退職所得控除の計算方法|勤続年数の数え方と2分の1課税の例外

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

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退職所得控除は、勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」で計算します。退職金から控除を引いた残りの2分の1だけが課税対象になりますが、勤続5年以下の役員などには2分の1が使えない例外があります。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

退職金は、退職所得控除を差し引き、さらに2分の1にした金額だけに、給与などと分けて税金がかかります。控除額は勤続年数で決まり、1年未満の端数は1年に切り上げます。

  • 勤続20年以下:40万円×勤続年数(80万円に満たないときは80万円)
  • 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)。勤続30年なら1,500万円
  • 控除後の金額は原則2分の1にして課税。役員等として勤続5年以下なら2分の1なし、それ以外の勤続5年以下は控除後300万円を超える部分に2分の1なし
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を出せば源泉徴収で完結し、出さないと20.42%が源泉徴収される
  • iDeCoなどの一時金を先に受け取った場合の調整期間は、2026年1月1日以後の退職金から「前年以前9年内」に延びた
目次

退職所得控除はいくら?計算式と勤続年数別の早見表

国税庁のタックスアンサー(No.1420 退職金を受け取ったとき)のとおり、退職所得控除額は勤続年数で決まります。20年を境に、1年あたりの控除額が大きくなる仕組みです。

勤続年数退職所得控除額補足
20年以下40万円×勤続年数計算した額が80万円に満たないときは80万円
20年超800万円+70万円×(勤続年数−20年)20年を超えた分は、1年あたり70万円
退職所得控除額の計算式(2026年10月時点)。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、一定額が加算されます

計算例:勤続年数別の退職所得控除額(早見表)

  • 勤続1年:40万円×1年=40万円のため、最低額の80万円
  • 勤続3年:40万円×3年=120万円
  • 勤続5年:40万円×5年=200万円
  • 勤続10年:40万円×10年=400万円
  • 勤続20年:40万円×20年=800万円
  • 勤続25年:70万円×5年+800万円=1,150万円
  • 勤続30年:70万円×10年+800万円=1,500万円
  • 勤続35年:70万円×15年+800万円=1,850万円
  • 勤続38年:70万円×18年+800万円=2,060万円
  • 勤続40年:70万円×20年+800万円=2,200万円

退職金がこの控除額の範囲に収まれば、所得税・住民税はかかりません。

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勤続年数はどう数える?端数・休職・転籍・役員期間の扱い

勤続年数は、退職金を支払う勤務先で働き始めた日から退職した日までの期間で数え、1年未満の端数は1年に切り上げます。例えば勤続20年1か月なら、21年として計算します。迷いやすいケースは次のとおりです。

ケース勤続年数の扱い
1年未満の端数がある1年に切り上げる
長期の欠勤や休職をした原則として、その期間も勤続年数に含める
一度退職して再雇用された、グループ会社から転籍した退職金の計算で前の期間を通算する規程になっていれば、前の期間も含める(勤務していなかった期間は除く)
日々雇い入れられて働いていた期間がある原則として含めない
使用人から役員になった使用人と役員の期間を合わせて数える。2分の1課税の判定は、役員としての期間(役員等勤続年数)で別に行う
小規模企業共済の共済金掛金を納めた期間で数える
iDeCo・企業型DCの一時金掛金を拠出した期間などで数える
勤続年数の数え方(所得税法施行令の考え方にもとづく一般的な整理)

勤続年数が1年違うだけで、控除額は40万円(20年超の部分は70万円)変わります。入社日の応当日をまたぐかどうかで端数の扱いが変わるため、退職日を決めるときは、勤続年数の数え方もあわせて確認しておきましょう。

税額はどう計算する?控除後の2分の1に分離課税

退職所得の金額は「(退職金−退職所得控除額)×2分の1」で計算し、給与などの所得とは分けて所得税の速算表の税率を掛けます(分離課税)。住民税は退職所得の金額の10%で、退職金を支払うときに勤務先が差し引いて納めます。

計算例:勤続30年で退職金1,800万円を受け取る場合

例えば、勤続30年で退職金1,800万円を受け取り、「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合です。

  • 退職所得控除:70万円×10年+800万円=1,500万円
  • 控除後の金額:1,800万円−1,500万円=300万円
  • 退職所得の金額:300万円×1/2=150万円
  • 所得税:150万円×5%=75,000円
  • 復興特別所得税を含む源泉徴収税額:75,000円×102.1%=76,575円
  • 住民税:150万円×10%=150,000円
  • 手取り額:1,800万円−76,575円−150,000円=17,773,425円

