士業事務所がGeminiでやる業務効率化|書類ドラフト・調べ物・顧客対応

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士業事務所でGeminiが効くのは、書類のドラフト作成、制度・法令の調べ物の要点整理、顧客向けの説明文・案内文の下書きの3つです。顧客の情報は入力しない、出力は有資格者が確認してから使う、という2つのルールを先に決めれば、守秘義務を守りながら文章仕事の時間を減らせます。

執筆:ジェイスタート会計事務所 編集部(札幌の公認会計士・税理士事務所)2026年10月時点の法令に基づき作成

この記事の結論

Geminiは「文章の下書き」と「情報の整理」に使い、事実の確認と最終的な判断は有資格者が担います。導入の前に、入力してよい情報の線引きと、入力データの扱いを決めておくことが前提です。

  • 即効性があるのは、書類のドラフト・制度の要点整理・顧客向け文書の下書きの3場面
  • 顧客の氏名・取引内容・財務数値・申告や手続きの内容は入力しない
  • AIの下書きは、法令・数字・日付を一次情報で確かめてから顧客に出す
  • 入力データの扱いは契約・プラン・設定で異なるため、業務で使う前に確認する
  • 入力禁止のリストとプロンプト(指示文)の型を所内で共有し、全スタッフに広げる
目次

士業事務所でAIを使う前の大前提|守秘義務と入力ルール

士業には守秘義務があります。税理士法・弁護士法・司法書士法・行政書士法・社会保険労務士法など、各士業の根拠法に秘密を守る義務が定められています。例えば税理士法第38条は、正当な理由なく業務に関して知り得た秘密を漏らすことを禁じ、税理士でなくなった後も同じ義務を負うと定めています。顧客から預かった情報を外部のAIサービスに入力することは、この義務に触れるおそれがあります。

個人情報保護法の観点からも、顧客の個人データをAIに入力してよいかは慎重に判断する必要があり、個人情報保護委員会も生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しています。マイナンバーは番号法で利用できる事務が限られているため、AIへの入力は避けます。

  • 顧客の氏名・会社名・住所
  • 取引の内容と取引先の名称
  • 決算書・試算表などの財務数値
  • 税務申告の内容、登記・訴訟・労務手続きなど法的手続きの個別の内容
  • マイナンバー・口座番号・健康状態など、特に慎重な扱いが必要な情報

AIに渡してよいのは、一般的な制度の整理と、個人情報を含まない文書の型づくりが中心です。何を渡してよいかは、次の3区分で整理して所内で共有すると迷いが減ります。

区分例使うときの注意
そのまま入力してよい公開されている法令・通達の内容、一般的な制度の概要、事務所の定型文のひな形出力の正確さは一次情報で確認する
匿名化すれば入力してよい架空の数字に置き換えた計算の型、業種と規模だけを示した相談の構成固有名詞・日付・金額の組み合わせで顧客が特定されないかを確認する
入力禁止顧客の氏名・会社名、マイナンバー、口座情報、申告書や決算書、個別の手続きの内容匿名化しても入力しない
AIに入力する情報の3区分(2026年10月時点の一般的な整理)

あわせて確認したいのが、入力したデータの扱いです。入力内容がAIの改善(学習)に使われるかどうか、管理者が設定を管理できるかは、法人向けのGoogle Workspaceで使うのか、個人のGoogleアカウントで使うのか、またその設定によって異なります。業務で使う前に、Googleの公式の説明で利用規約と設定を確認し、事務所全体のルールとして文書にしておきます。区分ごとの考え方は士業がClaude/Geminiを使うときの守秘義務と実務で詳しく整理しています。

入力してよい情報の線引きは、扱う業務と契約しているサービスによって変わります。初回無料で、所内ルールの考え方から確認できます。

無料で相談する

Geminiで何を時短する?即効3シナリオとプロンプト例

最初に取り組むのは、どの事務所でも時間を取られやすい「書類のドラフト」「制度の調べ物」「顧客向けの説明文」の3つです。いずれも白紙から書く時間を減らすのが目的で、仕上げは有資格者が行います。

