合に、国税局の査察部が裁判所の令状にもとづいて行う | 通常の任意調査とは別の手続き |
最初の連絡が「調査」か「行政指導」かを確認する
税務署から電話や文書で連絡があったら、それが調査なのか、申告内容の見直しを求める行政指導なのかを確認します。行政指導を受けて自主的に修正申告をした場合と、調査の後に修正申告をした場合とでは、加算税の扱いが変わることがあるためです。
税務調査はどんな人に来る?来ない期間や年収の基準はある?
調査の対象をどう選ぶかの基準は公表されていません。「年収300万円以上で調査の対象になる」「数年に1回は来る」といった話を見かけますが、決まった基準や周期があるわけではありません。何年も調査が来ないこともあれば、開業から間もなく来ることもあります。
一般には、売上の規模が大きい場合、売上や利益率の急な変化など申告内容に不自然な動きがある場合、現金取引が多い業種、多額の還付申告がある場合、取引先の調査などで税務署が得た資料と申告内容が合わない場合に、調査の対象になりやすいといわれます。
調査が長く来ていないことは、申告に問題がないことを意味するわけではありません。調査でさかのぼれる期間は法律で決まっており、その範囲であれば過去の年分も確認されます。どの年分を調べるかは調査ごとに決まり、事前通知で対象期間が伝えられます。
| 区分 | さかのぼれる期間 |
|---|---|
| 原則 | 法定申告期限から5年 |
| 偽りその他不正の行為がある場合 | 法定申告期限から7年 |
| 法人税の欠損金額に係る更正 | 法定申告期限から10年 |
税務調査の流れは?事前通知から終了まで
- 事前通知原則として電話で、本人と、税務代理を任されている税理士に連絡があります。調査を始める日時・場所・目的・税目・対象期間・確認する帳簿書類などが伝えられます。
- 日程の調整と準備都合が悪い場合は、合理的な理由があれば日程の変更を相談できます。対象期間の帳簿と証憑をそろえ、説明が必要になりそうな取引を洗い出します。
- 調査当日事業の内容・取引先・売上の流れ・家族の関わり方など、事業の概況の聞き取りから始まり、帳簿・請求書・領収書・預金通帳を確認しながら質問が進みます。
- 追加の確認当日に答えられなかった点について資料を提出したり、取引先に事実を確認する調査(反面調査)が行われたりすることがあります。
- 調査結果の説明問題がなければ「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が届きます。誤りがあれば、指摘の内容・金額・理由の説明を受け、修正申告を勧められます。
- 修正申告・納付修正申告をする場合は、本税と加算税・延滞税を納めます。修正申告に応じない場合は、税務署が更正(税額の訂正)を行います。
調査当日は、聞かれたことに事実で答えるのが基本です。記憶があいまいな点は推測で答えず、確認してから回答すると伝えれば問題ありません。当日によくある失敗は、次のように防げます。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 事実と違う説明をしてしまう | その場で答えようとして、推測や記憶違いで話してしまう | わからない点は資料を確認してから回答すると伝える |
| 求められていない書類まで大量に出す | 準備した書類をすべて見せようとする | 求められた範囲を確認し、その範囲の書類を順に出す |
| 指摘をその場ですべて認める | 早く終わらせたい気持ちが先に立つ | 指摘の根拠と金額を確認し、税理士と相談してから判断する |
| 私物と事業の書類が混ざっている | 自宅兼事務所で保管場所が分かれていない | 事業用の書類と通帳は1か所にまとめておく |
何を準備する?必要書類チェックリスト
事前通知で伝えられた対象期間について、次の書類をそろえます。書類は売上・経費・申告書の控えなどテーマごとに分けてまとめておくと、調査官の質問にすぐ答えられます。
- 確定申告書と決算書(青色申告決算書または収支内訳書。法人は決算書と勘定科目内訳明細書)の控え
- 総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳などの帳簿と、会計ソフトのデータ
- 請求書・納品書・領収書・レシート、見積書・契約書
- 事業用の預金通帳とクレジットカードの利用明細
- 売上の根拠(請求書の控え、レジの記録、入金の明細)
- 期末の棚卸表(在庫の数量と単価)
- 固定資産台帳と、取得した資産の請求書・契約書
- 給与台帳・源泉徴収簿・出勤の記録、外注先との契約書と請求書
- メールやウェブで受け取った請求書・領収書などの電子取引のデータ
- 法人は、役員報酬の決定などを記録した株主総会・取締役会の議事録
帳簿書類の保存期間は、法人は7年(欠損金が生じた事業年度は10年)です。個人の青色申告者は、帳簿と決算関係書類・現金預金取引等関係書類が7年(前々年分の所得が300万円以下なら現金預金取引等関係書類は5年)、その他の書類は5年です。議事録の作り方は法人の議事録の役割と作り方で確認できます。
電子取引のデータは紙の保存では足りない
2024年1月1日以後の電子取引で受け取った請求書や領収書のデータは、紙に印刷して保存するだけでは足りず、改ざん防止・見読性・検索の要件に沿って電子データのまま保存する必要があります。基準期間の売上高が5,000万円以下で、調査官のダウンロードの求めに応じられる場合は、検索の要件は不要です。
領収書をなくした経費はどうなる?
