役員報酬の適正額はいくら?損金ルールと税率・社会保険で決める手順

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

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役員報酬の適正額に一律の正解はなく、損金にできるルールの範囲で、法人と個人の税率差、社会保険料、社長の生活費と会社の資金繰りを並べて決めます。比べる物差しは「法人+個人+社会保険」の合計負担と手取りです。改定は原則として期首から3か月以内のため、決算の見込みが立った段階で翌期の額を試算します。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

役員報酬は、期首から3か月以内に決めた額を毎月同額で払うのが損金算入の前提です。金額は、法人に残す利益と個人の手取りを、社会保険料を含めた合計負担で比べて決めます。

  • 期中の増額は、臨時の改定事由などに当たらない限り、増やした部分が損金にならない
  • 役員賞与は、事前確定届出給与の届出をしないと損金にならない
  • 中小法人の所得800万円以下の部分は法人税15%(2027年3月31日までに開始する事業年度)。個人は所得が増えるほど税率が上がる
  • 会社と本人で折半する社会保険料も、比較から外せない
  • 金額の根拠(職務の内容・業績)と株主総会の議事録を残しておく
目次

役員報酬を損金にするための3つの型

法人が役員に払う給与は、次の3つの型のどれかに当たらないと損金(法人税の計算上の経費)になりません。中小企業で中心になるのは定期同額給与で、賞与を出すなら事前確定届出給与を使います。

型内容主な要件・期限
定期同額給与毎月など一定の時期に、同じ額を払う額の改定は、原則として事業年度開始の日から3か月以内
事前確定届出給与あらかじめ決めた時期に、決めた額を払う役員賞与など株主総会等の決議の日から1か月を経過する日と、事業年度開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日までに届出(新設法人は設立の日以後2か月を経過する日まで)。届出と違う額を払うと、原則として全額が損金にならない
業績連動給与利益などの指標に連動して払う同族会社は原則として使えない(同族会社でない法人の完全子会社などを除く)
損金になる役員給与の3つの型(2026年10月時点)

「儲かったから今期は多めに」という調整はできない、というのが最初のポイントです。賞与を出す場合の手続きは、事前確定届出給与の届出の解説で詳しく説明しています。

期の途中で役員報酬を変えたいときは?

定期同額給与は、事業年度の途中で額を変えると、原則として損金にならない部分が生じます。ただし、次のような事情があれば期中でも改定が認められます。

ケース期中の改定損金の扱いと注意点
期首から3か月以内の改定認められる改定の前後それぞれで毎月同額なら損金になる
役員の地位や職務の内容が大きく変わった(臨時改定事由)認められる例えば、社長の急な退任で別の役員が社長に就いた場合
経営の状況が著しく悪化したことによる減額(業績悪化改定事由)認められる一時的な資金繰りの都合や、目標の利益に届かない程度では当たらない
上記に当たらない増額認められない増額した部分が損金にならない
上記に当たらない減額認められない減額前に払った額のうち、減額後の額を超える部分が損金にならない
期中の改定と損金の扱い(2026年10月時点の一般的な取扱い)

業績悪化改定事由に当たるかは、財務諸表の数値が大きく悪化した、取引銀行との返済条件の見直しの協議で役員報酬の減額が必要になった、といった客観的な事情で判断します。減額を決めた経緯と根拠は、議事録と資料で残しておきます。

業績が想定より良かったからといって期中に増額すると、増額分は損金になりません。翌期の報酬に反映するほうが、結果として有利になることも少なくありません。

期中の減額が業績悪化改定事由に当たるかどうかは、数字の悪化の程度と経緯で判断が分かれます。初回無料で確認できます。

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法人と個人の税率はどう違う?

