結論から言うと、役員報酬の「正解」は一律ではなく、法人の利益水準、個人の生活費、社会保険料、将来の退職金設計まで含めたトータルで決めるものです。
目安として、法人には所得800万円以下の部分に軽減税率15%がある一方、個人の所得税は累進課税のため、報酬を上げすぎると個人側の負担が重くなる場合があります。本記事では税務ルールと適正額の考え方を整理します。
この記事は、こんな方に役立ちます
- 札幌・北海道で税理士をお探しの方
- 会計・税務・経営の相談先を探している方
- 自社に合うサポートを知りたい方
- 損金算入の大前提は定期同額給与(改定は期首から3か月以内)
- 賞与は事前確定届出給与の届出が必須
- 法人15%(800万以下)と個人の累進税率のバランスで設計
- 退職金・家族役員も含めたトータル設計を
- 金額の根拠と議事録を残す
大前提:定期同額給与のルール
国税庁タックスアンサーNo.5211(役員に対する給与)にあるとおり、役員報酬を損金にするには、原則として事業年度を通じて毎月同額(定期同額給与)であることが必要です。
改定できるのは原則として期首から3か月以内で、期中の増額は損金不算入のリスクがあります。賞与を出すには事前確定届出給与の届出(「事前確定届出給与の解説」)が必要です。
「儲かったから今期は多めに」という調整はできない、というのが最初のポイントです。
法人と個人の税率バランス
中小法人は所得800万円以下の部分に法人税の軽減税率15%(令和9年3月31日までに開始する事業年度まで延長済み)が適用されます。
一方、個人の所得税は超過累進で、課税所得が増えるほど税率が上がり、社会保険料の会社・本人負担も報酬に比例して増えます。
したがって「法人にどれだけ利益を残し、個人にどれだけ移すか」のシミュレーションが適正額検討の中身になります。給与所得控除・基礎控除の改正(「基礎控除の引上げ解説」)も毎年の見直し要素です。
退職金・家族役員も含めた設計
毎月の報酬を抑え、将来の役員退職金(退職所得課税の優遇あり)で受け取る設計や、実態のある勤務を前提に配偶者等への報酬分散も検討肢の一つです。退職金課税の仕組みは「退職所得控除の解説」をご覧ください。
なお、不相当に高額な役員報酬や勤務実態のない家族への報酬は、税務調査で否認されるリスクがあるため、金額の根拠を説明できる状態にしておくことが大切です。
決め方の手順
手順は、①今期の利益計画を立てる→②報酬水準ごとの法人・個人の税・社会保険料を試算→③生活費と将来設計を加味して決定→④株主総会議事録を整備、という流れが基本です。議事録の整備は「法人議事録の解説」も参考にしてください。
具体例|法人と個人の「合計の手取り」で考える
役員報酬を上げると、その分だけ法人の利益が減り法人税は軽くなりますが、個人側の所得税・住民税・社会保険料は増えます。逆に報酬を下げれば、法人に利益(と法人税)が残ります。適正額とは、この「法人+個人+社会保険」の合計負担ができるだけ軽く、かつ社長個人の生活費と会社の資金繰りが無理なく回る水準を探す作業です。最適な金額は会社の利益水準や家族構成で変わるため、いくつかの案を並べてシミュレーションで比較するのが確実です。
実務で外せない注意点
- 定期同額給与が原則/期の途中で安易に増額すると、その差額が損金に算入できない恐れがあります。
- 改定のタイミング/報酬の見直しは、事業年度開始から一定期間内に行うのが原則です。
- 賞与を出すなら手続きを/役員賞与を損金にするには、事前確定届出給与の届出と支給ルールの順守が必要です。
- 家族役員は実態が前提/実際の職務に見合わない過大な報酬は否認されるリスクがあります。
決め方の手順(おさらい)
- 社長個人の生活費と、会社の資金繰りの下限を確認する
- 利益計画から、法人に残しておきたい額を決める
- 法人税・所得税・社会保険を合わせて複数案を比較する
- 期首に決定し、その事業年度は原則として据え置く
役員報酬は「一度決めたら1年間固定」が基本のため、期首の設計がとても重要です。数字は毎年変わるので、決算の着地見込みが見えた段階で、翌期の報酬を早めに検討しておくと安心です。
期の途中で「やっぱり変えたい」となったら
業績が想定と大きくズレたとき、役員報酬を期の途中で変えたくなることがあります。しかし、定期同額給与の原則から外れる増額は損金として認められない恐れがあり、安易な変更は避けるべきです。どうしても見直しが必要な場合は、認められる事由や手続きに該当するかを実行前に必ず確認しましょう。翌期以降の設計に反映するほうが、結果的に有利になることも少なくありません。
まとめ
役員報酬のシミュレーションは、当事務所へお気軽にご相談ください。
ご相談前に整理しておくとスムーズなこと
- 業種・規模・法人/個人の別
- 現在の課題(税務・資金繰り・経営など)
- 希望する対応方法(訪問・オンライン)
- 依頼したい範囲(記帳・申告・顧問など)
- 決算月・申告の時期
※本記事は2026年6月時点の法令・情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。
出典・参考情報(公的機関)
本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務判断・アドバイスを行うものではありません。税制・法令は改正される場合があります。実際の申告・手続の際は、上記の公的機関が公表する最新情報をご確認のうえ、税理士など専門家へご相談ください。