1,800万円のうち課税の対象は150万円だけで、税金の合計は76,575円+150,000円=226,575円です。

2027年分以後は、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれますが、合計の2.1%は変わらず、源泉徴収も所得税額の102.1%のままです。

退職所得は分離課税ですが、所得税の基礎控除や、配偶者控除・扶養控除の判定に使う合計所得金額には含まれます。退職金を受け取った年は、本人や家族の控除の判定に影響することがある点にも注意しましょう。

2分の1が使えない例外は?特定役員退職手当等と短期退職手当等

勤続年数が短い退職金は、2分の1課税が制限されます。ここでいう役員等には、法人の役員のほか、国会議員・地方議会の議員や公務員も含まれます。

区分対象退職所得の計算
一般退職手当等下の2つ以外(退職金−退職所得控除額)×2分の1
特定役員退職手当等役員等としての勤続年数が5年以下の人の退職金退職金−退職所得控除額(2分の1なし)
短期退職手当等役員等以外で、勤続年数が5年以下の人の退職金控除後の金額のうち300万円以下の部分は2分の1、300万円を超える部分は全額が課税対象
退職手当等の区分と退職所得の計算(短期退職手当等の扱いは令和4年分以後)

計算例:勤続4年で退職金800万円を受け取る場合(役員等以外)

  • 退職所得控除:40万円×4年=160万円
  • 控除後の金額:800万円−160万円=640万円
  • 300万円以下の部分:300万円×1/2=150万円
  • 300万円を超える部分:640万円−300万円=340万円(全額が対象)
  • 退職所得の金額:150万円+340万円=490万円

勤続5年を超えていれば、640万円×1/2=320万円が退職所得です。同じ退職金でも、490万円−320万円=170万円多く課税の対象になります。役員等として勤続4年の場合は、640万円の全額が退職所得になります。

転職が身近になり、短期の勤続で高額の退職金を受け取るケースもあるため、この区分には特に注意が必要です。役員の退職金を設計するときも、就任からの年数が5年を超えているかで税負担が大きく変わります。金額の決め方や法人側の損金の考え方は役員退職金の活用と注意点で整理しています。

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退職金を複数受け取るときは?同じ年・4年内・iDeCo一時金の9年内

退職所得控除は、勤続期間が重なる退職金について二重に使えないよう調整されます。同じ年に複数の勤務先から受け取る場合や、近い年に続けて受け取る場合は、次の調整があります。

ケース調整の内容
同じ年に複数の退職金を受け取る合計額から1つの退職所得控除を差し引く。勤続年数は最も長い期間を基準に、重ならない期間を加えて数える
前年以前4年内に別の退職金を受け取っていて、勤続期間が重なる重なる期間に対応する控除額を差し引いて計算する
iDeCoなど確定拠出年金の一時金を先に受け取り、その後に勤務先の退職金を受け取る調整の対象が「前年以前9年内」に延長(2026年1月1日以後に支払を受ける退職金から。改正前は4年内)
勤務先の退職金を先に受け取り、その後に確定拠出年金の一時金を受け取る上とは別の期間で調整される
複数の退職金を受け取る場合の控除の調整(2026年10月時点)

いわゆる「5年ルール」(iDeCoの一時金を受け取ってから5年空ければ控除をそのまま使える)は、2026年1月1日以後の退職金には当てはまりません。受け取る時期を選べる場合は、順番と年数で税額が大きく変わるため、受け取る前に試算しておきましょう。

「退職所得の受給に関する申告書」には、同じ年や過去に受け取った退職金の有無を書きます。書き漏れがあると控除が重複して計算され、後から確定申告で税金を納める必要が出ることがあります。

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受け取るときの手続きは?申告書を出せば確定申告は原則不要

勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、退職所得控除と2分の1課税を反映した税額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。提出しない場合は、退職金の額に対して一律20.42%が源泉徴収され、確定申告での精算が必要になります。

確定申告で精算すれば払いすぎた税金は還付されますが、還付を受けるまでの間は手元の資金が少なくなります。退職の手続きの際に、申告書の提出を忘れないようにしましょう。

会社が退職金を支払ったときは、源泉所得税を原則として翌月10日までに納め、住民税は支払いを受ける人のその年1月1日時点の住所地の市町村へ納めます。退職所得の源泉徴収票は、2026年1月1日以後の支払分から、役員に限らず受給者全員分を税務署に提出します。会社側の源泉徴収の実務は源泉所得税の基本も参考にしてください。

経営者・個人事業主の退職金準備に使える制度は?