役員報酬を増やすと、その分だけ法人の利益が減って法人税は軽くなり、個人の所得税・住民税は重くなります。適正額を考える土台は、法人と個人の税率の差です。

中小法人(資本金1億円以下の法人など)の法人税は、所得800万円以下の部分が15%(2027年3月31日までに開始する事業年度。本則は19%)、800万円を超える部分が23.2%です。この軽減税率の延長は、2026年10月時点では決まっていません。

計算例:札幌市内の中小法人の所得にかかる税率(表面税率)

例えば、資本金1億円以下で外形標準課税の対象外、法人税額1,000万円以下の法人が、法人税の軽減税率15%を使える事業年度の場合です。所得の区分ごとに税率を単純に足すと、次のとおりです。

  • 地方法人税:15%×10.3%=1.545%
  • 法人住民税の法人税割(道1.0%と市6.0%の合計7.0%):15%×7.0%=1.05%
  • 所得400万円以下の部分:15%+1.545%+1.05%+3.5%+1.295%=22.39%
  • 所得400万円超800万円以下の部分:15%+1.545%+1.05%+5.3%+1.961%=24.856%
  • 所得800万円超の部分:23.2%+2.3896%+1.624%+7.0%+2.59%=36.8036%

各区分の4つ目の数字は法人事業税、5つ目は特別法人事業税(事業税の37%)です。事業税は翌期に損金になるため、実際の負担率(実効税率)はこれより少し低くなります。

法人には、利益に関係なくかかる法人住民税の均等割もあります。札幌市内で資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の法人は、北海道2万円と札幌市5万円で年7万円です。また、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは、法人税額から500万円を引いた額に4%の防衛特別法人税がかかり、税額がゼロでも申告が必要です。

個人の所得税は、課税所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率です。住民税の所得割は一律10%です。

個人の課税所得所得税率控除額住民税10%を加えた税率(計算上)
195万円以下5%0円15%
195万円超330万円以下10%97,500円20%
330万円超695万円以下20%427,500円30%
695万円超900万円以下23%636,000円33%
900万円超1,800万円以下33%1,536,000円43%
1,800万円超4,000万円以下40%2,796,000円50%
4,000万円超45%4,796,000円55%
所得税の速算表(平成27年分以後)と住民税の合計。別に所得税額の2.1%の復興特別所得税(令和9年分以後は復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%)がかかる

計算例のとおり、法人の所得800万円以下の部分にかかる税率は、個人の課税所得が330万円を超える区分(所得税20%と住民税10%)より低い水準です。一方、法人の所得が800万円を超える部分は、個人の区分によっては個人より高くなります。法人に残した利益を個人が受け取るには、配当や役員退職金などの形が必要になる点も踏まえて考えます。

なお、令和8年分・令和9年分の所得税の基礎控除は、所得に応じた段階制です。給与収入だけの人は、年665万5,556円以下なら104万円、それを超えると67万円(合計所得金額655万円以下の場合)に下がります。役員報酬をこの水準の前後で決めるときは、控除の差も試算に入れます(基礎控除の引上げと段階の解説)。

社会保険料はいくらかかる?北海道の料率で試算

法人の事業所は、役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。報酬を受け取る役員は被保険者になり、保険料は標準報酬月額に料率を掛けて、会社と本人で折半します。役員は原則として雇用保険には加入しません。

計算例:役員報酬が月50万円の場合の社会保険料

例えば、協会けんぽ北海道支部に加入する法人で、40歳以上65歳未満の役員に月50万円(標準報酬月額50万円、賞与なし)を払う場合です。料率は令和8年度の値(健康保険10.28%、介護保険1.62%、厚生年金18.3%、子ども・子育て支援金0.23%)で計算します。

  • 健康保険(介護保険を含む):500,000円×11.9%=59,500円
  • 厚生年金保険:500,000円×18.3%=91,500円
  • 子ども・子育て支援金:500,000円×0.23%=1,150円
  • 毎月の合計(会社と本人の合計):59,500円+91,500円+1,150円=152,150円
  • 本人負担(折半):152,150円÷2=76,075円
  • 報酬に対する割合:152,150円÷500,000円=30.43%
  • 年間の合計:152,150円×12か月=1,825,800円