士業事務所のGemini活用3シナリオ:書類ドラフト、制度の調べ物要点整理、顧客向け説明文の下書き
書類ドラフト・制度調べ・顧客説明文の3大時間泥棒から着手する(※2026年6月時点)

シナリオ1:書類・文書のドラフト作成

プロンプト例:「定款の目的欄のひな形を作って。業種は○○で、将来的に○○も手がける予定。法令上問題のない範囲で、汎用性のある書き方にして」。

Geminiが出したドラフトをもとに、司法書士や担当者が法令と登記実務の観点で修正して完成させます。業種や事業計画は、顧客を特定できない一般的な表現にとどめて入力します。契約書の条項案、社内規程のひな形、委任状の文例なども同じ流れで使えます。

シナリオ2:制度・法令の調べ物の要点整理

プロンプト例:「相続時精算課税制度の2024年改正の内容を、税務の専門知識がない顧客向けに300字で説明して。内容の正確さは担当者が確認するので、まず概要を整理して」。

制度改正の概要をつかむ時間や、顧客への説明の準備時間を短くできる場合があります。この例なら、2024年1月1日以後の贈与から年110万円の基礎控除が設けられたことが正しく書かれているかを、国税庁の資料で確かめてから使います。AIは改正前の古い情報で答えることがあるため、年や適用時期の記述は特に注意します。

シナリオ3:顧客向けの説明文・案内文の下書き

プロンプト例:「免税事業者からの仕入れにかかる経過措置の控除割合が変わることを、顧問先に知らせる案内文のひな形を作って。丁寧な文体で、仕入先の登録番号の確認をお願いする趣旨が伝わるように。数字は後で担当者が入れるので空欄にして」。

毎年のように発生する一斉案内や制度説明のレターは、下書きの負担を大きく減らせる分野です。一方で、案内文に入れる数字や期限を誤ると、顧問先の判断を誤らせてしまいます。数字はAIに書かせず、担当者が一次情報で確認して入れる運用にします。

案内文に入れる数字の例(2026年10月時点)

  • 免税事業者等からの仕入れの経過措置:2026年10月1日〜2028年9月30日は70%(それまでは80%)、2028年10月1日〜2030年9月30日は50%
  • 2割特例:2026年9月30日を含む課税期間で終了(個人は令和8年分まで、3月決算法人は2027年3月期まで)
  • 3割特例:個人事業者のみが令和9年分と令和10年分に使える新しい特例(インボイスの登録をしなければ免税事業者になる人が対象)
無料
ツール
インボイスの経過措置の控除額を計算する免税事業者からの仕入れの金額から、期間ごとに控除できる消費税額の目安を確認できます。案内文の数字の検算にも使えます。計算する

制度の全体像はインボイス制度の実務ガイドにまとめています。

AIの下書きをそのまま出してよい?品質を守る確認の工程

士業がAIを使うときの最も重要な線引きは、AIが出した内容をそのまま顧客に出さないことです。AIは草稿を作る速さを上げるための道具であり、内容の正確さの責任は有資格者にあります。確認は次の順で行います。

  1. 根拠を一次情報で確かめる法令・通達・国税庁などの公的な資料にあたり、AIが示した内容と一致するかを確認します。AIは存在しない条文や通達を示すことがあります。
  2. 数字・日付・期間を照合する税率・期限・適用開始日などは、原典と一つずつ照合します。
  3. 顧客の状況に当てはめる一般論が、その顧客の業種・規模・課税期間に当てはまるか、例外や経過措置がないかを確認します。
  4. 表現を整える断定しすぎる表現や、誤解を招く言い回しを直します。
  5. 情報が残っていないか確かめるテンプレートとして保存する前に、固有名詞や個人を特定できる情報が残っていないかを確認します。

