法人向けAIをセキュリティで選ぶ|学習設定・管理機能・社内ルールの確認点

公認会計士・税理士 監修

この記事は、公認会計士・税理士が代表を務める札幌の会計事務所「ジェイスタート会計事務所」が監修しています。

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法人向けAIをセキュリティで選ぶときは、入力データが学習に使われない契約・設定を選べるかと、SSO・権限・監査ログ・データ保持の管理機能の2軸で比べます。そのうえで入力禁止情報の社内ルールと、出力を人が確認する手順を決めておくと、経理などの業務にも安全に使えます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

選ぶ基準は「入力が学習に使われない契約・設定にできるか」と「管理者が利用を統制できるか」の2つです。どのサービスを選んでも、入力してよい情報のルールと人による最終確認は別に用意します。

  • 個人向けの無料プランは、入力データが学習に使われる設定が初期状態の場合があり、業務には向かない
  • 法人向けプランは学習に使わない取り扱いが標準的だが、条件はプランと設定で異なる(2026年10月時点)
  • 管理機能はSSO・アクセス権限・監査ログ・データ保持の4点で比べる
  • マイナンバー・顧客の個人情報・給与データ・未公表の決算数値は、入力禁止か匿名化のルールを決める
  • 税率や期限などの回答は、国税庁の一次情報で裏取りしてから使う
目次

最初に確認するのは「入力データが学習に使われるか」

生成AIのセキュリティでまず確認するのは、入力した内容がAIモデルの学習(トレーニング=AIの性能向上のためにデータを使うこと)に利用されるかどうかです。個人向けの無料プランでは、入力データがサービス改善や学習に使われる設定が初期状態になっている場合があります。無料プランを業務にそのまま使うこと自体がリスクになり得ます。

一方、ChatGPTやClaude、Geminiといった主要サービスの法人向けプランでは、入力データを学習に使わない取り扱いが標準的です(2026年10月時点)。ただし条件はプランや設定によって異なり、仕様も頻繁に更新されます。契約前に各社の公式情報で最新の条件を確認し、確認した日付と設定内容を記録しておくと、社内説明や取引先からの問い合わせにも答えやすくなります。

プランの種類入力データの学習への利用管理者による統制業務での使い方
個人向けの無料プラン学習に使われる設定が初期状態の場合があるできない業務データの入力は避ける
個人向けの有料プラン設定で学習を止められる場合があるが、設定は利用者まかせできない(社員ごとに設定がばらばらになる)会社の公式の利用環境としては不十分
法人向けプラン学習に使わない取り扱いが標準的(条件は契約と設定で確認)アカウント・権限・ログを一元管理できる社内ルールとセットで業務に使う
プランの種類による違いの考え方(2026年10月時点。各社の条件は公式情報で確認してください)

「法人プランなら無条件で安全」ではない

正確には「学習に使わない設定・契約を選べるのが法人プラン」です。契約書や利用規約の記載、管理画面の設定、社内ルールの3つがそろって、はじめて業務で使える状態になります。

  • 入力データを学習に使わないことが、利用規約やデータの取扱いに関する文書に書かれているか
  • 学習に関する設定を、管理者が組織全体で固定できるか
  • 入力履歴(会話の記録)がどれだけの期間保存され、削除できるか
  • 確認した日付・契約したプラン・設定内容を社内の記録に残したか

管理機能はどこを比べる?SSO・権限・ログ・データ保持

学習設定と並ぶもう一つの軸が、管理者向けの機能です。次の4点で比べると、サービスごとの差が見えやすくなります。

確認項目見るべき内容経理での意味
アカウント管理SSO対応や、入退社時の一括管理ができるか退職者のアカウントをその日のうちに止められる
アクセス権限部署・役職ごとに利用範囲を制御できるか給与や人事のデータを扱う人だけに機能を開放できる
監査ログ誰がいつ何を入力したか記録・確認できるか入力禁止の情報が入っていないかを後から確認できる
データ保持入力履歴の保存期間と削除を設定できるか誤って入力した情報を消せる。保存期間を社内規程に合わせられる
管理機能の比較ポイント(機能の名称や有無はサービス・プランごとに確認してください)