個人事業主には勤務先の退職金がありませんが、小規模企業共済やiDeCoを使うと、掛金を所得控除しながら、受け取るときは退職所得として退職所得控除を使える設計ができます。法人の経営者は、役員退職金も選択肢になります。

制度掛金・支払いの扱い受け取るとき勤続年数の数え方
小規模企業共済掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得掛金を納めた期間
iDeCo(個人型確定拠出年金)掛金の全額が所得控除(同上)一時金なら退職所得、年金なら公的年金等の雑所得掛金を拠出した期間など
役員退職金(法人)適正な額は法人の損金になる退職所得役員としての在任期間(役員等として5年以下なら2分の1なし)
経営者の退職金準備に使える主な制度(2026年10月時点)

iDeCoの掛金の上限は、2026年12月の拠出分(2027年1月の引落し)から引き上げられます。自営業者などの第1号被保険者は月7.5万円、会社員などの第2号被保険者は月6.2万円(企業年金等と合算)、公務員は月5.4万円です。2026年12月1日からは、70歳未満まで加入できます。小規模企業共済の仕組みは小規模企業共済のメリット・デメリットで解説しています。

法人の役員退職金は、役員としての貢献に見合う適正な額であれば損金になりますが、不相当に高額な部分は損金になりません。代表を退いたあとも経営の実権を持ち続けると、退職の事実がないとして退職金と認められないことがある点にも注意します。

一時金と年金はどちらが有利?受け取り方で変わる税金

退職金や企業年金・iDeCoを「一時金」で受け取るか「年金」で受け取るかによって、税金の計算方法が変わります。一時金なら退職所得として退職所得控除と2分の1課税の恩恵を受けやすく、年金形式なら公的年金等の雑所得として毎年課税されます。

比較の項目一時金(退職所得)年金(雑所得)
使える控除退職所得控除と2分の1課税公的年金等控除
課税の方法分離課税(受け取った年だけ)総合課税(毎年、ほかの所得と合算)
住民税・保険料への影響住民税は受け取るときに差し引かれ、翌年度の住民税や国民健康保険料の計算には原則として含まれない毎年の所得になり、住民税や国民健康保険料・介護保険料の計算に影響する
向いている場合退職所得控除の枠が大きい、ほかの年金収入が多いほかの所得が少なく、公的年金等控除の枠が余る
一時金と年金の受け取り方の違い(一般的な比較)

どちらが有利かは、受け取る総額、ほかの年金の額、勤務先の退職金との時期によって変わります。準備の段階から出口の受け取り方まで見据えて設計することが、手取りを大きくするポイントです。受け取り方を選べる場合は、手続きの前に試算しておくと安心です。

よくある質問

勤続年数が1年に満たない場合でも、退職所得控除はありますか?

あります。1年未満の端数は切り上げて1年として計算し、計算上の40万円が最低額に満たないため、80万円が控除されます。

パート・アルバイトの退職金にも退職所得控除は使えますか?

使えます。雇用の形にかかわらず、退職を理由に一時に支払われるお金は退職所得で、勤続年数に応じた控除を差し引けます。ただし、日々雇い入れられて働いていた期間は、原則として勤続年数に含めません。

解雇予告手当は退職所得になりますか?

なります。予告をせずに解雇する場合に支払われる解雇予告手当は、退職を原因として一時に支払われるものとして退職所得に当たり、退職金とあわせて退職所得控除の対象になります。

在職中に亡くなった人の退職金にも、退職所得控除は使えますか?

使えません。亡くなったあと一定の期間内に支給が確定した退職金(死亡退職金)は、遺族の所得税ではなく相続税の対象です。相続人が受け取る場合は、「500万円×法定相続人の数」までが非課税になります。

まとめ

退職所得控除は、勤続20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)で計算し、控除後の金額の2分の1だけが分離課税されます。勤続5年以下の役員等や短期の勤続には例外があり、iDeCoなどの一時金との調整期間も2026年1月1日以後は9年内に延びました。受け取る前に勤続年数の数え方と受け取る順番を確認し、申告書の提出も忘れないようにしましょう。

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(2026年1月1日以後の退職手当等に関する改正を反映)

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