会社負担分は法人の損金になりますが、比較は本人負担分と合わせた総額で行います。

厚生年金保険料には標準報酬月額の上限(65万円)があり、報酬がそれ以上になっても保険料は増えません。この上限は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられます。報酬を高めに設定している会社は、上限の引上げも試算に反映します。

北海道の健康保険料率は全国平均より高い

協会けんぽ北海道支部の健康保険料率は、令和8年3月分から10.28%で、全国平均の9.90%を上回ります。介護保険料率は1.62%、子ども・子育て支援金は令和8年4月分から0.23%です。同じ報酬でも社会保険料の負担が大きくなるため、役員報酬の試算は北海道の料率で行います。

個人の手取りはどう変わる?所得税の計算例

役員報酬は給与所得として課税され、給与所得控除を差し引いた後の金額に所得税がかかります。上の計算例と同じ月50万円の報酬で、令和8年分の所得税を計算すると次のとおりです。

計算例:役員報酬が年600万円の場合の所得税(令和8年分)

例えば、役員報酬が年600万円(月50万円、賞与なし)で、ほかに所得がなく、所得控除は社会保険料控除と基礎控除だけの場合です。社会保険料(本人負担)は、上の計算例の月76,075円が12か月続くものとします。

  • 給与所得控除:6,000,000円×20%+440,000円=1,640,000円
  • 給与所得:6,000,000円−1,640,000円=4,360,000円
  • 社会保険料控除:76,075円×12か月=912,900円
  • 課税所得:4,360,000円−912,900円−1,040,000円=2,407,100円(1,000円未満を切り捨てて2,407,000円。基礎控除は合計所得金額489万円以下のため104万円)
  • 所得税:2,407,000円×10%−97,500円=143,200円
  • 復興特別所得税:143,200円×2.1%=3,007円
  • 合計:143,200円+3,007円=146,207円(年末調整や申告では100円未満を切り捨てて146,200円)

このほかに住民税(所得割10%と均等割)がかかります。

実際の負担は、配偶者や扶養親族の控除、生命保険料控除などで変わります。法人側の税金と社会保険料の会社負担も合わせて、複数の報酬額で比べるのが近道です。

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役員報酬の水準をシミュレーションする役員報酬の額を変えたときの、法人と個人の税金・社会保険料の違いを試算できます。計算する

役員報酬の決め方の手順

  1. 生活費と資金繰りの下限を確かめる社長個人に必要な手取りと、会社に残すべき運転資金・借入金の返済額を確認します。
  2. 利益の見込みを立てる決算の着地見込みと翌期の利益計画から、役員報酬を払う前の利益を見積もります。
  3. 複数の報酬額で試算する法人税等・所得税等・社会保険料の合計と、個人の手取り、法人に残る資金を比べます。
  4. 賞与・退職金・家族役員を組み合わせる事前確定届出給与や将来の役員退職金、家族への報酬も含めて設計します。
  5. 株主総会で決議し、議事録を残す取締役の報酬は、定款か株主総会の決議で定めます。総額の上限を株主総会で決め、各人の額を取締役会などで決める方法もあります。
  6. 期首から3か月以内に改定する決めた額は、その事業年度の間は原則として据え置きます。

議事録の作り方は法人議事録の書き方と重要性を参考にしてください。役員報酬は「一度決めたら1年間固定」が基本のため、決算の着地見込みが見えた段階で、翌期の報酬を早めに検討しておくと安心です。

家族役員の報酬と「不相当に高額」の判断基準

役員報酬の額が、職務の内容、会社の収益、従業員の給与の水準、同業で同規模の会社の支給状況などに照らして不相当に高額な場合、その高額な部分は損金になりません(実質基準)。定款や株主総会の決議で定めた上限額を超えて払った部分も、同じく損金になりません(形式基準)。