SSO(シングルサインオン)とは、社内の一つのIDで複数のサービスにログインできる仕組みのことです。例えば従業員20名の会社で経理業務にAIを使うなら、退職者のアカウントを即時に停止できる仕組みと、利用状況を確認できるログは最低限ほしい機能です。

小規模な会社では、SSOのような機能より先に「会社のメールアドレスで契約し、管理者が誰のアカウントがあるかを把握できること」が出発点になります。社員の個人メールで登録したアカウントは、退職後に会社が止めることも、履歴を確認することもできません。中小企業でのAI導入の動きは中小企業のAI活用・最新技術の情報でも紹介しています。

社員に何を入力させてよい?情報の区分と守秘義務

どのサービスを選んでも、入力してよい情報の線引きは社内ルールで決める必要があります。取引先との秘密保持契約、個人情報保護法、マイナンバー法のように、契約や法令で取扱いが決まっている情報は、AIの安全性とは別に入力の可否を判断します。

区分情報の例扱い
入力しないマイナンバー、口座番号・カード番号、パスワード、従業員の健康診断の結果どのプランでも入力しない
原則入力しない(必要なら匿名化)顧客・取引先の個人情報、給与データ、未公表の決算数値、秘密保持契約の対象になっている情報氏名・社名を記号に置き換える、金額を丸めるなど、誰の情報か分からない形に加工する
入力してよい公開済みの法令や国税庁の資料、自社の公開情報、個人や取引先が特定されない文書のたたき台法人プランの範囲で利用する
入力情報の区分の例(自社の契約・規程に合わせて調整してください)

給与データや未公表の決算数値は、学習に使われない設定であっても、社内で閲覧を許されている人の範囲を超えて扱うことになりかねません。「AIに入れてよいか」は「その人がその情報を扱ってよいか」とセットで考えるのが基本です。

外部の専門家に送る資料も同じルールで

顧問税理士や社会保険労務士に送る資料をAIで要約・整理する場合も、匿名化のルールは変わりません。専門家側には守秘義務がありますが、AIに入力する時点の扱いは自社の規程で決まります。要約した資料は、原本と照合してから送ります。

どの業務にAIを使い、どの情報を入れてよいかは、経理の流れと扱うデータで変わります。初回無料で一緒に整理できます。

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シャドーAIを防ぐには?禁止より公式の受け皿をつくる

導入の判断を先送りするほど、社員が個人アカウントで無断利用する、いわゆるシャドーAIのリスクは高まります。禁止するだけで公式の受け皿を用意しないと、社員は個人のスマートフォンで使い始めます。安全に使える環境を整えることが、かえってリスクを下げます。ルールは次の順番で作ると運用に乗せやすくなります。

  1. 利用目的を決める議事録の要約、文書のたたき台づくり、データ分析など、何に使うかを先に決めます。
  2. 業務ごとの一覧を作る業務ごとに、使うツール・入力してよい情報・禁止事項を1枚にまとめます。
  3. 法人プランを契約し、設定を固定する学習と履歴の保存期間の設定を管理者が一元管理し、確認日を記録します。
  4. 社員に周知する入力禁止の情報を具体例で示し、迷ったときの相談先を決めておきます。
  5. ログで運用を確かめる利用状況を定期的に確認し、ルール違反は個人を責めるより仕組みの改善につなげます。
  6. 年に一度見直すサービスの仕様変更や法令の改正に合わせて、一覧とルールを更新します。

経理・税務でAIを使うときは何を確認する?誤回答と裏取り

セキュリティと並ぶ実務上のリスクが誤回答です。生成AIは、事実と異なる内容をもっともらしく出力することがあります。経理・税務では「文章を作る」用途と「数字や制度を判断する」用途でリスクが大きく違うため、用途ごとに確認の手順を決めておきます。

用途誤りの影響確認のしかた
取引先への案内文・社内通知の下書き小さい金額・日付・宛先・品番を人が確認する
経理規程・マニュアルのたたき台小さい自社の実態に合っているか責任者が確認する
仕訳の勘定科目の候補出し中程度取引先名を伏せて入力し、過去の処理や証憑と照合する
税制改正・期限の調べもの大きい国税庁の一次情報で、年分や施行日を確認する
給与・年末調整などの計算大きい給与ソフトや計算ツールで検算する
経理・税務での用途別の確認方法