費用の面では、有料プランは2026年6月時点の調べで月20〜30ドル前後でした。プラン名や料金、使える機能は変わることがあるため、契約前に公式サイトで確認してください。費用対効果は、文書1件あたりの時間短縮で考えると判断しやすくなります。

計算例:時間短縮から費用対効果を考える

例えば、下書きにかかる時間を1件あたり30分(0.5時間)短縮できる文書が、月に20件ある場合です。

0.5時間×20件=10時間

月10時間を、顧問先の数字の確認や面談の準備に回せる計算です。実際の短縮時間は文書の種類で大きく変わるため、最初の1か月は時間を記録して確かめます。

何から始める?Geminiを使い始める4ステップ

使い始めは、対象の文書を絞って小さく回すのが進めやすい方法です。

  1. 使う環境を決める事務所として契約するサービスとアカウントを決め、入力データの扱いと設定を確認します。スタッフの個人アカウントでの業務利用は避けます。
  2. 入力禁止情報のリストを1枚作る事務所全員に共有します。このリスト自体を「税理士事務所でAIを使う際の入力禁止事項を一覧にして」とGeminiで下書きしてもかまいません。
  3. 繰り返しの多い文書を1つ選ぶ顧問先への案内文、制度説明のレター、定型書類のひな形などから選びます。
  4. ドラフト→確認→テンプレート化個人情報を含まない条件でGeminiに下書きさせ、有資格者が確認・修正して、事務所内のテンプレートとして保存します。

この流れを3〜5種類の文書で繰り返すと、「Geminiで省力化できる文書作業」のリストが自然にできあがります。あわせてクラウド会計で月次の数字を早く把握できる体制を整えると、顧問先へのサービスの幅が広がりやすくなります。導入の手順はクラウド会計の導入の流れで紹介しています。

浮いた時間で顧問先へのサービスはどう変わる?

文書作成の時間を短くすることは、事務所の生産性を上げるだけにとどまりません。浮いた時間を、顧問先の経営数字の分析、資金繰りの見通しづくり、税務リスクの早期共有に使えるようになると、顧問契約そのものの質が上がります。

「年1回の申告だけに対応する税理士」から「毎月の数字を見て経営に伴走する税理士」への転換は、文書仕事を型にすることで近づきやすくなります。具体的には、毎月の顧問先への報告文(月次の推移の説明や翌月の注意点)の下書きをGeminiで作り、担当者が数字を当てはめて仕上げる運用です。

Geminiに任せる部分有資格者・担当者が担う部分
月次報告の文章の構成と下書き数字の確認と、増減の理由の分析
新制度(インボイス・電子帳簿保存法など)の説明レターの下書き顧問先ごとの影響の判断と個別の助言
よくある質問への回答文の型個別の事情に当てはめた回答
面談の議題案や確認リストの下書き面談での判断と提案
顧問先対応での役割分担の例

情報発信の質とスピードが上がると、顧問契約の継続や紹介につながる場合があります。士業事務所自身の経営数字(稼働率・顧問件数・スタッフ1人あたりの顧問売上など)を月次で把握する方法は、管理会計の基本と月次の進め方が参考になります。

全スタッフに広げるには?プロンプトの型と所内ルール

Geminiを代表者だけの道具で終わらせず、担当者全員の効率化につなげるには、広げ方の手順が大切です。まず、最も繰り返しの多い文書(制度説明のレター、顧問先への月次報告文など)について、担当者1名がプロンプトの型を設計します。その型を共有フォルダに保存し、ほかのスタッフが同じ型で下書きできるようにします。

プロンプトの型の例

  • 役割:「あなたは税理士事務所の文書作成の補助者です」
  • 目的:誰に、何を伝える文書か
  • 前提:匿名化した条件だけを書く(顧客名・数字は入れない)
  • 出力の形式:文字数、文体、見出しの有無、空欄にする箇所
  • 確認してほしい点:「不確かな点は推測せず、確認が必要と書いて」