  • 役員ごとの職務の内容と、実際の勤務の記録
  • 報酬額を決めた根拠(業績・職責・従業員の給与との比較)
  • 株主総会・取締役会の議事録と、定款や決議で定めた上限額
  • 家族役員の担当業務(経理・営業・現場の管理など)と勤務の状況

配偶者などの家族を役員にして報酬を分けると、一人ひとりの低い税率の部分を使えます。ただし、勤務の実態がない家族への報酬は否認されやすく、税務調査でも確認されやすい項目です。家族役員も報酬を受け取れば、勤務の実態に応じて社会保険の被保険者になるため、その保険料も試算に含めます。

配偶者の報酬額と社長の配偶者控除(令和8年分)

配偶者の報酬が給与だけで年136万円以下なら、社長は配偶者控除の対象にできます(社長の合計所得金額が900万円以下なら38万円)。年136万円を超えて207万円未満なら、配偶者特別控除の対象です(社長の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。

退職金・法人化と組み合わせて考える

毎月の報酬を抑え、将来の役員退職金で受け取る設計も検討できます。退職金は、退職所得控除を差し引いたうえで、ほかの所得と分けて課税されます。そのため、同じ額を毎月の報酬で受け取るより、税負担が軽くなりやすい仕組みです。退職所得控除は、勤続20年以下は1年につき40万円(最低80万円)、20年を超えると800万円に、20年を超える1年ごとに70万円を加えた額です。

ただし、役員としての勤続年数が短い場合は軽減の一部が使えず、功績や勤続年数に照らして過大な退職金は、その部分が損金になりません。退職金の準備と金額の考え方は、役員退職金の活用と注意点で解説しています。

個人事業から法人化を考えている段階なら、役員報酬の水準によって税金と社会保険料の合計がどう変わるかを、個人事業のままの場合と比べて試算します。

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個人事業と法人の負担を比較する個人事業のまま・法人化・併用の場合の税金と社会保険料を比べられます。計算する

よくある質問

役員報酬を0円にしてもよいですか?

0円にすることもできます。法人から報酬を受け取らない役員は健康保険・厚生年金保険の被保険者にならないため、国民健康保険と国民年金に加入します。法人に残った利益には法人税等がかかるため、個人の生活費をどう賄うかも含めて判断します。

役員報酬にも源泉徴収は必要ですか?

必要です。役員報酬は給与として、給与所得の源泉徴収税額表で所得税を源泉徴収し、原則として翌月10日までに納めます。給与の支払を受ける人が常時10人未満なら、税務署の承認を受けて納期の特例を使え、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日が期限になります。

会社を設立した最初の期は、いつまでに役員報酬を決めればよいですか?

最初の事業年度は設立の日が期首になるため、設立の日から3か月以内に決めた額を毎月同額で払えば、定期同額給与として扱えます。役員賞与を出す場合の事前確定届出給与の届出は、設立の日以後2か月を経過する日までです。

赤字でも役員報酬を払い続けてよいですか?

損金算入のルール上は問題ありません。法人の欠損金は10年間繰り越せ、中小法人等は翌期以降の所得の全額まで控除できます。ただし、赤字の中で報酬を払うと会社の資金が減り、融資の審査でも会社の利益と役員報酬をあわせて見られることがあるため、資金繰りとのバランスで決めます。

役員報酬を下げれば、社会保険料もすぐに下がりますか?

すぐには下がりません。報酬を変えた後、一定期間の報酬の平均と変動の幅をもとに標準報酬月額が見直される仕組み(随時改定)のため、保険料が変わるまでに時間差があります。

まとめ

役員報酬の適正額は、定期同額給与などの損金ルールを守ったうえで、法人の税率、個人の税率、社会保険料、生活費と資金繰りを並べて決めます。数字は毎年変わるため、決算の着地見込みが見えた段階で翌期の報酬を試算し、期首から3か月以内に決議して議事録を残しておきましょう。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(令和8年度税制改正を反映)

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