税制は改正が多く、AIが学習した時点より後の改正が回答に反映されていないことがあります。見積書の下書きや取引先への案内文の作成にAIを使えば作業時間は大きく減りますが、金額や品番、税率や期限はAIが誤りやすい典型です。

具体例:古い情報が混ざりやすい税務の論点

  • インボイス制度で免税事業者から仕入れたときの経過措置:2026年10月1日〜2028年9月30日は仕入税額相当額の70%を控除。改正前の予定だった「2026年10月から50%」のまま答えるおそれがある
  • 所得税がかからない給与収入の上限:令和8年分・令和9年分は178万円以下。「103万円」は令和2年分〜令和6年分の基準
  • 青色申告特別控除の75万円:令和9年分から。令和8年分までは最高65万円
  • 回答の根拠(国税庁のページ名や法令名)を示させ、原文を開いて確認する
  • 「何年分」「いつ以後に開始する事業年度」など、適用される時期を確認する
  • 国税庁のタックスアンサーは「2026年4月1日現在の法令等」のような基準日を確認する
  • 金額の計算は会計ソフトや計算ツールで検算する
  • 判断が分かれる取引は、AIの回答を添えて顧問税理士に確認する
無料
ツール
基礎控除の額を年分別に計算する令和7年分〜令和10年分の基礎控除を合計所得金額から確認でき、AIの回答の検算に使えます。計算する

AIの出力はあくまで下書きと位置づけ、根拠の確認と最終判断は人が行うフローを業務に組み込みます。経理の具体的な使い方と確認の手順は、Claude Cowork 経理活用ガイドで業務別に整理しています。

入力してはいけない情報を入れてしまったら?

ルールを決めても、誤って入力してしまうことは起こり得ます。事故そのものより、報告が遅れて対応できないことの方が問題になるため、対応の順番をルールと一緒に決めておきます。

  • 入力した本人が、すぐに管理者へ報告する(報告した人を責めない運用にする)
  • 該当する会話履歴を削除し、データ保持の設定でどこまで消えるかを確認する
  • 監査ログで、いつ・誰が・何を入力したかを確認する
  • 個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法上の報告や本人への通知が必要かを確認する
  • 原因を踏まえて、権限の設定や入力ルールを見直す

経理データの扱いを含めた社内の管理体制は、経理・決算セルフチェックで現状を点検しておくと、AIのルールづくりの土台になります。

よくある質問

無料版でも「学習させない設定」にすれば業務に使ってよいですか?

設定は社員一人ひとりに任されるため、管理者が設定や利用状況を確認できず、退職後のアカウントや履歴も会社が管理できません。業務で使うなら、会社名義で法人向けプランを契約し、設定を管理者が固定する形が基本です。

生成AIの利用料は経費になりますか?

事業のために使うAIサービスの利用料は経費になります。勘定科目は通信費や支払手数料など、毎期同じ科目で処理します。海外の事業者に支払う場合は、請求書の記載を見て消費税の扱いを確認しておきます。

AIが提案した仕訳をそのまま会計ソフトに登録してもよいですか?

下書きとして使い、証憑と過去の処理に照らして人が確認してから登録します。勘定科目だけでなく、消費税の区分やインボイスの有無の判定は誤りが起きやすく、申告の数字に直接影響します。

取引先から「AIに当社の情報を入れていないか」と聞かれたらどう答えますか?

契約しているプラン、学習と保存期間の設定、確認した日付、入力禁止の社内ルールを示して説明します。こうした記録を導入時から残しておくと、問い合わせや監査にも落ち着いて対応できます。

まとめ

法人向けAIは「入力データが学習に使われない契約・設定を選べるか」と「SSO・権限・監査ログ・データ保持で管理者が統制できるか」の2軸で比べます。どのサービスでも、入力禁止情報のルールとシャドーAI対策、税務の回答を国税庁の一次情報で裏取りする手順をセットで整えることが、安全に使い続ける条件です。AIの導入は、経理フローや社内の管理体制の見直しと同時に進めると効果が出やすくなります。

札幌の公認会計士・税理士事務所

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出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。各AIサービスの機能・契約条件は変更されることがあるため、導入時は各社の公式情報をご確認ください。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂

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