どのスタッフが使っても同じ品質の下書きが出るようになれば、有資格者の確認の負担も下げやすくなります。所内ルールには、次の項目を入れて文書化しておきます。ルールの下書き自体もGeminiで作れます。

  • AIに渡してよい情報と、入力を禁止する情報の線引き
  • 入力データが学習に使われない設定・契約になっているかの確認
  • AIを使う業務の範囲(下書き・整理・調べ物に限るなど)
  • 最終確認は有資格者が行うという運用
  • 月1回の使い方の見直しと、成果(短縮できた時間など)の測り方

ルールが整うと、新人やアルバイトのスタッフの研修資料としても使えます。AIを使う型を身につけたスタッフは定型文書の処理が速くなり、有資格者は顧問先への深い分析と提案に時間を使いやすくなります。これが士業事務所でGeminiを活用する目的です。

導入を相談する前に整理しておきたいこと

最初に試しやすいのは、顧問先へのインボイス制度の案内文の下書き、制度改正の要点整理、新規の問い合わせへの返信文案など、顧客情報を入れずに作れる文書です。入力禁止のルールと入力データの扱いの確認を組み合わせれば、守秘義務の管理と効率化を両立しやすくなります。

  • 士業の種別とスタッフの人数
  • 繰り返しの多い文書の種類と、月あたりのおおよその件数
  • いま使っているメール・文書作成・会計のサービス
  • 顧客情報の管理ルールが文書になっているか

当事務所は公認会計士・税理士の事務所として、士業事務所の税務顧問や経営数字の把握とあわせて、AIを使う際の所内ルールづくりのご相談もお受けしています。

よくある質問

顧問先の同意があれば、顧問先の情報を入力してもよいですか?

同意があっても、マイナンバーのように法律で利用できる範囲が決まっている情報は入力できません。それ以外の情報も、入力データの扱いを契約と設定で確認し、目的に必要な範囲に限るのが原則です。多くの文書は、架空のモデルケースに置き換えても下書きの目的を果たせます。

Geminiの回答に出てきた条文番号や通達は信用してよいですか?

そのまま信用せず、原典で確認してください。AIは、存在しない条文番号を示したり、改正前の内容を説明したりすることがあります。法令は公的な法令検索、税務は国税庁のタックスアンサーや通達で確かめてから使います。

Geminiの利用料は事務所の経費にできますか?

事務所の業務に使う利用料は経費になります。法人向けの契約は、プランによって料金と使える機能が異なるため、契約内容が分かる画面や請求書を保存しておきます。消費税を本則課税で申告している場合は、請求書や領収書に適格請求書発行事業者の登録番号が記載されているかも確認しておきましょう。

スタッフが個人のアカウントで使っているのが心配です。

一律に禁止するより、事務所として使うサービスと入力ルールを決めて、公式に許可するほうが管理しやすくなります。事務所が把握していない個人アカウントでの利用が続く状態が、最も管理しにくいためです。

まとめ

士業事務所のGemini活用は、書類のドラフト、制度の要点整理、顧客向け説明文の下書きの3場面から始めるのが近道です。顧客の情報を入力しないルールと入力データの扱いの確認を先に決め、AIの下書きは有資格者が一次情報で確かめてから使います。浮いた時間を顧問先の数字の分析に回せれば、サービスの質も上がります。

札幌の公認会計士・税理士事務所

士業事務所のAI活用と税務のご相談は、ジェイスタート会計事務所へ

  • 初回相談は無料(オンライン対応可)
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対応:法人の決算・税務顧問/個人事業主の確定申告/相続・贈与・事業承継/融資・資金繰り

出典・参考(公的機関)

本記事は2026年10月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、実際の申告・手続きは税理士等の専門家にご相談ください。

更新履歴:2026年10月 全面改訂(インボイスの経過措置の変更を反映)

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