領収書がないことだけで、所得税や法人税の経費が否認されるわけではありません。出金の記録、取引先が発行した明細や証明、支払の目的・相手・金額のメモなど、取引の事実を示す資料をそろえて説明します。
ただし、消費税の課税事業者は、インボイスの保存がないと仕入税額控除が認められないのが原則です(少額特例などの例外を除く)。日頃から証憑を保存する仕組みをつくっておくことが、いちばんの対策です。
調査ではどこを見られる?指摘されやすいポイント
調査で重点的に確かめられやすいのは、売上が漏れなく計上されているか、経費に私的な支出が混ざっていないか、計上の時期が正しいかの3点です。事前に次の論点を自分で点検しておくと、当日の説明がしやすくなります。
| 論点 | よくある指摘 | 事前にできる備え |
|---|---|---|
| 売上の計上時期 | 期末に納品・完了した売上が翌期に計上されている | 期末前後の請求書と、納品・完了の日付を照合する |
| 現金売上・入金口座 | 現金売上の一部や、家族名義の口座に入った売上が計上されていない | レジの記録と入金口座で売上を裏付け、事業用の口座を分ける |
| 家事関連費 | 自宅兼事務所の家賃・光熱費・車両費の按分が大きすぎる | 面積や使用時間など、按分の基準をメモに残す |
| 交際費・会議費 | 私的な飲食や家族との食事が含まれている | 日付・相手・目的を領収書に書き添える |
| 外注費と給与 | 実態は雇用なのに外注費として扱い、源泉徴収や消費税の扱いが誤っている | 契約書・請求書と、作業の実態(指揮命令・時間の拘束・道具の負担)を整理する |
| 棚卸資産 | 期末の在庫が計上されていない、数え漏れがある | 期末に実地棚卸をして棚卸表を残す |
| 減価償却・少額資産 | 10万円以上の資産をまとめて経費にしている、特例の要件を満たしていない | 取得価額ごとの処理(10万円未満・20万円未満・40万円未満の特例)を確認する |
| 専従者給与・役員報酬 | 家族への給与が仕事の実態に合っていない、役員報酬を期の途中で変えている | 勤務の実態を記録し、役員報酬の改定は期首から3か月以内に行う |
少額減価償却資産の特例は、2026年4月1日以後に取得した資産から40万円未満が対象になりました(それまでは30万円未満)。青色申告の中小事業者が対象で、年300万円までです。取得した日によって基準が違うため、取得日の記録を残しておきます。決算期ごとの点検には経理・決算セルフチェックも使えます。
指摘を受けたらどうする?修正申告・加算税・延滞税
調査で誤りを指摘されたら、まず指摘の内容・根拠・金額の説明を受け、事実と違う点があれば資料を示して説明します。納得できる指摘なら修正申告をします。納得できない場合は修正申告に応じず、税務署の更正を受けたうえで、再調査の請求や審査請求といった不服申立てをする道があります。
修正申告は自分で行う申告のため、その内容について後から不服申立てはできません。調査官からもその旨の説明があるので、内容を理解してから提出します。
| 種類 | かかる場面 | 割合 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内に申告した税額が少なかった | 原則10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 原則15%(50万円超の部分は20%。2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するものは300万円超の部分30%) |
| 重加算税 | 売上の除外や書類の改ざんなど、仮装・隠蔽があった | 過少申告・不納付の場合35%、無申告の場合40% |
| 延滞税 | 法定納期限までに納めなかった | 納付が遅れた期間に応じて計算 |
調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税がかからないか、軽くなる扱いがあります。優良な電子帳簿の要件を満たして事前に届け出ている場合は、過少申告加算税が5%軽減されます。
無料ツール延滞税・加算税を概算する追加で納める税額と納付日から、延滞税と加算税のおおよその額を計算できます。計算する
所得税の修正申告をすると、住民税と個人事業税も後から訂正されます。消費税の課税事業者は、消費税の修正が必要になることもあります。追加の納税額が大きい場合は、納付の資金繰りもあわせて考えておきます。
指摘に応じて修正申告をするか、資料で説明を尽くすべきかは、取引の事実と証拠しだいで変わります。調査の通知を受けた段階から、初回無料でご相談いただけます。
無料で相談する札幌市内で調査を受ける場合
調査の連絡は、住所地(法人は本店所在地)を管轄する税務署から来ます。札幌市内は中・北・南・西・東の5署で、中央区は、おおむね西10丁目以東が札幌中税務署、大通西11丁目以西や円山・宮の森などが札幌西税務署の管轄です。
修正申告書などを書面で郵送する場合、札幌市内の5署分は2026年7月10日から札幌業務センターあてになっています。e-Taxで提出する場合や窓口に持参する場合は、所轄の税務署です。
税理士に依頼すると何が変わる?
税務代理権限証書を提出している税理士がいれば、事前通知は税理士にも届き、日程の調整、調査当日の立会い、指摘に対する意見の申し立てを任せられます。調査の通知を受けた後からでも依頼でき、以後の税務署とのやり取りを税理士経由にできます。
また、税理士が申告書の作成にあたって計算・確認した内容を記した書面を添付する「書面添付制度」を利用している場合、税務署は調査の事前通知の前に、税理士に意見を述べる機会を与えることになっています。そこで疑問が解消すれば、調査に至らないこともあります。
依頼から調査の終了までの進み方は税務調査の立会いの流れと所要日数、費用の考え方は税務調査の立会い費用の内訳で確認できます。
よくある質問
税務調査の連絡を無視したり、先延ばしにしたりするとどうなりますか?
都合が悪い場合は、合理的な理由を伝えれば日程の変更を相談できます。一方、正当な理由なく調査に応じないと、帳簿書類の提示を拒んだとして罰則の対象になり得るほか、税務署が把握している資料をもとに税額が決められることがあります。
自宅兼事務所の場合、家の中まで見られますか?
調査官が確認するのは、事業に関係する帳簿書類やその保管場所です。事業に関係のない私物まで見せる必要は原則としてありませんが、書類やパソコンの保管場所を聞かれたら、理由を確認したうえで協力します。事業用の書類を1か所にまとめておくと、私物との区別がはっきりします。
家族名義の預金口座も調べられますか?
事業の売上の入金や経費の支払に使われている可能性がある口座は、家族名義でも確認の対象になることがあります。事業に関係のない口座であれば、その理由を説明します。事業用の口座を分けておくことが、調査を円滑に進める基本です。
法人と個人事業主で、調査の内容は違いますか?
法人の調査では、法人税とあわせて消費税や源泉所得税も確認されることがあり、役員報酬・役員への貸付・交際費・社長個人と会社のお金の区分がよく見られます。個人事業主では、売上の計上漏れと家事関連費の按分が中心になりがちです。
まとめ
税務調査は、事前通知から当日の確認、結果の説明、修正申告または更正までの流れが決まっています。調査の対象を選ぶ基準や周期は公表されていないため、「来ないだろう」ではなく、帳簿・証憑・預金の動きを説明できる状態を日頃から保つことが最善の備えです。通知を受けたら対象の税目と期間を確かめ、指摘には根拠を確認してから対応しましょう。
札幌の公認会計士・税理士事務所
税務調査の準備と立会いのご相談は、ジェイスタート会計事務所へ
- 初回相談は無料(オンライン対応可)
- フォーム・LINEは24時間受付、翌営業日までにご返信
- その場でご契約を迫ることはありません
対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り
出典・参考(公的機関)
本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。
更新履歴:2026年10月 全面改訂
